キヴォトスの歯医者さん   作:ニシキ

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アオバ「えへへ……ハモリさんの作ってくれた料理、また食べたいなぁ……お願いしたら、作ってくれるかな……?」

という訳で、第27話です。


白山ハモリの責任

 

 

 

「なるほどね……つまり、その先輩はあんたの夢を支えてくれた恩人で、今日遅くなったのは患者の子を家まで送ったから、と……」

 

帰宅した私は、リビングに移動しアヤメさんにネネコ先輩とアオバの事を全て話した。話を聞き終えたアヤメさんは神妙な表情でしばらく押し黙ると、やがて深いため息をついた。

 

「……色々言いたい事はあるけど、1つ言って良い?」

「はい」

 

アヤメさんは私の顔をじっと見つめ、ゆっくりと口を開いた。

 

「あんた……本当に筋金入りのド変態だったのね」

「………………」

 

いやそのアヤメさん。決して間違ってはいないが、今このタイミングで言う台詞ですか?

 

「いや、居眠りしていた女の子の口の中を覗き込んで興奮してたって、何処からどう見ても危ない人にしか見えないし……普通に通報されても可笑しくないよ?」

「…………返す言葉もありません」

『ぐうの音も出ない正論だねー』

 

自覚はあるが、いざ面と向かって言われると堪えるものがある。後、姉に対するフォローはないのか妹よ。

 

『お姉ちゃんが変態さんなのは事実でしょ?まあ、理由はともかく独力で歯医者さんになったその熱意は尊敬してるけど』

 

全く以て仰る通りなので私は何も言えなかった。

しかし、改めて考えると元先生かつただの一般人に過ぎなかった私が今ではミレニアムで歯科医となり、アヤメさんという素敵な女性と恋人になったのだから人生は分からないものである。

 

「尤も、そんなあんたと付き合ってる私も人の事は言えないけどね。それはそれとして、さぁ……」

 

すると、アヤメさんは私の両肩を両手で掴み……ニッコリと微笑んだ。

 

「(あ、まずい。絶対に怒ってる)」

 

その笑みは思わず見惚れてしまう程に美しかった────額にくっきり浮かべた青筋と、ハイライトの消えた両の瞳に目を瞑れば、の話だが。

 

「その先輩に、あんたは何て言ったのか……もう一度、一言一句ハッキリと教えてくれる?」

「…………『これからもずっと、私の大好きな先輩でいてくれますか?』……と、言いました」

 

すると、アヤメさんはゆっくりと目を閉じて息を深く吸い込み……カッと目を見開くと、怒髪天を衝く勢いで怒鳴り散らした。

 

「それ何処からどうみても告白してんでしょうがぁぁぁっ!!?何あんた何時もそうやって私以外の女を口説きまくってんの!!?」

「……やっぱり、そう取れますよね?」

「やっぱり!?今やっぱりって言った!?あんたまさかわざとやってんじゃないでしょうねぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!?」

 

アヤメさんは絶対に逃がさないと言わんばかりに私の両肩に指を深く食い込ませて、その顔は赤く染まり歯を剥き出しにして怒り狂っていた。

怒鳴り声を上げる度に見える、アヤメさんの喉の奥に揺れる口蓋垂にちょっと見惚れつつ、私は返答しようとすると突然意識が引っ張られる感覚に襲われる。

 

「あー、アヤメ先輩。ヒートアップしてるところ悪いけど、ちょっと落ち着こうかー」

 

怒り狂うアヤメさんを宥めるように、ゆったりとした口調でイザナが声をかける。

 

「その口調……あんた、イザナ?」

「そだよー。んで、話の続きだけど……お姉ちゃんは今までお世話になった先輩への感謝の意味で言っただけで、コクろうとかは微塵も考えてなかったよ」

「……本当に?」

 

ジト目で睨むアヤメさんを前にしながらも、イザナは特に気にした様子もなく話を続ける。

 

「本当だよ。尤も、後から『これ、告白じゃないか?』って気付いた時にはガチの告白と受け取って感激した先輩に対して今更否定も出来なくてハグされたり揉まれたり舐められたりしたけどね……というか、アヤメ先輩ならお姉ちゃんの女好きと人たらしな性格はよく知ってるでしょ?」

「……うん、言われてみれば確かにそうね。人が暑い砂漠の中で仕事していた時も、自分は手作りのお菓子まで用意して他の女達と一緒にお茶会なんてしてたくらいだし……」

 

一先ず怒りを収めてくれたアヤメさんだが、未だにジト目でこちらを見ている。

ところで、近頃私に対して遠慮がないというか言葉の刃が鋭くなってるのは気のせいでしょうかイザナさん?

 

「(あははー。まあ、そこは可愛い妹の愛情表現だと思って大目に見てよお姉ちゃん。取り敢えずアヤメ先輩も落ち着いたんだし)」

 

一応、イザナの言う通りに冷静さを取り戻したアヤメさんだが、その顔は未だに納得しかねている様子だった。

 

「………ねえ、ハモリ」

「はい」

 

アヤメさんが目を細め、私を見つめる。

 

「あんたは……その先輩の事をどう思っているの?先輩とか恩人とかの話は一旦抜きにしてさ……1人の女として、どう思っているの?」

 

その言葉に、私はネネコ先輩と初めて出会ったあの日の事を思い返した。

最初はただ『綺麗な人だなぁ』と思い、気持ち良さそうに昼寝をしていた先輩の歯が目に入った瞬間に性癖が覚醒し、こっそりと口の中を覗いていたのが全てのはじまりだった。

本当に今更だが……やってた事は完全な変質者だったし、アヤメさんの言う通りヴァルキューレに捕まっても可笑しくなかった。

だが、ネネコ先輩は私がしていた事に気付いていたにもかかわらず特に咎めもせず、気の合う友人のように接してくれた。そればかりか、当時図書館に通い詰めて歯科医になる為に我武者羅に勉強をしていた私に必要な教材や資料を揃えてくれたり、知り合いの歯科医院を紹介してそこで研修も受けさせてくれたり、歯科医院を経営する為に必要な知識や心構えを教えてくれた。

私がミレニアムに入学して歯科学部を立ち上げようとした時も、ネネコ先輩は設立の為に部員集めに協力して、他にも色々根回しをしてくれたお陰で部の設立はスムーズに進み、最新の設備を揃える事が出来た。

そして、歯科学部設立後は部長の座を私に譲り、部の財政管理や事務処理等の仕事を進んでやってくれていて、今でも私のサポートをしてくれている。

 

「(……思い返してみれば、私は今までずっとネネコ先輩に助けて貰ってばかりだったな)」

 

あの人はただ、私の夢を応援したいのだと、その一心で私をずっと支えてきてくれた。見返りを求める訳でもなく、私の為だと言って自分の時間を割いてくれた。そんなネネコ先輩に、私は今まで何か返せたのだろうか。

ネネコ先輩の好意に甘えて、知らず知らずの内にそれが当たり前の事だと思って、その結果あの人を悲しませてしまったのではないか、私はそう思わずにはいられなかった。

 

「(そうか……だから私は、あの時……)」

 

私は今一度、自分の気持ちと向き合った。どうして今まで気付けなかったのだと、自己嫌悪に陥りそうだった。

だからこそ、自分の心に従おうと決意した。

 

「……私は、ネネコ先輩が好きです。ずっと私を応援してくれた、優しいあの人の事を……1人の女性として愛しています」

「……それは、私よりも?」

 

アヤメさんが、じっと私の目を見つめながら問いかける。その瞳からは怒り、悲しみ、不安、恐怖、様々な感情が渦巻いていたが、私は決して目をそらさずにハッキリと応えた。

 

「比べる事なんて出来ません。アヤメさんは、私にとってはじめて一緒に生きたいという夢を与えてくれた大切な人です。そしてネネコ先輩は、私の夢を応援してくれた大切な人です。2人とも、私には勿体無いくらい魅力的で、素晴らしい人です」

 

だから、と私は続ける。

 

「私は……アヤメさんとネネコ先輩、2人と付き合いたい。私はアヤメさんもネネコ先輩も大好きです。だからこそ、片方を選んで片方を悲しませる事はしたくない。私の事を好きだと言ってくれた2人を……心の底から幸せにしたいんです」

 

自分でもバカな事を言っている事は百も承知だ。それでも私はアヤメさんを手放す気はないし、ネネコ先輩に言った『大好きな先輩でいて欲しい』という自分の思いを撤回する気はない。

結果的ではあるが、ネネコ先輩には自分から告白した以上、私にはその責任を取る義務がある。

そして何よりも……私は、私を好きだと言ってくれた彼女達と一緒に幸せになりたい。私にとって、彼女達が幸せになる事は私自身の幸せであり、私の望みだ。

その為なら、私は私の全てを賭けてどんな障害も乗り越えてみせる。それが、私の出した選択だ。

 

「………………」

 

私の返答を聞いたアヤメさんはしばらくじっと私を見つめていた。

やがて、深いため息を吐いた後に……何処か呆れが混ざったような、優しい表情を浮かべた。

 

「もし嘘を吐いたり、誤魔化したりしたらビンタでもしてやろうかと思ったけど……あんたなら、きっとそう言うと思ったよ」

「アヤメさん……」

 

アヤメさんは肩をすくめながら話を続ける。

 

「あんたの事だから、何となくこういう事になりそうな予感はしてたからね……今日みたいに、わざわざ患者の子を自分の車で送迎して夕食を振る舞うくらいあんたはお節介焼きだし」

 

けど、とアヤメさんは続ける。

 

「そこまでするのは歯医者の仕事じゃないというか、少し過保護なんじゃない?」

「そうかもしれません。けど、彼女の辛そうな顔を見ていたらどうしても放っておけなくて……」

 

脳裏に浮かぶのは、夜遅くまでろくに休む事すら出来なかったであろう、アオバの疲れきった表情。自分と変わらない年齢の女の子があんな顔をするのは、出会ったばかりの頃のアヤメさんを彷彿とさせ、心が締め付けられそうだった。

だから私はせめて、私の出来る範囲で彼女の助けになれればと思い行動した。アヤメさんの指摘は尤もだ。だからこれは、歯科医としてではなく私自身の意思で行った選択だ。

私の言葉を聞いて、アヤメさんは僅かに目を見開くと、何時もの優しい笑顔を浮かべた。

 

「そっか……あーあ、これじゃあ毎回ムカムカする私がバカみたいじゃん」

 

すると、アヤメさんはやや目を細めて私をじっと見つめる。

 

「まあ、それはそれとして……暇さえあればしょっちゅう私と【ピー】しておきながら次々と他の女に手を出すあんたの節操のなさと、堂々と二股宣言するバカ正直ぶりはどうかと思うけどね。私じゃなかったら、今頃あんた刺されてるわよ」

「……おっしゃるとおりです」

 

まさに正論であった。というか、私が全面的に悪いし、後ろからザクっと刺されてもおかしくない状況だった。

 

『ちなみに、神秘が活性化した"今の"お姉ちゃんならちょっと刺されたくらいじゃ死なないよ?まあ、そんな事をする奴がいたら────ボクが許さないけどね』

 

口調こそ何時もの調子のイザナの声が何処か恐ろしく感じるのは、きっと気のせいではないだろう。

ホンの些細な事が破滅エンドに発展する可能性があるのはキヴォトスの仕様なのかと、そう思わずにはいられなかった。

数秒間のイザナとの脳内のやり取りを終えたタイミングで、アヤメさんは再度口を開く。

 

「あんたが告白した先輩の事も、私の事も大事に思ってくれているのはよく分かったよ。にしても……いくら好きだからって後輩の首筋に噛み付くって、実はちょっと危ない人じゃないでしょうね?」

「それは、その────アヤメ先輩、それって自分もお姉ちゃんに同じ事してたから余計に意識しちゃってる?」

「………………」

 

私と入れ替わったイザナの言葉に思い当たる節があったのか、アヤメさんはフイッと視線をそらし、頬を赤く染める。

しばらく沈黙していたが、やがて誤魔化すようにわざとらしく咳払いする。

 

「んんっ!兎に角、あんたはあんたなりに考えているのはよく分かったし、私もこれ以上とやかく言うのはやめるよ。だから、その……」

 

アヤメさんはややバツが悪そうな表情を浮かべる。

 

「私の方も、色々言い過ぎてごめん……夜遅くまで歯医者の仕事を頑張ってきたあんたに、まずは言うべき事があったのを忘れてたよ」

 

アヤメさんはそう言うと、私の顔を真っ直ぐに見つめて小さく微笑んだ。

 

「────おかえり、ハモリ。今日も1日お疲れ様」

「……はい。ただいま、アヤメさん」

 

ああ、やはりアヤメさんには笑顔がよく似合う。その笑顔は、私にとってどんな宝石よりも価値のある宝物だ。

 

「(勿論、アヤメさんの真っ白で美しい歯が納められた口も私にとっては宝石箱のようなモノだがな。ハリのある柔らかい唇は差し詰め錠前で、それを私が鍵となってゆっくりとこじ開けて、中に収められた純白の宝石達をじっくりと愛でて堪能する……うーん、素晴らしい。ビバ、歯科医。ああ、私は本当にキヴォトスで一番の幸せ者だなぁ)」

『あのさぁ……せっかく綺麗に話がまとまったのに欲情駄々漏れのせいで全部台無しだよ、お姉ちゃん』

 

イザナの呆れた声が脳内に響くが、こればかりは私のサガなので申し訳ないが受け入れて欲しい。

それに、アヤメさんも何だかんだ言いながらも自分から見せてくれてるし……何も問題はない筈だ。多分。きっと。

 

「ところでハモリ。これからお風呂入る?それとも先にご飯にする?」

「そうですね……じゃあ、アヤ───」

 

台詞を遮る様に、眼前にライフルの冷たい銃口が突き付けられる。

 

「んー?ねぇ、ハモリ。今、何て言おうとしたのかなー?もう一度、私にハッキリと教えてくれると嬉しいなー♪」

「あ、ごめんなさいお風呂入ります……」

『少しは自重しなよ、お姉ちゃん……』

 

青筋を浮かべたアヤメさんの賑やかな笑顔が目に入った瞬間、私は荷物を片付けてそそくさと浴場へと向かった。

 

「全く、相変わらずスケベなんだから…………シたいなら、後でいくらでもシてあげるのに」

 

アヤメさんの呟きを耳に入れながら、私は疲れを癒すべく浴場の扉を開けた。

「ねぇ、ハモリー」

「なんですかー、アヤメさん」

 

入浴後、食事を済ませ歯磨きを終えた私はアヤメさんの柔らかい膝枕を堪能しながらくつろいでいると、アヤメさんは私の顔を覗き込むように見つめていた。

 

「さっきあんたが言ってたハイランダーの生徒って、どんな子だったの?」

 

どうやら、アオバの事が気になるらしい。私はアオバの事を思い返しながら答えた。

 

「クリーム色のふわふわした髪と、赤みがかった瞳が特徴の可愛い子ですね。目はくりっとしてて、体格は小柄でちょっとオドオドした仕草が仔猫みたいで可愛らしくて。それからポタージュをふーふーしながら美味しそうに食べてたてた時なんかはむぐ」

「はいはい、容姿は分かったから他の事を話しなさい」

 

ジト目で睨むアヤメさんに口を塞がれ強制的に止められたので、私は改めて話を続ける。

 

「……はじめて会った時は、アヤメさんに似てると思いました」

「私に?」

 

自分の名前が出た事にアヤメさんは不思議そうに首をかしげる。

 

「はい……本当は苦しくて辛いのに、無理をして大丈夫そうに振る舞っているような……そんな印象を受けました」

 

勿論、アオバとアヤメさんとでは立場も環境も何もかも違う。にもかかわらず、はじめて出会った頃のアヤメさんと重ねたのは……何処か疲れきった、全てを諦めたような暗い目だった。

 

「………………」

 

アヤメさんは静かに私の話に耳を傾けていた。

 

「さっきも言いましたが、彼女の顔を見たらどうしても放っておけなくて……余計なお節介と言えばそれまでですけど、彼女の為に何か出来ないか考えて自分に出来る事をやりました」

 

とは言ったものの、アオバの抱える問題について根本的な解決になった訳ではないし、他所の学園の人間が他所の学園の職場環境に口出しをする訳にもいかないだろう。

それでも……

 

『私……ずっと朝が嫌いでした。どうせ期待しても裏切られ続ける、自分を取り巻く世界の全てが憎くて……何も出来ない、変えようともしない自分が嫌で……起きたらまた、1日が始まってしまうんだって思うと、何で私は生きているんだろうなって考えちゃって……』

 

『けど……今は何だが、明日に期待出来そうな気がするんです……仕事の量が変わる訳でもないし、幹部達の無茶振りがなくなる訳でもないのに……明日が待ち遠しいと、思えるんです……』

 

『こんな気持ちになったのは……ハモリさんのおかげです。ハモリさん……私、今とても幸せです……!』

 

そう言って、アオバは大粒の涙を流して私に笑顔を見せてくれた。それだけでも、私は嬉しかった。

 

「それから、個人的に彼女の色んな笑顔が見てみたかったんです。アオバやネネコ先輩、そしてアヤメさんのような可愛い女の子には……笑顔が一番ですから」

 

その為にも、空いた時間を使い彼女に食事を振る舞ったり、ゲームセンターや遊園地で遊んだりしたりするのも良いだろう。

他にも、ストレスを溜め込まないように仕事の合間に雑談で花を咲かせるのも良いかもしれない。

ふと、気が付けばアヤメさんは頬を緩ませて柔らかな眼差しで私を見下ろしていた。

 

「あの、どうかしました?」

「べっつにー。ハモリはやっぱり筋金入りのお人好しで女たらしだって思っただけだよ…………あーあ、これは3人目も覚悟した方が良いかなぁ」

 

そう言って、何故か私の頭を撫で始めるアヤメさん。最後に何か言ったのが気になるが……取り敢えず悪い気はしない、というか寧ろ嬉しいので私はされるがままでいた。

 

「……あ、そうだ♪」

 

しばらくアヤメさんの手と膝枕の柔らかい感触を堪能していると……アヤメさんは何か面白い事でも思い付いたようにニヤッと口角をつり上げる。

 

「ねぇハモリ、あーんして」

「はい?」

「いいからほら、何時も患者の子にやってるようにさ……口を大きくあーんして♪」

 

アヤメさんの言葉に困惑しつつも、私は素直に口を開ける。

 

「ふふ、相変わらず白くて綺麗な歯ね」

「(うーん、なんか……新鮮な感覚だな)」

 

普段は歯科医としてたくさんの生徒の口の中を見ているが、逆に他人に自分の口の中を見てもらうのはあまりないのでちょっとドキドキしている。

 

『新鮮というかさ、この間の病室の時と、それ以降の【ピー】でも割とアヤメ先輩に見せてる気がするけど。というか、お姉ちゃんドSと思ってたけど実はドM?』

 

妹が容赦なく私に言葉の刃を浴びせている事に悲しむべきか、それともそれだけの元気がある事に喜ぶべきか……今一つ判断が付かなかった。

 

「そのままじっとしててね、ハモリ」

「あの、なにを……モゴッ」

 

ホンの一瞬の隙を突いて、アヤメさんの細くしなやかな指先が私の口内に侵入した。

 

 




キキョウ「明後日か……何もなければ良いけど……いや、本当にお願いだから何も起こさないでよアヤメ先輩……!」
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