やっぱり、『軟弱者』かもねぇ…   作:F覚醒ヅダ

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幕間 アムロとブライト

 

「お互いの手が届かないところで一度ちゃんと話し合いなさい!」

 

 アムロとブライトはミライにピシャリと叱られ、気を小さくしてそれぞれの独房に隣り合わせに入った。

 

「………」

「………」

 

 沈黙。先ほどまで掴み合いをしていた彼らが交わす言葉など、ましてや分からず屋と話す舌など持たぬと言わんばかりであった。

 

「やぁ、いたいた…さ、カツ君、レツ君、キッカちゃん、こっちですよ」

 

 そんな彼らの元に、ホワイトベースの料理長で恰幅のいい中年の男であるタムラと、ちびっ子3人組が食事を届けに来る。

 

「さ、ブライト艦長、アムロ君。まずはこれでも食べてくださいな」

 

 タムラから差し出されたそれぞれのプレートには、貴重なジュースのほか、少し形の悪いケーキの上に…見た感じアムロとブライトだろうか?が握手をして「なかよし!」と子供ながらの絵と文字が書かれたチョコプレートが乗っていた。受け取った二人がそれぞれ不思議な顔をしていると、レツが「えっへん!」と腕を組む。

 

「えへへ!おれたちがつくったんだぜ!」

「ほんとはアムロにーちゃんがいつもがんばってるからってつくったんだけど…」

「でも、なかなおりに!ってあたしたちがくふーしたの!」

「そうなんですよ、この子たちも貴方達が喧嘩してるのを見て何かできないかって…すっごく頑張ったんですよ?…ねー?」

 

 笑いながらタムラがそう言う横で子供たちも「ねー!!」と満面の笑みを浮かべて見せる。そんな純粋無垢な子供たちの笑顔に、アムロとブライトの心に「うぐっ…」と罪悪感が生まれる。

 

「カツ…レツ…キッカ…」

「…すまないな…俺達が、こんな…」

「いーからたべてたべて!」

「おいしいよ!」

「…そうだな。ありがとう、いただくよ」

 

 一口食べると、上品…とまではいかないが、風味のいい甘さが気が立っていた二人の心に染み入るように効いていく。

 

「…では、お二人とも、あとでプレートの回収に来ますよ。...さぁ皆!次はご飯の準備をしに行きましょう!今日は唐揚げにしましょうか!」

「やったぁ!」

「あたしあげてみたい!」

「おれもおれも!」

 

 急いで我先にと走り去る子供たちと、「では…」とタムラが扉を閉めて出ていくと、再び、アムロとブライトの2人の気まずい沈黙の雰囲気になった。

 

 が、その沈黙を破ったのは、意外にもアムロだった。

 

「…僕たち…いろんな人に心配をかけてるんですね」

「あ、あぁ…そう、だな…」

「………ブライトさんは、軍人になってから…長いんですか?」

「いや…まだ半年だ。士官学校を出てこのホワイトベースに乗ってサイド7に来るまでは宇宙にすら出たことがなかった…お前たちと違ってモビルスーツに乗って前線に…みたいなこともしたことがない」

「………」

「…だから本来は俺にアムロを叱れる立ち位置にいないというのは分かる…だが…あー、いや…だがじゃなく……その…」

 

 ブライトの独房の方から、フォークを置くカチャリ、という音と共に、深い後悔のため息が響いた。

 

「…すまなかった。アムロ。どうやら俺は伝えたいことをキチンと言葉に出来ずに誤解をさせてしまっていたらしい…カイやミライに言われて…やっと分かったんだ。あの時だって本当はただゆっくり休んでもらおうと思って…」

「ブライトさん………僕も、その、父さんがあれからどうなったか分からなくて、言われるまま、流れるままずっとガンダムで戦って…ちゃんともっと僕から話をすべきでした」

「…今後は互いの連携、そして周りの為にも相談し合えるよう努力しよう…また言葉足らずなことがあったら…すまないがすぐに言ってくれ。それか直接言いにくい場合はミライやカイを通してもらって構わない」

「わ、分かりました」

 

「…しかし、その何だな…こう、独房入りしたからこそ…ある意味やっと俺達は休めるのかもな…こうして久々に甘いものも食えた」

「そう、ですね…僕もケーキなんて久々だ…」

 

 しばらく、子供たちが手伝って作ったケーキを味わっていると、血相を変えたリュウが息を切らして走りこんでくる。

 

「ブ、ブライトォ!た、大変だ!ガウが!こちらは見つかってないがガンタンクが!」

「落ち着けリュウ…いや、すまないな艦長代理」

「いや…やっぱりこのホワイトベースの艦長はブライトじゃなきゃならん…!俺じゃあもう、どうしていいか…!」

「…分かった。じゃあここを出してくれ。指揮に戻る」

「あぁ!分かった!」

 

 ドアを開けられている間ブライトは「…短い休みだったな」と残っていたケーキとジュースを一口に飲み込み、アムロに声を掛ける。

 

「アムロ、行けるか?」

「…大丈夫です!ケーキも食べました!」

「よし…!じゃあアムロはこのままメガ粒子砲の砲座へ行ってくれ。敵のガウをメガ粒子砲で落とす…今このホワイトベースの中で一番射撃の腕が高いのはアムロ、お前だ。これはお前にしか出来ない事だ」

「…分かりました!砲座へ向かいます!」

 

 その二人の様子を見ていたリュウは緊急事態だというのに、少しほほえましい気分になっていた。

 

「リュウさん!こっちも開けてください!」

「あぁ分かった!…よし!アムロ、しっかりな!」

「はい!」

 

 ブリッジに駆けるブライトとリュウとは反対方向にアムロが走っていく。その足音が遠くなった後、リュウはブライトに「仲直りはできたみたいだな?」とニヤリと笑って見せると、ブライトは少し気まずそうに「…俺は上官だからな」とそっぽを向いた。

 

 ブライトたちがブリッジに到着し、リュウから変わって艦長へと戻り、指揮を下す。

 

「…状況はリュウから聞いている!ミライ、ホワイトベース浮上!雨天球技場の天井を壊しても構わん!その後はガウへと進路を向けろ!」

「了解、ホワイトベース浮上します…その後回頭に移ります」

「フラウ・ボゥ、メガ粒子砲の砲座にいるアムロに通信を開いてくれ」

「はい!」

「オスカ!マーカー!目の前のガウの詳細座標をメガ粒子砲の砲座にいるアムロに送ってくれ」

「了解!レーダーによる座標情報を更新開始!」

「…更新OKです!砲座にデータ送りました!」

「よし…アムロ、聞こえるか?」

『はい!砲座にスタンバイ出来てます!』

 

 その言葉を聞いたブライトは指示を下す前に一度大きく深呼吸をした。

 

(…自分の伝えたいことを相手に伝えるために…)

 

「アムロ!メガ粒子砲でガウを狙い撃て!座標は今送られたものを使用…ただし、ガウのどこを狙うか…そして撃つタイミングは砲手であるアムロ自身が決めて構わない!…頼りにしているぞ」

 

 その「頼りにしている」の一言はブリッジの空気を一変させた。

 

(あのブライトさんが…!?)

(…仲直り、上手くいったみたいね)

 

『…!了解です!ガウのブリッジを狙います!そこを潰せば墜落させられるはずです!回避行動の準備願います!』

「分かった、ミライ!浮上しているところ悪いが、アムロの砲撃後に備えて回避行動の準備を!」

「了解!」

 

 アムロは送られてきたデータと、自身の中にある射撃の勘を頼りに雨天球技場の天井を突き破った後、ターゲットを定め、小さく息を吐く。

 

「……ッ!そこだ!!」

 

 引き金が引かれたメガ粒子砲はアムロが狙った場所に吸い込まれるように放たれ、ガウのブリッジをえぐり取った。

 

 その後、シャアは目的を達したとばかりに撤退し、戦いに幕が引かれ、ブリッジに集まった面々からはアムロとブライトのあの時の掴み合いの喧嘩を茶化す声が少し上がったが、それ以上に今までと違って互いに信頼を見せる2人を見て一同は安堵したのだった。

 

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