アラン・リザードンと巡るポケモン世界記 作:エイト
昼下がりの柔らかな光が、アズナ村の広場に降り注いでいた。
地面には白いバトルラインが引かれ、周囲には子どもたちと数人の大人たちが、静かにその時を待っていた。
中央には、村長ハクオと、その隣に腕を組んだキノガッサの姿。
「さて、お前たち。今日は“三対一”。お前たち三人とポケモンたちで、わしとキノガッサに挑んでもらう」
「はいっ!」
アラン、ミナト、ユウマが声を揃える。
少し離れた場所では、ミヨが三脚を立て、小型の記録装置を調整していた。
「今回はしっかり映しておくわよ。あとで、ちゃんと自分の動きを見るためにね」
岩陰の下、三人は円を作るようにしゃがみ込み、木の枝でバトルエリアを描いた即席のマップを囲む。
「キノガッサは“くさ・かくとう”……“ひこう”“エスパー”“ほのお”が弱点だ」
ユウマが最初に口を開いた。
「ニャオハは“でんこうせっか”で翻弄。合間に“このは”でけん制する」
「アシマリは“こごえるかぜ”でスピードを下げて、補助に回る。正面からの“みずでっぽう”も合わせて」
「ヒトカゲは、正面突破。“ひのこ”でプレッシャーをかけて、近づいたら“ほのおのキバ”。もし接近戦になったら“ひっかく”で援護する」
三人は視線を交わし、迷いなく手を重ねた。
「勝てるかわかんないけど……全力で行こう」
「うん!」
「――準備はできたか?」
ハクオの問いかけに、三人は同時に頷いた。
ミヨが手を挙げ、旗を振る。
「勝負、始め!」
「ニャオハ、“でんこうせっか”!」
ユウマの指示に、ニャオハが一気に加速し、キノガッサの右側を半円を描くように駆け抜ける。
「“このは”で狙って、外側から!」
風に乗った葉が、キノガッサの視界を削る。
「ヒトカゲ、“ひのこ”! 上から広く!」
アランが声を張る。
ヒトカゲは助走をつけてジャンプ、空中で火花を扇状に散らす。
「アシマリ、“こごえるかぜ”正面!」
「ぷしゅぅっ!」
冷気を含んだ白い風が、一直線にキノガッサへと吹き抜ける。
三方向からの一斉攻撃――だが、キノガッサは地面を低く蹴り、滑るようにステップ。
「――ふむ、読み通り」
小さく呟いたハクオの声と共に、キノガッサは火花を跳び越え、風をクロスした腕で受け流す。
葉は体を旋回させて肩越しにいなした。
「“どくのこな”、続けて“しびれごな”、“きのこのほうし”!」
三色の粉が、空間に一斉に放たれた。
「ヒトカゲ、“ひのこ”で右の粉を焼いて!」
「ニャオハ、“このは”で左をはらう!」
「アシマリ、“バブルこうせん”で中央を消して! 防御重視!」
三匹は指示に応じて即座に反応。
ヒトカゲの火花が右側の毒の粉を焼き払い、ニャオハの葉が左のしびれ粉を吹き飛ばす。
アシマリの泡が弾け、中央の胞子をかき消して視界を戻した。
「ヒトカゲ、“えんまく”!」
灰色の煙がフィールドを覆う。
「アシマリ、“アクアジェット”で旋回! “こごえるかぜ”で縁を固定して!」
「ニャオハ、“でんこうせっか”で外周を回って“マジカルリーフ”!」
煙の内側で、三匹はまるでダンスを描くように、交差しながら軌道を刻む。
その中心――ヒトカゲが、鋭い赤の軌跡を残して突っ込む。
(今だ……!)
「“ほのおのキバ”!」
煙の中から炎の牙が閃き、キノガッサの肩へと突き立てられた――が、
「“まもる”」
一瞬、空気が張り詰める。
透明な球状の障壁がヒトカゲをはじいた。
刹那、光が全方向に広がり、続く“マジカルリーフ”と“こごえるかぜ”もはじき返される。
(くっ……全部、読まれてた……!)
「“タネばくだん”、足元に」
キノガッサが跳躍した瞬間、足元に落ちた実が爆ぜた。
地面が跳ね、三匹は軽く宙に浮かされ――
そのままキノガッサの腕の中に優しく収まった。
「……ここまで」
ミヨの声が響いた。
「勝者、キノガッサ」
「はい、これ。かすり傷と軽い火傷には、この軟膏を」
ミヨが持ってきた薬草を加工した小瓶を差し出す。
「こすらず、そっと押し当てるように塗るの。いい? やさしくね」
三人は順番に自分のポケモンに塗りながら、肩を並べて息を整えた。
反省会。ミヨが撮っていた映像が再生される。
「この“このは”、良かったわよ。ただもう少しだけ早ければ……“まもる”の前に届いてたかもしれない」
「ほんの一秒……でも、その一秒で全部変わるんだな」
ユウマがぽつりと呟く。
「アシマリの泡、“バブルこうせん”より、“ふうせん”を多層にしてたら……」
ミナトは少し悔しそうに口を引き結ぶ。
「ヒトカゲの“ほのおのキバ”は……俺の指示のタイミングが遅かった。反応は完璧だったのに……」
アランは拳をぎゅっと握る。
「……今度こそ、超えたい。あの壁を」
ヒトカゲがそっと隣に座り、しっぽの炎をアランの膝元に近づけた。
それは、小さな答えのように、ぽうっと赤く灯っていた。
次回「設定集(10話まで)」
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