やっぱり、『軟弱者』かもねぇ…   作:F覚醒ヅダ

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第11話 嵐の島と軟弱者《前編》

 

 ……………。

 

 

 あれから初代のアニメ通りにアムロの故郷でアムロが母と…カマリア・レイと対面し、母との決別を誓った。が、その時のアムロはアニメとは違い、堂々としており、銃を撃つあのシーンでも母から「人様に銃を向けるなんて!」と言われても「守るためさ」と冷静に言い放った。

 

「…母さん、僕を『こんな子に育てた覚えはない』って言ったね。でも僕は今こうしてホワイトベースの皆が支えてくれるからこそ『ここ』にいるんだ。未来がどうなるかなんて分からない。でもみんなと一緒に戦う『これ』が今の僕なんだ…さよなら、母さん。時代が変わったら…いつかまたどこかで」

 

 と、涙を流すことも無く、その様子を見ていたブライトの方が

 

「い、いいのかアムロ、その…」

 

 という風に戸惑っていた。

 

「いいんです。これで心残りが一つ減りました…ずっと母さんに甘えてられませんからね、僕も大人にならなきゃ」

「…アムロ…」

 

 

 そしてその後のホワイトベースの補給と修理をマチルダ隊から受け、そしてジオン兵たちからガンダムに爆弾が設置された時は危険を承知で総出で爆弾を解除していた。

 

「アムロ!この配線を切るんだよな!?」

「そうだハヤト!その後こう…90°捻って回路を外すんだ!」

「全く…ガンダムちゃんも大変だなァ…爆弾なんてよ。取り付くのは美女だけにしてほしいよな…なァ?ブライト艦長?」

「…ッ、すまないスレッガー中尉…ッ!今それどころじゃなくて…!この線が…!」

「あらま、コリャ失礼。プルプル震えちゃって、まァ」

「セ、セイラさんは離れていた方が…」

「あら、私でも出来てよ…ほら」

「え、あ、ホントだ…すげぇ…」

「…カイ?もしかして私には無理だ…なんて思って?」

「ひえっ!?」

 

 

 

 ……………。

 

 

 

 ホワイトベース隊の雰囲気はすこぶるよかった。これならアムロが脱走するようなことも無いだろう。その場合ランバ・ラルとの接点がないのが少し気がかりにはなる。そこはどうしたもんかね。

 

 

 

 ……………。

 

 

 そうして一日一日が過ぎていく中で俺は『俺』を思い出そうとしていた。

 カイ・シデンになる前、前世の俺。死んだはずの俺。

 

 【夏の暑い日、上司から代打で頼まれた外回りに出かけている最中に電車の遅延から取引先との時間にギリギリ間に合うかというところで近道をしようとした階段から足を踏み外して、意識を失った】

 

 そこまではすぐに頭に浮かぶ。

 そして、

 

【ガンダム関連の知識を持っている】

 

 ということは、俺は漫画なりアニメなりゲームなりで【機動戦士ガンダム】及びそのシリーズを知っているんだろう。と、そこまでは分かるし、思い出せる。なんなら多分アニメ的にはそろそろ「ククルス・ドアンの島」辺りじゃないだろうか?

 

 だが、

 

 自分の名前、姿、どんな奴だったかが浮かんでこない。

 

 おかしい。年齢は25歳。性別は男。ここまではオーケー。

 

 …出身地……家族構成、学校……こっちはダメか…

 

 仕事は…そうだ、仕事は会社の情勢なんかを扱う経済雑誌の出版社のまだまだ新人というか…確かあの日、上司の代わりに取引先にインタビューに…

 …ダメだ。ここまでしか思い出せない。代打で頼んできた上司の名前も顔も思い出せない。ただ、『そうだった』としか記憶にないのだ。

 

 これはどういうことか?もしかしてこの世界に来る時に断片的な記憶しか持ってこれてないのか?いや、でもガンダム関連の知識があって自分のは無いって…どんだけガンダム好きだったのよ。

 

 ミハルの謎を追うこともしなきゃならんが…これは、自分の謎も追わないといけないか…?『カイ』さんに会うことが出来たならこれも聞かないとな…

 

 …………。

 

 すっかり自室となったホワイトベース内の一室から眺める窓の外は、大雨や竜巻が渦巻く嵐や雷で酷く荒れていた。

 こりゃ「ククルス・ドアンの島」の話には早そうだな―――

 

 

◆◆◆

 

 

「うーむ…ブライト、どう思う?」

 

 ホワイトベースの艦橋ではすっかりと副長ポジションになったリュウがオスカから受け取った打ち出された緊急信号を見ながらブライトと意見を交わしていた。

 

「…周囲に他の連邦軍はいるにはいるが…この大嵐ではここまで来るのにも一苦労だろうな…そしてこの信号に一番近いのが…このホワイトベース、か…」

 

 現在ホワイトベースは予想外の嵐で、ある群島の一つに停泊していた。そして数刻前に味方のSOSを知らせる緊急信号を受け取ったのだ。この地域一帯はジオンの勢力下にギリギリ入っていない部分でこの大嵐で帰れなくなった連邦兵のものだろう。というところまでは推察していた。

 

「…さてどうするか…ミライ、ホワイトベースは動かせるか?」

「え、ええ…でも、このあたりの群島でやっとホワイトベースが安定して停泊できたのがこの島よ?その島にも同じように停められるならいいけど、そうじゃなかったらこの嵐の中味方の捜索をする間上空で待機するのは…出来るか分からないわ」

「そうか…」

「そうなると…ブライト、ガンペリーならどうだろう?モビルスーツ2機までなら搭載できるしホワイトベースよりも小スペースで済むから着陸場所には困らないはずだ」

「…そうだな。コアファイターではこの嵐は危険か…よし、では編成を発表する―――」

 

 そして発表された編成は以下の通り、

 

 ガンペリー:現場指揮・通信・レーダー技師…リュウ・ホセイ

       操舵…ジョブ・ジョン

 搭載モビルスーツ:ガンダム…アムロ・レイ

          ガンキャノン(盾持ち)…ハヤト・コバヤシ

 

 となった。これを知ってカイは「お留守番か」と肩をすくめた。

 

「なお、スレッガー中尉、カイ、セイラについては、この嵐の状況次第ではあるが…増援としてモビルスーツやコアファイターで出撃する場合があるためスタンバっておいてほしい」

「ほいほいっと…カイ、セイラさん行こうぜ」

 

 

 

 その後ガンペリーが発進して1時間半が経過したが嵐は収まることなく、吹きすさんでいた。

 ノーマルスーツでパイロットの待機スペースで、スレッガーはハンバーガーをモシャリと食べ、セイラはどこか考え事をし、カイがソファで横になるなどして過ごしていると、ブリッジから通信が入った。

 

『こ、こちらブリッジ!第三デッキにガンペリー緊急着艦します!待機パイロットは大至急各モビルスーツに搭乗!ガンペリーに搭載して急いで再発進してください!』

 

「は!?」

「おいおいどーしたっての!」

「待機パイロット了解、中尉、カイ、急ぎましょう」

 

 三人が慌てて第三デッキに走り込むと、ガンペリーには頭部と左腕を破壊され、更には足が拉げてしまったガンキャノンが横たわるように乗せられており、青ざめた様子のリュウがあたふたと、こちらも急いで駆けてきたブライトに様子を説明していた。

 

「ブライト!!あ、アムロとハヤトが!ザクが来て!でも後から!こう…!ザパアッて!!ハヤトが…ガンキャノンがやられて!子供たちを乗せてアムロが逃げろって!」

「落ち着くんだリュウ!何があったか最初から話すんだ!」

「あ、あぁ、えっと…」

 

 

◆◆◆

 

 

 ガンペリーの分隊はホワイトベースを発進してから約10分後、SOS信号が出ていた島に着陸。ガンダムとガンキャノンはそれぞれガンペリーから大地に立って周囲を見渡していた。

 

「…こっちもひどい雨だな…」

『全くだ…よぉしアムロ、ハヤト!とりあえずSOSが確認された信号のところまで偵察しに行ってくれ』

『了解です!アムロ、一緒に行こう』

「そうだな…この雨だ、地面がぬかるんでるな…」

 

 島は狭くはなかったが木々が生い茂っていたり、岩肌の見える小高い山があったりと、ホワイトベースが停泊するには向いていなかった。強いて言えば海岸になら停泊できたかもしれないがあいにく海岸は大嵐で荒れに荒れていた。

 

 ガンダムとガンキャノンが森の中へと歩みを進めSOSの信号があった場所に辿り着くと、そこには哨戒機だろうか?が1機完全に破壊された状態で打ち捨てられており、尾翼の部分には地球連邦軍所属のマークがかすれていながらもなんとか読み取れる。

 

『こ、これは…』

「…周囲にパイロットは…いないみたいだな」

『いても無事じゃなさそうだ…』

 

 機体のコクピットだったであろう場所は執拗に破壊されており、もはや原型をとどめていなかった。

 

『こちらガンペリーのリュウだ。何か見つかったか?』

「アムロです。連邦軍の哨戒機を発見しました…でもボロボロでパイロットもいません」

『うーむ…敵が近くにいるかもしれん!映像や写真をいくつかと、残骸の一部を持って帰って来てくれ。そんな状況じゃパイロットは探せんだろう』

「了解!……だってさ、ハヤト早いとこ帰ろう」

『うん……ん?』

「?どうした?」

『いや…アムロ、なんかさ…あっちの岩山の表面…変じゃないか?』

「…?あっ」

 

 ガンダムのカメラでズームして見た岩肌には何か大きなツメで引っ掻いたような傷が見られたのだ。不審に思い近づくと雨にさらされているが焼け焦げた後の木々や砕けた大岩が散乱していた。

 

『おぉい、アムロ、ハヤト!どうしたんだ?』

「…リュウさん、ここで戦闘があったみたいです。映像送ります」

『な、何だって!?…ウーム…確かに…!となるとますますマズイな…急いで引き返すんだ!』

「了解!」

 

 

 その後機体の残骸の一部を回収した後にガンペリーと合流したアムロとハヤト。撤退前にリュウが持ち帰られた残骸の写真や映像などを先にホワイトベースに送ろうとしたその時、「ソレ」は現れた。

 

 

「!レーダー反応!?ハヤト!来るぞ!」

『!?あっ!アムロ!ザクだ!!って…あれ…?』

 

 一機のザクがヨロリヨロリとこちらに向かって歩いてきたのだ。

 だが、その風体は凄惨で、左腕は無く、頭部や右脚のザクⅡ特有のパイプは千切れてオイルが滴り、、機体は全体的に撃ち込まれたような穴や切り裂かれただろう傷だらけで、モノアイは今にも消えてしまいそうなほどに光が薄かった。

 残された右腕の手は雨風をしのげるように軽く握られており、中には数名の子供たちがいた。

 

『そこの、連邦軍…!頼む、俺は、俺はどうなってもいい…!子供たちを!!そして早く逃げるんだ!』

『え!?と、とりあえず止まってください!ど、どうするんです!?アムロ、リュウさん!?』

『むぅ……ええい!!…こちら了解した!貴方はジオンの兵とお見受けする!俺は地球連邦軍所属のリュウ・ホセイ曹長だ!名を名乗って欲しい!』

 

 リュウのその声に、ザクはギシギシと身を軋ませながら片膝をついて子供たちを優しく降ろし、パイロットは声高にこう答えた。

 

 

『…俺は…ククルス・ドアン…!ジオンの脱走兵だ…!』

 

 

「ク、ククルス…ドアン…?脱走兵だって…?」

『…ジョブ、子供たちをガンペリーの中へ!ドアンさん、貴方も降りてください。詳しく話を―』

『そんな時間はないのだ!奴らがまた…!』

「奴ら…?」

 

 ザクの手から降ろされた子供たちをジョブ・ジョンが「さ!こっちに!」と誘導した、ちょうどその瞬間だった―

 

 ドウッ!!と大きな音と共にビームのようなものが海の中から撃ち込まれ地面を大きく揺らす。ハヤトの乗っていたガンキャノンはその反動でぐらりとバランスを崩してしまった。

 

『いかん…!もう来たか…!!』

 

 海の中から鋭く大きな爪を持つ巨大な手がギラリと現れたかと思えば、ザバリとその手の持ち主が手に見合うような焦げ茶色の巨体を海から上陸させてアムロたちに見せつける。

 

「な、なんだ!?モビルスーツだっていうのか!?」

『ぬぅ…また新型か…!アムロ!ハヤト!気を抜くな!ザクとは違うぞ!ザクとは!』

「で、でも子供たちは…!?」

 

 ただ事ではない状況に、ドアンから頼まれた子供たちの安否を心配するアムロだったが、直後にジョブ・ジョンから『大丈夫!』と連絡が入る。

 

『子供たちは4人とも全員ガンペリーに乗ったよ!気にせず戦ってくれ!』

『よ、よぉし!アムロ!行くぞ!ドアンさんは下がってください!相手は1機なんだ…これなら…!』

『よ、よせ!相手は―!!』

「ま、待つんだハヤト!!」

 

 体制を立て直したガンキャノンがシールドの裏から拾い物のヒートホークを装備し、敵に迫ろうとしたその時、右からの衝撃がコクピットの中のハヤトを大きく揺さぶった。

 

「わあぁぁぁッ!?」

『ハヤト!なっ…も、もう1機…!?』

 

 ガンキャノンに攻撃を加えたのは三本ツメに水色の機体で、試験機だろうか、所々に黄色と黒の危険表示の塗装が施されていた。

 

『よく聞くんだ二人とも!あの茶色の機体は大きなツメだけでなく腹部にメガ粒子砲が装備されている!あっちの水色の機体も両腕から同様にメガ粒子を単発ずつだが放ってくる!』

「メ、メガ粒子砲…!?」

『ドアンさん!有効打はありますか!?』

『装甲が硬く大岩などでは歯が立たなかった…だが、ビーム兵器なら、とは思うのだが…』

『…この雨…でも接近したら効果はあると思います!以前ザクに同様の手段で撃破しました!』

『接近か…!すまない、ビーム兵器を持つ君たちの機体に頼ることになる!俺も出来る限りは支援する!」

 

 そうしてガンダムとガンキャノン、そして手負いのザクという急造チームによるモビルスーツ戦が開始されたのだが、茶色のずんぐりとした機体は陸上での機動力は低いものの、装甲が厚いのか、攻撃が通らない。さらに腹部のメガ粒子砲が接近を許さない。水色の三本ツメの機体は機動力が良く、更には腕がしなやかに曲がる上、少し伸びるため、初見では間合いが掴みづらくなっている。

 

 その犠牲になったのはガンキャノンだった。

 接近戦にまでは持ち込めたのだが、大きな手でがっちりと掴まれてしまい、投げ飛ばされてしまったのだ。

 ハヤトは柔道の経験者だったため、受け身を取ろうとしたがモビルスーツと人体とでは勝手が違い、失敗する形で足が拉げる形で機体の無防備を晒してしまう。

 さらに落下と同時にそこを追撃するように水色のモビルスーツが腕部のメガ粒子砲で腕と頭を破壊したのだ。

 ハヤトの操縦技術が悪かったという話ではない。むしろハヤトはアムロやカイに追いつき、負担を減らそうと暇さえ見つければシミュレーションに籠り、動きや戦い方を練習していたほどだった。

 

『うわあぁぁぁ!!?』

「ハ、ハヤト!!くっ!?」

 

 見た目通りの重厚感のある勢い任せの攻撃にアムロも翻弄されていた。ただ、勝てない相手ではない。とは感じていたのだ。しかし現状では手負いのザクに、もはや行動不能だろうガンキャノン、今はロクな兵装を積んでいないガンペリーを近くに背負いながら戦うのは骨が折れる。

 

「…ッ!ドアンさん!ガンキャノン…その赤い機体を後ろの輸送機に乗せれますか!?」

『可能だ!右腕はまだ動く!』

「よぉし…!じゃあお願いします!…リュウさん!ハヤトを積み終わったらホワイトベースに一時帰還してください!」

『な、なんだって!?アムロお前はどうするんだ!』

「僕なら大丈夫です!戻ったらカイさん達を呼んできてください!それまでは持ちこたえて見せます!」

『~~~~ッ…!!グググ…!分かった!死ぬんじゃないぞ!!ジョブ!急速発進用意だ!ガンキャノンを積んだらすぐに出るぞ!』

『りょ、了解…!!』

 

 足早にドアンのザクがガンキャノンを半ば無理やりねじ込むようにガンペリーに押し込んだ後、リュウたちは強引にガンペリーを発進させる。

 当然敵はそれを許すことはせず、メガ粒子砲で撃ち落そうとするが、

 

『あの輸送機には子供たちがいるんだ!そうはさせるか!!』

 

 と、手負いの機体とは思えない鋭い蹴りを入れて狙いを外させた。

 

『…フゥッ……!!アムロ君と言ったな!』

「は、はい!」

『こちらのザクの状態は気にするな…!まだまだ戦える!』

「…っ、分かりました…!でも、あの子供たちのためにも死なないでくださいね!」

『フフ…死ぬな、か…俺は元とはいえジオン兵なんだぞ?いいのか?』

「知りませんよ!元、なだけで今は違うんでしょ?じゃあ少なくとも敵じゃないですよ」

『そうか…そうだな…では、背中は預けたぞ!アムロ君!』

「はい!ドアンさん!」

 

 

 その言葉と同時に、ガンダムと手負いのザクは敵モビルスーツたちに向かって駆け出していた。

 

 

 




アムロとドアンに加勢するべくプロトタイプガンダムで発進するカイ、
いるはずのないその機体を見て、疑問を深めていく


次回  嵐の島と軟弱者《後編》
『彼』は生き延びることができるか?
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