アラン・リザードンと巡るポケモン世界記   作:エイト

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第25話 旅立ちの交差

村の広場には、午後の日差しが差し込んでいた。

石畳の上に子どもたちの影が並び、周囲には大人や仲間たちが集まり始めている。今日は――シロナたち先輩組が村を発つ日だった。

 

「……その前に、最後に記念を残さないか」

静かに提案したのはユウマだった。彼の白い髪が陽光に透けて、淡い水色がきらめく。

 

「記念?」とアランが首を傾げる。

 

「調査も終わった。けれど、彼らはただの客じゃない。僕たちに“刺激”をくれた先輩だ。なら――実戦で確かめたい」

 

その言葉に、シロナは少し驚いたように瞬きをした。だがすぐに柔らかく笑みを浮かべる。

 

「いいわね。お別れの前に、一戦交えてみましょうか」

 

セキリュウは腕を組み、短く「いい判断だ」と言った。プラターヌも「研究対象としても面白い」と笑い、すでにメモを取る準備をしている。

 

 

 

「やるなら全員で! アラン、ミナト、ユウマでチームだ!」

ミナトが声を上げると、広場の空気がわっと熱を帯びた。

 

観客の輪が作られる。

ヒナは両手を胸に組み、ゴチルゼルと並んで息をのむ。

エイトは腕を組んで、真剣な眼差しで息子の姿を見つめる。

エプロン姿のミユリは、「頑張れ!」と声を張り上げて手を振る。

小さな子どもたちも集まってきて、まるで祭りのような賑やかさになった。

 

 

「ヒトカゲ!」

「アシマリ!」

「ニャオハ!」

 

アラン、ミナト、ユウマが同時にボールを放つ。

小さな体が広場の中央に跳び出し、やる気に満ちた鳴き声を上げる。

 

対する先輩組は――

 

「ガバイト、お願い」シロナが放つ。

「ハクリュー」セキリュウが静かに呼ぶ。

「アブリー、頼むよ」プラターヌが軽快に投げる。

 

地面に爪を突き立てるガバイト。空を舞うハクリュー。光の粉を散らすアブリー。

その存在感は、圧倒的だった。観客の間にざわめきが広がる。

 

「三対三の……同時バトルだな」ナオヤが低く呟く。

「うわぁ……こっちが飲み込まれそう」ヒナが思わず息をのむ。

 

 

「――始め!」

セキリュウの合図で戦いが動き出した。

 

ガバイトが地面を蹴り、一直線にヒトカゲへ突進する。

ハクリューは空を舞いながらしなやかに体をくねらせ、アシマリに冷気を吹きかける。

アブリーはすでに光の幕を張り、仲間を覆っていた。

 

「速いっ!」アランが息をのむ。

だが彼も負けてはいなかった。

「ヒトカゲ、“えんまく”!」

 

白煙が広場に立ちこめ、視界を遮る。

その一瞬の猶予で、ユウマがすかさず声を上げる。

「ニャオハ、“かげぶんしん”!」

 

煙の中に、いくつもの緑の影が飛び散った。

ミナトも負けじと叫ぶ。

「アシマリ、“こごえるかぜ”!」

 

冷気が煙と混じり、渦を巻いて敵陣へ吹き込む。

観客からは「おおっ!」とどよめきが起こった。

 

「見事な連携だ……」エイトが感心したように目を細める。

ヒナは「やった……!」と小さく拍手をする。

 

 

だが、先輩たちも容赦はしない。

 

「ガバイト、“ドラゴンクロー”!」

煙を裂いて現れた爪が、ヒトカゲの影をまとめて切り裂く。

「ハクリュー、“しんぴのまもり”」淡い光が仲間を包み、凍気をはじく。

「アブリー、“しびれごな”!」粉が舞い、分身のいくつかを消し飛ばす。

 

「……っ!」アランが歯を食いしばる。

 

一気に形勢は逆転。観客席のミユリが思わず声を上げる。

「危ない!」

 

だがその時、ユウマの冷静な声が響いた。

「アシマリ、もう一度“こごえるかぜ”。ヒトカゲ、今だ、“ほのおのキバ”!」

 

凍気がガバイトの足を鈍らせ、その隙にヒトカゲが突進する。

赤い牙が閃き、ガバイトの鱗に火花が散った。

 

「やった!」ミナトが思わず声を弾ませる。

ヒナは手をぎゅっと握り、隣のナオヤも小さく頷いた。

 

 

戦いは激しさを増す。

ニャオハは俊敏に舞い、影分身を繰り返しながらアブリーを翻弄する。

アシマリは水弾を飛ばし、味方の退路を作る。

ヒトカゲは小さな体で必死にガバイトへ挑み続ける。

 

「……すごい。短期間で、ここまで連携ができるなんて」アヤネが呟く。

だが同時に、彼女の目は冷静だった。

「ただし……持久力がないわね」

 

その言葉どおり、子ども組の息は荒くなり始めていた。

一方、先輩組の三匹は――まだ余力を残している。

 

「決めよう。ガバイト、“ドラゴンダイブ”」シロナが声を上げる。

「ハクリュー、“りゅうのいぶき”」セキリュウが続ける。

「アブリー、“おまじない”」プラターヌの声が重なる。

 

巨大な影が空から落ち、雷鳴のような息吹が地を裂いた。光が走り、粉が舞い――

 

爆風が広場を包み込む。

 

 

砂煙が晴れたとき、子どもたちのポケモンは地に伏していた。

ヒトカゲは必死に体を起こそうとしたが、力尽きて倒れ込む。

アシマリとニャオハも同じように限界に達していた。

 

「……ここまでか」アランが唇をかむ。

けれど、その顔に涙はなかった。

隣でミナトとユウマも同じように立ち、ポケモンを抱き上げる。

 

広場に、拍手が広がった。

最初に両手を打ったのはミユリだ。

「すごかった! 本当に、よく頑張ったよ!」

子どもたちの仲間が声を上げ、大人たちも惜しみない拍手を送る。

 

 

シロナが一歩前に出る。

「あなたたちの戦い方は、まだ荒削り。でも……すごく光ってた。仲間を信じて動く力がある」

 

セキリュウも頷く。

「経験が足りないのは当然だ。それより、よくここまで互角に持ち込んだ」

 

プラターヌは笑みを浮かべながら、手帳を閉じた。

「学び続ければ、次はきっと勝てるよ。その目と心を忘れないで」

 

 

 

アランはヒトカゲを抱き締め、まっすぐに言った。

「次は――負けない」

 

ミナトはアシマリを撫でながら、目を輝かせる。

「もっと上手く支えられるようになる!」

 

ユウマはニャオハを抱え、静かに頷いた。

「僕たちは、今日を基準に進む。必ず」

 

 

 

その言葉に、シロナたちは微笑んだ。

そして――別れの時は、静かに訪れる。

 

広場の出口で、シロナたちは荷を背負い、村の人々に頭を下げた。

子どもたちはその背を見送りながら、それぞれの胸に新しい決意を抱く。

 

旅立ちは、別れではない。

それは――次の成長への始まりだった。




次回「設定集(11話~25話まで)」

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