やっぱり、『軟弱者』かもねぇ…   作:F覚醒ヅダ

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第9話 赤錆の死霊と青い巨星と軟弱者

 

 ガルマ・ザビが戦死してからホワイトベースは太平洋に進路を取り、進んでいた。ある晩カイは自室でメモを取っていた。

 

◆◆◆

 

 ガルマ・ザビの死は原作通りの展開だろうと予測する。つまり、ここから激しい戦いが繰り広げられることとなる。

 ガルマがホワイトベースに特攻を仕掛けたのを確認してか、俺とスレッガーさんの前からシャアは引いて行って、ガルマの取り巻きだったザクたちはセイラさ……ガンタンクとガンキャノン、そして戦線に姿を現したホワイトベースによって処理された。

 

 …が、この先で驚いたのは、ガルマの恋人…イセリナがすぐにでも復讐に来るはずだったのだが…来ない。脱走に失敗したのか?それとも、原作と違ってそこまでの間柄ではなかったというのか?…なんて想像でしか憶測を語ることが出来ない。

 

 アムロとブライトの仲は……良くはなってると思う。ミライさんもニコニコしてたから大丈夫…だと思う。

 

 ここからの問題は…

 

「さぁて…ここからランバ・ラル隊との戦いが主になってくるかぁ…」

 

 【青い巨星】、ランバ・ラルとの戦いか…アムロには頑張ってもらわないとな…いや、もちろん支援はしますけどね?

 …あ、もしアムロが脱走しないなら…ランバ・ラルとの出会いはどうなるんだ…?さ、さすがに歴史に響くようなことでは…無い、はず…だよな?

 

 …考えたって仕方ねぇや…交代の時間までちょっと眠らせてもらおうかね。

 

 

◆◆◆

 

 

 ジオン公国軍機動巡洋艦ザンジバル級の中では、1人の金髪の女性が頭を悩ませていた。

 そこに、軍用のステンレスマグカップに入ったコーヒーが差し入れられる。顔を上げると、士官の服に身を包んだ中年の男が心配そうな顔をして立っていた。

 

「…あぁ、アナタ…」

「どうしたハモン…もしや…?」

「えぇ…【赤錆の死霊】のことですわ…」

 

 はぁ、と息をついて受け取ったコーヒーを口に含むハモンの肩を、男が優しく叩く。

 

「まぁ…若い少女の心は難しいってやつさ」

「あら?まるで私が若くないみたいな言い方じゃありませんこと?」

「え!?あぁいや!!そうじゃなくてだな!その…!」

「フフッ、冗談よ……でもあの子、どうしたっていうのかしらね…ご飯もあまり食べないし…」

「ふむ…よくわからない事ばかりだな…なぜこっちに配属されたかも不明ときた…おまけに彼女が持ち込んだ…何だあのモビルスーツ…急ごしらえの改装にもほどがある…まぁゲリラ屋からすれば賞賛に値するが…」

 

 男がハモンの机の上の資料をめくる。そこには【赤錆の死霊】の情報と持ち込んだ機体についてが書かれていた。

 

「…ヅダ?って奴の胴体に地上型ザクの脚、武装は古いザクが持ってるようなシールドに…最新のヒートソードに……なんだ?ジャイアント・バズ?どうなってるんだ…」

「それが分かれば苦労しませんわ…それに彼女自身の経歴…見た?」

「何?…ほう!士官学校卒業か!…………む?」

「気づいた?」

「…あぁ」

 

 男は目を細め、経歴の欄を改めて見る。

 

「…地球出身とはな」

「そう、両親はすでに死亡…その後自身と2人の弟妹はサイド6に移住…さらに3年前サイド3へ移住。そのまま士官学校へ入学、卒業…そこからは…」

「…めざましい戦果だな…階級は中尉か…赤い彗星がいなければもっと昇進出来ていたかもしれん」

「ついたあだ名が【赤錆の死霊】…年頃の女の子に付くあだ名としてはちょっと怖い名前かもしれませんわ」

「それが戦場だ。女も子供も…関係ない」

「…そうね。はぁ…もう一度様子を見てきます。そろそろ大気圏に突入してそれが終われば木馬の近くに降りられることですし…」

「うむ、頼んだ」

 

 ハモンはコーヒーを飲み干し、机にカップを置いた後、【赤錆の死霊】のいる士官用の部屋へと向かった。

 

「…失礼するわね?」

「………」

 

 【赤錆の死霊】は何をするわけでなく、ただ目をつぶってベッドに座っていて、ハモンが部屋へと入ってもその姿勢を崩すことは無かった。

 他の隊員と違い持ち込んだ手荷物が極端に少なく、部屋も殺風景で、備え付けの机の上には少し前にハモン自身が持ってきた食事が全く手を付けられず置かれている。

 

「また食べなかったのね…食べないと作戦に支障が出るわ。全部とは言わないから…せめて半分くらいは食べてちょうだい?」

「………」

「…生きて弟さんや妹さんの元に帰るためにも…ね?」

 

 諭すようにそう言うと【赤錆の死霊】はやっと目を開き、まっすぐとハモンを見据える。

 

「…アタシはあの子達を生かす為に戦ってるんだ。アタシが死んだら軍だけじゃなく、保険会社からの保険金だってあの子たちに降りる…金銭に苦労はさせないさ」

「そ、そうじゃなくて…!その子達には貴女が…」

「アタシの命で…あの子たちのために連邦を潰せるっていうんなら…!」

「っ…」

 

 ハモンが見た【赤錆の死霊】の目は、ただ真っ黒な闇と連邦への明確な恨みを抱えていた。

 

「…貴女…何を見てきたの…?」

 

 その問いに初めて【赤錆の死霊】はニイッと不気味に笑って見せた。

 

 

「見たくないものだけを全部さ」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 相も変わらずの太平洋の上、ホワイトベースでは様々な作業が進められていた。

 各モビルスーツのコンピュータや機体自体のメンテナンスや、ホワイトベース自体の調整や修理など、あちこちで機器をいじる音がする。

 

 アムロもまたガンダムのコンピュータの調整を行っていたわけだが…

 

「アムロ!あら、また修理?」

「フラウか…うん…これは予備のコンピュータだよ。何かあった時にすぐ切り替えないといけないから、こっちもちゃんと修理や調整をしとかないと…」

 

 バスケットを持ってきたフラウが作業中のアムロをのぞき込み、その足元ではアムロの作ったロボット、ハロがピョコピョコと跳ねている。

 

「アムロ、サイキン、ゲンキ、アムロ」

「そうかな?」

「んーそうね…顔色は良くなってるかもね。ただ、ちゃんとシャワーは浴びたほうがいいわよ?」

「アムロ、フロハイレ、アムロ……クッセ!!」

「わ、わかってるよ…これが終わったらそうしようと思ってたんだよ…」

「ホントかしら…あ、これご飯ね、あとで回収に来るからちゃんと食べてよね!」

「分かった、ありがと」

 

 と、以前であればそっけなかったアムロの対応も変わってきており、ホワイトベースのクルーたちの空気も変わりつつあった。

 そしてこれはアムロに限った事でなく…ブライトにも変化があった。

 

「ブライト艦長、メインエンジンの3番ノズルが表示より2パーセント推力不足ですけど…」

「実数値にしてどの程度だ?」

「およそ40トン」

「ふむ…どこかで降りて調整か修理をしたいところだな…うん?」

 

 セイラとブライトが上がってきた報告書を見ながら修繕の算段を立てていると、ちびっ子3人組が掃除用具を持って「わーい!」とブリッジに入ってくる。

 

「掃除してくれるのはありがたいが…大丈夫か?」

「だいじょーぶだもん!できるもん!」

「そーだそーだ!」

「…分かった。じゃああっちにいるリュウからどこから掃除したらいいか聞いて、しっかり頼むぞ」

「はーい!」

「ラッキーボーイだぜぃ☆」

「ちばぁ!!」

 

 ブリッジの端からリュウの「あ!また言ったなぁ!?」と半ば諦めたような声をしながらも、やれやれとちびっ子達と共に掃除を始めた。

 

「…で、先ほどの件だが…3番ノズルを再度チェックしてくれ。それで…ん?セイラ…それにミライ…どうしたんだ?そんな顔をして…」

「フフッ…別に?ねぇセイラ」

「えぇ、そうね」

「な、なんだ…?そんなにおかしかったか…?」

 

 クスクスと笑う女性陣と、更にその様子を見てニヤニヤとしていたオスカとマーカーだったが、突如警報が鳴り響く。

 

「なんだ!?オスカ、マーカー!どうなっている!?」

「ジオンです!大気圏を突っ切ってきています!接敵するコースです!」

「大気圏突入用のカプセルとは違うようです!観測した規模から…巡洋艦クラスと思われます!」

「追手か…!!」

「!敵、ミサイル発射!」

「何!?か、回避行動!!」

 

 直後、回避行動は間に合わず、被弾してホワイトベースはその身を大きく揺らすこととなる。

 衝撃の後、焦った声で、カイからブリッジへと通信が入る。

 

『ブリッジ!こちらモビルスーツカタパルトで作業中のカイだ!どうしたっての!?』

「こちらブリッジ!ジオンからの攻撃だ!第6ブロックに被弾!!」

『…!了解!モビルスーツでいつでも出られるようにしとく!……って、だからスレッガーさん!グラビアの写真貼るなっての!あとそれアムロのガンダムだからな!?』

『いーんだよ!青少年ってのはこういう小さなとこから大人になってくの!!』

 

 先ほどまでの和やかな空気とは一気に変わり、緊迫した空気が張り詰める。パイロット達はそれぞれのモビルスーツの元に集い、出撃を待つ。

 一方でブリッジではブライトたちが突破方法を思案していた。

 

「…!ミライ!右舷雲の中に突っ込め!嵐を利用する!」

「了解!…ッ!」

 

 突如雷が鳴り響きその場にいた者達を驚かせる。

 

「総員慌てるな!自然現象の雷だ!ホワイトベースには雷が落ちても大丈夫な仕様になっている!相手も怯むはずだ!その隙に何とか安全に着陸できる場所を探す!」

「前方、赤外線監視モニター開きます!」

 

 モニターに映し出された地形には群島の内の1つがあり、ホワイトベースを隠す、とまではいかなくとも、停泊しての迎撃に十分に使用できそうだった。

 

「あそこだ!ミライ、あの東の群島にホワイトベースを降ろせるか?」

「一番広いところになら!」

「あぁ、そこで構わない!ガンダム!ガンキャノン!ガンタンク!並びにコアファイター隊着陸後はすぐに発進せよ!」

 

 ホワイトベースが着陸すると同時にガンダムを先頭とするホワイトベース隊が発進。結局のところ、ガンダムにはアムロ、要望を受けてシールドを装備するようになったガンキャノンにはカイ、ガンタンクは調整を受け、1人でも操作ができるようになったため、ハヤトが単身で、その他スレッガー、セイラ、ジョブ・ジョンはコアファイターでの出撃となった。

 

 ジオンの艦を待ち構え、ガンキャノンとガンタンクは遠距離砲撃の構えを見せ、ガンダムがモビルスーツが出てきたときのための遊撃要因とし、コアファイターは支援に回るようブライトが指示を飛ばす。

 

 数分もしないうちに嵐の中から雲を掻き分け、ジオンのザンジバルがその姿を見せる。

 

「総員、目標敵ジオン艦!全砲門開け!この雨だ…ビーム兵器は半減すると思っておけ!撃ち方始め!」

 

 的確。とまではいかないが、ザンジバルに砲撃を命中させるホワイトベース隊だったが、回避をしながら上空を通り過ぎると同時に4機の機体が降下する。その機体をカイは仰ぎ見て睨む。

 

「…来たかグフ…と…ッ!?アイツは!!」

 

 忘れるはずがない。あの赤錆色のヅダ…が、以前の装いとは少し変わり、地上型のザクのパーツなどが垣間見え、地上戦に適応させたのだと感じさせる。

 

「…わざわざ追ってきたってのか…!2回目となると偶然じゃないだろうな…もしやと思っちゃいたがあのヅダのパイロットが歴史の改竄を…?」

 

 カイはガンキャノンを走らせ、ヅダのヘイトを受けるためにわざと近寄り、攻撃を開始する。

 

「アムロ!ハヤト!コアファイター!あの青い新型モビルスーツとザク2機を頼む!俺はこの赤錆をぶん殴る!」

『りょ、了解!』

 

 頭部のバルカンで甘い狙いを見せながら、肩のキャノンで砲撃し、着地をアムロたちと少し距離を取らせて着地させる。直後、カイはヅダへ向けて通信を試みる。

 

「よぉ、この間はよくもやってくれたな…おかげでぐっすりした後に別世界が見えたぜ?えぇ?」

『…まだ、軍を辞めてなかったんだね…』

「当たり前だ!俺はやらなきゃならないことがまだたくさんあるんだっての!」

『そう…じゃあもう一度だけ警告してあげるよ…軍を辞めて…どこか戦争の無い場所へ行くんだね』

「やなこったね!!さっきも言ったろ!やらなきゃならない事…助けなきゃいけない人がいるんだよ!」

『…やっぱりアンタって………いいさ、じゃあ再起不能にしてやる!今度は避けそこなえばその首が飛ぶと思うんだね!』

 

 直後ヅダから放たれた一発のバズーカはガンキャノンに新しく装備された…プロトタイプガンダムが持っていたシールドで受けてやり過ごす。

 その間にも走りこんできたヅダのヒートソードがガンキャノンの左脇腹に迫ろうとするも、「待ってたぜ!白兵攻撃をよ!!」と、シールドの裏に隠していたヒートホークで競り合うように受け止めて見せる。

 

『!?ヒートホーク!?』

「へへっ…ジオン軍の部隊の残骸から拾ってこの機体でも使えるようにしておいたのさ!こうやってシールドの裏に隠せるしな…!それにアンタとは一度やり合って手の内は見せてる。その上でこの機体に近接武器がないとでも思ってたんだろ?」

『クッ…!』

 

 弾かれるようにお互いが距離を取る。雨でビーム兵器の威力が落ちていても、ガンキャノンには他にも射撃の攻撃手段がある。対してヅダの射撃武器は今回降下の事を考えて実弾とはいえ、弾が5発装填のジャイアント・バズしか携行していなかった。

 

「…今度はこっちからだ!この間のお返しを喰らいやがれ!」

 

 ビーム・ライフルで威力の低い牽制をかけつつ、肩のキャノンを撃っていく。ヅダの機動性は確かにあったのだが、回避行動に装備重量や地球の重力に上手くヅダが付いてこれておらず、余裕を持った回避が出来ず、何とか回避が出来ている。という状態になる。

 

「そこだ、貰った!!」

『ッ!?』

 

 バーニアを吹かして回避した後の着地するタイミングを見計らい、キャノンを放つ。ヅダの手持ちのシールドに威力は阻害されるが、バランスを崩し、転倒させる。

 

「チャンスを逃すかってんだ!うおぉぉぉ!!」

『…ッ…負け、かな…それなら、いっそ…』

「っ…?…え、ぁ…?」

 

 倒れたヅダに駆け寄り、無力化をしようと駆け寄ったガンキャノンをカイは停止させる。

 

 倒れたヅダの上に、そのパイロットがコクピットから出てヘルメットを外し、立っている。

 

 そのパイロットは頬がこけているが、カイには見覚えがあった。

 

「…なん、で…」

 

『カイ、聞こえてるだろ?…まだこの時のアンタにはアタシのこと分からないとは思うけどさ…アタシ…カイになら討たれてもいいよ』

 

「あ、あ……ぁ…」

 

◆◆◆

 

 どうして気づかなかったのか。

 …いや、もしかしたら気づいていたのかもしれない。

 この姿を見なくても、この声で分かったはずなのに…

 

 では、何故?

 

 きっと頭の中で無意識にその答えを否定していたんだろう。

 

この人ではない。

 

この人の可能性は無い。

 

この人のはずがない。そんなワケない。

 

 

そんな甘い考えに無情にも心を突き刺すように現実という真実が目の前にある。

 

 

「なんで…なんでなんだよぉ…!!」

 

 俺の中で、カイ・シデンの中で…敵として出会いたくない。出会ってはいけない…その人物は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…ミハル!!なんでだよ!!」

 

 

 ミハル・ラトキエだった。

 

 

 





次回 「ミハル・ラトキエと軟弱者」
『彼』は生き延びることができるか?
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