キヴォトスの歯医者さん   作:ニシキ

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ハモリ「本作とは関係ないが、ワイルドハント芸術学院の生徒とアリウスのメインストーリーが実装されると聞いて私はとても嬉しい。オカルト研究会の面々はどの子も個性豊かでその分色んな口内を見る事が出来ると思うととてもワクワクする。オカルト、即ち神秘。彼女達の口内に秘められた神秘の世界を垣間見える事が出来るという奇跡に私は柄にもなく神に感謝を捧げたい気持ちだ。そしてそれはアリウスも例外ではない。白髪の気弱そうな子は表情も魅力的だしもし虫歯があったら是非とも治療して身悶えする様をこの目に焼き付けたい。そして個人的には紫の瞳のハーモニカを吹いていた彼女は髪の編み込みにミステリアスな雰囲気が最高だ。その口から一体どんな言葉を紡ぎ、どんな物を口にし咀嚼するのか……想像するだけで胸が高鳴る。そしてその口の奥には一体どんな神秘の秘境があるのか、考えただけで心が踊る。虫歯はあるのか?歯石や歯垢は溜まってないか?歯茎は腫れてないか?あるとすればすぐに治療しなくては。ああでも実は全く虫歯も歯肉炎もなかったら、という淡い期待を抱いているのも事実だ。とはいえアリウスの厳しい環境下でそれを求めるのも非常に酷な話だがそれでも私は少女達の口の健康を守るひとりの歯科医として儚い希望を抱かずにはいられない。いずれにしても私は早く彼女達の口の中が見たい。歯を治療したい。形の良い唇をゆっくりとこじあけて彼女達の美しい歯をじっくりと隅々まで観察して歯形を取って記録して1本ずつ丁寧に歯を磨いてそれから」
アヤメ「だぁぁぁぁぁぁっ!!いつまでも変なこと言ってないでさっさと始めろこの変質者!!!ていうか言ってる事が控え目に言ってキモ過ぎるわよこのド変態!!!」
と言う訳で第14話です。


白山ハモリの憂鬱

 

 

 

「………………知らない天井、というのは流石にベタ過ぎるか」

 

気が付けば私は、ベッドの上に寝かされていた。部屋の内装から察するに、恐らくはミレニアムの医務室。あの会議室でリオ会長達の前で新しい能力を使った後、意識を失ったのは何となく記憶に残っている。

ふと、気になって手に力を込めてみると……例の水晶玉が出てきた。

 

「……出た」

 

滞空している水晶玉を指でつつきながらぼんやりと考える。今までは無意識の内に能力が発現していたが、今回は意識的に能力を生み出そうとした反動なのか、それとも"世界を越えた"能力のせいだったのか、急に身体が鉛のように重くなっていった感覚は朧気ながら覚えている。

そして、新たに身に付けたこの能力がどんなものか自然と頭の中に入っていた。

 

「(歴史……つまり、これは"過去"を視る力ということか)」

 

私が意識を失う前に見たあの光景……あれは……"私が存在しないキヴォトス"の過去の出来事だ。あのキヴォトスでは、原作通りに色彩の脅威を乗り越えたのだろう。確かにあの世界から見れば過去ではあるが、こちらの世界から見れば未来の出来事だ。しかし、何故未来を視る力を望んだのに過去を視る力に目覚めたのか……

 

「(恐らくは……私が未来を視ることを"恐れた"からだろうな)」

 

セイアさんは私の能力について、私の感情や願いが反映されていると言っていた。私はあの時、未来を視る力を望んだが……同時に、これから起こる未来を視る事に恐れを抱いていた。本当に未来は大丈夫なのか、自分の選択は正しいのか、そんな心に燻る不安が結果として過去を視る力となったのだろう。

そして、その応用で"並行世界"の過去を視る事で擬似的な未来視を可能とした……といった所だろう。

 

「(自分の願いを形にする、と言えば聞こえは良いが……自分がしたくない、出来ないと思っている事は形にならないと言う事か)」

 

逆に言えば、自分が出来るという確信さえあればどんな事でも出来るのだろう。そう、例えば……キヴォトスを支配し、邪魔者の命を奪う事も……

 

「(________っ、バカか私は。それではカイザー(ろくでなし)ゲマトリア(ひとでなし)と何も変わらないぞ)」

 

ふと、頭に浮かんだ考えを即座に否定する。支配だの命を奪うだの、自分の柄ではないというのに……

 

「(全く、最近いくら何でも浮かれすぎだ。そんなモノ歯科医に必要ないと言うのに……)」

 

どんな力があっても、自分はミレニアムの一生徒に過ぎない。離れた場所に転移したり、風を起こしたりするのは確かに便利だが、それだけだ。別に歯の治療に必要という訳でもないし、それを使って不良生徒達の様に人を甚振る趣味もない。まあ、カイザーやベアトリーチェをシバき倒す時は躊躇なく使うつもりだが。

 

「(まあ結局の所、私が本気で望めば未来を視る事に限らず何でも出来るのだろうな……)」

 

これからの事を考えるなら本当に未来を視れるようになった方が良いのでは、という考えが頭を過ったが、かえって余計な苦労も背負いそうなので止めた。実際、セイアさんも未来視のせいで色々苦労していたのだし、わざわざ余計な苦労を背負う必要もない。

 

「(そもそも、今使える能力だって十分に使いこなしてる訳ではないからな……)」

 

滞空している水晶玉をぼんやりと眺める。見た目は何の変哲もないただの水晶玉だが、変わらず空中に浮いている。それを指で押すと……虚空の中へ消えて、私の頭上に落下する寸前に静止した。

 

「(まあ、練習は追々やれば良いか……)」

 

私が消えろ、と念じると水晶玉は光の粒子となって消えていく。

 

「(そう言えば、私はどれくらい寝ていたんだ?)」

 

日時を確認する為に横の机に置いてあった自分のスマホを手に取ると……思わず身が竦み、手からスマホを落としそうになった。

 

『モモトーク着信件数:463』

 

その数字に絶句していると、また通知が来て件数が464になった。差出人は……全てアヤメさんだった。日時を確認してみると、あれからほぼ1日経過していた。

正直、中を見るのが怖くて堪らなかったが、私は勇気を振り絞って中を見る事にした。

 

『今日の晩御飯はあんたの好きなサバの味噌煮よー』

『歯科学部の仕事頑張ってねー』

『仕事忙しい?』

『先に食べちゃうよー』

『まだ帰ってこないの?』

『今どこ』

『ねえ、返事してよ』

『何で無視するの?』

『答えてよ』

『何かあったの?』

『大丈夫?』

『ねえ返事してよ』

『お願い』

『私何かしちゃった?』

『どこ』

『お願い帰ってきて』

『ひとりにしないで』

『やだ』

『早く帰ってきて』

『お願い』

『何でもするから』

『ひとりはやだ』

『ハモリ』

『あいたいよ』

 

私はすぐに電話をかけた。そしてすぐに繋がった。

 

『ハモリ!?ねえ、本当にハモリなの!?』

「おはようございます、アヤメさん。連絡が遅くなって『遅いわよバカァ!!何で連絡してくれなかったの!?』すみません……今、ミレニアムの医務室にいて」

『医務室!?あんた一体何があったの!?身体は大丈夫なの!?』

 

電話越しに聞こえるアヤメさんの声は酷く動揺していて、今にも泣き出しそうな雰囲気だった。

 

「少し、気を失ってしまって……」

『気を失った!?それ絶対大丈夫じゃないでしょ!?待っててすぐ行くから!!』

「大丈夫ですよ。寝起きでちょっとボーッとしてますけど特に苦しい所もありませんし、帰る時は連絡しますからアヤメさんは家で待っていて下さい」

『……絶対に、約束だからね。破ったら、許さないから』

「はい、約束します」

 

ひとまず、私の声が聞けてアヤメさんは安心出来たようだ。すぐにでも帰りたい所だが、流石にこのままここを抜け出す訳にもいかない。どうしたものかと悩んでいると、医務室のドアが開いた。

 

「ハモリ!目が覚めたのね……」

「おはようございます、ハモリ先輩」

 

現れたのはリオ会長とトキだ。リオ会長は少し焦った様子で私に近付き、トキもそれに続いてお辞儀をする。

 

「はい、ご迷惑おかけしてすみません」

「構わないわ。それよりも、あなたが無事で良かった……」

 

どうやら、リオ会長にも心配をかけてしまったようだ。セミナーの仕事だってあるのに、こうして見舞いに来てくれるのはありがたい事だ。

 

「さっきスマホで時間を確認しましたけど、あれからほぼ1日寝ていたんですね」

「ええ、その通りよ。歯科学部の子達には既にあなたが体調を崩したから休むと伝えてあるから安心して」

「ありがとうございます」

 

歯科学部のみんなにも後でちゃんと連絡をいれなければ、と思っているとリオ会長が続けて口を開いた。

 

「あの後、念のためにあなたの身体を検査したわ。脳波や血液も調べたけど、異常はなかった。ただ……」

 

リオ会長は続きを言おうとして、言い淀んだ。一瞬の沈黙の後、意を決したように口を開いた。

 

「……あなたの身体には"心臓が2つ"存在しているわ。ひとつは小さすぎて機能していないけれど」

 

その言葉を聞いて、かつての遠い記憶が甦った。胸の奥がざわめき、締め付けられるように疼いた。

 

「______それは、私の姉妹だったはずの子の名残です」

 

私の言葉にリオ会長は目を見開き、息を呑んだ。後ろで控えていたトキは、驚愕に顔を強張らせていた。

 

「……どういう、事?」

「これは、昔聞いた話ですが……私は元々、双子として生まれてくるはずでした。けれど、実際に生まれてきたのは私だけで……その心臓は、姉妹の名残だと聞いてます」

 

リオ会長は私の言葉を聞き、しばらく言葉を失ったようだった。彼女の瞳には、驚きと同時に何か複雑な感情が揺れていた。後ろで控えていたトキも、硬直したまま私を見つめ、口を開くのを躊躇っているようだった。

 

「…………ごめんなさい。辛い事を思い出させてしまって」

 

リオ会長がようやく口を開いたが、声は普段の彼女らしくない、かすかに震えるものだった。私は小さく首を振った。

 

「気にしないで下さい、リオ会長。私にとっても、遠い昔の話ですから」

 

本音を言えば、胸の奥のざわめきはまだ収まっていない。生まれる前に失われた命があったという事実は、時折こうして私の心を締め付ける。

でも、それをリオ会長のせいにする気にはなれなかった。彼女はただ、私の身体を心配して調べてくれただけなのだから。

 

「そう……」

 

リオ会長は少しだけ肩の力を抜いたが、彼女の視線はまだ私の顔をじっと見つめていた。まるで、私が本心を隠しているのではないかと探るように。

 

「ハモリ先輩、無理はなさらないで下さい」

 

トキがようやく口を開いた。その表情はあまり変わらないが、口調は優しく、私の身を案じているようだった。

 

「大丈夫。心配してくれてありがとう、トキ」

 

私の様子を見てリオ会長は深く息を吐き、落ち着きを取り戻そうとするように髪をかき上げた。

 

「それでも、今回の検査であなたの身体に異常がないと分かったのは良かったわ。気を失った原因については、ヒマリの話だと急激な力の消耗かもしれないとの事だけど、今まで気を失った事はあるのかしら?」

「いえ、今回がはじめてです。多分、いきなり力を出しすぎたせいだと思います」

 

現状、判断材料が少ないので断言は出来ないが、はじめて意識的に力を使って加減を間違えたのだろうと当たりをつける。

リオ会長は私の話を聞いて、何かを考えるように押し黙る。数秒の沈黙の後、私の目を見て口を開いた。

 

「あなたのその力……確か神秘、と言ったかしら。それは私達の中にも存在している、という認識で合ってる?」

「ええ、私達が銃弾を浴びても大した傷にならないのも、コユキやアスナ先輩のような異能の力もその神秘によるもの、と考えていただければ」

 

正直な所、前世でも詳しい解説がなかったのでハッキリとした事はわからないが恐らくはその認識で良いだろう。専門家(ゲマトリア)に聞けば一発なのだろうが、変な契約を交わされたり、実験材料にされたりするのは目に見えているので選択肢から外している。リオ会長にも相手が目的のためなら殺人も厭わない連中だという事はきちんと伝えてあるし、心配はないだろう。

リオ会長は私の言葉に頷く。

 

「いずれにしても、あなたのその力はまだ未知数な点が多いわ。今は様子見するしかないけど、今後、何かあればすぐに報告をするように」

 

「分かりました」

「それから、会議室で見たあの光景は……あなたが見た未来、という事で良いのかしら?」

 

私は小さく頷く。そして私は新たに身につけた能力について説明した。リオ会長は私の話を一通り聞いた後、確かめるように私に問いかけた。

 

「成る程、並行世界の観測による擬似的な未来視……あの世界では、名もなき神々の王女による危機も乗り越えられたのね?」

「はい、それは間違いないです」

「そう……文字通り、自分自身を客観視する事になるなんて思いもしなかったけど、確かに私があの私と同じ状況になったら、同じ判断をしていたでしょうね」

 

リオ会長は疲れたような表情を浮かべながら、続ける。

 

「キヴォトスの危機に備えて準備をしてきたけど、逆にそれがキヴォトスを危険に晒す結果となってしまった。あなたの言う通りだったわね……」

「…………」

「そして、たとえ合理的でなくても、純粋な感情の訴えは時として人を動かし、正しい結果に導く事も出来る。あの世界の名もなき神々の王女……アリスと、ゲーム開発部の子達に、そう教えられたわ」

 

リオ会長の瞳には、様々な感情が渦巻いているようだった。別の世界の事とはいえ、自分が彼女達にした事に対する自責の念と、世界が救われた事に対する安堵が入り交じった、複雑なものだった。

 

「あなたが何故私に未来の事を話してくれたのか、よく理解したわ。これはもう、私ひとりの手に負える話ではない。ヒマリが言っていたように、皆で協力して対処しなければならない事態だと言う事を」

『だから私が言った通りでしたでしょう。あなたは何時もひとりで抱えすぎなのですよ、リオ』

「ヒマリ先輩?」

 

ヒマリ先輩の声が聞こえてきたので、声がした方を振り向くと、いつの間にか一機のドローンが浮かんでおり、ヒマリ先輩のホログラムが現れた。

 

『おはようございます、ハモリ。具合の方はいかがですか?』

「はい、もう大丈夫です」

 

私の言葉にヒマリ先輩は納得したように頷き、リオ会長と向き合う。

 

『リオ、彼女にもきちんと話しましたか?勝手に話を進めてしまうのはあなたの悪い癖ですからね』

「ええ、勿論話すわ。彼女がシャーレの所属である以上、話しておくべきだもの」

 

一体何の話だろうと思っていると、リオ会長は私の目を見て口を開いた。

 

「結論から言うわ。今後ミレニアムはカイザーの計画を阻止し、アビドスの地に埋まっているウトナピシュティムの本船を確保するために、シャーレへの支援を行う事に決定したわ」

 

リオ会長の言葉に私は耳を疑った。それは、私が求めていた展開だったからだ。

 

「それは、本当ですか?」

「ええ。例の船の確保は虚妄のサンクトゥム攻略において必須であるし、カイザーの目的がキヴォトスの掌握であると判明した以上、今後アビドスを足掛かりにミレニアムや他の学園にも手を出す可能性があるわ」

『それを阻止するためにも、シャーレと協力してカイザーのアビドス自治区の乗っ取り計画を阻止する、というのが私とリオの出した結論です』

「他にも議論するべき事はあるけれど、現状最優先で対処するべき事はアビドスよ。そのためにも、シャーレの先生とは早めにコンタクトを取っておきたい。そこでハモリ、あなたにはシャーレとアビドスとの橋渡しをお願いしたいの。あなたは確か、アビドス廃校対策委員会の小鳥遊ホシノとも面識があるのよね?」

 

 

私はリオ会長の言葉に頷いた。ここでミレニアムの協力が得られるのは非常に大きい。うまく行けば、カイザーを無力化しアビドスの地を奪還する事も可能かもしれない。

 

「はい、ホシノさんと先生には私から話しておきます」

 

私の言葉にリオ会長は頷く。

 

「ひとまず、私からあなたに伝える事は以上よ。また何かあれば、連絡するわ」

『それから、ハモリ。今日はこの後の検査が終わったら身体を休めておくように。焦って無理をしても、ろくな事にはなりませんからね』

「分かりました。それと、私の話を聞いていただきありがとうございました」

 

リオ会長とヒマリ先輩に頭を下げる。結果的に2人を巻き込む形になってしまったのは事実であるし、私も自分の出来る事に全力を注ごうと心に誓った。

すると、リオ会長が何かを思い出したかのように私を見る。

 

「ハモリ。過去の歴史を視ると言っていたけれど、それはどの程度まで可能なのかしら?」

「少なくとも、特定の人物の過去の行動を全て視ることは可能です」

 

私は再び水晶玉を出現させると、ある光景が映し出される。

 

『理事よ、アビドスの件はどうなっている?』

『現在カイザーローンを使いアビドス校舎以外の全て土地を奪い、近隣住民もヘルメット団を使い追い出しています。対策委員会の連中は未だに抵抗しているようですが』

『ふむ、だがいずれ奴らは思い知ることとなるだろう。我々カイザーに楯突くとどうなるかを』

『仰る通りですプレジデント。所詮は物事の道理を理解出来ぬ愚かな子供。我らのような賢い大人の前では無力に等しい』

『ハハハ、後は最後の一押しといった所か。アビドスの地を我が社の物にし、新たな軍事学校を設立した暁には、君に全ての運営を一任しよう』

『ありがとうございます』

『このキヴォトスを我々が支配し、企業都市にするのもそう遠くはないだろう。そのためにも"例の船"をなんとしても見付けなければならん。君には期待しているぞ、理事』

『ハッ、必ずやご期待に応えてみせましょう!』

 

街の風景を一望出来るビルの一室で、黒いスーツを着た機械人と、同じ黒いスーツを着た大柄な体格の機械人が互いに笑いを噛み殺しながら会話をしていた。

やがて周りが光に包まれると、元の医務室に戻っていた。

 

「…………今のは、何?」

『カイザープレジデントと、カイザーPMC理事と見受けられましたが……』

「アビドスの乗っ取りも含めて色々企んでるので、その証拠の瞬間でもあれば良いかな、って思ったら出てきました。多分、裏でやってる不正取引の類いもやろうと思えば見せられると思います」

 

私がそう言うと、リオ会長とヒマリ先輩は深いため息をつき頭を抱えていた。すると、リオ会長はまっすぐに私の目を見て口を開いた。

 

「ハモリ。今使った能力だけど、私の許可なく使うこと、口外することを一切禁止するわ。もし破ったら、歯科学部の活動停止処分も含めた処罰が下ると思って。良いわね?それからトキ、ヒマリ、今見聞きしたことは決して外に漏らさないように」

「い、委細承知しました」

「イエスマム」

『まあ、当然ですね』

 

リオ会長の言葉に私はすぐ頷いた。その声は静かなものだったが、同時に一切の反論は許さないという気迫を感じさせた。私にとって歯科学部の活動停止処分は死と同義なので絶対に使わないと心に誓った。実際、やってることは明らかにプライバシーの侵害だし、仕方のないことだろう。

 

「それから、また新しい能力が発現した時にはすぐに報告するように。場合によっては検査も行うわ。さっきの能力も使い方次第では色々悪用出来るし、今後あなたの能力が危険な方向に行かないように備えておく必要があるわ」

『リオに賛同する訳ではありませんが、あなたのその能力は未知数な点が多いですからね。あなたの身を守るためにも、情報を集めておく必要があるという事は理解して下さい』

「分かりました。色々ご迷惑をかける事になるかもしれませんが、よろしくお願いします」

 

その後、歯科学部の皆には今日は休むと連絡を入れて、先生とホシノさんにはシャーレの支援の件について話した。2人は驚いていたが、ミレニアムが支援してくれると聞いて喜んでいた。カイザーという共通の敵がいる事もあり話はスムーズに進み、詳しい話はまた後程、という事になった。

それから私は検査を受けて何処にも異常はないと診断されたので自宅へ帰る事となり、アヤメさんに連絡を入れ、ワープでそのまま自宅へ直行した。

「何だか長い旅に出てた気分だ」

 

場所は自宅の玄関前。私はアヤメさんの様子が気になりすぐに自宅へワープした。私は玄関の鍵を開けてドアノブを捻る。

 

「アヤメさーん、只今戻りま」

「ハモリッ!!!」

 

部屋の奥からアヤメさんが走って来て私に抱き付いた。両手は私の身体をガッチリと掴んでいて身動きが取れなかったが、その肩が小さく震えている事に気付いた私は、そのままアヤメさんの抱擁を受け入れた。

 

「すみません、心配をかけてしまいました」

「……私、ハモリが何かあったんじゃないかって心配で、心配で……」

 

私の胸に顔を埋めていたアヤメさんが頭を上げ、私の目をみつめる。

 

「ねえ、教えて。あんたに何があったの?何時も健康に気を遣ってるあんたが気を失うなんて、何かあったとしか思えない」

「それは……」

「それとも……あんたが何か悩んでいる事と関係があるの?」

 

アヤメさんの言葉に私は思わず目を見開く。それに気付いたアヤメさんは目を細める。

 

「やっぱりそうなのね……ここ最近のあんたは、ずっと何か悩んでいるようだった。あんたは何でもないって誤魔化していたけれど、私に何か隠していた。ねえ、教えてよハモリ。何があんたを苦しめているの?何があんたを追い詰めているの?もし誰かがあんたを傷付けようとしているなら、私はそいつを絶対に許さない。だから、教えて?私がそいつを始末するから、ね」

 

そう語るアヤメさんの顔は、一見すると可愛らしく微笑んでいたが……何時もの日だまりのような暖かさとは正反対の、冷たい仮面のような笑みを浮かべ……その目は吸い込まれるような闇を孕んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いい加減、鬱陶しいなあ……あまりしつこいようなら………………消そっか』




ハモリ「(アヤメさんの顔……綺麗だな)」
アヤメ「(ハモリハモリハモリハモリハモリハモリハモリハモリハモリハモリハモリハモリハモリハモリハモリハモリハモリハモリハモリハモリハモリ)」

ヒロインは複数人いてもOKか?

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