やっぱり、『軟弱者』かもねぇ…   作:F覚醒ヅダ

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第5話 包囲網と軟弱者

 カイが格納庫に駆け付けた時には、ちょうどガンタンクが一度帰還したところで、降りてきたアムロとハヤトと顔を合わせる。

 

「あっ…」

「カイさん!?」

「おう!アムロにハヤト!お疲れさん!アムロは今からガンダムだろ?前衛は任せたぜ!信頼してっからよ!」

「は、はい…と、とりあえず…行ってきます」

 

 驚いた顔をしながらアムロは足早にガンダムの操縦席へと向かう。

 後には、カイとハヤトが残る。

 

「あ、あの…カイさん…」

「…すまん!ハヤト!!」

「えっ」

 

(あのカイさんが自分から…!?)

 

◆◆◆

 

 ハヤトが知っているカイ・シデンという男は、それはひどいものだった。

 アムロや他のクラスメイトと同じ意見になるだろうが一言で表すなら「不良」。口も悪けりゃ態度も悪く、卑怯者のような言動をすることもあった。授業中居眠りは当たり前、というより学校来ない日も多かったし、同じような不良とつるんで問題行動ばかり起こしていて、担任の先生には同情せざるを得なかった。

 

 が、どうにもここ最近のカイにはそんな気配が見られないのだ。アムロがブライトに苦言を言われているときに割って入った時や、アムロにモビルスーツの整備と動かし方を教えてくれと頼んだ時も。一番に逃げそうなカイがそう言った行動をして驚かされた。

 

 ガンタンクのシミュレーションの時、正直なぜガンタンクに乗るのが自分とカイなのか分からなかった。確かにアムロはガンダムに乗っている。だけどもなぜ自分まで?そしてなぜカイは迷いなく乗ろうとしているのか。

 分からないまま乗せられて、合わない波長でシミュレーションを繰り返し、嫌になって飛び出した少し後、戦闘が始まってカイがガンキャノンというモビルスーツで出撃することをハヤトは知った。

 

「…カイさん…乗ったんだ」

 

 ブリッジを覗くつもりで見に来たハヤトだったが、そこでカイが戦っている映像がスクリーンに映し出されていた。

 

『うわあぁぁぁぁッ!!』

 

 カイのガンキャノンがジオンのモビルスーツに襲い掛かられるその映像にハヤトは恐怖した。だが、それ以上に前線で自分の知っている人が今実際にこのような目に合っているのかと思うといたたまれなくなる。

 

 さらに、ガンキャノンとカイを回収に行ったアムロからカイの意識がないことを聞いたとき、「もしも僕もどれかに乗って出撃していればこんなことにはならなかったのかな…」と、気づけばそんな言葉を漏らしていた。

 

◆◆◆

 

「俺が『何かあったら出撃できるように』って先走ってハヤトの意志を確認せずにガンタンクのシミュレーションを始めちまって…本当にすまない!」

「あ…え、えっとカイさん…と、とりあえず頭上げてくださいよ!その、僕も途中で投げ出したりして…すいません」

「いや俺が」

「僕が」

「いやいやそんな」

「僕だって」

 

 お互いに謝罪合戦となってしまう二人に最初は友情の1ページかとほほえましく見ていたメカニックチーフのオムルであったが、ガンタンクの補給が終わってもなお続いたそのやり取りにしびれを切らす。

 

「そこの二人!いつまでやってんだ早く乗って!!ガンダムはもう出たぞ!!ガンタンクだってとっくに補給が済んでるんだぞ!!」

「いけね…よっしゃ!行くぞハヤト!」

「はい!」

 

 あのシミュレーションと同じくカイがガンタンクの移動を担当し、ハヤトが砲座に座る。

 

「「ガンタンク!出撃!!」」

 

 ホワイトベースから発艦したガンタンクはホワイトベース後方に陣取り、迫るドップへの対空攻撃及び、ブリッジから送られてくる座標に従って前衛のガンダムを援護するために山なりに砲撃を行っていた。

 

「ハヤト!座標Y-3だ!15秒後に180°回頭する!120㎜キャノンいけるか!?」

「いけます!!ブリッジからのY-3の座標入力完了!準備よし!」

「4、3、2、1…!頼んだ!」

「撃ちます!!」

「…おっしゃ!5秒後再度反転!ドップが5機来てる!」

「了解です!左右に展開していくみたいなので腕部のボップミサイルでそれぞれを狙います!」

 

 シミュレーションとはまるで違い、息の合った連携で次々と処理していく。その様はホワイトベースのブリッジからも確認された。

 

「…カイ!ハヤト…!よぉし…!!…ごほんっ!どうです、リード中尉?彼らの…『民間人』の協力も馬鹿にならんでしょう?」

「むっ…ぐぐぐ…まぁ、き、機体の性能が良いのだ!あ、あのくらいは私にも…!」

「そうですか!では、次は中尉に乗っていただきましょう!彼らよりめざましい活躍を期待しますよ」

「わ、私は!ブリッジから戦局を確認せねばならんからな!み、民間人に任せてやっても…いいんじゃないか?」

「……そうですか!ではそのようにします!」

 

 顔を赤くして行き場のない怒りをこらえるリードに、ブライトは心の中でひそかに「ざまあみろ」とほくそ笑み、対称にその様子を見ていた通信士のセイラは「馬鹿な男の人たち…」とため息をついた。

 

 ホワイトベースの後方に陣取るガンタンクに乗るカイとハヤトは進むにつれて、進路上にはザクやマゼラアタックなどの残骸が転がっているのを目にする。

 

「前衛のアムロも頑張ってくれてるみたいだな」

「す、すごい数ですね…アムロ、大丈夫かな…」

「そうだな…多分かなり疲れてんじゃねぇかなぁ…よくやるぜ全く…」

「イライラしてそうだったし…心配だな…」

 

 2人共にアムロへの心配が重なり、少しの沈黙が訪れる。気づけば、ジオン側からの攻撃は収まっていた。

 

「…妙に静かだな。ブリッジからの砲撃指示も来ねぇ…ちょいと今のうちに計器の狂いが無いか見ておくわ」

「そうですね………!?カイさん!」

「どうした!?」

「レーダーには映っていないんですが…ホワイトベースの後方…ぼ、僕たちの前方700m先にモビルスーツが、ザクが!マゼラアタックが!」

「何ィ!?」

 

 急いで計器からモニターへ目線を戻すと、そこには確かにザク1機とマゼラアタック3機がそこにいた。

 

「おいおい…あのザクは…!」

 

 カイには近づいてくるザクに見覚えがあった。

 

 

◆◆◆

 

 

 ザクの頭部には指揮官の証のブレードアンテナ。そしてカラーリングはオレンジ。更に一番の特徴としては…

 

「へ、へっへへ…見ろよハヤト…あのザク、頭にバルカン用の穴があるぜ?」

「えっ!!?」

 

 ギレンの野望で見たから知っているとも…ここで出てくるとは思わなかったが。

 

 ガルマ・ザビのザクかよぉぉぉぉ……

 

 しかしどうやってレーダーに引っかからずに…ガンタンクの計器も異常はないみたいだし…って、あ!

 

「ハヤト!ミノフスキー粒子だ!!ソイツが濃いせいでレーダーが死んでやがるんだ!」

「そ、そんな!……あっ!カイさん!ホワイトベースへの通信もできません!」

「…なぁるほど…砲撃指示が無かったのはそういうことかぁ…だがホワイトベースもミノフスキー粒子のことは分かってるはずさ。その場合は有視界で戦況を把握してるだろうからそのうちガンダムやコアファイターが援護に来るだろ。それまで…俺たちでやってやろうじゃないの!」

 

 

◆◆◆

 

 

 だが、援護が来るというカイの予想は大きく外れることになる。

 

 

 数刻前、ジオン公国軍攻撃空母ガウでは、2人の男が再会を喜び合っていた。

 

「はっはっは…さてシャア、君が休んでいる間に私は木馬を叩きに行ってくるよ」

「ああ、すまんなガルマ。お言葉に………ふむ」

「?どうした」

「…いや、私も出よう。ザクは持ってきているのでね」

「おいおい、私の腕を信用していないのか?」

「そうではないさ。ただ、連邦の木馬とそのモビルスーツは思ったよりも厄介だからな…手柄は君にやるとも。露払いをさせてくれ」

「シャア…!全く君という男は」

 

 その後、シャアの作戦により、ガルマはモビルスーツに乗り込み、現在展開しているマゼラアタック3機を付け、ホワイトベースの後方から襲撃する手筈を整えた。これに対しシャアは前面から接敵し、ガンダム達への囮になるとガルマに提案した。

 また、ミノフスキー粒子を散布させ、通信を途絶させることでガンダムとホワイトベース、更に定期的に遠距離砲撃をしているガンタンクを混乱させようとした。

 

(…高濃度のミノフスキー粒子を散布すれば相手だけでなく我々も通信が断絶する。フフフ…さぁてスぺックの全てが判明していない連邦の新兵器達を相手に援護の要請もできずに生き残れるかな?ガルマ…いや、ザビ家のお坊ちゃん?)

 

 

 一方、ガルマはそんなシャアの思惑など知らずに、ガルマは作戦を開始しようとしていた。

 

 「………よし!木馬と…戦車?いやあれもモビルスーツか?は通り過ぎたな…ミノフスキー粒子高濃度散布開始!マゼラアタック隊!私に続け!」

 

 ガルマのザクを先頭に、3機のマゼラアタックが広がるようにして展開しながらホワイトベースへと迫る。少しして、その行動に気づいたガンタンクが臨戦態勢を取る。

 

 

 「カイさん!先にマゼラアタックを狙うのはどうでしょう!?ザクに近づかれて、さらに遠距離から喰らったらたまりませんよ!」

「…そうだなハヤト!その案で行こう!有視界で、なるべくマゼラアタックの砲塔部分を狙えるか!?」

「やってみます!」

「あとザクに対してのガンタンクでの接近戦なんだがよ―――」

 

 カイはハヤトに近接武器の無いガンタンクでの、とある近接戦の提案をした。

 

「ええっ!?で、でもカイさん…」

「大丈夫だって!へへっ、射撃の腕、頼りにしてっぜ?さ、とりあえず先にマゼラアタックを叩きに行こうぜ!」

「…分かりました!キャノンの後はボップミサイルで狙いますね!」

「はいよ!移動は任せとけ!」

 

 開戦の火蓋はガンタンクの120㎜キャノンの号砲により切って落とされた。

 着弾した砲弾はマゼラアタックの1機を粉砕。その後はギャリギャリと無限軌道を回しながら残る2機のマゼラアタックを標的に戦場を駆ける。

 

「なっ…!?この私を…!ザクを無視するのか!?」

 

 ガルマとしては専用のヒートホークを見せつけるように迫っていたため、遠距離武装しかなく、近寄られるのを嫌がるガンタンクに真っ先に狙われると思っていた。無論狙われることに対して対抗策を考えていたのだが…当てが外れてしまう。

 

「くっ…!そちらがその気なら!この刃の錆にしてくれる!!」

 

 離れていくガンタンクに対し、ガルマは射撃武器に持ち替えて残るマゼラアタックを援護するのではなく、そのまま敵の不利になる距離へ詰め寄り、切り刻むことを選んだ。

 

 

「マゼラアタック残り…1機!!」

「おっしゃあ!ナイスハヤトォ!……!後ろからアラート!ザク来るぞ!…さっき言ったアレ!やるぞ!」

「ほ、本気なんですね!?失敗したらカイさんが…」

「大丈夫だ任せとけって!それより頼むぜ!」

「……分かりました!」

 

 迫るガルマのザクに向き合うようにガンタンクが回頭し、停止。ただし、無限軌道だけは空ぶかしをするように回し続けていた。

 

「動けなくなったか?フッ、まあいいさ!機体は欲しいからな。その頭部のコクピットだけを狙ってやる!……ムッ!?」

 

 近寄りながらヒートホークを構えさせるガルマだったが、ガンタンクの空ぶかしの無限軌道が地面の石や砂を巻き上げ機体を隠すように砂煙を作り出していることに気づく。

 

「フッ!この近距離で無駄な抵抗を!喰らえ!!」

 

 砂煙を払うように、ザクは横薙ぎにヒートホークをガンタンクの頭部のコクピットの部分を狙って振るう。

 が、まるで手ごたえがなく、払い晴れた砂煙の先にはガンタンクの下半身と腹部のもう一つのコクピットだけが残っていた。

 

「なにィ!?」

 

 驚き、生まれたその隙を見て、ほくそ笑むカイ。

 

「今だ!ハヤト!!」

「うおぉぉぉぉ!!」

 

 突如ザクの上空からミサイルの雨が降り注ぐ。見上げれば、上半身だけとなったガンタンクがバーニアを吹かせながら滞空し、腕部から次々とミサイルを発射する。

 

「くっ…!?連邦め!これを狙っていたのか…!?ぐあっ!」

 

 ガンタンクからのミサイルを受けてヒートホークをそして左肩を破壊され、更には120㎜キャノンの砲身を向けられる。

 

「くっ…!ま、マゼラアタック!マゼラアタック!!後退する!援護を!…?マゼラアタック!?どうした!応答しろ!」

 

 必死に呼びかけるも、マゼラアタックは答えない。それもそのはずで、通信が出来ないほどのミノフスキー粒子を自分たちで撒いていたのが仇となっていた。

 

「くっ…!タンクもどきめ…!次に会ったとき必ず仕留めてやる…!」

 

 片腕を失ったザクは牽制するように頭部のバルカンを放ちながら後退し、岩山を壁にするように逃げていく。また、残されたマゼラアタックもたった1機のガンタンクに蹂躙されたこの様に、自身だけで勝てないと判断し、ザクの後を追うように撤退していった。

 

「…勝っ…た?」

「おうよ!ひとまずお疲れさんってな!…お?」

『……ンク、ガンタンク!応答願います!ガンタンク!』

 

 そのとき、ちょうど通信ができるくらいにミノフスキー粒子が薄まってきたのか、現在通信士をしているセイラからの連絡が入る。

 

「こちらガンタンクだ、いまさっきまでミノフスキー粒子が濃かったしちょっとドンパチしてたんでね…今は聞こえてますよ」

 

「あぁ、よかった…!カイ、ハヤト、急ぎ帰還してください!コアファイターが…リュウが…!」

 

「え…」

「リュウさんが!?」

 

 その報告にカイは背筋が凍るように冷えた。

 

 

 





 史実通りに進む事とそうでない事に頭を悩まされるカイ。そんな中、ホワイトベースに新たな戦力が加わる。

次回 「悩まされる軟弱者」
『彼』は生き延びることができるか?
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