艦底のBAR「どん底」は、今日も静かな午後を迎えていた。
しかし、今日はいつもと違う。ギーコ──モスキートと呼ばれる武器人間に転生した彼が、手に持つ古びたDVDケースには『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』のタイトルが踊っている。
ギーコは副腕の鋭い金属製の指で慎重にDVDプレイヤーの再生ボタンを押す。
口部のドリルのために声は出せないが、筆記用具とメモ帳を持ち歩き、自分の意思はそれで伝える。
ラムは赤毛のチリチリパーマを揺らしながら酒瓶をくるくる回す。
「うほっ、トマトが人間を襲うって……馬鹿げてるけど面白いわねえ。あたしも今日ばかりは酔っぱらってやる!」
実際には酔ってはいない彼女の陽気な口調が店に明るさをもたらす。
カトラスは金髪のボブカットを揺らしながら、冷静にカウンターのバーテンダー役を務めていた。
「トマトが襲ってくるなんて、考えただけで可笑しいわ。でもお酒のつまみには最適ね」
いつもジト目気味の彼女も、こうしたゆるい企画には内心楽しんでいるのだ。
フリントはロングスカートの深いスリットをなびかせて、一人でマイクを握りしめている。
「あたいはさ、このトマトの歌をカラオケで歌いたくなっちゃったわよ」
そう言って彼女は歌い出しそうな勢いだ。
ムラカミは腕組みしながら壁にもたれかかる。
「本物のトマトが襲ってきたら、私が叩き潰してやるぜ」
その言葉に店内は軽い笑い声で包まれた。
ギーコは店の賑わいにじっと目をやり、メモ帳に筆記する。
「(筆記)映画は面白い。もっと見たい」
画面には、どこかチープでありながら愛嬌のある「キラー・トマト」が踊り狂う姿が映し出されている。
観客の笑い声と驚きの声が混ざり合い、店内はまるで映画館のような賑わいだ。
上映が終わる頃、外から重い物を運ぶような音が響き始めた。
「なにか来るぞ」とムラカミが言うと、店の扉が勢いよく開かれた。
そこには農業科の生徒たちが、大きなトマトを運んでいた。
「納品のトマトです!今日は特別に大きいのを持ってきました!」
ラムがすかさず叫んだ。
「うほっ!本物のトマトがやってきたぞ!」
カトラスは唇を噛み、苦笑いしながら「まるで映画の続きみたいね……」と言った。
その巨大なトマトは、ひとりでは到底扱えないほど重く、皆で協力して店の一角に運び込むことになった。
ギーコは副腕の金属指を駆使して器用に支えるが、荷物を担ぐことには慣れていないため、苦労が見て取れた。
ギーコはメモ帳に「(筆記)困った…重い…」と書き残した。
運び込んだトマトはどん底の片隅に鎮座し、いつしか「どん底のトマト様」と呼ばれるようになった。
その日以来、「どん底シネマ上映会」は不定期ながらも定例となり、ホラーやB級映画を肴にしたサメさんチームの賑やかな日常が続いていくのだった。
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