艦底のBAR「どん底」は、昨日からの改装でいつもと違う怪しげな雰囲気に包まれていた。赤い照明が薄暗く揺れ、壁にはお手製のゾンビ絵が貼られている。血のりを思わせる赤い小瓶が並び、店内全体がまるでホラー映画のセットのようだ。
「うほっ、これならお客も増えるかもね!」
ラムは陽気に酒瓶を振り回しながら笑う。
「フリント、もうちょっと落ち着いて!」
お銀が飴をくわえながら注意するが、楽しそうな空気は変わらない。
カウンターの端にはジト目のカトラスがグラスを磨きつつ、冷静に店内の様子を見ていた。
そこへ、店の守り神・ギーコことモスキートがゆっくりと現れた。副腕の鋭い金属指で看板を直し、背中のチューブが赤い照明に反射して不気味に光る。
(うーん、何か違和感が……)
ギーコは自分の姿を鏡越しに確認しながら、いつもより落ち着かない様子。
その時、店の扉が勢いよく開いた。
「いらっしゃいませ!」
ムラカミが腕組みでにらみを効かせながらお客を迎える。
入ってきたのは、艦底の学生たち数名。改装された店内を見て、早速ざわつき始めた。
「なんだここ、ホラー映画のセットか?」
「怖いけど、なんかワクワクするな!」
突然、ギーコの背中のチューブがプシューッと小さな音を立てて蒸気を吹き出した。
「うほっ!なんだこれ、まるで本物のゾンビみたいだぜ!」
ラムが大笑いする。
ところが、その蒸気に驚いたギーコは反射的に槍の手足を振り回してしまい、店内は一瞬大混乱に。
「や、やめて!壊れちゃう!」
フリントが叫びながらギーコの動きを制止しようとするが、ギーコは慣れない動作に四苦八苦。
カトラスが慌ててカウンターからグラスを拾い上げる。
「落ち着いて、ギーコ!今日は特別な日なんだから」
「……すみません」
ギーコは筆記で「Entschuldigung(すみません)」と書き、そっと副腕で頭を押さえた。
こうして、初日からドタバタの大騒動になったが、店は笑いに包まれ、艦底の学生たちの間で話題になり始めた。
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「さあ、みんな!改装したんだから、もっとお客さんを呼ばなきゃね!」
ムラカミが腕組みを解いて、改めて店の中を見渡す。
「確かに、今のままじゃ面白みが足りないかも」
カトラスが冷静に指摘する。
「よーし、じゃあ次の上映会の宣伝も兼ねて、何かイベントをやろうよ!」
ラムがまた酒瓶をくるくる回しながら提案。
「私は歌うよ。マイクはまだ貸してもらえる?」
フリントがニッコリと微笑む。
「フリントの歌は最高だからね」
お銀が飴をポリポリ噛みながら応援する。
「じゃあ、次はゾンビ映画だけじゃなくて、歌とパフォーマンスも盛り込もうか」
カトラスがメニュー表に書き込みながら提案する。
ギーコはじっと皆の様子を見ていたが、突然筆記用具を取り出して一枚の紙に何かを書き始めた。
「…」
数分後、ギーコはその紙をカウンターに置いた。そこには「Ich heiße Mosquito.(私の名前はモスキートです)」と書かれていた。
カトラスがそれを見て目を細めた。
「名前がモスキート?ちょっと変わってるけど、なんだか覚えやすいわね」
ラムも興味津々で紙を覗き込む。
「うほっ、いい名前だ!お前、これからはモスキートで通すんだな?」
ギーコは微かに頷いた。
「…まあ、名前があった方が皆も話しかけやすいしね」
ムラカミも賛同する。
その夜、改装した店内はホラーコメディの映画上映と、艦底の学生たちの笑い声で賑わい、ギーコも少しずつ店の一員として馴染み始めていた。
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ゾンビランド
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シャーク・トルネード
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トレマーズシリーズ