という訳で、第24話です。
「うぅ……」
緊張した面持ちで治療用チェアに座るユメさん。その顔には不安と恐怖の感情がありありと浮かび、特徴的なアホ毛は彼女の心情を表してるかのように力なく垂れている。
「(ふふっ、カイザーのような歯無しの鉄屑共のせいで悲しみ恐怖する女性の顔は大嫌いだが、歯科治療を前にして恐怖する女性の顔は何時見ても最高だ)」
ホシノさんには申し訳ないが、ユメさんの「ひぃん」という泣き顔は非常にそそられるものだと思う。
この幼さと大人の色気が合わさった綺麗で可愛らしい顔が恐怖と羞恥心に歪み、その美しい口腔を冷たい金属の器具で弄くり回すという倒錯的かつ犯罪的なシチュエーションを合法的に行う事の出来る私はまさにキヴォトスで1番の幸せ者であると言えよう。
「(あの鉄屑共がキヴォトスからいなくなり、アビドスの借金と土地の問題も全て解決したお陰でユメさんやホシノさんも心の底から笑えるようになった。そんな彼女達の笑顔を恐怖と痛みで歪ませる事に罪悪感がないと言えば嘘になるが……それでも私は歯科治療で見せる彼女達の身悶えする顔が堪らなく見たい!)」
その為に不安要素であるカイザーをキヴォトスからパージ出来たのはとても良い結果であると言えるだろう。腐っても大企業であるカイザーがいなくなった事でキヴォトスの経済が荒れたりもしたが、現在は何やかんやで少しずつ持ち直しており、じきに安定していくだろう。
「(そもそも、カイザーのような金の為に子供達を食い物にする連中は言わば歯にくっついた歯垢のような物だ。放って置けば歯を腐らせ、歯が抜け落ちてしまう……ならば、1つ残らず除去するしかない)」
子供達が涙を流すのは青春の物語と歯科治療だけで充分なのだ。何れ戦う事になるベアトリーチェだけでない、子供達を苦しめる悪意は全て除去する。それが、元先生であり歯科医である私のやるべき仕事だ。
『お姉ちゃん、それは歯医者さんの仕事じゃなくない?』
「(キヴォトスという
『そういうものかなぁ……』
まあ、あれこれ語ったが要するにアヤメさんのように助けを求める声に応えたいのが私の本心だ。
彼女達が友人と遊び語り合い、それぞれの夢の為に一生懸命勉強をして、色んな事を経験を積んで大人になっていく……彼女達がそんな当たり前の幸せを享受出来るのなら、私はそれで満足だ。
勿論、アヤメさんの幸せは私の幸せでもあるし、何があっても彼女の味方で在り続ける所存だ。
本人は私に気を遣っているのか話題になるのを避けていて、私も余計な口出しをする気はないが、百花繚乱の件でアヤメさんがどんな選択をしても、私は彼女の選択を尊重すると決めている。
例え、今までのように毎日会えなくなるとしても……アヤメさんのしたい事を応援する事が、彼女の恋人である私のするべき事なのだから。
「(まあ、いざとなればワープですぐに会えるし、例え使えなくても自分の足で会いに行くからその点はあまり問題ではないか)」
百花繚乱の件で気にする事と言えば、アヤメさんを匿った事と、彼女と肉体関係を結んだ事だろう。
キキョウさんは既に知っているから良いとして、他の人達がどう反応するか……何れにしても、私もアヤメさんと同様にちゃんと向き合わなければならないのは確かだ。
「(他にも未だに廃墟で眠ってるアリスの対処もしなければならないし、エデン条約編に最終編の事も考えなければならないが……一先ず一旦忘れよう。今は歯科医として、ユメさんの歯の検診に集中しなくては)」
とは言ったものの、そのユメさんの怯えた表情を見てから私の心臓の鼓動は先程のシロコの歯を見た時よりも激しく高ぶり、血液が流れ体温も徐々に上がって来ている。
今まさに噴火寸前の火山のように爆発しそうだが、それで歯科医としての仕事を疎かにしてはならないので、私は荒ぶる邪な感情を沈めつつ、改めて不安げな表情を浮かべるユメさんに向き直る。
「……緊張してますか?」
「あ、うん……ごめんね。やっぱり、歯医者さんは怖くて……」
「今日は検診がメインなので、そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。勿論、必要があれば治療も行いますが、特に痛い所や気になる所はありますか?」
「うん、ないよ。虫歯になるのも嫌だし、ハモリちゃんに教えて貰った通りに毎日歯磨きもフロスもしてるから……」
ユメさんは私が教えた通りにきちんとデンタルケアをしてるようだ。となれば、後は磨き残しと虫歯と歯周病のチェックをするのみ。そう考えると更に心臓の鼓動が激しくなってくる。
「(この熱く激しい胸の高鳴り、ユメさんの歯というアビドスの奇跡の象徴を隅々まで堪能し、完璧に仕上げられるという喜び……ああ、感動のあまり涙が出そうだ。梔子ユメさん……今こそ私は貴方の神秘の全てを暴き!網羅し!貴方の世界の神となり!貴方の奇跡の象徴たるその白き光を更なる高みへと昇華させましょう!)」
私は今、嘗てない使命感に燃えていた。
ユメさんのあの美しい32本の歯を……アビドスの奇跡の結晶を、私がこれまで培って来た全ての技術で以て磨き上げ、キヴォトスの至宝としてその輝きをこの世界に刻む事こそ、歯科医としての私の使命なのだと。
「それでは、椅子を倒しますよ」
「う、うん……」
私はユメさんの座る治療用チェアをゆっくりと倒してライトの電源を入れる。ライトの光がユメさんの顔を照らし、ユメさんは眩しさに目を細める。
「では、ユメさん。口を大きく開けて下さい」
私の声にユメさんはビクッと震え、瞳を少し潤ませて私を見上げるが、やがて観念したように目を閉じてゆっくりと口を開ける。
「あ、あーん……」
ユメさんのハリのある柔らかなピンクの唇が僅かに震え、温かく湿った息が漏れる。私は大きく開かれたユメさんの口の中を覗き込む。
「(おお、これは……!)」
私の目に映る、大理石の白壁の如き存在感を放つ32本の歯。嘗てシャーレで見たあの奇跡の歯並びが、目の前にあった。
「(素晴らしい!虫歯菌に侵される事を知らないこの輝きこそまさにアビドスの奇跡!見えますかホシノさん!ユメさんの美しい歯を!砂漠に埋もれたアビドスの栄光!人類の夢は!今もなお天上を照らす星の如く健在だったんです!)」
私はユメさんの歯が虫歯になる事なく存在している事に安堵すると共に感動していた。
ここへ来る前に歯を磨いたのか、僅かにミントの香りがする口腔内は湿った粘膜が脈打つように動き、唾液が滴り落ちる様子は生命の息吹を感じさせる。
その生きた洞窟の中で確かな存在感を示す32本の歯は洗練された工芸品のような美しいアーチを描きながら収められ、白く滑らかなエナメル質は唾液に濡れて真珠のように輝いている。土台となる歯茎は炎症の兆しも見当たらず、血液が循環し健康的なピンク色でピシッと力強く引き締まっていた。
下顎に収められた舌は別の生き物のように蠢き、上顎から伸びた透明な糸が絡み付いている。その下にある唾液腺から溢れる透明な液体がゆっくりと滴り、口腔内全体を濡らしていた。
そして、舌の根元の先にある喉の入り口では湿った粘膜が絶えず蠢き、その上から果実のように垂れ下がる赤い口蓋垂はユメさんの甘い吐息と共に小さく揺れていて実に官能的だ。
「まずは、虫歯がないか見ていきますね」
「あ、ぅ……」
私はデンタルミラーをゆっくりとユメさんの口腔内へ挿入していく。唇を通過し、前歯を通過し、右下の親知らずに近付ける。
「(ほうほう、ちゃんと磨けているな。ここはどうしても磨きにくいし虫歯になりやすい箇所だから心配だったが、ユメさんはきちんと綺麗にしているようだ)」
「(うぅ……やっぱり怖いよぉ)」
ユメさんの奇跡の象徴でもある親知らずは以前見た時と同じように完璧な状態で生えており、小窩裂溝……表面の細かい溝や窪みは虫歯菌に侵される事なくその自然美を保っており、ミラーの向きを変えて頬側や舌側も確認するが、虫歯は愚か歯石や歯垢も見当たらない。
「(うーん流石ユメさんの親知らず……美しい。さて、このまま永遠に眺めていきたい所だが、続けて隣の第二大臼歯だ)」
親知らずの後は隣の奥歯……大臼歯、小臼歯、犬歯、前歯と続けて確認していく。右下が終われば反対側の左下だ。
「(ひぃん……虫歯がありませんように虫歯がありませんように虫歯がありませんように……!)」
「(ふふっ、私には分かりますよユメさん。口の中……即ち身体の内側を覗かれているという羞恥心と、歯科治療に対する貴方の恐怖の感情が……もっと、もっと私にその美しい顔を見せて下さい)」
私は目をぎゅっと閉じているユメさんの顔と美しい歯並びを堪能しながら、流れるような手捌きで診察を続けた。
「………………」
「ホシノさーん、今から歯周病のチェックをしていきますよー」
「あ、ごめんねーコズエちゃん。じゃあ、よろしくお願いね」
隣のホシノさんの診察も滞りなく進んでいるようで何よりだ。
あれからホシノさんはちゃんと睡眠を取って歯磨きをしているかどうか気になる所だが、それは今ホシノさんを担当しているコズエの仕事なので、私は私の仕事を続ける。
「はぁ……んっ……あぅ……」
下顎の歯が終わり、次は右上の親知らずにミラーを移動させる。上顎の柔らかな肉がミラーに触れる度にユメさんの喉から甘い吐息が溢れる。頬は紅葉し、目を閉じて喘ぐ様は扇情的で私の情欲を掻き立てる。
上顎の歯の診察が終われば、次は歯周病のチェックだ。
「次は歯周病のチェックをしていきますよ」
プローブを手に取ると、ユメさんはビクッと身体を震わせる。
「ハ、ハモリちゃん……それで、何をするの……?」
「これはプローブと言って、こうやって歯と歯茎の隙間の深さを確かめるのに使うんですよ」
歯の模型を使い実演すると、ユメさんは息を呑み、潤んだ目でこちらを見上げて来る。
「ひぃん……い、痛くしないで……」
「大丈夫ですよ。軽い力でそっと差し込むだけですし、健康な歯茎なら痛みはありませんからね」
私はユメさんを安心させるようにゆっくりと説明していく。
「もし歯石が溜まって歯茎が炎症を起こしていると痛みを感じたり出血もしますが、これは歯茎が炎症しているというサインで、歯茎の状態を知る大事な情報になるんです。だがら決して、悪い事ではないんです」
「で、でもやっぱり痛いんでしょ……?」
「確かに歯茎が炎症していれば痛みますが、どうしても我慢出来なければその都度麻酔を行いますし、検査自体は数分で終わりますから一緒に頑張りましょう。さあ、口を大きく開けて下さい」
「う、うん……あーん」
ユメさんは小さく頷き、再び口を大きく開ける。私はプローブをユメさんの口の中に挿入し、その先端を右下の親知らずの根元に差し込み、検査を始める。
「んっ……あっ……あっ」
歯茎に伝わる感触にユメさんは小さく喘ぎ、手足をもぞもぞと動かす。プローブを持つ手にユメさんの温かい吐息が触れる度にゾクゾクとした感覚が私を襲うが、私は構わず検査を続ける。
「はぁっ……あっ……」
歯茎に出血こそないが、ユメさんは口の中に異物が侵入する感覚に息を荒げ、喉の奥から艶のある声を溢していた。
ものの数分で32本全ての歯の検査が完了し、プローブを口内から抜き出す。歯茎は炎症も出血もなく、極めて健康的だった。
「歯周病のチェックはこれで終わりました」
「う、うん……」
「では、最後にこれを使って細かい部分をチェックしていきますね」
取り出したのは、先端に小型カメラが取り付けられた機械……口腔内スキャナーだ。
ミクロン単位の精度で口腔内をスキャンする事で、直接口内を見るだけでは見付けにくい虫歯や歯石、歯並びに歯茎の状態を正確に把握し、高精度なデジタルデータとして保存出来る優れものだ。
これにより、虫歯の早期発見や歯周病の進行状態を正確に把握するだけでなく、治療後の経過観察にも役立ち、定期的にスキャンする事で口腔内の変化を追跡する事が出来るミレニアムならではの最新ツールなのだ。
「スキャンが完了するまで数分かかりますので、その間は口を開けてじっとして下さいね」
「あ、あー……」
ユメさんの大きく開かれた口の中にカメラを挿入する。様々な角度からユメさんの口内をスキャンしていき、液晶モニターにユメさんの歯の3D画像が生成される。
1本1本の歯の形状から歯並び、色、歯茎の状態まで本物と寸分違わぬユメさんの奇跡の歯並びがそこにあった。
「(おお、ついにユメさんの32本の歯の全てのデータが私の元へ……!万が一の為に後でコピー取っておかねば)」
ミレニアムの技術とユメさんの歯の美しさに感動しながらも、私は画像を見て診断を進める。結果は言うまでもなく、虫歯も歯周病もない、歯並びも完璧な美しい歯だった。
私は一通りの検査が終わり一息つくユメさんに声をかける。
「診断結果についてですが、虫歯も歯周病もありませんでした。磨き残しも殆どありませんし、ミレニアムの生徒達に綺麗な歯の手本として見せたいくらいです」
「そ、それはちょっと恥ずかしいかな……」
ユメさんは頬を赤く染めて、恥ずかしそうにしていた。
「後は歯を綺麗にして、今日の検診は終わりです。後少しなので、頑張りましょう」
「うん……お願いね、ハモリちゃん」
私は歯のクリーニングの準備をする。これが言わば私が待ちに待ったイベントとも言えるので俄然やる気が出てくるものだ。
「まずはこの染色液を歯に塗って、汚れの染め出しを行いますので口を大きく開けて下さい」
「うん……あーん」
ユメさんが口を開けたのを確認すると、染色液を歯に塗布していく。ユメさんのケアがきちんとしていたお陰で汚れは歯の表面や隙間、根元に少し溜まっている程度だった。
そこで、今回は歯や歯茎に負担をかけずに効率的に汚れを落とすエアフローを使う。
「では、汚れを落としていきますよ」
ユメさんの口の中にエアフローを挿入する。
ペンのような細い先端が右下の親知らずに近付き、微細なパウダーと水が高圧で噴射される。
「……っあ!」
勢いよく噴射された水流が親知らずに直撃し、歯に伝わる振動にユメさんがビクッと反応する。それと何処からかガタッと何かがぶつかるような音が聞こえてくる。
「ど、どうしましたホシノさん?」
「あ、ごめん何でもないよー」
ホシノさんの所で何かあったみたいだが、問題ないと判断して私はクリーニングを進める。瞬く間に親知らずに付着した汚れは落とされ、純白の輝きが目に入った。
「(おお……!これだ、この輝きだ!アビドスの奇跡の結晶は、私の手によってキヴォトスの至宝となるのだ!)」
この美しい歯をより洗練された芸術に仕上げる事こそ、全ての歯科医にとって至上の喜びにして最大の名誉である。
私は身体から溢れ出る高揚感に身を任せながらも、歯科医としての仕事を全うするべく残りの歯のクリーニングを続けた。
「んぁっ……あっ……あぁ……!」
「(イイ声だ。ユメさん、貴方のこの真っ白な32本の美しい歯は今!ピアノの鍵盤となって素晴らしい音色を奏でているんです!さあ、ユメさん!私と一緒にこのキヴォトスに最高の音楽を奏でましょう!)」
歯と歯茎に絶えず伝わる振動に、ユメさんの喉の奥からは熱く甘い吐息と、艶のある声が溢れていた。頬は赤く染まり、水流が歯と歯茎を刺激する度にユメさんは身悶えするように身体をくねらせ、アヤメさんよりも豊満な2つの果実が揺れていた。
「ふぁっ……あんっ……あぁっ……!」
「(ふふ、ははははは!美しい!やはり私の目に狂いはなかった!ユメさんの喉から溢れる熱く甘い吐息に震える口蓋垂!柔らかな舌と脈打つ粘膜!そしてこの白亜の城の如き存在感を示す32本の歯!それら全てが絡み合った口腔内はまさに自然が生み出した芸術にして生命の神秘に溢れる楽園そのもの!そしてその楽園を独占しキヴォトスの至宝として昇華する私こそが……神だ!)」
『うわぁ……お姉ちゃんが嘗てない程に壊れてる』
ユメさんの美しい口から溢れる艶やかな音色と、ユメさんのピアノの鍵盤の如き白い歯が私の五感を快楽の渦へと落としていた。
このまま地の底まで堕ちて行きたい誘惑に駆られるが、思考とは裏腹に私の手は一切の無駄なく正確にユメさんの歯の汚れを落としていった。
「(ハモリちゃ~ん?ユメ先輩にナニしてるのかなぁ~?)」
「あ、ホシノさん動いたら……」
「んぇ?_____あぐっ!?」
「すみません!大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫だよー。よそ見してたおじさんが悪いから……」
何か隣が騒がしいが、一先ず私が出る必要はなさそうなので私は自分の仕事を続けた。
やがて全ての歯のクリーニングを終えると、仕上げにフッ素を塗布していく。
「ユメさん、終わりましたよ」
「ふぇ……終わったの?」
「ええ、汚れは全て綺麗に落ちましたよ」
ユメさんは手鏡に映る自分の歯をまじまじと見ていた。
「わぁ……真っ白。それに何だが口の中がスッキリしてる。ありがとね、ハモリちゃん!」
ユメさんが白い歯を見せながら笑った。やはり美人さんには白い歯が良く似合う。
「どういたしまして。仕上げにフッ素を塗っておいたので、飲食は今から30分間は控えて下さいね」
「うん、分かったよ」
その後、私は毎日のケアのやり方や食生活等のカウンセリングを行った。
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「それでは、引き続き歯磨きやフロスを続けて下さいね。検診やクリーニングも3ヶ月に一度くらいの頻度で受ける事をオススメしますよ」
「うん、その時はよろしくね」
緊張の糸が解れたユメさんは穏やかな笑みを浮かべていた。
そこで私は、前から考えていた計画を実行に移す。
「それで、ここからは個人的な話になるのですが……ユメさんに1つ、お願いしても良いですか?」
「お願い?いいよー。私で良ければ何でも聞いて」
「ありがとうございます。実は……」
続けて内容を伝えようとした矢先、後ろから伸びた手が私の肩に置かれる。
「うへ~、ハモリちゃん。その話、私にも詳しく聞かせて貰っても良いかなぁ~?」
いつの間にか、ホシノさんが背後に立っていた。気のせいか目が暁のホルスモードになっていて、その細い腕の何処にそんな力があるのか私の肩をガッチリと掴んでいた。
「あ、ホシノちゃんも終わったんだ。虫歯はなかった?」
「大丈夫ですよ~。コズエちゃんにバッチリ綺麗にして貰ったので」
朗らかに笑うホシノさんだったが、その目だけは笑っていなかった。
「(……ホシノさん、何か目がガチになってるけど、どうしたんだろうか?)」
『……自分の言動を振り返ってみてよ、お姉ちゃん』
脳内にイザナの呆れたような声が聞こえてくるが、一先ず黙っていても逃がしてはくれなさそうなので、私はホシノさんに向き直る。
「取り敢えず、立ち話もあれですしホシノさんもこちらにおかけ下さい」
「……うん」
ホシノさんが着席したのを確認し、改めて口を開く。
「では改めて、ユメさんにお願いしたい事なのですが……」
「うんうん、何?」
「…………」
私は覚悟を決めて、その言葉を口にする。
「______ユメさんに、モデルになって欲しいんです」
「……え?」
「うへ?」
ユメさんとホシノさんは私の言葉に目を丸くした。
「えっと……ハモリちゃん。今、なんて……?」
「はい。ユメさんに、モデルになって欲しいんです。正確には……歯のモデルなのですが」
「うへ……ハモリちゃん、どゆこと?」
困惑する2人に、私はゆっくりと説明をする。
「歯科学部で使う広告と教材で、綺麗な歯のモデルを探しているんですけど……その役目を是非ともユメさんにやっていただきたいんです。どうか、お願い出来ませんか?」
私はユメさんに頭を下げる。
「そ、そんな急に言われても……その、他の人じゃあダメなの?」
「ダメです」
「ふぇっ!?」
私は反射的にズイッと顔をユメさんに近付ける。ユメさんはたじろぎ、ホシノさんは顔をひきつらせていたが、私は構わず続ける。
「この仕事は、ユメさんでなければ成し遂げられないんです。このキヴォトスに住まう全ての人々の口の健康を守る為に、誰もが羨むような白くて綺麗な歯を持った人がどうしても必要なんです。私はこれまで、数々の患者の歯を診察して来ましたが、私の求める歯の持ち主は現れませんでした。最悪、私自らモデルになる事も考えました。ですが、非常に悔しいのですが私の歯は私の求める理想には届きませんでした。だからといって、妥協するのは私の歯科医としてのプライドが許せませんでした。そんな中、ようやく見付けたのがユメさんの歯なんです。ユメさんの歯は、色も形も歯並びもこれまでに見た事のないそれはそれは素晴らしい歯です。そして何よりも、親知らずが全て完璧な状態で尚且つ綺麗に生え揃った、まさに奇跡とも言える理想的な歯なんです。そしてユメさんの歯の素晴らしさを世に伝える事が、キヴォトスに住まう全ての人々の口の健康を守る事に繋がるんです。勿論、歯科学部からの正式な依頼ですので報酬はきちんとお支払します。条件があれば全て呑みます。だからどうか、歯のモデルをやっていただけないでしょうか…………!!!」
「ホ、ホシノちゃ~ん……」
「………………ユメ先輩。引き受けてあげても良いんじゃないですか?」
「ホシノちゃん!?」
「一応確認だけど、やる事は写真や動画を撮るって事で良いんだよね?」
「はい、勿論です」
私がそう言うと、ホシノさんは深いため息をつきながらゆっくりと口を開いた。
「ユメ先輩。滅多にないハモリちゃんからのお願いですし、私からもお願いします。それに……ハモリちゃんには、昔から色々助けて貰ってますし、頼み事の1つくらい聞いてあげるのも筋ではありませんか?」
ホシノさんがそう言うと、ユメさんは何かを考えるように目を閉じる。
やがて目を開けると、私に微笑みながら口を開いた。
「そうだよね……思えばハモリちゃんは砂漠で遭難していた私を助けてくれたし、アビドスの為に色々手伝ってくれたよね……分かったよ、ハモリちゃん。モデルの仕事、私やるよ」
ユメさんの言葉に、私は深く頭を下げた。
「ありがとう、ございます……!」
「わわっ!?な、泣いちゃった!?」
「うへっ!?何もそんなに泣かなくても!?」
私は感激のあまり、涙が止まらなかった。長年の夢が叶った喜びに打ち震えていた。
その後、2人に宥めて貰い落ち着きを取り戻した所で、私は撮影の日程について後日連絡をすると伝え、その日は解散となった。
対策委員会とユメさんの診察が終わりその後も私は診察を続けていた。仕事は大変だったが、私の心はとても満たされていた。
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そして歯科学部の仕事を終えて、私はアヤメさんの待つ自宅へと足を運んだ。
「おかえり、ハモリ♪」
「ただいま、アヤメさん」
玄関にはアヤメさんが笑顔で出迎えてくれて、私も思わず笑みを溢した。
少し前までユメさんの歯の事で頭が一杯だったが、愛する人の笑顔がやはり一番だった。
「夕食出来てるから、一緒に食べよう♪」
「はい、すぐに行きます」
私は荷物を部屋に置くと食卓へ足を運び、アヤメさんと一緒に夕食を堪能した。
因みに献立はキムチ鍋だった。辛さは控え目だったが、食材の旨味が出ていて身体が程よく暖まった。
ある程度胃が落ち着いた所で、私は風呂に入った。
「うーん、気持ちいいねぇハモリ♪」
「……そうですね」
浴槽には、私とアヤメさんが入っていた。アヤメさんは私の前に座り込んでいて、アヤメさんの髪の匂いが鼻腔をくすぐった。
思えば何だが、アヤメさんはずっとニコニコと笑っていた。それ自体は可笑しな事ではないのだが、何だが嫌な予感がしていた。
もしかして、昨日ヤリまくった事に怒っているのではないのだろうか。私も流石にやり過ぎたと思ったので、恐る恐るアヤメさんに声をかける。
「あの、アヤメさん……昨日は________きゃぅっ!?」
突如伝わって来た刺激に身体が反応した。気が付けば、アヤメさんが振り返り私の胸を揉んでいた。
「へぇ~?中々可愛い声を出すじゃない、あんた」
アヤメさんの顔は、先程までの笑顔とは違うもっと攻撃的な……獲物を前にした肉食獣のような獰猛な笑みを浮かべていた。
「ア、アヤメさん何を……ひゃぅっ!?」
するとアヤメさんは両手で、私の胸を揉んでいた。グニグニと形を変形させて、指先で先端を弄り回していた。
「何って?決まってるじゃない……昨日、散々私の身体を玩具にしてくれたんだから、今度は私があんたを可愛がってあげる番よ?」
アヤメさんは赤い舌で舌舐りし、大きく口を開けると私の首筋に噛み付いた。
「………っあ……んっ……!」
「ふふふ、何あんた。もしかして感じてるの?噛まれて感じるなんて……本当に、筋金入りの変態ね」
アヤメさんは何度も首筋に歯を立てると、歯形がついた箇所を舌で舐め回す。
「ねぇ、ハモリ。あんた、さっきまで他の女の事を考えていたでしょ?」
「あ、それは……」
「分かってるわよ。大方、また何時もの趣味でしょ?あんたは女たらしの変態だけど、絶対に相手を悲しませるような事はしないって、分かってるわよ」
「……すみません」
「全く……あんた、何事もほどほどにしないと何時か刺されるわよ?」
アヤメさんは一転して、呆れたような表情を浮かべていた。
「まあ、それはそれとして……あんたが私以外の女の事を考えていると、ムカムカするのよ。だからちょっとくらい、仕返ししても良いと思わない?」
そう言うとアヤメさんは、再び獰猛な笑みを浮かべて身体を密着させて来た。
「アヤメさんっ……私……んっ……ひゃぅっ!」
「ほらほら、まだ始まったばかりよ?私が満足するまで絶対に逃がさないから、覚悟しなさい?」
それから私は、肉食獣となったアヤメさんに全身を余す事なく食い尽くされた。
アヤメさんに食われていく中で、昨日は自分がする側だったが、される側になるのも良いと思った。
何よりも……私の身体で幸せになるアヤメさんの顔が、とても美しかった。
『…………お姉ちゃんもアヤメ先輩も、本当にスゴいなぁ』
意識が沈む寸前に、イザナの呆れたような声が聞こえた気がした。
アヤメ「んーっ、良い天気ねー」
ハモリ「はは、そうですね……」
イザナ『…………体力はあっても、精神的な部分はまだまだみたいだねぇ』
ヒロインは複数人いてもOKか?
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YES
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NO