アラン・リザードンと巡るポケモン世界記   作:エイト

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第10話:三対一の挑戦、そしてその答え

昼下がりの柔らかな光が、アズナ村の広場に降り注いでいた。

地面には白いバトルラインが引かれ、周囲には子どもたちと数人の大人たちが、静かにその時を待っていた。

 

中央には、村長ハクオと、その隣に腕を組んだキノガッサの姿。

 

「さて、お前たち。今日は“三対一”。お前たち三人とポケモンたちで、わしとキノガッサに挑んでもらう」

 

「はいっ!」

 

アラン、ミナト、ユウマが声を揃える。

 

少し離れた場所では、ミヨが三脚を立て、小型の記録装置を調整していた。

 

「今回はしっかり映しておくわよ。あとで、ちゃんと自分の動きを見るためにね」

 

岩陰の下、三人は円を作るようにしゃがみ込み、木の枝でバトルエリアを描いた即席のマップを囲む。

 

「キノガッサは“くさ・かくとう”……“ひこう”“エスパー”“ほのお”が弱点だ」

 

ユウマが最初に口を開いた。

 

「ニャオハは“でんこうせっか”で翻弄。合間に“このは”でけん制する」

 

「アシマリは“こごえるかぜ”でスピードを下げて、補助に回る。正面からの“みずでっぽう”も合わせて」

 

「ヒトカゲは、正面突破。“ひのこ”でプレッシャーをかけて、近づいたら“ほのおのキバ”。もし接近戦になったら“ひっかく”で援護する」

 

三人は視線を交わし、迷いなく手を重ねた。

 

「勝てるかわかんないけど……全力で行こう」

 

「うん!」

 

「――準備はできたか?」

 

ハクオの問いかけに、三人は同時に頷いた。

ミヨが手を挙げ、旗を振る。

 

「勝負、始め!」

 

「ニャオハ、“でんこうせっか”!」

 

ユウマの指示に、ニャオハが一気に加速し、キノガッサの右側を半円を描くように駆け抜ける。

 

「“このは”で狙って、外側から!」

 

風に乗った葉が、キノガッサの視界を削る。

 

「ヒトカゲ、“ひのこ”! 上から広く!」

 

アランが声を張る。

ヒトカゲは助走をつけてジャンプ、空中で火花を扇状に散らす。

 

「アシマリ、“こごえるかぜ”正面!」

 

「ぷしゅぅっ!」

 

冷気を含んだ白い風が、一直線にキノガッサへと吹き抜ける。

 

三方向からの一斉攻撃――だが、キノガッサは地面を低く蹴り、滑るようにステップ。

 

「――ふむ、読み通り」

 

小さく呟いたハクオの声と共に、キノガッサは火花を跳び越え、風をクロスした腕で受け流す。

葉は体を旋回させて肩越しにいなした。

 

「“どくのこな”、続けて“しびれごな”、“きのこのほうし”!」

 

三色の粉が、空間に一斉に放たれた。

 

「ヒトカゲ、“ひのこ”で右の粉を焼いて!」

 

「ニャオハ、“このは”で左をはらう!」

 

「アシマリ、“バブルこうせん”で中央を消して! 防御重視!」

 

三匹は指示に応じて即座に反応。

ヒトカゲの火花が右側の毒の粉を焼き払い、ニャオハの葉が左のしびれ粉を吹き飛ばす。

アシマリの泡が弾け、中央の胞子をかき消して視界を戻した。

 

「ヒトカゲ、“えんまく”!」

 

灰色の煙がフィールドを覆う。

 

「アシマリ、“アクアジェット”で旋回! “こごえるかぜ”で縁を固定して!」

 

「ニャオハ、“でんこうせっか”で外周を回って“マジカルリーフ”!」

 

煙の内側で、三匹はまるでダンスを描くように、交差しながら軌道を刻む。

 

その中心――ヒトカゲが、鋭い赤の軌跡を残して突っ込む。

 

(今だ……!)

 

「“ほのおのキバ”!」

 

煙の中から炎の牙が閃き、キノガッサの肩へと突き立てられた――が、

 

「“まもる”」

 

一瞬、空気が張り詰める。

透明な球状の障壁がヒトカゲをはじいた。

刹那、光が全方向に広がり、続く“マジカルリーフ”と“こごえるかぜ”もはじき返される。

 

(くっ……全部、読まれてた……!)

 

「“タネばくだん”、足元に」

 

キノガッサが跳躍した瞬間、足元に落ちた実が爆ぜた。

地面が跳ね、三匹は軽く宙に浮かされ――

 

そのままキノガッサの腕の中に優しく収まった。

 

「……ここまで」

 

ミヨの声が響いた。

 

「勝者、キノガッサ」

 

「はい、これ。かすり傷と軽い火傷には、この軟膏を」

 

ミヨが持ってきた薬草を加工した小瓶を差し出す。

 

「こすらず、そっと押し当てるように塗るの。いい? やさしくね」

 

三人は順番に自分のポケモンに塗りながら、肩を並べて息を整えた。

 

反省会。ミヨが撮っていた映像が再生される。

 

「この“このは”、良かったわよ。ただもう少しだけ早ければ……“まもる”の前に届いてたかもしれない」

 

「ほんの一秒……でも、その一秒で全部変わるんだな」

 

ユウマがぽつりと呟く。

 

「アシマリの泡、“バブルこうせん”より、“ふうせん”を多層にしてたら……」

 

ミナトは少し悔しそうに口を引き結ぶ。

 

「ヒトカゲの“ほのおのキバ”は……俺の指示のタイミングが遅かった。反応は完璧だったのに……」

 

アランは拳をぎゅっと握る。

 

「……今度こそ、超えたい。あの壁を」

 

ヒトカゲがそっと隣に座り、しっぽの炎をアランの膝元に近づけた。

 

それは、小さな答えのように、ぽうっと赤く灯っていた。

 

 




次回「設定集(10話まで)」

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