怪獣8号が実写映画化したら   作:ほろろぎ

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03-終息

 日比野カフカが仕事そっちのけで独自に考察している、マイナス1号の生体と弱点──。

 

 怪獣にはどの個体にも、通常の生物で言う所の心臓に相当する「核」……「コア」という器官を持っている。

 コアからエネルギーであるフォルト波動が発生し、この核を破壊すればすべからく怪獣は活動を停止するのだ。

 

 

 

「どういうことだ……マイナス1号の核の場所が、特定できないとは?」

「それが……」

 

 

 

 防衛隊本部において、隊長である亜白ミナはオペレーターのリーダーである小此木に問うた。

 

 ミナや他の部隊員たちは、都心に現れた人造怪獣──マイナス1号を発見するも、これを取り逃してしまう。

 一度本部に戻った彼女らは、早急にマイナス1号への対策を始めた。

 

 なにを置いてもコアの位置を特定し、ここを破壊する。

 それが怪獣を討伐するための最善手なのだが、今……肝心の核の場所が特定不能だと小此木は告げた。

 

 

 

「マイナス1号を製造した自衛隊上層部や、怪獣対策局SEEKER(シーカー)は……『これは最大級の機密事項だ』と言って、当該怪獣のデータを非公開にすると言っていまして……」

「バカなッ。この状況でなにを寝ぼけたことを……!」

「都心部は半壊。深刻な放射能汚染もあり、復旧には膨大な時間がかかると思われます」

 

 

 

 おまけに近隣住民は、避難に当たっていた防衛隊や警官たちもろともに死亡してしまった。

 死傷者および負傷者の数は、思い出したくもない数である。

 

 

 

「このままマイナス1号が再出現すれば、次の被害はもっと甚大(じんだい)なものになります」

 

 

 

 小此木は深刻な顔で述べる。

 

 

 

「おまけに、隊長が見たという人型怪獣──『8号』のこともありますし」

「いや……8号に関しては、今はほうっておいていい」

「なぜです? やはり、()()()8号に救われた、とお考えですか……?」

 

 

 

 小さな声で小此木はそう言った。

 

 本部からの観測では、ミナらの前に現れた怪獣8号の行動は、彼女らを助けようとして行われたものではないか……としか見えなかったからだ。

 

 小此木自身もそう思っており、それは他のオペレーターたちも同じようで。

 

 

 

「あの場にいた他の隊員らも同じことを言っている。『8号は自分たちの命を救ってくれたのだ』、と……正直、私も……」

 

 

 

 私も同じことを思っている。

 そう口にする前に、突然ミナのポケットからベルの音が鳴った。

 

 隊の呼び出しではない。通常の電話からの着信音だ。

 発信者には、ミナの幼馴染の名が表示されている。

 

 

 

「カフカくん? ごめん、今大事な会議中で……」

『わりぃ! でも、こっちも緊急!』

 

 

 

 電話の向こうで、カフカが叫ぶようにミナの言葉をさえぎった。

 

 

 

『マイナス1号の次の出現ポイントが分かったんだ』

「えっ、……それ本当!?」

『ああ。おそらく奴の次の攻撃目標は……千代田区のはずだ』

「千代田……でも、なんでそこに?」

『千代田は東京の、日本の政治的な中心だ。そこを攻め落とせば、人間への復讐を誓っているマイナス1号にとって、俺たちへの大打撃になるからさ』

 

 

 

 なるほど、納得のいく理屈だ。とミナは思った。

 しかし一つの疑問が浮かぶ。

 

 

 

「なんでカフカくんは、そんなことが分かったの? 私たち防衛隊でも、マイナス1号の次の攻撃地点の予測はついてないのに」

『ぅっ……それは、その……あれだよ、あれ! 清掃業者として怪獣と関わってきた、長年の勘ってやつ!』

「まだバイトでしょ? それも務めてまだ一年目」

『……いんだよ、こまけぇーこた! それと、もう一つお前に言っとかなきゃならんことがある』

「それはなに?」

『マイナス1号の核の場所だ……が……に…………』

「? カフカくん?」

 

 

 

 これまた防衛隊ですら詳細をつかみあぐねている怪獣のコアの位置を、カフカは発見したという。

 しかしその情報を伝える前に、電話にノイズが走り、通話は切れてしまった。

 

 

 

「今のノイズ音……」

 

 

 

 そばで二人の会話を聞いていた小此木が言う。

 

 

 

「マイナス1号の放射能で、対怪獣スーツの機能がやられた時と同じ感じがします」

「おい、それはどういう……」

 

 

 

 ビーッ ビーッ と、二人がいる作戦室に警報が。

 ミナは迅速に、オペレーターの一人に状況の報告を求めた。

 

 

 

「どうした!?」

「千代田区の地底深くからフォルティチュードの波動を感知! これは……マイナス1号のものです!!」

「まさか……本当に千代田に現れるとは」

「亜白隊長!」

 

 

 

 小此木が叫ぶ。

 

 

 

「さっきの電話の人、千代田にいるんじゃ……だからマイナス1号のジャミングの影響で、連絡が途絶えたんですよ!」

「!!」

 

 

 

 幼馴染(カフカ)が危ない。

 ミナは急ぎ部隊をまとめると、千代田区へと急行した。

 

 ありったけの装備を抱えた専用車両が、千代田の地上へと現れたマイナス1号の前に到着する。

 今回は、()()()()()()()()()()()()()()()も持ってきた。

 

 

 

「しかし、いまだ有効な作戦なしか」

 

 

 

 対怪獣の詳細な討伐プランを練る間もなく出動させられたことに、ミナは歯噛みする。

 これすらもマイナス1号の狙いかもしれなかった。

 

 人間が自分に対応する力をつける前に、速攻で相手を叩き潰す。

 

 怪獣にしてはやるじゃないか、とミナは強がった。

 

 

 

「総員、油断するな! マイナス1号の放射能煙幕に注意しつつ奴をけん制し、人のいない場所へ誘導する!!」

『了!!』

 

 

 

 隊長の号令と共に、隊員たちはそれぞれ攻撃を開始した。

 今度はスーツをダメにされないよう、ケムリの外からの遠距離攻撃に徹する。

 

 

 

『GAAAAAAAA!!』

 

 

 

 マイナス1号はこれに対し、放射能を込めた熱線を吐き出し攻撃を加える。

 熱線の温度はあまりにも高く、対怪獣スーツのバリア越しにも強烈な熱が隊員らの身を焼いた。

 

 炎によって隊員たちは、次々と戦線を離れざるを得なくなる。

 

 

 

「マズいな……このままでは、我々の手が足りなくなる」

 

 

 

 ミナは、決断を下した。

 

 

 

「本部、持ち出した専用装備を使うぞ」

『えぇっ、この状況でですか!?』

「この状況だからだ。小此木、『アブソリュートゼロ』のロックを解除しろ」

『りょ、了!』

 

 

 

 車両のコンテナが解放され、そこには対怪獣用の特殊冷却砲──アブソリュートゼロが鎮座していた。

 これは超低温のレーザー光線を浴びせることで、対象を瞬時に凍結させるという恐るべき兵器である。

 

 ミナは、残る隊員がマイナス1号の注意を引いてくれている内に、勝負にでることにしたのだ。

 

 

 

『アブソリュートゼロ、起動。目標──マイナス1号を捕捉』

「これで終わりだ……ッ」

 

 

 

 本部のサポートで、砲身が怪獣をとらえた。

 しかし──レーザーは撃たれる前に、ミナ自身の手によって止められる。

 

 

 

『どうしたんですか、隊長!?』

「アブソリュートゼロの射線上に、逃げ遅れた民間人を発見した!」

 

 

 

 レーザーの望遠カメラには、泣きながら走る小学生ほどの女の子が一人映っている。

 

 

 

「くっ」

 

 

 

 急ぎ近くの隊員に少女を保護させようとするミナだが、あいにく全員がマイナス1号の相手に手いっぱい。

 ならばとミナが自ら少女を保護しようと立ち上がろうとした時──カメラの中に一人の青年の姿が見えた。

 

 

 

「カフカくん……!」

 

 

 

 日比野カフカはやはりここにいた。

 そして彼は少女を抱き上げると……見えるはずもない距離にいるミナに向けて、「これで大丈夫だぜ」と笑みを見せた。

 

 そしてミナは、今度こそ銃の引き金を引いた。

 

 

 

『アブソリュートゼロ、着弾しました!』

 

 

 

 青白い光線は一直線にマイナス1号に到達。

 文字通り一瞬にして、百メートル近い巨体を氷の像へと変えた。

 

 

 

 かに見えた。

 

 

 

『GU……GAAAAAAAA!!』

 

 

 

 内側から氷を破って、マイナス1号が動き出す。

 

 

 

「そんな……」

『凍結のためのエネルギーが足りなかったんだ……』

 

 

 

 オペレーター陣は急ぎ、再冷却のための充填を開始する。

 しかし間に合わない。

 

 マイナス1号の口が大きく開く。

 核の力を込めた熱線が今、亜白ミナに向けられていた。

 

 ミナは力なくつぶやく。

 

 

 

「また……ダメなのか」

「ダメじゃねえさ。お前はよくやったよ」

 

 

 

 ポンと頭に乗せられた温かい掌は、彼女になじみ深いもの。

 

 

 

「カフカくん……えっ、なんでここに? さっきまであっちの方にいたのに」

「心配すんな。女の子はシェルターに送ってきたぜ」

「いや、そこじゃなくて……って、この短い時間でそこまでしたの!?」

「ああ。あとは、アイツをなんとかするだけだな」

 

 

 

 マイナス1号の放った高熱線が、カフカとミナの元へ近づいてくる。

 

 

 

「カフカくんッ」

「大丈夫。だって俺も……()()()()()()

 

 

 

 瞬時にカフカの肉体が盛り上がり、暗い青に染まる。

 頭部は鬼を思わせる角の生えた人骨に覆われ、その瞳がギョロリと敵を見据えた。

 

 

 

「カフカくんが……怪獣8号……?」

「おう。まあ、そういうことだから」

 

 

 

 放心したように目の前の出来事を口にするミナ。

 カフカはいつもの調子でミナに対する。

 

 そして

 

 

 

「お前はジャマ」

 

 

 

 ていっ、と軽く腕を払い、マイナス1号の熱線を弾き飛ばしてしまった。

 これにはマイナス1号もミナも目を白黒させている。

 

 

 

「黙ってて悪かったな。お前に心配かけたくなくて……でも、もう見てるだけじゃいられねえ」

 

 

 

 カフカ──否、怪獣8号がゆっくりとマイナス1号へ向けて歩んでいく。

 その一歩一歩が、何十倍の巨体を持つマイナス1号よりも重く響く。

 

 

 

「お前の手柄を奪いたくないんだが……どうやらこいつは、俺じゃなきゃどうにもできないらしい」

 

 

 

 8号は歩きながら、右の拳を握り固めた。

 そして、ジャンプ。

 

 地面に大きなクレーターを残して8号は、マイナス1号の胴体目がけて飛んだ。

 

 

 

「おまえの核は、腰にあるんだろ?」

『GURU!?』

 

 

 

 8号──カフカの推測したマイナス1号のコアの場所は、果たして的中していた。

 

 

 

「じゃあな、あばよッ!!」

 

 

 

 弾丸のように突き進む怪獣8号の拳は、本体共々に大砲のごとくマイナス1号の体を貫いた。

 

 ズズゥン……と地面を揺らして倒れたマイナス1号。

 生体活動は、確かにコアの破壊と共に停止していた。

 

 

 

「おぉ~い、ミナ~! 終わったぜ~」

 

 

 

 人間に戻り、手を振って幼馴染の無事を再確認しようと、カフカは走ってミナの元へと戻ってくる。

 そんな青年に対してミナは

 

 

 

「……日比野カフカ、いや、怪獣8号……お前を拘束する」

 

 

 

 銃を向けるのだった。

 

 

 

 ……エピソード2へ続く。




つづくゾ、と言いつつ…
プロットを見直して今後の展開を再考します。

三部作は長いので前後編にするか、続編を見越したけど不人気で1作目で終わった作品
のようにこれで終わる(エタる)か…アニメ2期やるしなんとか続けたいけど…
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