黒魔女アーネスの、使い魔の、推しごと ~転生召喚されたし、ご主人様を国民的アイドルにするぞ~ 作:茉森 晶
「ぶ…… ♪ぶらっくはーと ほわいとさん この心にー 光照らしてー♪」
たどたどしく、素朴な歌。
ヨウジと
「歌を聴くだけで強くなれるなら……我が騎士団でもそんな研究をしてますよ……」
「う~ん、どうでしょうね~? 誰が歌うか……誰が聴くか……それ次第でしょうか~?」
何か魔法効果があるわけもないのだが、リファナまでもその姿に目を奪われていた。
「♪君とずっと こーの世ー界でー 生ーきてーいきたいーからー♪」
「う…………くッ」
アーネスの、今の精いっぱい。それはもちろん、オタク陽司の心に響いていた。
「♪何があーってもー 君を信じるーからー♪」
(
「♪そーばにいてー♪」
サビを歌い終え、倒れたヨウジをしばらく見つめていたアーネス。
そして、ペコリと一度頭を下げた。
ヨウジにそれは見えていなかったが、その伏せた顔は今にも泣きそうだった。
「くおぉぉぉおッ!!」
曲終わりに歓声を上げるかのように叫び、ヨウジは立ち上がった。
勢い余ってフラッとよろけるが、そのまま、転がった
(
胸の中で、熱いものが爆発的に湧き上がる。が、ヨウジは静かにゆっくりとひとつ深呼吸して構えた。
「ふん……さすが使い魔、しぶといな。その生命力なら、遠慮なくもう一度食らわせてやれるというものだ」
すでに『
「これで……終わりだ!!」
リファナの剣が、金色の光線かのように迫る。その初太刀を、ヨウジの目は確かに捉えていた。
同じく金色に輝く
リファナの雷撃が起爆する瞬間、それを受ける
「!?」
バンッ!!
予想外の反発力を制御しきれず、リファナの剣が弾け飛ぶ。
腕を跳ね上げられ、屈辱にも
(
『ヨウジ! 決めなさい!! 必殺技よ!』
『必殺技……自分の中の魔力的なコレをぶつけりゃいいのか?』
『さっきも言ったけど、名前が重要よ! 自分が一番効果を高められると思う言葉を乗せなさい!』
『ま、待ってくれよ、名前なんて……』
決定的な1秒間、魔力の
あとは技名だけ……だが、ヨウジはあまりそういうセンスに
「ガ…………『
突き出したヨウジの両手から、狼の頭を
ガウォン!
膨大な魔力の熱量に、空気が咆哮した。
「はあああああッ!!!」
ヨウジは勢いよく、その両手を合わせる。
狼のマズルがリファナの全身を噛み砕くように包み、エネルギー体が弾けた。
バガンッ!!
凄まじい爆発音と、鎧の破壊される金属音。
魔力の素になる
「くはッ……」
爆発の中から、ボロボロの半裸になったリファナが現れ、一度膝をつき、倒れる。
ヨウジの勝利が決まった瞬間だった。
「ヨウジ!!」
「姉様!!」
アーネスとユイットが、それぞれ決闘者の元へ駆け寄る。
「はは……やればできるじゃん、俺も……」
緊張の糸が切れたヨウジはフラリ、倒れ込んでいく。
その体を抱き留めるタイミングに間に合うが、アーネス、迷う。
(ウソ……アタシ、抱き留めるの? いや、それ以前に体格的に無理じゃない? でも、避けるわけにも……あーもうっ!)
全開で乙女するアーネス、一大決心で両手を広げる。が。
「わわわっ!?」
倒れながら小さなワンコに戻るヨウジを、慌てて受け取る。
男を感じずに済み、アーネスは少しホッとする。
「姉様! しっかりしてください!」
自分のマントを姉に掛け、ユイットは悲痛な声を上げる。
「やはり、装着者が負けを認めると砕け散るようですね。研究のため証拠品が欲しいところですが……」
「うッ……く……」
「姉様ッ!?」
リファナの意識が戻り、同時にヨウジも
「あ……アーネス? ありがと……」
「バカ……アンタ、がんばったでしょ。これくらい何でもないわよ、うん」
ぬいぐるみのように抱きかかえられ、ヨウジは気恥ずかしいが嬉しくもあり。さすがにヘトヘトな身を任せる。
「黒魔女アーネス……使い魔ヨウジ……お前達の勝ちだ」
「団長さん……えっと、俺、失礼なこと言ったりして……すみませんでした」
「フッ……私の愚行に比べれば、たいした問題ではない。まさか……黒い指輪の魔力に、私が囚われるとはな」
初めて見せたリファナの微笑みは、自虐による呆れ笑い。
「自分の魔力が何倍にも膨れあがる感覚だった。魔法効果も普段より数段強力になっていたはず。それでも……ヨウジの戦闘センスが上回った。私を止めてくれたこと、感謝する」
(俺、本来よりヤバくなった魔法と戦ってたのか。そんな騎士団長と渡り合えるってことは……やっぱ俺の方も結構なポテンシャルなんだな)
「いや、正気の冷静な団長さんと戦ってたら……想像するのも恐ろしいですよ」
「謙遜せずともよい。もし、お前達が国に認められ、市民となる日が来るなら、我が騎士団で心身共に鍛えてやるのだが……まぁ、どこへなりと行くがよい」
(いや、鍛えてもらいたくなんてないんだってば……)
「団長さん、俺は戦闘なんてしたいわけじゃないんです。ただ……アイドルを推したいだけなんでね」
初志貫徹。ヨウジのブレない言葉に、リファナは再びフフッと笑う。
「アイドル……よくわからんが、確かに黒魔女アーネスの歌、素朴でよいものだったな」
「も、もう! 忘れてってばぁ!」
アーネスは頬を朱に染め、抱えた
「で……指輪、どこで手に入れたのよ。オシャレで買ってきたわけじゃないでしょ?」
アーネスから核心に迫る質問が飛び、リファナは顔を曇らせる。
が……すぐに決心したような顔つきで口を開く。