01-プロローグ
「怪獣」という絵空事の存在が、現実に現れ始めたのは……一体いつからだろう?
気がついた時、すでに
数メートルから百メートルを超すまでの巨大な
ヤツらは現れ人間に、人間社会に牙を
怪獣の圧倒的な破壊の力によって、人々や街は
「けど、それももうおしまいだ!」
歓声をあげたのは、東京は立川市にある小さな商店街の住人の男性。
その声に、周囲に集った同じ商店の住人ら数十人が、ワーッと拍手を鳴らす。
「なんてったって、俺らのミナちゃんがあの! 日本防衛隊の隊長様に選ばれたんだからな!!」
男の発言に当人の「亜白ミナ」は、照れくさそうな微笑を浮かべた。
日々襲いくる敵に対し、世界は一丸となって対怪獣に特化した組織──「防衛隊」を結成。
ミナは日本を守るその組織に入ると、わずかな期間でそのトップに、まだ二十歳の若さで選出されたのだ。
「それもこれも、こうして祝ってくれるみんながいるおかげです」
あくまでも
子どもの頃からなにかと世話を焼いてくれる商店の大人たちへ、感謝を込めてそう言う。
そんな彼女の肩にポンと手を置く男が一人。
「
端正な顔立ちに、鍛えているのかガッチリした体。
ミナより数年だけ歳が上に見えるこの男は、彼女の昔ながらの顔なじみである。
「カフカくん……! 君もパーティーに来てくれたんだね」
「当然だろ! なんせ俺らの昔からの夢を、お前が叶えたんだからな!」
青年──「日比野カフカ」は亜白ミナと共に子供時代を過ごした幼馴染。
二人は過去に、周囲には秘密で一匹の野良猫を飼っていたのだが、この愛猫は怪獣の襲撃で命を落としている。
それが幼いミナとカフカの心に、「大切なモノを守りたい、そのための力が欲しい」という想いを根付かせていた。
二人は幼いながらに、一つの約束をした。
『お互い防衛隊に入って、どっちが先に隊長に選ばれるか、競争だ!!』
「結局、俺はダメだったけどなぁ~」
カフカはおどけるように、大げさにため息をついて見せた。
フフッと面白そうに顔をゆがめるミナ。
「でも、試験は受けてるんでしょ? 今も」
「……いや、もうやめたよ」
「やめちゃったの……?」
「ああ。俺もあと数年もすりゃ三十路のおっさんになっちまう訳だからな。いい加減まともな仕事しなきゃって、今は防衛隊が討伐した怪獣の死体を処理する会社に勤めてるんだ」
これ、とスマホで見せたのは「モンスタースイーパー」という企業のサイト。
わりと古参の、怪獣専門の清掃会社であった。
「そっか、ちょっと残念だな。私が隊長になったら、カフカくんが副隊長で一緒に戦えるって思ってたんだけど」
「おまえなら、俺なんかいなくても上手くやれるさ」
そう言ってカフカは、妹をあやす兄のようにミナの頭をなでた。
照れ臭かったのか、彼女は話題を変えようとするが、さらにつっこんだ質問をしてしまう。
「ねえ」
「ん?」
「本当に年齢の問題だけ?」
「……どういうこった……?」
「なにか、隠してることない?」
ミナの目は真剣にカフカの瞳を見つめる。
私たちの間にウソはなしだよ、と
それはなにを隠そう、ミナの言うことがズバリ当たっていたからだ。
日比野カフカはある時フイに気づいた。
自分には幼い頃のミナとの思いでだけが強く残っており、それ以外の記憶が極端に薄れているということに。
モンスタースイーパーに入ったのは約一年前。それより以前の数年間がいつの間にか、完全な白紙となっていた。
だがそんなことを正直に打ち明けては、ただ幼馴染を悲しませ、心配させるだけだ。
とくに防衛隊の隊長に就くなどという大変な責任を負わされたミナに、余計な気苦労を与えたくないとカフカは考えている。
なぜそんなことになってしまったのか、自分にもわからないが……ゆえに彼は、なにも言えなかった。
「あっ、目をそらした! カフカくん昔から、ウソつくとき絶対目を合わせないよね!?」
「そんなに見られたら、そらすだろそりゃ! そんなことより、せっかくのパーティーなんだぜ! もっと楽しまなきゃ……」
とつぜん、和やかな会場にけたたましいアラームが鳴り響いた。
音の出どころはミナの服のポケットから。
彼女を防衛隊の人間として呼び出すための、緊急コールだ。
「はい、こちら亜白。……なんだと!?」
「どうしたんだ、ミナ」
周囲は血相を変えたミナの様子に静まり返り、カフカがみんなを代表してなにが起きたのかたずねる。
次に発される彼女の言葉は、会場の雰囲気を一変させるのに十分すぎるものがあった。
「怪獣が出現した……東京のど真ん中に……!」
パーティーはお開きとなり、集まった参加者らは急ぎ、付近の怪獣避難用のシェルターへと隠れた。
ミナは全員が安全に避難を終えるのを見届けたのち、防衛隊の本部へと向かおうとする。
そんな彼女に、幼馴染のカフカはせめてもと激励をおくった。
「頑張れよ、ミナ! でも、無茶はすんじゃねえぞ!!」
ミナは柔らかな微笑で返し、あとは振り返らずに本部へと駆ける。
その背を見送ったカフカは……なぜかシェルターには入らず、どこかへと歩みを向けた……。
「亜白隊長が戻ったぞ!」
日頃から私服の下に、防衛隊用の隊服である特殊戦闘スーツを身に着けていたミナ。
彼女はスーツの機能を使い身体能力を上げ、スポーツカーよりも速く走り防衛隊へ帰投した。
スーツには他にも、対怪獣用のバリア発生装置や、筋力をアップするパワーアシストも搭載されている。
ここ防衛隊本部には、そんな超ハイテクな装備を有する戦闘集団が多数集っていた。
全員が亜白ミナの部下でもある。
「状況の報告を頼む」
パーティーの時とは打って変わり、キリッと一変した目つきで、ミナはオペレーターへ現在の目標──怪獣の詳細を問う。
オペレーターの女性はミナの投げかけに、これは言ってもいいものか……というような難しい顔を浮かべている。
「どうした、小此木」
「い、いえ……! 目標怪獣は、地面の底から突然地表を突き破って出現。そのまま周辺の街への破壊活動を開始しています」
「住民の避難は?」
「そちらは問題ありません。現場クルーが
「ふむ……それで、地面の底から敵が現れたということは、今回のタイプは地底怪獣か」
「……いえ、それが……」
オペレーターの小此木こよみは言い
「目標怪獣は……隊長もご存知のはずの、例の『封印指定』だったヤツで……」
「なんだと!? では、今都心で暴れている怪獣は」
「はい、『マイナス1号』です」
怪獣は体内で特殊なエネルギーを発生させる。防衛隊は、これを「フォルティチュード」と命名。
そして怪獣はフォルティチュードの値によってランク付けされ、ある一定の
この番号──コードを付けられ識別された強大な力を有する怪獣を、防衛隊は「ナンバーズ」と呼んでいた。
「しかし『マイナス1号』はその名の通り、通常の1号からはじまる7号までの個体とはまた別個にランクされた、特別な識別外ナンバー……」
「それは自然発生する本来の怪獣とは違い、我々
「我々防衛隊に『国土の守備』という任を奪われた──と考えている自衛隊の上層部と、怪獣の研究と対策を担当する部局『
「裏で進めていた極秘計画……ですよね」
小此木は国家機密にも値するトップシークレットの情報について話し合っていることに、ゴクリと唾をのむ。
「自衛隊と
「だから……人間に制御できる怪獣を人工的に造りだすことで、それを怪獣にぶつけようとしたんですね」
「だが生み出されたモノ──マイナス1号もまた怪獣……結局、自然発生するヤツらと同じように、人間に牙を剥いた」
「マイナス1号は凍結されて、今は自衛隊の地下深くにあるシェルターで厳重に封印されることになった……」
だが今、その怪獣マイナス1号は封印を破って目を覚ました。
そして自らを生み出した人間への怒りによって、人々の暮らす街を無へ──否、
「そうはさせない。私が、今度はマイナス1号を封印ではなく、討伐する──!」
決意とともにミナは装備を整え、部下を連れてマイナス1号が暴れる首都──東京へと向かった。
四ノ宮サガンに怪獣次元門などの独自ワードが出てくるゲーム版に触発されて作りました。
だというのに原作があと2話で最終回なのかなしいなぁ…。
ミナとカフカは共に年齢を下げています。
ミナは二十歳、カフカは二十三~五歳くらいをイメージ。
たぶん実写になったらアイドル俳優をあてがわれると思ったので。