やっぱり、『軟弱者』かもねぇ…   作:F覚醒ヅダ

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第3話 予定外にビビる軟弱者

 

「ヅダ…!なんで、こいつが…ここに…!」

 

 砲撃ポイントの隕石群からホワイトベースに撤退しようとしていたカイのガンキャノンに赤錆色のヅダはザクマシンガンを向けている。

 

「っは!し、しっかりしろよ俺!!ホ、ホワイトベース!ホワイトベース!!敵と接敵!ザクじゃない!ヅ…えっと赤錆色のヤツだ!」

 

 カイは見呆けていた自分の気を戻し、ホワイトベースに緊急の連絡を入れる。するとすぐさまブライトが出る。

 

『何ッ!?…!映像を確認した!いいか!見られたのならもう仕方ない!だが無理に戦うな!隙を見て逃げろ!ガンダムを向かわせるからそれまで持ちこたえ――』

「うわっ!!!」

 

 ブライトからの指示が終わる前にマシンガンから銃弾が放たれる。慌てて避けるも数発の被弾は避けられず、関節部分に当たったのか、ガンキャノンの右足部分が上手く可動しなくなる。

 

 

 

◆◆◆

 

 

「冗談じゃねぇ!!こんな…!こんなの予定外じゃねぇかよ!」

 

 本当に冗談じゃない。なんでこんなところにヅダがいるのか俺にはさっぱり分からなかった。

 ここは『機動戦士ガンダム』の世界ではなかったのか?いつの間に『MS IGLOO』になったんだ?

 ブライトからは隙を見て逃げるように言われたが、こんなのとてもじゃないが…!!

 

「ええい!なめんなよヅダ!そっちがその気ならやってやる!機体スぺックはガンキャノンの方が上だぜ!」

 

 何とか飛び回りながらビームライフルや頭部バルカンで牽制し距離を取ろうとする。しかし、ヅダの機動性は良いもので、宇宙空間をひらりひらりと泳ぐように躱されていく。こんなの…ありかよ

 

「ンのヤロォ!土星エンジンのおかげさまって奴か!?」

 

 確かにガンキャノンの方が平均的、総合的なスぺックは上かもしれない。でも、機動力に、その一部に特化した機体を前にすると…

 

「き、消えた!?」

 

 いくらガンキャノンにビームライフルや240㎜キャノンなどの最新鋭の火力があろうとも

 

「!アラート!?どこから!?し、下ァ!?」

 

 【当たらなければどうということはない。】俺はそれを思い知った。

 

「うわあぁぁぁぁッ!!」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 機動性を活かしたヅダはヒートホークで下から迫り、コクピットを守ろうとしたガンキャノンの左腕を切り刻む。切り落としはできなかったが、左手のマニピュレーターはぐちゃぐちゃになり、肘の関節パーツも今にも捥げてしまいそうなほどにはダメージを与えた。

 

『こ…のォッ!!』

 

 ヅダのパイロットは、目の前の連邦軍の機体からの通信回線がONになっていることに気づく。意図してONにしたのか、それとも、パニックになって色んなボタンを触ってたまたまONになってしまったのか。

 

『ヅダに…負けるもんかよ…!』

 

 驚かされた。この連邦軍のパイロットはヅダを知っているのだ。開発競争でザクに負け、試験用で開発された数機しかないはずのこのヅダの存在を。

 

「アンタは…」

『ッ!?こ、声!?…お、お前がヅダのパイロットか!…っていうかこの声…女ァ!?』

 

 連邦軍の機体に対してこちらも通信回線を開くと、パイロットは驚きの声を上げた。

 

「女で悪かったね、でもその女に負けてんのはアンタだよ、軟弱者」

『ぐっ…!な、なめるなよ…!俺は…俺は…!!』

 

 あちこちから火花を挙げながら果敢にも、無謀にも右腕で殴りかかろうとするガンキャノンにヅダは再度ザクマシンガンを向ける。そしてヅダのパイロットが今まさに引き金を――

 

『俺はカイ・シデンなんだあぁぁぁぁッ!!』

 

「ッ!?」

 

 驚き、隙が生まれる。直後に届いたガンキャノンの右の拳はヅダの頭部をひしゃげさせる。

 

「しまったッ!」

 

 すぐさま持ち前の機動力で距離を取り、ヅダの損傷を確認する。幸いにもメインカメラは生きているが、首部分の回転が上手くできない。

 

「…ッ!ここは引いてあげるよカイ・シデン!…それと、そんな操縦しかできないんならパイロットなんか…軍なんか辞めちまうんだね!!」

 

『何ィ!?』

 

 傍にあった隕石群を足場に蹴りながら加速をつけて宇宙に消えていくヅダを、カイはただ、見送ることしかできなかった。

 

 その後ボロボロになって身動きが取りづらくなったガンキャノンをブライトからの指示でガンダムに乗ったアムロが回収に来た。

 

「カ、カイさん!無事ですか!?」

「お、おーう、アムロか…へ、へへっ…そっちはどうだった?」

「補給艦と旧式のザクは落としました…カイさんが砲撃してくれたから敵の注意が分散して薄くなったから……でも、シャアは戦艦と一緒に撤退していきました」

「そうか…上手く…やったかぁ…さっすが、アムロくんって、ね…」

 

 カイの目の前が霞み、、だんだんと眠くなってくる。

 

「カイさん!?カイさん!!―――! ―――――!!!」

 

 

 そのまま、コクピットの中で意識を手放した。

 

 

◆◆◆

 

 

「…ん?」

 

 目が覚めるとガンキャノンのコクピットシートに座っていた。あぁ、そうか…アムロが迎えに来て一気に疲れが押し寄せてきたもんで眠るように気絶しちまったのか…

 

 …あのヅダは何だったんだ。ここ『機動戦士ガンダム』だぞ…?いやまぁ一年戦争的に繋がりはあるから存在してもおかしくは無いけど、あの場にいるのはおかしい。

 赤錆色のエースカラーって誰だ?ガルマ・ザビ?いやもうちょっとオレンジ色か…そもそも通信の声は女だったから…ジオンで女パイロットかパッと思いつくのは…トップ?シーマ・ガラハウ…?にしては若かったような声が違うような…あと専用のカラーも違うだろうし…となると…ヅダだから…『MS IGLOO』だとしたらモニク・キャディラック…?

 …あと、どこかであの声聞いたことがあるんだよな…気のせいか…?いや、それにしても…

 

「………真っ暗だな」

 

 コクピットの中のモニターには何も映し出されておらず、真っ暗になっていた…カメラがやられたのだろうか?まぁ、今アムロがガンダムで運んでくれているだろうから難しいことは考えず、ここはもうひと眠りしましょうかね…

 

………………………

………………

………

 

 いや、遅くない?しかもなんかシーンとしてるし…え、大丈夫だよな?まさかブライトに「やっぱ捨ててこい」的なこと言われて宇宙空間に捨てられてるとかないよね!?

 

「…外…出てみるか」

 

 ノーマルスーツ…は着ているし、ヘルメットもしている。だから宇宙空間に放り出されてもすぐには死なない…!はず…!

 

 コクピットの中からハッチを開けようとボタンを押すと、開いた部分から光が差し込む。え、宇宙空間じゃない?もしかしてホワイトベースに戻ってきてる?

 

 だが、そんな想像とは違いコクピットの外は

 

「は?」

 

 青い空が広がる草原、花園、綺麗に澄んだ湖が目の前を彩っていた。

 

 あっけにとられながらもヘルメットを外す。頬を撫でる風も、大地の草花の香りも、静かに波立つ湖の音も、そのすべてが本物だと分かる。でも、本物だけれども『違う』と心が理解を拒絶する。

 

 コクピットから降りて大地に一歩、二歩と踏み出し辺りを見渡してみる。すると後ろあるはずのコクピットが、ガンキャノンが消えている。

 

「な!?おいおい!ゆ、夢…か?」

 

 …頬をつねると…痛い。こんな奇怪なことがあるなんて…

 

「ニヒヒ…!ま、そう驚くのも無理ねぇか」

「だ、誰だ!」

 

 声の方を向くと、湖の前にさっきまでなかった公園によくある長いベンチが現れる。そのベンチには誰かが座っており、こちらに背を向けている。…声的に老人だろうか?いや、でもなんかこの声はこの声で聞いたことあるような…馴染みが深いような…

 

「ま、こっちにこいよ、ちょっと話そうぜ」

「………」

 

 声の方へと向かい、ベンチの、端の方に腰掛けて声の主をチラッと見る。

 ハンチング帽に、少し洒落た黒のベスト、腰は曲がっており、両手を杖の上に重ねるように置いている。

 

「……!あ!アンタ…いや、貴方は…!」

 

 老人の顔を見て、固まる。言われた老人もニッと笑ってこちらへ顔を向ける。

 

 

 

 

「楽に行こうぜ、俺たちはおんなじ『カイ・シデン』なんだからよ」

 

 

 

 

 年を取ったらまさに『こうだろうな』という感じの『自分』が…『カイ・シデン』がそこにはいたのである。

 

 





 不思議な空間でカイ・シデンは『カイ・シデン』と出会う。告げられた願いにカイ・シデンはどう答えるのか。

次回 「『カイ・シデン』と軟弱者」
『彼』は生き延びることができるか?
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