キヴォトスの歯医者さん   作:ニシキ

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アル「(ど、どうしよう……道に迷ってたからつい声をかけちゃったけど、何かそういう事言える空気じゃないっぽいし……いいえ!弱気になってどうするのよ!ここはアウトローらしく、何時如何なる時でも威厳と余裕を持って振る舞うべきよね、うん!)」

という訳で、第34話です。


百花繚乱の結束

 

 

 

「まさか、こんなところで会うとは思わなかったわ。これも運命の悪戯というヤツなのかしらね?」

 

まさかの人物の登場に驚いた私とアヤメさんだったが、当然面識のない他の百花繚乱のメンバーはいきなり現れたアルさんに困惑していた。

 

「ちょっとアヤメ先輩。こいつ、先輩の知り合いなの?」

「フッ……」

 

突然現れたアルさんに対して不審な眼差しを向けるキキョウさんだったが、当のアルさんは涼しい顔をしてその視線を受け止めていた。

 

「ええ、前に話していたシャーレの部員の1人よ。名前は……」

「待ちなさい、アヤメ。自己紹介なら自分でやるから結構よ」

 

そう言ってアルさんは地面を踏み鳴らし、自らの存在を知らしめるかのように高らかに名を告げた。

 

「────便利屋68社長、陸八魔アル。しがないアウトロー、とでも言っておこうかしら?」

「便利屋……?」

「アウトロー……?」

 

不審者を見るような目でアルさんを見るキキョウさんとレンゲさん。当のアルさんは変わらず不敵な笑みを浮かべているが……

 

『……あれ、どう見ても虚勢張ってるだけだよね、お姉ちゃん?』

「(……そこは、本人の名誉の為にも黙っておこうか)」

 

微妙に口元がひきつっていたり、足が震えているのは気のせいだと自分に言い聞かせていると、溌剌とした少女の声が響く。

 

「おお……!カッコいいですわ!」

「フッ……褒めても何も出ないわよ?」

 

一方のユカリは何かが琴線に触れたのか目をキラキラと輝かせていており、そんな彼女の視線に気を良くしたのか、アルさんはわざとらしく髪を払う。

 

「おっと、申し遅れました。身共は勘解由小路ユカリ。百花繚乱紛争調停委員会に所属するえり~とですわ!あの、もしよろしければその"あうとろ~"について詳しくお話を伺ってもよろしいでしょうか?」

「良い質問ね。よく聞きなさい、アウトローというのは────」

 

ユカリの尊敬の眼差しを受け、胸を張って得意気な笑みを浮かべるアルさんはそのままアウトロー持論を語り始める。

そしてその後輩の姿に先輩2人は『いや、お前嘘だろ……?』と言わんばかりにぎょっとした表情を浮かべる。

そんな彼女達のやりとりをアヤメさんはジト目で見ていた。

 

「……何なの、この展開」

「……まあ、あれがアルさんの魅力ですから────取り敢えず、さっきみたいなギスギスした空気よりはいいんじゃない?」

 

何とも言えない微妙な空気になったが、何時までもこうしている訳にはいかないので未だにアウトロー持論をユカリに語り続けるアルさんに話しかける。

 

「あの、歓談中すみません!こちらからもよろしいでしょうか!?」

「んえっ!?……っと、ごめんなさい。また後でゆっくり話しましょうか」

「あ、はい……」

 

一先ず、先程から気になっていた疑念を晴らすべく私は口を開く。

 

「アルさんはどうして百鬼夜行に?」

「今日は先生が百鬼夜行で仕事があってね、その手伝いで一緒に来たのよ。で、仕事が片付いて先生から暇を貰ってブラブラしていたら、あなた達を見付けたって訳」

 

それで、とアルさんは続ける。

 

「そういうあなた達こそ、どうして百鬼夜行に?しかも、見たところアヤメの仲間達と一緒にこんな人気のない辺鄙なところで集まって……何か、ワケありかしら?」

 

事情を話すべきかどうか一瞬迷い、チラッとアヤメさんに視線を向けると、アヤメさんは小さく頷き口を開いた。

 

「……少し長くなるけど、聞いてくれる?」

「ちょっと、先輩……」

「大丈夫だよ、キキョウ。アルは前にシャーレの部員として一緒に仕事をしていたし、信用出来るよ」

「……わかったよ、先輩がそういうなら」

 

答えようとするアヤメさんに対してキキョウさんが咎めようとするが、アヤメさんの言葉に一先ず納得し口を閉ざす。

 

「待たせたね、アル。まずは────」

 

それからアヤメさんは、これまでの経緯について詳しく話した。

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「……なるほどね。幼馴染みの子が化け物を従えて襲いかかってきて、命からがら逃げ出した、と……」

 

一通りの話を聞いたアルさんは神妙な表情を浮かべて頷いていた。

 

「それで?あなた達はハモリがその子に何かしたんじゃないかと疑ってた訳ね」

「……ええ」

 

チラッとキキョウに視線を向けると、アルさんは小さく息を吐く。

 

「それこそあり得ない話よ。仮にハモリがあなた達を陥れようとしていたとして、バカ正直に正面からやってくると思う?アヤメが信用して連れてきた子を、あなた達は信じられないの?」

「「「…………」」」

 

アルさんからの指摘に、キキョウさん達は何も言えなかった。

 

「身共は信じますわ!」

 

最初に声をあげたのは、ユカリだった。

 

「さっきは驚きましたが、ハモリさんはあの時、身共達の事を助けて下さいました!そんな方が悪い人だなんて、身共は思いませんわ!」

「ユカリ……」

「それにアルさんは言ってましたわ!たとえあうとろ~であっても、仲間の事は何があっても絶対信じろと!ならば身共も、同じ百花繚乱の一員としてアヤメ先輩と、アヤメ先輩が信じるハモリさんを信じますわ!」

 

そう告げたユカリの堂々とした立ち振る舞いに、キキョウさん達は呆然としていた。

 

「はぁ~……全く、アタシは一体何をやってんだろうな……」

 

レンゲさんが深くため息を吐き、頭を掻きながら口を開いた。

 

「ユカリの言う通りだわ。アヤメ先輩が信用してる相手を、アタシらが勝手に疑ってどうすんだよ」

「レンゲ、あんたまで……」

「キキョウだって、もう分かってんだろ?さっきの状況じゃ、ハモリが敵ならアタシ達はとっくにやられてたってな」

 

キキョウさんは静かに私を見据えていた。

しばらく沈黙した後、小さく息を吐く。

 

「……認めるわ。疑ったのは事実よ。ただ、簡単に『信用する』とはまだ言えない」

「キキョウ……」

 

キキョウさんは淡々と続けた。

 

「少なくとも、悪い奴ではない。あの場で私達を見捨てることもできたのに、そうしなかった。それに、アヤメ先輩があそこまで信頼して連れてきた以上、今は味方として扱うのが合理的よ」

 

そう言い切ると、キキョウさんは私とアヤメさんに視線を向ける。

 

「一先ず、ナグサ先輩の件が片付くまで協力する。疑うのはその後でも遅くないわ」

 

レンゲさんが大きく息を吐き、どこか晴れやかな表情で肩をすくめた。

 

「……アタシもそれでいいよ。ったく、後輩に諭されるとか、カッコ悪いよな」

 

レンゲさんとキキョウさんの言葉を受けて、アヤメさんは少し安堵したように息を吐いた。

 

「……ありがとう、2人とも」

 

キキョウさんは視線を逸らしたままぶっきらぼうに返す。

 

「礼なんていいわ。ただの状況判断よ」

「それでも、ありがとう」

 

アヤメさんがそう微笑むのを見た後、私は2人に頭を下げた。

 

「私の事も、疑われて当然だと思います。いきなり力を見せてしまいましたし……改めて、よろしくお願いします」

「あー……なんか申し訳なくなってきたわ。アタシらこそ、よろしく」

 

レンゲさんが苦笑いを浮かべる。

 

「それとさ、アタシら年は変わらないんだし、そんな畏まらなくても良いぞ?もっと砕けた感じでさ……なあ、キキョウ」

「……別に、好きにすれば良いわ」

「では、お言葉に甘えて────改めて、よろしくね。レンゲ、キキョウ」

 

そこへ、それまで黙って聞いていたアルさんが口を開いた。

 

「まあ、こんなところで疑心暗鬼になってても仕方ないわ。今は共通の敵がいるんでしょう?だったら寧ろ協力した方が効率的よ」

「アルさん……」

 

アルさんは不敵に笑って見せる。

 

「あなたが疑われた件については、私が保証してあげるわ。少なくとも、あなたは仲間を裏切れないタイプよ。バカ正直なくらいにね」

「……確かに、ハモリなら真っ正直から堂々と言うタイプだものね」

 

アヤメさんが何故か私を見ながらジト目で呟くと、アルさんは肩をすくめた。

 

「それより、あなた達はこれからどうするつもり?そのナグサっていう子を放っておくつもりはないんでしょう?」

 

アヤメは真剣な表情に戻る。

 

「うん、ナグサを助けたい。ただ、今の私達だけじゃ情報が足りない。まずは状況を整理して……」

「それなら私に任せなさい」

 

アルさんが割り込むように言った。

 

「さっきも言った通り、私は先生の仕事の手伝いでここに来ているの。何なら今すぐに呼べるわよ?」

「本当に!?」

 

アヤメさんが目を輝かせ、私も安堵の息を吐く。相手の力が未知数である以上、1人でも仲間は欲しい今の状況では非常にありがたい。

 

「助かります。アルさん、お願いします」

「構わないわ。ただ、今回は貸しよ?後日ちゃんと回収させてもらうから」

 

アルさんが得意げに胸を張ると、ユカリが目をキラキラさせながら拍手をした。

 

「流石あうとろ~……!頼もしいですわ!」

「フッ……当然よ」

 

アルさんの口元が僅かにひきつっているのを、私は黙って見ないふりをした。

そしてアヤメさんは百花繚乱のメンバーを見渡し、静かに、しかし力を込めて言った。

 

「みんな、ありがとう。これからもう一度、ナグサを助けに行くよ。何があるか分からないし、怖い目に遭うかもしれない。それでも一緒に来てくれる?」

 

アヤメさんがそう問いかけると、レンゲが拳を握りしめ、キキョウが小さく頷き、ユカリが『はいっ!』と力強く返事をした。

 

「百花繚乱の仲間として、ナグサ先輩を必ずお助けしますわ!」

「ああ、そうだ!今度は、アタシ達が先輩を助ける番だ!」

「ナグサ先輩には色々言いたい事があるし、私も最後まで付き合うよ、アヤメ先輩」

「みんな……本当に、ありがとう」

 

後輩達の決意に満ちた言葉を受けて涙ぐみながら微笑むアヤメさんの隣で、私も口を開いた。

 

「私も、一緒に戦います」

『当然、ボクの事も忘れないでねー?』

 

アルさんがスマホを取り出しながら、不敵に笑った。

 

「じゃあ、決まりね。便利屋68社長として、今回は特別に力を貸してあげるわ」

 

アルさんが得意げに胸を張った直後、私はふと彼女の様子に違和感を覚えた。

口元は笑っているのに、視線が時折そわそわと周囲を泳いでいる。加えて、足もわずかに落ち着きなく動いていた。

 

「(しまった……!バッテリー切れてる!先生のところに戻ろうにも今どこにいるのか分からないし、どうしよう……)」

『……やっぱり、道に迷ってるよね、お姉ちゃん』

 

イザナの尤もな指摘に、私も同意した。

 

「(アルさん……もしかして、はぐれたのか?)」

 

アヤメさんがナグサさん救出の決意を固め、皆がそれに応じようとしたその時だった。

 

「アル殿~!!!」

 

突然、元気いっぱいの声が路地の向こうから響いた。

次の瞬間、狐の耳と太い尻尾を持った少女が、特徴的な鮮やかなピンクを基調とした華やかな花柄の羽織と赤いマフラーとなびかせながら勢いよく飛び出してくる。

 

「主殿が探していましたよ~!アル殿、どこ行ってたんですか~!?」

「い、イズナ!?」

 

そのノースリーブのセーラー服の上から片肌脱ぎに着た羽織と首元に巻いた赤いマフラー、そして太腿のホルスターにクナイを装備した、忍者を彷彿とさせる出で立ちの狐耳の少女……後の忍術研究部に所属する久田イズナの登場に、アルさんの顔が一瞬でひきつる。

 

「な、何よ急に……!私は別に迷子なんかじゃ……」

「え?でも主殿が『アルがいない』って言ってましたよ?ムツキ殿も『アルちゃんの事だからきっと道に迷ったかもしれない』って」

「ふぁっ!?」

 

アルさんのアウトローとしての仮面が、完全に音を立てて砕け散った瞬間だった。私とアヤメさんは顔を見合わせる。

 

「……前から思ったけど、アルって結構ドジ?」

「……仰る気持ちは理解出来ます。けど、あまり言うと凹んでしまうのでそっとしておくべきかと」

 

アルさんらしいなぁと思いつつ、他の百花繚乱のメンバーの方にも視線を向ける。

 

「あんなに格好つけて現れたと思ったら、道に迷ってただけかよ……」

「……本当に、信用して大丈夫なのかしら?」

「あうとろ~でも迷子になるのですか……?」

 

キキョウとレンゲは呆れたようにため息を吐き、ユカリだけが純粋に首を傾げていた。

ふと、あたふたするアルさんを不思議そうに見つめるイズナを見ながら私は思考する。

 

「(……もしかして、今日は『桜花爛漫お祭り騒ぎ!』の日だったのか?)」

 

原作知識と照らし合わせて、先生が百鬼夜行にやって来たタイミングと、イズナが『主殿』と言っている事から考えると、恐らくはイベントはもう終わった後なのだろう。

 

「(便利屋68が加わっているとなると、きっと敵は原作以上にボコボコにされたのだろうな……)」

 

確か、伊達政宗のパチモンみたいな名前の大人がイズナを騙していた騒動の黒幕だった気がするが、元より子供達を食い物にする大人など歯無しの鉄屑共(カイザー)と同様に許されざる存在なので同情する気はない。

しかし、それよりも私には他に気になる事があった。

 

「(……八重歯、いいなぁ)」

 

ユカリと同じく、イズナの口元から小さく覗く、白く尖った八重歯は彼女の快活さと可愛らしさをより一層引き立たせるアクセントとなっていた。

健康的なピンクの唇が上下する度に見える、前歯の表面は滑らかなアイボリーの光沢が美しく、更にその奥に並ぶ奥歯は細かいところまでは見えないものの、虫歯やインレーは見当たらず、真珠のネックレスのように綺麗に並んでいた。

 

「(よし。全てが終わったら、早速声をかけてみよう。本人は忍術に興味があるし、神秘の事も話したら食い付くかもしれない。あわよくば、そのまま歯科検診を受けさせるように誘導して……)……っ!?」

 

何かとてつもない悪寒を感じたので振り返るとそこには……額に青筋を浮かべたアヤメさんが、にっこりと微笑んでいた。

 

「あ、アヤメさん……?」

「ん~?」

「その……怒って、ますか?」

 

恐る恐る声をかけると、アヤメさんはゆっくりと私の腕と頭に手をかけ……ガッチリと捕らえコブラツイストをかけてきた。

 

「怒るに決まってんでしょうがこのド変態!どさくさに紛れて何また他の女に粉かけようとしてんのよあんたはぁぁぁっ!!?」

「す、すみません……ちょっと、知的好奇心を抑えきれあだだだだだだっ!!?」

「うるさい!昨日の今日で少しは懲りろこの女たらし!積もりに積もった私の怒りを思い知れぇぇぇっ!!!」

「ちょ、ちょっとアヤメ何してるの!?」

「わー!アヤメ先輩落ち着いて下さいましー!」

 

アルさんとユカリが慌てて宥めようとするが、アヤメさんの怒りは益々燃え上がり、比例するように私の身体はミシミシと悲鳴を上げていた。

 

「…………アヤメ先輩って、怒ると怖いんだな」

「…………絶対に、アヤメ先輩を怒らせないようにしないとね」

 

アヤメさんの豹変ぶりに顔を青くする2人を他所に、私はアヤメさんの怒りが収まるまで、甘んじて制裁を受け入れるのであった。

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それから私達は、イズナに軽く自己紹介をした後、事情を話してすぐに先生の元へと案内して貰った。

 

「主殿~!アル殿をお連れしました~!」

 

屋台が並ぶ表通りを駆けていった先に、先生とアルさん以外の便利屋の面々が集まっていた。

先生はアルさんに声をかけようとして、私達の姿を捉えると面食らった表情をしていた。

 

「お久しぶりです、先生」

「あ、うん。久しぶり……アヤメとキキョウも久しぶりだね」

「あはは、私とハモリは今日はちょっと用事があってね……」

「久しぶり、先生。まさかあんたも百鬼夜行にいたとは思わなかったよ」

 

私が軽く頭を下げると、アヤメさんも会釈し、キキョウも素っ気なく挨拶する。

この場で初対面であるレンゲとユカリは少し緊張した面持ちで立っていた。

 

「キキョウ先輩、この方が……」

「ええ、この人がさっき話してたシャーレの先生。あんた達も噂くらいは耳にしているでしょ?」

 

ユカリとレンゲの存在に気付いた先生が2人に声をかける。

 

「はじめまして、私はシャーレの先生だよ」

「お、お初にお目にかかりますわ!身共は百鬼夜行連合学院百花繚乱紛争調停委員会所属勘解由小路ユカリと申します!」

「同じく、アタシはその切り込み隊長を勤める不破レンゲだ。よろしくな、先生!」

 

2人の自己紹介が終わるのを見計らって、アルさんが気まずそうにゆっくりと口を開いた。

 

「せ、先生……その、心配をかけてしまってごめんなさい」

「うん、気にしないで。それよりもアルが無事で良かったよ」

「先生……!」

 

小さく微笑む先生の言葉に瞳を潤ませるアルさんの元へ残る便利屋の面々がやってくる。

 

「あ、アル様ご無事で何よりです……!」

「も~。ダメじゃない、アルちゃん。1人でどっかにいっちゃってさぁ」

「大方、祭の雰囲気に浮かれてたんだろうけど、人が多いんだから余所見したらダメだよ?」

「うぐっ……ごめんなさい」

 

自分の社員達に囲まれて凹むアルさんの姿に苦笑する先生は、何処か期待するような視線を向けるイズナに声をかける。

 

「アルを探してきてくれてありがとう、イズナ」

「はいっ!主殿にお仕えする忍者として、当然の事をしたまでです!」

 

イズナは尻尾をフリフリと揺らして嬉しそうに笑っていた。

そこへ、アヤメさんが口を開く。

 

「先生。突然の事で申し訳ないけど、私の友達を助ける為に力を貸して」

 

その言葉に先生はただ事ではないと感じ取ったのか、表情を真剣なものへと変える。

 

「うん、勿論だよ。それで、何があったのか詳しく話してくれるかな?」

「ありがとう、先生。実は────」

 

それからアヤメさんは、これまでの経緯について全て話した。一通りの話を聞き終えた先生は神妙な表情を浮かべた後、優しく諭すように口を開いた。

 

「話しは分かったよ、アヤメ。私で良ければみんなの力になるよ」

「ありがとう、先生!」

 

先生の言葉を受けて安堵の表情を浮かべるアヤメさん。続けて先生は傍らで話を聞いていた便利屋の面々とイズナに声をかける。

 

「みんな、力を貸して欲しい」

 

先生がそう言うと、アルさんは不敵な笑みを浮かべる。

 

「元より今日は、先生の護衛として来ているのだから当然よ」

「わ、私は何処までもアル様について行きます……!」

「あはは、今日はせっかくのお祭りなんだし、派手に花火を打ち上げるのも良いかもね!」

「まあ、あんな話を聞いた後で無視するのは流石に目覚めが悪いからね……だから最後まで付き合うよ」

「イズナは主殿の為ならばたとえ火の中水の中です!」

 

全員が決意を固めたのを見た先生は、スマホを取り出すと何処かへ連絡を取り始める。

しばらくして話を終えると、一同を見渡して口を開く。

 

「みんな、陰陽部に行くよ」

「陰陽部に?」

「うん、陰陽部の部長が"怪異"について、直接会って話がしたいって」

 

先生の言葉を受けたアヤメさん達、百花繚乱の面々は目を見開き驚いていた。

 

「どうして陰陽部が怪異の事を……まさか、ナグサ先輩の事も何か知っているんじゃ……」

 

キキョウが眉間にシワを寄せていると、アヤメさんが後輩達を見渡して口を開く。

 

「まごついても仕方ないし、今は陰陽部へ行こう。そうすれば、何か分かるかもしれない」

 

アヤメさんがそう言うと、一同は頷く。

 

「よし。みんな、行こうか」

 

こうして私達は陰陽部へと足を運ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどなるほど~。手前さん方はそうきますかぁ。ですがぁ、前座に過ぎない手前さん方がどんなにあがいたところで全ては無駄な努力なのですよぉ?何故ならぁ、これより紡がれる手前の『百物語』は、己を偽りありもしない理想に縋る愚かな少女が、己の理想に溺れて全てを巻き込み破滅させる、救いのない、愚かで滑稽で、それはそれは何もかも焼き尽くす程に素晴らしい物語なのですからねぇ?」




ナグサ「ああ、アヤメ……待っててね、アヤメ。あの女も、私の邪魔をするみんなも。全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部壊して絶対にアヤメを救って見せるからね。そうしたら、ずっと一緒だからね……あはははっ♪」

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