やっぱり、『軟弱者』かもねぇ…   作:F覚醒ヅダ

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第8話 ガルマ・ザビと軟弱者

 

 大雨が降るシアトルの夜、シャア・アズナブルはこの地をガルマの墓標にすると画策していた。

 

「さて…ここは木馬を探索するという任務に邁進するフリでもしておこうか」

 

 計画を進めるにあたり、シャアはアリバイ作りをするために、わざと周辺のジオン兵達にも聞こえる回線を使う。

 

「…ガルマ、私だ。第7エリアは異常なしだ。続いて第8エリア方面へ探索に出る。少し離れることになるが武運を祈るよ」

『ああ、君もな!こちらでも木馬を見つけたら連絡するよ』

 

 通信を切り、バズーカを担がせた赤いザクを歩かせる。向かう方向は雨天球技場。

 

「…さて、情報によると木馬はあそこにいるらしいが…」

 

 情報…実はシャアは3日ほど前に軍本部から送られてくる定期的な報告書の中に妙な手紙を発見していた。

 差出人などは無かったが、最初はガルマから表立って言えない事でも文にして渡してきたかと思えばそうでなかった。

 

 手紙にはシャアがキャスバル・レム・ダイクンであることを知っていること、ザビ家への復讐を考えていることを知っているなどおよそ自分自身でしか知り得ない情報が書かれていた。

 これを見てひやりと肝が冷えたが、どうにもシャアが成そうとしていることに肯定的で、これから起こることを書き記した予言のような表記があることから、少なくともこのような馬鹿なことを軍本部の、ましてやザビ家の息がかかったものがすることではないと分かった。

 

「…!驚いたな!まさか本当に木馬が…!」

 

 瓦礫を遮蔽物にして隠れ、雨天球技場を確認すると、壊れたドームに隠すようにホワイトベースが入っているのが確認できた。

 シャア自身予言めいた手紙を信じていたわけではなかったが、その手紙の内容がどうにも生々しく、確認も含めて従ったがまさか本当にそこに木馬がいるとは思ってもみなかった

 

(送り主についてはこれから調べるとして…ふむ…であれば今日ガルマが木馬に討たれて死ぬということは現実となるのか?だが、手紙には2機目のガンダムについては書かれていなかった…さて、どうするかな)

 

 周囲を見渡し、少し離れてはいるがホワイトベースにすぐ戻れるような距離にいるモビルスーツをシャアは確認する。

 

「あれは…メモが正しければガンキャノンとガンタンクなるものか…ふむ。木馬との位置も近いな…ガンダムよりも手紙通りに木馬を利用させてもらおうか。さてそのためには私がガンダムの相手をせねばな」

 

 ニヤリと笑ったシャアは再び通信を開き、陰謀を企てる。

 

「ガルマ!木馬は見当たらないが敵のモビルスーツを確認した!数は2機。キャノンタイプとタンクタイプだ!座標を送る!私も今からすぐに君に合流しよう」

『!了解だ…!タンクもどきめ…!この前の仕返しをさせてもらう!』

 

 そうしてシャアはホワイトベースのいる雨天球戯場とガンキャノン達がいるちょうど中間の座標を送った。

 

◆◆◆

 

 

 仕掛けるタイミングを見計らっていると、ザクたちの動きが急に変わる。

 

『おろ?おいカイ、なんか奴らどっかへ行くみたいだぜ?』

「なんだ…?なぁんか嫌な予感が……ッ!?スレッガーさん!後ろ!!」

『どあっ!?』

 

 ふと周りを見渡すとスレッガーさんのガンダムの後ろから赤いザクがバズーカを放つ…ここで、シャアか…!

 

「シャアだ!スレッガーさん!無事か!?」

『おうよ、さっすがガンダムちゃんねぇ!ピンピンしてらぁ!…だが、お坊ちゃんは行っちまうみたいだ…』

 

 ガルマのザクはシャアのザクを一瞥した後、2機のザクをシャアの元に残し、移動する…その方角は…!

 

「スレッガーさん!ガルマ・ザビはホワイトベースの方に行く気だ!多分シャアが偵察して見つかっちまったんだと思う!」

『クゥー!そうきたかぁ…!そいじゃあさっさと倒さなきゃならねぇってわけだな!』

 

 まずいな…ザク4機が向かったか…!ガンキャノンやガンタンクには近接戦は…難しい、よな…とにかく連絡だ!

 

「ホワイトベース!そっちにザクが4機向かった!俺とスレッガーさんはシャアのザクと他2機と交戦中!なんとかそっちに行きたいが…無理かもしれねぇ!」

『ホ、ホワイトベース、フラウです!り、了解です!艦長代理に伝えます!!』

「よし…!スレッガーさん!なんとか突破しようぜ!」

『おうよ!』

 

 口火を切るようにビームライフルを放つ。が、上手くビームが伸びない。

 

「は…?あ!?しまった…まさか雨か!?雨とか水中でビームが〜…みたいなのあったなそういえば!」

『落ち着け、オレがハイパーバズーカ…だっけ?を持って来てっからよ!任せなって!』

 

 ハイパーバズーカを2、3発連続して放つガンダムだが、そう易々とシャアのザクには命中しない。上手くブーストを節約しながらのジャンプ回避や地形を活かし、時には盾にして…あんな動きが可能なのか…他のザクとはやはり違う…さすがシャアと言わざるを得ない。

 

「ビームライフルがダメでも近づけば!」

 

 スレッガーさんがシャアを相手してくれている間に残りのザク2機にシールドを構え、頭部のバルカンを威嚇に使いながら突進する。

 ザクマシンガンで迎撃はされているが、シールドのおかげでビクともしない。

 

「そこだ!」

 

 肉薄すると迫ってくるヒートホークをシールドで弾きながら初めて抜くビームサーベルをザクのコクピットに押し当ててやる。いくら雨が降っていても、密着したこの一撃は威力は申し分ない。

 

「よ、よし…次!」

 

 残るザクは…シャアを含めてあと2機。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 一方、雨天球技場近くでドップやマゼラアタックをホワイトベースからの観測を元にロングレンジで叩いていたガンキャノンとガンタンクに通信が入る。

 

『ガンキャノン!ガンタンク!こちらホワイトベースです急ぎ帰還を!ザクが4機ホワイトベースに迫っているそうです!』

「な、なんだって!?」

『フラウ、ガンダム達は?』

『それが…シャアや他のザクと交戦中とのことですぐには戻れないそうなんです!』

「…最悪ガンキャノンはカイさんがやってたみたいにタックルすればいいけど…4機もいるのか…!き、帰還します!」

 

 一瞬ハヤトはガンタンクでカイとやった近接戦法を思い浮かべたのだが、実はあの後カイからは「ありゃあ1対1でかつ、相手が確実に格闘で殴ってくるときにしか使えないし、同じ相手には2度と使えねぇさ」と言われていたため、ガンタンクに近接は無理かとあきらめる。

 

 ともかく、と帰還中を始めた一行であったが、その途中で4機のザクに市街地の5ブロック程の距離で背後を取る形で遭遇することとなった。

 

「わ…!セ、セイラさん!敵モビルスーツが…!」

『そうね…こちらに気づいている様子は無いわ…こちらはボップミサイルが有効射程よ、そっちは?』

「さっきビームライフルは雨で全然でしたからね…一応肩のキャノンならこの近い距離でも行けると思います」

『了解。ホワイトベース、敵モビルスーツに攻撃を開始します』

 

 一方で、3機のザクを率いるガルマは…。

 

「…シャアが言うにはこのあたりのポイントらしいが…」

『ガルマ様、いかがしますか?付近にいるやもしれません…私が向こうの雨天球技場の上から見下ろして偵察を行いましょうか?』

「…いや、ここまで来て分散するのは得策ではないだろう。それにこの雨だ…見えるかもわからないからな…幸いガンダムはシャアが抑えててくれるハズさ…それよりもあのタンクもどきを…」

「かしこまりました…ですが…ぐわっ!?」

 

 突如として爆音が鳴り響き、弾幕がガルマたちの後ろから飛んで来る。振り返ればガルマの怨敵のガンタンクがガンキャノンと共にこちらを睨み、次々と砲撃する。

 

「くっ…!?もしかして察知して回り込まれた!?いいか!あのタンクもどきは私が倒す!お前たちはあの赤い方を狙え!」

 

 ガルマはガンタンクを倒すためにあらゆる考えを講じていた。あの思い切りの良さがある動きを封じるためにまずは…

 

「連邦の機体の回収などどうでもいい…!お前は僕が叩き潰してやる!!」

 

 今度はヒートホークではなく、ザクマシンガンやクラッカーを使い、ガンタンクのボップミサイルの射程圏内で立ち回ろうとするガルマに対し、両腕のボップミサイルを発射し、さらにガンタンクは周辺のビルや残骸を駆使して何とか一定の距離を取る。

 

「クッ…ちょこまかと…!…そうだ!」

 

 所持していたクラッカーをワザとガンタンクの後ろにあるビルへと投げ当て、爆破させる。その残骸はガンタンクの側へと降りかかることとなり、退路を断つ。

 

「…!よし、これで…くらえ!…あっ!?」

 

 ガンタンク頭部のコクピットに照準を定め、ザクマシンガンの引き金を引こうとしたその時、何とガンタンクが勢いよく前進してきたのである。

 

 そのころガンタンク内部では…

 

「ジョブ・ジョン!ガンタンクで最大速度で前進なさい!!」

『え、えぇ!?』

「早く!ひき潰す勢いで!」

『ど、どうなっても知りませんよ!!』

 

 即座にジョブ・ジョンはガンタンクのペダルをベタ踏みし、一気に加速させる。金属と金属がぶつかる音と共に速度と重量にモノを言わせたガンタンクが倒れたガルマのザクの脚部に押し乗り、メキメキと凹ませる。

 

「そのままさらにゆっくり前進!」

『ザ、ザクをこのまま潰すんですか!?ゆ、ゆっくり!?』

「そうよ!」

『ひぇぇ…!セイラさんっておっかねぇ…』

「何か言ったかしら?」

『い、いえ何も!』

「じゃあ早く!!」

 

 再びメキメキとあまり心地のいい音でない破壊音がキャタピラ越しに伝わって、胴体部分に差し掛かるかと言ったところで、踏みつぶされているザクから、ジェットパックを付けたパイロットが脱出してくる。

 

『あっ!セイラさん!パイロットが!』

「…パイロットは逃がしてコクピットだけ潰しておきましょう…あら?」

『な、なんか…撃ってきてますね…拳銃で』

「…お可愛いこと、無駄よ。相手にしなくていいわ」

 

 まさに自棄になった様子でザクから逃げ出したパイロットは護身用の銃を撃っていた。

 

「このッ!このッ!タンクもどきが!!モビルスーツでもないくせに!!」

 

 ガチガチと歯を震わせ、目の前の恐怖を打ち倒そうとするも、モビルスーツ相手に人間用の銃は当然効果がない。次第に弾丸が尽き、カチカチと空撃ちの音だけがむなしく響く。

 

「…っ!こうなったらガウですり潰してやる!ガウ!ガルマだ!指定ポイントまで飛ぶ!僕を回収しろ!!」

 

 捨てるように拳銃をガンタンクに投げつけた後、ジェットパックのスラスターを点火し、空へと飛んでいくガルマをセイラは一瞥もくれずジョブ・ジョンに「ガンキャノンの援護に!」と進路を取らせる。

 

 そのころ、カイとスレッガーはたった1機となったシャアに翻弄されていた。

 

「…ふむ。このガンダムのパイロットたち…どちらも以前戦ったガンダムのパイロットでないと見えるな。以前のガンダムなら1機だとしてももう少し私を追い詰めているはずだが…」

 

 ガンダム2機の動きは性能こそいいものだろうとは分かるが、どこかぎこちない。何度か戦った方のガンダムはパイロットが別人だろうという間合いの違いや攻撃の手の甘さを感じ、黒い方のガンダムのパイロットは癖なのか射撃に頼りがちな動きをしている。

 が、だからと言って狩り取れるかと言われれば難しく、やはりそこはガンダムであるが故なのだなと実感させられる。

 そんな時だった。

 

『シャア!シャア!僕だ!これからタンクもどきをガウで潰す!君はどこにいる!?』

 

 必死そうなガルマの声が通信で聞こえてくる。こんなにも必死な声は士官学校時代の山岳行軍訓練の時以来だろうかと思ったが、どうにも狂気も混じったようにも聞こえる。

 

「私はまだ先ほどのところでガンダムと競り合っているよ…2機相手だとどうにもな…!そちらはどうだ?」

『………』

「…ガルマ?」

 

 少しの無言の後、ガルマは絞り出すようにそしてだんだんと声を荒らげる。

 

『やられたよ…あのタンクもどきに…!アイツが僕のプライドを!ザビ家の誇りを!』

 

 それを聞いてシャアは心の中で微笑する。

 

(あぁ、ガルマ…君は戦場に出るべき人間でなかったな)

 

『僕はザビ家の男だ!ドズル兄のように強く!キシリア姉さんのように鋭く!サスロ兄のように内政を司り!ギレン兄のように大局的に明晰で!父上のように……!?』

 

 自らガウの操舵桿を握り締め、ガンタンクに狙いを定めていたガルマであったが、突如警報と共に雨天球技場の屋根を突き破り、こちらへ砲を放つ木馬…ホワイトベースがその姿を現す。

 

「なっ…!?も、木馬が…!!そんな場所に…!?」

『…ククク、ハハハハハハ…!』

 

 怯えたじろぐガルマの声にシャアはついに我慢が出来ず声をあげて笑う。

 

「な、なにがおかしい!シャア!」

『いや、何…まさか本当にこうなるとはな…一度は疑ったがこれではあの手紙を信じるほかないな』

「手紙…?な、何の事だ?うわっ!!」

 

 ホワイトベースはガルマの乗ったガウに全砲門を向け、砲撃を開始する。

 

『ガルマ、聞こえていたらお前の生まれの不幸を呪うがいい』

「な、なんだって…?不幸?」

『君はいい友人であったが…君の父上がいけないのだよ。フフフ、ハハハハハッ!』

 

 その言葉を聞き、ガルマの頭の中は真っ白になった。

 シャアが、一番の友人が何を言っているのか、それが何を意味しているのか、理解が追いつかない。

 

 ふと顔を上げると、それまで頭に血が上っていて聞こえていなかったドップ隊からの悲痛な声での被害報告。マゼラアタック隊の最後の声。「助けてくれ」というザクのパイロットからの命乞い。ガウの損害を知らせるアラートのけたたましい音や赤く点滅するランプが、そして周りには、先ほどの砲撃で倒れ、血を流し動かなくなった部下達の姿が目に入る。

 

(…僕は、何も見えてなかったのか…そうだ。僕は…私は指揮官だ…)

 

「………」

 

 たった一人となったガルマは再び操舵桿を握り締め、ガウの進行方向をホワイトベースへと向ける。

 

「…なぁ、シャア」

『なんだ?』

「恨まれている理由を私は知らない。父上の事を信頼し、良き父だと思っているが…私は全てを知っているわけではないからね…君にとてつもないことをしてしまったのだろう。」

 

 ホワイトベースへの進路を取り、落ちるように迫りながら、その距離がどんどんと近づく中、ガルマは自身の中の恐怖を押し殺す。

 

「赦せ、とは言わない。だが、私にも意地がある!私はザビ家の男だ!」

 

 ギリッと操舵桿を握る手を強め、自らが『落ちる』目標を見据える。

 

「見ていろシャア!!これが…僕の!ガルマ・ザビの最後だ!!ジオン公国に栄光あれッ!!」

 

(…イセリナ…!)

 

 直後、ガウのブリッジをホワイトベースから放たれたメガ粒子砲がえぐるように貫いた。

 

『…惜しい男だったよ、ガルマ。安心しろ、すぐにあの世で家族と仲良くできるように手配してやろう』

 

 この日、宇宙世紀0079年10月4日。ガルマ・ザビが戦死し、その報告はすぐさま本国へと知らされることとなった。

 




ガルマ・ザビの死は原作と同じだと安堵するカイ。
が、ホワイトベース隊を狙って新たな刺客が放たれる。
再び相見える相手にカイはガンキャノンで応戦する。

次回 「赤錆の死霊と青い巨星と軟弱者」
『彼』は生き延びることができるか?
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