エイミ「……部長、顔赤いよ。熱いなら冷房つけよっか?」
という訳で、32話です。
「ネネコ先輩、こちらが七稜アヤメさん……昨日話していた、私の恋人です」
「はじめまして、百鬼夜行連合学院3年の七稜アヤメです」
「こちらこそはじめまして。私はミレニアムサイエンススクール3年、歯科学部副部長の荻窪ネネコ。ハモリちゃんから貴方の事はよ~く、聞かせて貰ってるわよ~」
特異現象捜査部のセーフハウスを後にし、歯科学部の仕事を一通り終えた私は、ネネコ先輩に話したい事があると言って時間を設けて貰い、人気のない場所に移動した。
それから、前もって門を使いミレニアムに来て貰ったアヤメさんと3人で対面していた。
「それにしても、ハモリちゃんの恋人さんがこんなに綺麗で可愛い子だったなんて、私ビックリしちゃったわ~。お肌も白くて紫色の瞳も綺麗で髪の毛もサラサラしてるし、本当に羨ましいわね~」
「あ、ありがとうございます……?」
ネネコ先輩はニコニコと笑いながらアヤメさんの容姿を褒め、アヤメさんは恥ずかしそうにしていた。
「うふふ、そんなに固くならなくて良いわよ~?私達、年は変わらないんだし、もっと砕けた感じに気軽に話してくれると嬉しいな~」
「そ、そう……じゃあ……改めてよろしくね、ネネコ」
「うふふ、こちらこそよろしくね~アヤメちゃん」
早速打ち解けている様子の2人を見て、私はホッと胸を撫で下ろす。
2人の事だからきっと大丈夫だろうとは思っていたものの、もしもサスペンスドラマのように血みどろな展開になったら目も当てられない。
私としても、好きな人達がギスギスして争うのは見たくないので、この状況はまさに理想的な展開だろう。
『元はと言えば、お姉ちゃんが所構わず女の子に手を出す節操のなさが原因だけどねー』
「(……返す言葉もありません)」
自分でも自覚はあるが、困っている人……特に可愛い女の子がいれば、つい余計なお節介を焼いてしまうのは私の悪い癖だ。
自分の出来る範囲でやれる事をやっているつもりなのだが、アヤメさん曰く「あんたは身を削りすぎ」らしい。
自分としては「可愛い女の子の笑顔が見たい」という下心でやっている、極めて利己的な行為に過ぎないし、自分を蔑ろにする気は更々ないのだが……アヤメさんからそう思われているのなら、今後は少し控えめにしなくてはならないのだろう。
『別にそこまで深刻に考えなくても良いと思うけどなぁ。お姉ちゃんが誰かを助けたいと思った事自体は間違いじゃないんだし。それともお姉ちゃんは、アヤメ先輩を助けた事を後悔しているの?』
「(────それはないよ、イザナ)」
それだけは断言出来る。
あの日、アヤメさんは確かに泣いていて、誰かに助けを求めていた。だから私は、彼女が心の底から笑っていて欲しいと願い、その手を取る事を選んだ。
そんな彼女が今、私の目の前でこうして笑顔を見せてくれている……こんなに嬉しい事は、他にない。
『ふふ、それが答えなんじゃない?ボクはお姉ちゃんのそういうところが大好きだよ』
「(そうだね……あの時感じた気持ちは、確かに嘘じゃない)」
『そーそー。自分の気持ちに正直に、無理せず我慢せずやりたい事をやる、それで良いんじゃない?』
イザナの言葉を受けて、何だか胸がすくような気持ちになった。本当に、私には勿体無いくらい可愛い妹だ。
『どうもありがと。ほら、ボクよりもまず先に話さなくちゃならない人がいるんだし、そっちに集中しなよ。今日から二股するんだらさ』
「(あ、うん……間違ってはいないのだが……)」
改めて考えると、アヤメさんという彼女がいるにもかかわらず他の女性と関係を作る私は端から見れば最低な人間ではないだろうか。
『二股する相手との告白イベント控えているのに先輩2人たらし込んでる時点で今更だよ、お姉ちゃん』
「(た、たらし……)」
思い返すのは、私を見つめるリオ会長と、私に抱き付いたヒマリ先輩の視線……2人とも、私を見る顔も何処か色っぽかったというか、見てたら胸がキュッとなるような感じがしていた。
「(いや、まさかそんな……)」
『本当に、どうしてそういう所はすぐ気付くのに何度もやらかすんだろうねー?』
本当に、真面目に今後の身の振り方を考えるべきなのだろうか……そう思わずにはいられなかった。
「(っと、いかんいかん。今日は、ネネコ先輩に伝えなければならない事があるんだ。反省会は後だ後)」
一先ず、当初の目的を思い出して意識を切り替える。
私の視線の先には、アヤメさんとの会話が弾み朗らかな笑みを浮かべるネネコ先輩がいた。
「(……本当に、気付くのが遅すぎたな)」
ネネコ先輩は私にとって、夢を支えてくれた恩人であり、尊敬している人だ。
何時も私の事を助けてくれるその愛情に応えたい一心で口にした『大好きな先輩でいて欲しい』という言葉を撤回する気はない。
かといって、アヤメさんとの約束を破る気はないし、アヤメさんと一緒に生きたいという私の意思は変わらない。
そして自分なりに2人とどう向き合うべきか色々と考えた末に、私は2人と恋人として付き合うという結論を出した。
勿論、世間一般の価値観で言えば健全とはいえないけれど、そんな事はどうでも良かった。
『取り敢えず、まずは相手に自分の気持ちをちゃんと伝えないとね、お姉ちゃん』
「(うん、そうだね)」
私は、私を愛してくれた彼女達の想いに応え、彼女達を絶対に幸せにすると誓ったのだ。でなければ、それは私に想いを打ち明けてくれた彼女達への侮辱であり、許されざる事だ。
そして私が今やるべき事は、ネネコ先輩に改めて自分の本当の気持ちをちゃんと伝える事だ。
私は意を決して口を開く。
「……ネネコ先輩、伝えたい事があります。どうか、聞いてくれますか?」
「ふふ、いいわよ……」
「…………」
ネネコ先輩は私の方へ向き直り、アヤメさんは少し離れた位置で私達の様子を静かに見ていた。
「────私は、ネネコ先輩が好きです。ネネコ先輩が私に色んなものをくれたように、今度は私がネネコ先輩にたくさんのものを与えていきたい……だからネネコ先輩、私の彼女になってくれませんか?」
「…………」
すると、ネネコ先輩はゆっくりと近付いていき……優しく包み込むように、私を抱き締めた。
「私も同じよ、ハモリちゃん。何事にも一生懸命で、優しいハモリちゃんが私は大好きよ────これからも、よろしくね」
「はい、ネネコ先輩……」
ネネコ先輩は抱き寄せた身体を一旦離したかと思うと、その顔がゆっくりと近付いていき……互いの唇を重ね合わせる。
「んっ……」
柔らかく、暖かい感触を堪能する。ぬるりとした舌先が私の口の中に侵入し、歯や粘膜を撫で回していく。私も舌を這わせて誰にも侵された事のない、ネネコ先輩の口の中へ舌を捻じ込み、互いに舌を絡めて、唾液のカクテルを啜る。
「ふわぁ……うふふっ」
ゆっくりと離すと、お互いの唇の間に細くキラキラと光る糸のアーチが出来る。
ネネコ先輩は頬を赤く染めて、嬉しそうに笑っていた。
「むー……」
ふと、いつの間にかアヤメさんが近付き頬を膨らませながら私を睨んでいた。
私の視線に気付いたアヤメさんが目を瞑り、唇を近付けようとしているのを確認すると、私はその唇に自分の唇を重ね合わせた。
「んっ……」
何時ものように、その美しい口腔を味わい、堪能する。ふんわりとした髪と肌の匂いが鼻腔を刺激し、舌先に伝わるアヤメさんの歯の表面や窪み、歯茎の根元の感触を楽しむ。
「んぁっ……あははっ」
唇を離したアヤメさんは、ネネコ先輩と同じように嬉しそうに笑っていた。
「うふふっ、2人とも可愛いわね~」
すると、ネネコ先輩が両手を広げて私とアヤメさんを抱き締める。
「ちょ、あんた何……!?」
「だって私達、今日からハモリちゃんの彼女なんでしょ~?だったらみんな、仲良くしなくちゃね~」
そう言って、私とアヤメさんの頬を擦り寄せ合うネネコ先輩。私はちょくちょく似たような事をされてるので気にしてはいないが、アヤメさんの方は突然のスキンシップに動揺していた。
「分かった!分かったから一旦離れなさい!ってか力強っ!?」
力付くでネネコ先輩の抱擁をひっぺがそうとするアヤメさんだが、ネネコ先輩の力に抗えず頬擦りをされていた。その顔は興奮のせいなのか、はたまた羞恥心のせいなのか、赤く染まっていた。
「うふふふ……あ~ん」
するとネネコ先輩は口を開けてアヤメさんの耳にかぶりついた。
「ひゃあっ!?や、やめ……っ!?」
「あむあむ……うふふっ♪」
ネネコ先輩の歯が、アヤメさんのエルフ耳を上下から優しく刺激し、舌先が耳の隙間や穴に捩じ込まれ、隅々まで舐め回される。
しばらくして、満足したのか私とアヤメさんを解放するネネコ先輩。
ネネコ先輩はニコニコと笑っていたが、一方のアヤメさんは顔を真っ赤にしてネネコ先輩を真っ直ぐに睨み付けていた。
「いきなり何すんのよこの変態女!」
「だってぇ……美味しそうだったんだもん」
「だもん、じゃないわ!私の耳は食べ物じゃない!」
ネネコ先輩に対して青筋を浮かべて怒鳴るアヤメさん。うん、可愛い。
「というかハモリ!あんたはあんたでニヤニヤしてないで止めなさいよ!?」
「あ、すみません……その、ネネコ先輩は何時もこんな感じなので」
「何時も!?」
信じられないものを見るような目でネネコ先輩を見るアヤメさん。
「そうそう。可愛い後輩とのコミュニケーションよ~。百鬼夜行ではやらないの?」
「誰がやるか!あんたのそれは世間ではセクハラっていうのよ!いい加減にしないとひっぱたくわよ!?」
ガルルルルッ!と、怒り狂う猟犬のように歯を剥き出しにして睨むアヤメさん。虫歯1つない真っ白な歯は何時見ても美しい。
「あの……アヤメさん」
これ以上はマズいと思った矢先、ネネコ先輩が口を開く。
「でもでも~、アヤメちゃんはハモリちゃんには昨日の夜いっぱい"シた"んじゃないの?」
ネネコ先輩の言葉を受けたアヤメさんが、石のように固まる。
「な……あ……」
「あら、気付かなかった?首の後ろに虫刺されみたいな痕がついてるわよ~?それに……アヤメちゃんから、ハモリちゃんの匂いがするんだもん。昨日はそれだけ激しかったのかしら?」
「うぐっ……」
先程とは違う意味で顔を赤くし、冷や汗を流しながら目を泳がせているアヤメさん。
「あの、ネネコ先輩。その辺りで……」
ネネコ先輩に声をかけると、ネネコ先輩の視線が私の方へ向く。
その瞳に秘められた妖しい光を見た瞬間、全身に悪寒を感じた。
「ところでハモリちゃん。さっきから気になっていたんだけど……どうして、アヤメちゃん以外の他の女の子の匂いがするのかな~?私、他にも彼女がいるって聞いてないんだけど~?」
「…………」
可愛らしく首を傾げるネネコ先輩だが、その眼は真っ直ぐに私を見つめていて、言い逃れは許さないと言わんばかりの圧があった。
「別にね、アヤメちゃんと【ピー】するのは構わないよ?私もするつもりだし……けどさぁ……」
そう言いつつ、両手を私の頬に添えるネネコ先輩。
「他の女の子がいるなら、どうして教えてくれなかったのかな?私、ちょっと悲しいなぁ……」
「ネネコ先輩、それは……」
「……やっぱり、気のせいじゃなかったんだ。あんたの身体から、また知らない女の匂いがするのは……」
気が付けば、アヤメさんが背後から私の両肩を掴んでいた。後ろにいる為、顔は分からないが……聞こえてくるその声はとても静かで、背筋が凍り付く程に冷たかった。
「私、あんたの節操のなさについてはもう諦めたつもりだけど……そうやって、私がいながら次々と他の女に手を出してくのはやっぱりムカムカするのよ……分かるよね?」
「アヤメさん……その……リオ会長やヒマリ先輩とはそんな……」
「へぇ~……今度は2人の女に手を出したんだ」
条件反射で答えてしまい、アヤメさんの声が更に一段階低くなった。
「(マズい、墓穴を掘った)」
『何やってんのお姉ちゃん……』
「そっか~。ハモリちゃん、リオちゃんとヒマリちゃんとも仲良しなんだね~……」
そして正面から私の頭をガッチリと掴んでいるネネコ先輩の圧が更に強くなった。
「ハモリ……」
「ハモリちゃ~ん」
重なるように、2人の声が響き渡る。
「「ちょっと、お話しようか……」」
その声は、私にとって死刑宣告のように重く、冷たく、そして私の心を鎖のように縛り上げ……私は、己の運命を悟った。
「(あ、でも2人に滅茶苦茶にお仕置きされるのは良いかも……)」
『この状況でよくそんな事考えられるよねお姉ちゃん……』
その後、私はアヤメさんとネネコ先輩の2人からたっぷりと"お話"をする事になった。
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「と、言う訳なんです」
「……まさか、ハモリちゃんがリオちゃん達とそんな事に関わっていたなんてね」
「悪徳企業の悪巧みの次は、暴走したAIとロボットの軍団、それにキヴォトスを滅ぼす力を持ったロボットの女の子、か……あんた、また面倒な事に関わってるのね」
2人に詰められた私は、結局リオ会長達と話していた事だけでなく、原作知識……キヴォトスの未来の事も全て話した。
『ねぇ、全部喋っちゃったけど良かったのお姉ちゃん?リオ先輩がダメって言ってたのに』
「(2人には嘘を吐きたくないからね……お叱りは、甘んじて受けるつもりだよ)」
『そっか。まあ、そもそもお姉ちゃんに隠し事なんて向いてないし、下手に誤魔化して不信感抱かれるよりはマシかもね』
脳内でイザナと会話をしていると、ネネコ先輩が口を開いた。
「それで、ハモリちゃんの中にハモリちゃんの妹さんがいるって聞いたけど……その妹さんとお話する事は出来るのかしら?」
「ええ、出来ますよ────はじめまして、ボクの名前はイザナ。よろしくね」
イザナと意識を切り替えると、ネネコ先輩は目を丸くしてこちらを見ていた。
「どう、驚いた?」
「ええ……顔はハモリちゃんのままなのに、ハモリちゃんじゃないって分かるよ。何だか不思議な感じ……」
ネネコ先輩はイザナの事をまじまじと見つめていた。
「ボクが言うのも何だけど、ボクの事やさっきお姉ちゃんが話していた事もよく信じたね?普通に考えたら嘘っぽい話なのに」
「ふふ、私とハモリちゃんとは長い付き合いだもの。ハモリちゃんの先輩兼恋人として、信じるのは当然でしょ?」
それに、とネネコ先輩は続ける。
「イザナちゃんの眼を見れば分かるよ。ハモリちゃんとは違うけど、綺麗な眼をしている……ハモリちゃんと同じように、イザナちゃんも誰かを思いやれる心を持った優しい子なんだってね……だから、改めてよろしくね、イザナちゃん」
「……うん。よろしく、ネネコ先輩」
自分の事を真っ直ぐに見つめるネネコ先輩の言葉を受けたイザナは、何処か気恥ずかしそうにしながら小さく応えた。
「ふ~ん?何あんた、もしかして照れてるの?」
「…………」
イザナの反応が珍しかったのか、アヤメさんはニヤニヤしながらイザナを見つめていた。
当の本人はアヤメさん視線から逃れるように顔を明後日の方へ向けていると……再び意識が切り替わる感覚が襲ってくる。
『……ごめん、代わってくれる?』
「(分かったよ。また、落ち着いたらみんなでお茶でもしながらゆっくり話そう)」
『……うん』
はじめて見るイザナの反応は何だが新鮮な感じだったが、肝心の本人はそのまま私の心の奥に引きこもってしまったので、一先ず落ち着くまでそっとしておく事にした。
「えっと……すみません、どうもイザナは気分が悪いらしくて、しばらく休むそうです」
「あらそうなの?もっとお話したかったのに……」
「ふふっ、あの性悪女にも案外可愛らしい所もあるのね」
2人は特に気分を害した様子もなく納得してくれたようだった。イザナの件は一旦置いて、私は話を再開しようと口を開く。
「それで、ネネコ先輩、アヤメさん。さっきの話についてなんですけど……」
「安心して、ハモリちゃん。リオちゃん達やみんなにも内緒にしておくわ」
「私も以下同文よ。無理やり問い詰めた私達が言うのも何だけど……あんたの事だから、みんなを巻き込まないようにしていたのは分かってるよ。まあ、話したところで信じられるような話でもないけどね……」
取り敢えず、今回の件についてアヤメさんもネネコ先輩も内緒にすると約束してくれたので一安心だ。
「それでハモリちゃん、私からもひとつだけ約束してくれる?」
すると、ネネコ先輩が真剣な眼差しで私を見つめていた。一呼吸置いて、ネネコ先輩はゆっくりと口を開く。
「どんな事があっても、必ず帰ってきて。私、ハモリちゃんがいない世界なんて嫌だから……絶対に、約束だよ?」
「はい、約束します。私も、ネネコ先輩のいない世界なんて考えたくもありませんから……」
ネネコ先輩を安心させるように、ハッキリと応える。それから、横で私達のやり取りを見ていたアヤメさんの方にも視線を向ける。
「勿論、アヤメさんにも約束します。必ず、生きて帰ると……アヤメさんのいる場所が、私の居場所ですから」
「……うん。約束だよ、ハモリ」
自分でも欲張りだとは思うが、私はまだキヴォトスにいる全ての生徒達の歯を見たいという夢を叶えていないし、アヤメさんとネネコ先輩と一緒に遊んだり美味しい料理を食べたいし、歯科検診や歯磨きをしたいし、もっとたくさん【ピー】もしたい。
だから、私は何があっても絶対に生き残る。そして、アヤメさん達を全力で護り、キヴォトスも救う。それが、私の望みであり、私がやるべき事だ。
「それと、話は変わりますが……今後、人気のない場所へ近付いたり、夜中の外出はなるべく避けるようお願いします。杞憂で済めば良いのですが……さっき話したアリウスの生徒達が襲ってくる可能性があります」
自惚れている訳ではないが、私という存在はゲマトリアにとっては興味深い実験材料として見られている事だろう。
特に、ベアトリーチェの性格を考えればアヤメさん達を人質にして私を確保しようとする可能性は十分にあり得る。
故に、私は原作知識について2人に話した際に、主要となるアリウススクワッドをはじめ、私が知り得るアリウスに関する情報とその支配者であるベアトリーチェ、及び他のゲマトリアのメンバーについて詳しく説明してある。
私の言葉を受けた2人は、納得したように小さく頷いた。
「分かったわ。確認するけど、アリウスっていうのはゲマトリアっていう悪い大人達の組織のメンバーの1人がいる学園の事ね?一応、コズエちゃん達にもそれとなく注意は促しておくわ」
「私も百鬼夜行に戻ったらナグサ達にも話しておくよ。話を聞く限りかなり危ない連中みたいだし、万が一出くわしたら無理して戦わないで、すぐに逃げるようにね」
「お願いします。もし、何か気になる事があったら全員で情報を共有するようにしましょう」
正直、気休めにしかならないだろうが、無警戒で何もしないよりはマシな筈だ。原作知識がアテにならなくなりつつある現状、注意しすぎる事はない。
「ところでハモリ。あんたはこれからどうするつもりなの?そのデカグラマトンとかいうAIやロボットの女の子はミレニアムの問題だけど、エデン条約って要はトリニティとゲヘナの平和条約だし、アリウスもどちらかといえばトリニティの問題になるけど、ミレニアムのあんたが関わるのって色々マズいんじゃない?」
「一応、リオ会長もミレニアムがエデン条約に関われないか色々考えているらしいんですけど具体的にどうするか決まってなくて……取り敢えず、私個人としてはシャーレの部員として介入しようと考えてます。まだ未確定ですが、ティーパーティー……トリニティの生徒会は問題解決の為に先生に協力を要請するらしいので」
それから、とアヤメさんに向けて話を続ける。
「シャーレの部員として、アヤメさんも一緒に協力していただけないでしょうか?勿論、無理にとは言いません。けれど、アヤメさんがいてくれれば私はとても助かるんです」
そう言うと、アヤメさんは小さく微笑んだ。
「勿論だよ、ハモリ。あんたの頼みだったら何でも聞くよ、と言いたいところなんだけど……」
何処か歯切れが悪そうな表情を浮かべて頭を掻くアヤメさん。私はすぐに察して口を開く。
「百花繚乱の件、ですか?」
「うん。ナグサ達には色々迷惑をかけてるからね……キキョウから聞いたけど、私が失踪してから辞めていった部員の子達もいるし、残ってる皆が何とかやりくりしてるけど、委員長の私がいなくなった事で組織がちゃんと機能しなくなったせいで、自治区内の治安も悪くなってる……今更委員長の座にしがみ付く訳じゃないけど、戻ると決めた以上はきちんと責任を取らないと……ね」
どうやらアヤメさんも、自分のやるべき事を見つけていたようだ。個人的に一緒にいられないのは残念だが、致し方ない。
「分かりました。ならお互いに、自分がやるべき事を頑張っていきましょう。勿論、困った時には助け合うって事で」
「うん、ありがとう……」
話を締めくくったところで、ネネコ先輩が手を合わせてニコニコと笑いながら口を開く。
「ねえ、時間があればこれからみんなで親睦会なんてどうかしら?」
「親睦会、ですか?」
「そうよ。これから色々大変な事が起こるみたいだし、気分転換をして英気を養うのも必要でしょ?因みに今夜は高級ビュッフェ3人分予約済み、全部私の奢りよ~」
すると、アヤメさんが目を輝かせる。
「いいね!じゃあ今夜はみんなでパーッとやろうか!」
「ありがとうございます、ネネコ先輩」
「うふふっ、決まりね~。じゃあ、早速いきましょうか」
こうして、急遽親睦会を開く事となった私達はいそいそと準備をしてネネコ先輩が予約したという店へ向かう事となった。
アヤメさんは高級ビュッフェという言葉にウキウキしており、ネネコ先輩はそんなアヤメはさんを微笑ましく見ていた。
私は笑い合っている2人の姿をしっかりと脳に刻み、今夜は心ゆくまで楽しもうと思うのであった。
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「う~ん、いい香りね~」
「はい……3人入っても十分に広いですし、ゆったり出来ますね……」
「確かに何だか、別世界にいるような気分ね……あぁ……気持ちいい……」
心ゆくまでビュッフェを堪能した後、ネネコ先輩に案内された私達は"煌びやかな装飾が施された建物"の中へ入り、その一室にあった浴室で身体の疲れを癒していた。
大きなバスタブの中には薔薇の花弁が散りばめられていて、アロマの良い香りが浴室中に漂い、アヤメさんとネネコ先輩の肌と髪の匂いと合わさって鼻腔をくすぐり、お湯の暖かさと2人の美しい肢体の感触が身体を優しく包み込み、まさに天国にいるようだった。
「……というか今更なんだけどさ……ネネコ、何であんた……こんな"店"知ってた訳?」
「ん~?」
するとネネコ先輩は、私を後ろから両手で抱き締めながらゆっくりと口を開いた。
「それはね~……ずっとずっとずっとず~っと前から、ハモリちゃんと【ピー】したかったからよ~」
「んっ……ネネコ、先輩……あっ……」
ネネコ先輩の両手が吸い付くように私の胸に貼り付き、その細くしなやかな指先が肌を優しく刺激していった。
「うふふふ……ハモリちゃんの肌、スベスベしてて綺麗ね……ほら、もっと力を抜いて」
「んぁっ……せ、せんぱ……あっ……」
「…………あんたがハモリの先輩だっていうのが、よく理解出来たわ」
ジト目で私とネネコ先輩を見るアヤメさんだったが、そのまま顔を近付けると私の唇を奪い、舌先で口の中をぐちゃぐちゃに掻き回していく。
「んっ……んぁ……!」
「んんっ……はぁ……ふふ、相変わらずいやらしい顔してるわねぇ、あんた」
唇を離したアヤメさんは、ニヤリと笑い舌なめずりをする。その顔は、つい最近見たモノと同じだった。
「アヤ、メさ……きゃうっ!?」
アヤメの手が下の方へと伸びて……下腹部からの刺激に思わず声を上げてしまう。
「うふふっ、アヤメちゃんもスイッチ入っちゃった?」
「当然でしょ?今までハモリと散々シてるからね……じゃあ、そろそろベッドに行こっか?」
「ふぅ……はい」
前後から伝わる2人の肌の匂いと感触に意識が飛びそうになるのを堪えながら、私は小さく頷いた。
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「はぅっ……アヤメさんっ……ネネコ先輩っ……!」
「あはっ、ここを噛んで欲しいの?いいよ、あんたの大好きなこの歯で、いっぱい気持ちよくしてあげる。あ~ん♪」
「うふふふっ、じゃあ私は空いてるここにしよっかなぁ~?じゃあ、いただきま~す♪」
ふかふかのキングサイズのベッドの上で、私達3人は生まれたままの姿で肌を重ねあっていた。
そして今、私は美しき肉食獣と化した2人によって、食べられようとしていた。
「(ああ、いい……素晴らしい。2人の歯が、私が綺麗に仕上げた美しい歯が、私の肌を食い千切り、その肉が口の中で咀嚼され、2人の血肉となって溶け合い、ひとつの存在となる……これ以上の快楽が存在するだろうか?)」
固い歯が肌に触れる感触は、最早痛みを超えて快楽の波となって、私の身体と心をことごとく蹂躙していった。
しかし2人にシてもらうばかりでは申し訳ないので、私からもちゃんとお返しをしなければと思い両手を2人の肢体に向けて伸ばし、指先を動かすと2人の身体が同時にビクッと反応する。
「はぁぁぁんっ!ハモリちゃ、ん……だ、だめぇ……!」
「ふぁっ……!も、もっとぉ……ゆっくりぃっ……!」
そのまま指先を小刻みに動かすと、液体が溢れ落ちる音と共に2人は身を捩り快楽の波に身体を震わせていた。
荒く息を吐く2人を私はそっと抱き寄せる。
「アヤメさん、ネネコ先輩……大好きです」
「うん……ハモリちゃん……わたしも、すきぃ……」
「わたしも……ねぇ……もっと、シて……」
トロンとした目で私を見つめる私の彼女達の姿は、地上に降り立った女神のように美しく、愛おしかった。
そんな彼女達の愛を自分が独占出来るという優越感と高揚感、そして何があっても絶対に彼女達を護り、彼女達と一緒に幸せになろうと私は決意し……彼女達にたくさんの愛を注いだ。艶のある声と、肉と肉がぶつかり合う音、甘くとろけるような香りが全てを包み込み……やがて私達の意識は溶け合い、ひとつとなっていった。
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「………………で?一晩中乳繰り合った挙げ句、約束の時間に遅れた、と……あんたら、ナメてんの?」
「「……すみませんでした」」
『昨日はお楽しみだったねぇ』
翌日、百花繚乱の談話室にて……盛大に寝過ごして約束の時間を過ぎてしまった私とアヤメさんは、額にクッキリと青筋を浮かべ、氷のように冷たい目をしたキキョウさんを前に平伏していた。
「なぁ、ユカリ……何でアヤメ先輩がキキョウに土下座しているんだ?それと、アヤメ先輩の隣にいる人は誰だ?」
「はいっ!あのお方はミレニアムの白山ハモリさんです!そしてなんと!アヤメ先輩の恋人ですの!」
「………………は?」
「みつけたよ…………アヤメ」
ネネコ「あはぁ……ハモリちゃん……とっても激しかったなぁ……♪」