やっぱり、『軟弱者』かもねぇ…   作:F覚醒ヅダ

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第12話 嵐の島と軟弱者《後編》

 

 リュウの報告を聞いた時、俺は「ゴッグとズゴックじゃね???」と思った。

 え、いるの?いま?出番早くない???

 あと、ドアンいるの?えっ?『ククルス・ドアンの島』の話ってこんな嵐の日だったっけ?

 

 …どうにも変な気がする。まさかとは思うがどちらかにミハルが乗っていないだろうか?いや、今ランバ・ラル隊にいるのだとすればそれはないか…

 だが、ドアンが狙いでゴッグとズゴックを出したのだとしたらドアンがいなくなることが相手にとって都合のいい事なのだろう…もしかしてスーパーモードとかになれたりするタイプのドアンなのだろうか?

 

 ボロボロになったガンキャノンがガンペリーから運び出される…派手にやられたなぁ…幸いハヤトは無事だったが、ガンキャノンを壊してしまったことをひどく落ち込み、本人もボロボロの状態なのに俺に土下座までしてきたのだ。

 

「すいませんカイさんッ!!カイさんのガンキャノンを…!」

「よ、よせって…!なぁ、お前さんが無事だったからよかったじゃないの!ホレ、アレだ!ガンキャノンはオムルさんに…それでもだめならマチルダさんの補給隊に直してもらえばいいんだよ!」

「でも…」

「リュウから聞いたぜ?積極的に相手に仕掛けにいったんだろ?よくやったじゃねぇか…あとは任せなって!ちょっくらアムロのお迎えに行ってくるぜ」

「カイさん…」

 

 そう言ってハヤトに背を向けてひらひらと手を振った後、待機中のガンペリーに走っていくと、すでにプロトタイプガンダムが積み込まれようとしていた…あれ?ガンタンクは…?

 と、思っていたらスレッガーさんが手を振って声を掛けてくる。

 

「おぉい!カイ!ブライト艦長からプロトタイプガンダムに乗って出ろってさ!」

「了解!ガンタンクは!?」

「ギチギチで一緒に運ぶのは無理だってよ、先に現着しといてよね」

「ほーん…手柄を先取りしたらごめんよ!…で、その顔どしたの?」

「…これか?」

 

 スレッガーさんの左頬には赤い平手の跡がモミジのようにくっきりと付いていた。

 

「…セイラさんに『俺が下になるから上に乗ってくれ』って言ったらコレだ」

「………バッカだねぇ…『ガンタンク搭乗時は』って言葉を先に付けとくんだったな!」

「これも青春の1ページって奴よ…さ、行ってこい!気晴らしがしたいってんで運転が荒いかもしれんが頑張れよ!」

「え?」

 

 ふとガンペリーの操縦席を外から見上げてみると、どこか黒い笑みを浮かべたセイラさんが操縦席に座っているのが見えた。その横では操縦桿を奪われたジョブ・ジョンが引きつった顔で現実逃避するように虚空を見つめて笑ってる…これアカンやつや

 

「…恨むぜ…スレッガーさん…」

 

 酔い止めを飲んだ後、茶色のエチケット袋を持ってくことにした…ゲロったらごめんなプロトタイプガンダム…

 

 

◆◆◆

 

 

 荒れ狂う乱気流と乱れる操舵によって軽くシェイカーで振られる液体の気分を味わっていたカイであったが、島に近づいた時にセイラの声で現実に引き戻される。

 

「カイ!プロトタイプガンダム、発進よろし?…カイ?」

「うおえっぷ……りょ、りょうかい…うっぷ…」

「あら?大丈夫?酔い止めを飲まなかったの?」

「飲んでてこれなんだってぇの…!三半規管がいかれてらぁ…」

「………。ともかく発進を。それを見届けたら私たちはガンタンクを積みに一度戻るわね」

「へいへいっと…うっぷ…うえぇ…で、出るぜ」

「あらどちらが?」

「出撃に決まってんでしょうがよ!このタイミングでゲロは吐かねぇし報告しねぇよ!!セイラさんアンタ実は結構アレな性格か!?」

「さぁ?どうかしら?」

 

 ガンペリーの片側の収納が開き、立ち上がったプロトタイプガンダムが島を目掛けて降下する。

 ガンペリーからでは島の輪郭がぼんやりと見えるくらいでどこで戦闘が行われているかは確認できなかった。

 

「…戦闘の痕跡はあるが…クソッ…嵐の音で戦闘音も拾えねぇのかよ…通信もしていいのか分からねぇし…」

 

 ガンキャノンから回収した傷ついたシールドを構えながら周囲を警戒して進んでいく。その途中で破壊されたログハウスがあるのをカイは発見した。カメラで拡大すると、雨で滲んでしまっているが、誰かの似顔絵が書かれた紙を見つけることが出来た。

 

「…ってことは…ここがドアンと子供たちがいた場所なのか…?ったく…ここまでするかよ……ん…?」

 

 すると、遠くの方でかすかに光が見えた気がした。光の色からするにおそらくはアムロのガンダムのものではないだろうと踏んだカイは奇襲を目論んだ。

 

「へへっ…今回はなんたってビームジャベリンを持ってきたからな…!上手く使わせてもらうぜ…!」

 

 そのままカイはプロトタイプガンダムの発光を出来るだけ抑えるように設定し、その戦いの光の方へと急ぎ、駆け寄ることにした。

 

 

 

 一方、アムロはドアンと共に敵モビルスーツと交戦を続けていた。

 

『…くっ…ザクの出力が…!子供たちを護れたが、これでは…!』

 

 水色の機体…ズゴックをタックルで押しとめるドアンのザクは限界に近いながらも未だ動き続けていた。だが、子供たちを人質に手が出せなかった時に受けた傷は確実に機体を蝕んでいた。

 

「ドアンさん!今援護に…!くそっ!」

 

 アムロは被弾はほぼないものの茶色の機体、ゴッグの腹部メガ粒子砲に手間取っていた。

 

「ビームライフルのエネルギー残り1発か…こうなったらイチかバチかだ…!モノアイのカメラ部分を狙えばせめて動きは鈍らせるはずだ…!」

 

 ガンダムのビームライフルでゴッグのモノアイをターゲットマークの中央に定めて狙うアムロ…が、その時。

 

(な、なんだ…!?違う…!ここじゃない…!そう、右だ…!)

 

 言い知れない感覚と違和感がアムロの脳内を駆け巡った。違和感を正すようにターゲットマークを少しずらしてやる。そこはゴッグの肩の少し上の部分であった。

 

(そこだッ…!!)

 

 操縦桿の引き金を引くとともにビームライフルから放たれた一筋の光は腹部メガ粒子砲の反動でよろけたゴッグの頭部、それもモノアイの部分を正確に狙撃する。雨天であっても装甲に守られていないカメラ部分には十分な威力であった。

 

「当たった…!よぉし!!」

 

 アムロはそのまま視界不良となって狼狽えるゴッグを横目にビームライフルを放り投げて背のビームサーベルを手にかけながらズゴックとドアンのザクの間にガンダムを走り込ませる。しかしズゴックも2対1の状況に距離を取って射撃で応戦をしようとそちらに腕を振り向けた。

 

「……!」

 

 が、こちらに腕を向け腕部から射撃をするズゴックにアムロは目を向けていなかった。

 見ていた先はその後ろ。待ち望んでいた黒いガンダムの援軍だった。

 

 

『待たせたなァァァッ!でありゃあぁぁぁッ!!ド真ん中ぶち抜けェェ!!』

 

 黒いガンダム…プロトタイプガンダムが右腕を大きく振りかぶり、ビームジャベリンを機体が出せる全開の出力で投擲する。

 放物線を描く光の槍は宣言通りズゴックの胴体の真ん中を……とはいかず、左腕に突き刺さり、腕を溶断させた。

 

『あり?狙いズレてんのかよ?…まぁいい!アムロ!今だ!』

「はい!カイさん!」

 

 後ろからの不意打ちにズゴックが振り返ろうとするその隙にガンダムはズゴックに距離を詰めてコクピット部分を直感的に割り出し、ビームサーベルを押し当て貫いて見せた。

 

「…っ…!よし!もう1つを…!」

『その必要はないみたいだぜ』

 

 盲目のゴッグに目を移したアムロであったが、その目に映ったのは…

 

『中尉ッ!機体姿勢制御ッ!!』

『や、やってるって!!勘弁してくれよ、バラバラ撃ったらさらに大変でしょうがもォ…!』

『一斉射ァッ!!』

 

 ガンペリーから降下するガンタンクが持てる全ての砲門でゴッグに砲撃の雨を叩きつけていた。その様は一方的で残虐さすら感じ取れた。

 

『中尉!あのモビルスーツに向かって降下!』

『ハァ!?え、どーいうこと!?』

『早く!!!』

 

 そんな通信が聞こえるアムロとカイだったが、カイがぼそりと口を開く。

 

『なぁアムロ知ってるか?』

「へ?」

『ジョブから聞いたんだけどよ…この間のガルマのザクもさ…』

 

 会話の途中だというのにガンタンクの質量に任せた全身で―

 

『セイラさんが踏みつけろって言ってやったらしいぜ…』

「えぇ…?」

 

 直後、ゴシャァァァン!!と砲弾の雨で事切れそうになっていたゴッグにガンタンクの80トン、そして落下という物理法則を掛け合わせた鉄槌が下された。

 

「……こわ…」

 

 この時、アムロは心の底から恐怖し、ガンタンクのコアファイター部分に乗っていたスレッガーは二度とセイラにちょっかいをかけまいと心に誓っていた。

 

 

 その後嵐が収まり、安全が確認されてホワイトベースが島へと降下する。ボロボロになってしまったザクとドアンであったが、子供たちは彼の無事に涙を流しながら駆け寄った。

 

「改めて…元ジオン公国軍のククルス・ドアンだ…貴艦には子供たちの命を救っていただき誠に感謝する…さらに助けてもらってこのようなことを頼むのは申し訳ないが…どうか私の命と引き換えに子供たちを安全な場所に…」

「そ、そんな…!」

「やだよドアン!!」

「ブ、ブライトさん」

「う、うむ……」

 

 ドアンに泣きつく子供たちを目の前にたじろぐブライトは、ある提案をドアンに持ちかけようとしていた。

 

「ドアンさん…と言いましたね?失礼ですが身分を証明できるものは?」

「あ、あぁ…それなら小屋の中に…」

 

 その言葉をどこから持ってきたのかと周囲が思っていた額縁を持ったカイが遮った。

 

「小屋はもうダメだぜ、戦いの前に俺が発見したけど…この絵しか残ってなかったぜ…ほら、この絵は君たちが描いたのかな?」

「う、うん…ぼくたちと…ドアンの絵……」

「へへっ!じょーずじゃないかぁ!ホレ、返すよ。額縁に入れといたからぐしゃぐしゃになる心配もないぜ!大事にな」

「…!ありがと!」

 

 カイがくしゃくしゃと少年の頭を撫でて絵を渡してやると、泣いていた少年に笑顔が戻る。

 

「ふむ…絵、か…ドアンさん。残念ながらその絵では身分は証明できませんな」

「し、しかし…」

「…残念ですが…その絵では貴方が元ジオンの兵だとは判断できません。戦闘に巻き込まれた民間人…と言ったところでしょうか」

「え…!?」

「リュウ、軍の規則ではこういった場合どうするのが正しいか?」

「そ、そうだなぁ…あぁ!確かどこかの規則に『安全圏まで保護すること』とあったと…思うぞ!」

「ありがとう…と、いう事です。ドアンさん、この区域ではいささか危険と思われます。我々が安全だと思う場所までお連れしたいと思うのですが…少し遠くはなってしまいますが…」

「……!っ…かたじけない…!」

 

 こうしてドアンとその子供たちはホワイトベースにて一時的に保護されることとなったのだが……

 

 

◆◆◆

 

 

 その日は予定よりも早く来た。

 

「申し訳ありません…塩が…塩が足らんのです」

 

 言うと思ったタムラさん。まぁ…ちびっ子たちが増えた分そりゃぁそうなるわな…

 

「塩…か…ふむ」

 

 連邦軍の連絡員と合流するために東南アジアを渡り始めたその時に塩が足りない事態に陥った…うーん…ブライトさんも困り顔。それもそのはずで今から塩のある海へ引き返しては合流の日にちに間に合わないのだ。

 

 アニメでは、塩湖を目指して進むという感じだったがこのそのイベントが発生するよりも前の段階で来てしまった今回の場所では塩湖は遠く、現実的ではないとの判断だった。

 

「塩湖じゃなくて海水があれば塩を何とか出来るんだろ?ほんじゃあよ、海水を汲みに行く奴らをガンペリーで分隊を出すってのはどうよ?海ならまだ何とか近いだろ?」

「カイもそう考えたか…しかしガンペリーを使う場合護衛にコアファイターよりもモビルスーツを少なくとも1機は乗せたほうがいいだろう?ガンキャノンは修理はしているが肝心な部分のパーツのストックが無い…ガンタンクでは近距離が厳しい…となると残りが…」

「…ガンダムかプロトタイプガンダムってか…まぁ戦力が減るのは痛いわな…」

 

 うーん、これは困った。予定外の事態だし、今までの出来事がアニメから逸脱している箇所がある現状、ランバ・ラル隊が仕掛けてくるのがいつか分からない。

 そう考えたらガンダム達は置いておきたいわな……………あっ。

 

「…なぁブライトさん?」

「なんだ?」

「いやぁ…その、ガンキャノンの修復できてない箇所ってどこだい?」

「聞いている話だと…頭部と右腕らしい…それがどうかしたか?」

 

 …い~いこと思いついちゃったんだなぁ!これがァ!!

 

「くくく…!了解了解…!ブライトさん。ちょっと時間くれよ、ガンキャノンを動かすわ」

「!?いや、しかしだな…頭部が無ければ視界不良で危険だし肩のキャノン砲があるとはいえ右腕が無ければ武器が…」

「大丈夫だって!へへっ!!アムロォ!ちょっと手伝ってくれよ!」

「ぼ、僕ですか?いいですけど…何をやるんですか?」

「ニヒヒ…!ちょっとイイコト!」

「まぁカイさんなら大丈夫だと思いますけど…」

 

 さぁ!そうと決まればあとは『ある人』にお願いしてOK貰うだけだァ!何か楽しくなってきたぜ…!

 

 

 ◆◆◆

 

 

「あ…おい…」

 

 ポツンと残されたブライトにスレッガーが「まぁまぁ」と肩を叩く。

 

「アイツらなら大丈夫…だろ?ブライト艦長?」

「それは…そうなんだが……」

「いいじゃないのさ!ここは年長者としてどっしりと見守ってやってだなァ…」

「そういうものだろうか?」

「そーゆーもんよ」

 

 

 




ガンキャノンを修復するカイとアムロ
一方ハヤトは己を鍛えるためにある人物の前に柔道着を着て立ち向かう。


次回  ……キャノン大地に立つ
『彼』は生き延びることができるか?
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