罪の世界からの贈り物 作:タン塩
私はいつの間にか青いジャズバーのような広い部屋に居た。
「 ようこそ、我がベルベットルームへ、申し遅れましたな。 私の名はイゴール」
奇っ怪な鼻の男が椅子に座って語りかけてきた。そもそもここは、どこなんだ?いくら窮地だからといって、得体の知れない知識を頼るのは失敗だった。
「この部屋、夢と現実。精神と物質の狭間の場所”ベルベットルーム”の主を致しております 」
今この部屋の主だと言った?じゃあ、私をこの部屋に拉致したのはこの鼻?敵意は感じないけど、一体何が目的だろう……
「そのご様子では、この部屋に関する知識はまだ無いようですな」
「なんなの、ここは?」
「本来、この世界におけるベルベットルームは、ワイルドに目覚められたペルソナ能力者をサポートすための場所です」
「ワイルド……ペルソナ……」
ペルソナっていうとあの蝶蝶仮面がくれた力だよね。でも、ワイルドってなんだろう?野生?
「しかし、あなた様は我が主である、フィレモン様と契約をしペルソナ能力を覚醒させました」
え?契約?心当たりがないんだけど……もしかして、あの名前を答えろっていうのを言ってるのだろうか?
「フィレモン様と契約したペルソナ使いのサポートも私、ひいてはベルベットルームの住民の役割なのでございます」
「そうなんだ、で?なんで、私ここにいるの?」
何も今こんな時に呼び出さなくてもいいじゃないか、最近の私は寝ることが休息になっていない。
「はい、この度あなた様をお招きしたのは、あなた様に渡された力のご説明をするようフィレモン様より命じられたからです」
「フィレモンってあの仮面の人だよね?なんで、渡したその場で説明すればよかったのに」
「いえ、フィレモン様は本来こちらの世界に不干渉を貫いておられております。それに反してあなた様に接触した事じたい私からしても驚くべきことです」
「そうなの?なんか納得いかないけど……さっさと話して眠いから」
「フフフ、ご案じめさるな。現実のあなたは既に眠りについていらっしゃる」
いや、そうじゃない、そうじゃないんだ。でも、ここでゴネてもめんどくさそうだ、大人しく話を聞いておこう。
「では、まず銀の鍵を出してください」
念じれば出てくるのだろうか?取り敢えず、念じてみた……
銀に輝く鍵が手元に現れた。
「その鍵は本来、才能あるペルソナ能力者が優秀な師の元で、数年の修行をすることで手にすることができる物です。そして、この鍵の力は現実の世界と普遍的無意識の深層である『カダス』を繋ぐ門を作ることに有ります」
「あの時、この鍵が光ったのは門を作ったからなの?」
「おそらくは、そうでしょうな。しかし、あなた様は才能あれどペルソナ能力を得たばかり。門を開けるのはせいぜい普遍的無意識の入口あたりでしょう」
「わかった」
そもそも、使うことはないと思う。
「続きまして、本をお出しいただけますかな?」
同じように念じると、 白い本が出てきた。
「さて……その本は、とあるペルソナ能力者が全ての力を使い作り上げた物でございます」
「全て?」
「さよう。記憶、経験、感情、ペルソナ能力、ペルソナ……そして命。それらを全て捧げて出来たものがその本でございます」
「い、命!?そんなものがどうして、私のところに?」
そんな、重いものを託されても……
「さて……それは、渡されたご本人にしかわからぬ事でございます。ですが、あなた様がこの本と向き合い続ければいずれ解るかもしれません」
「そう……この本の力は?」
そんな重い物を託されたんだ、聞かないといけないと思った。
「この本に捧げられた物全てでございます」
「え?全部なの?」
記憶とか感情も得る……それって……
「そう、全てです。ですが、この本にストックされているペルソナは全て強力なものばかり、今のあなた様が降魔するのは少々危険でございます。記憶と感情の力を引き出すのも同様に危険でございます」
ペルソナが危険っということは、いまいちピンっとこないけど。記憶と感情も得る……それって私下手をしたら乗っ取られるんじゃ……
「それって大丈夫なの?」
「制御できない高レベルのペルソナを、無理に降魔させれば最悪ペルソナは暴走し異形の者へと成り果てるでしょうな。記憶と感情の危険性はあなた様が今感じられている通りかと……」
異形!?何それこわ!?それにやっぱり、記憶と感情乗っ取られるのね……
「要するに使えないってことね」
「ええ、ですが……本のペルソナは降魔できなくとも、かなりの集中力が必要となりますが、ペルソナの魔法を引き出すことはできます……それを利用した魔法の合体。これがオススメですな」
魔法の合体って……そんな物を使う事態ってどんなものよ。
「わかったわ。使うことなんてないだろうけど……」
「では次に、ペルソナを得る方法についてお教えしよう……かと思いましたが、そろそろお時間のようです」
「私としては、早く終わらせて欲しいんだけど……」
「そろそろ、目覚めの時間です。フフフ、そう焦らずとも次は現実の世界でお会いできましょう」
会いたくない、とは言えない。これから、きっと世話になるそう私の直感が告げていた。
「最後に一つ」
「何?」
何故だろうか?あってすぐとはいえ、この老人からそのような言葉がでると否応なしに緊張する。
「あなた様のペルソナ能力、これはこの世界のものと似て異なる異質なもの」
「へぇ、他にも似た能力を持っている人が居るんだ」
「えぇ、過去それからこれからも発現させていく方はいらっしゃるでしょう。ですが、それらの方々は特殊な環境でのみペルソナを使えるのです。現実の世界でペルソナを使えるようになるのは難しい。しかし、あなた様は別です、どこでも同様にペルソナを使えるでしょう」
関わり合いにはなりたくないけど、もしそういった輩と敵対した時には、こちらにとってアドバンテージになることだろう。でも、同時にうっかり現実の世界で使ってしまったら……うん、面倒なことが沢山想像できてしまった。
「わかった、滅多なことがない限り使わないでおくわ」
「では、名残惜しいですがお別れの時間となりました」
一応世話になったことだし、礼を言っておく。
「ありがとう」
「フフフ、ではごきげんよう」
目覚ましの音が聞こえる。私は携帯の目覚まし設定を解除し、顔を洗い朝食を取り、学校の準備を始める。
ペルソナ、実際に呼び出し昨晩のことはただの夢だった、と結論づける必要はなかった。それは確かに私の中に居るそれを明確に感じ取ってしまったからだ。
今私にあるのは、これから起こるだろう厄介事への不安とそれに関わり合いたくないという事だ。だけど、それに反してあの影の人物がやろうとしていることに対する、圧倒的な嫌悪と憎悪と怒り。あの影は人の望みを見極めそれを叶えると言っていた。それに反応して本から感情が入ってきた。それはもはや、完全に自分のものだと言っても過言ではないほど私と同調していて、それが空恐ろしいく感じる。
そんな事を考えていると呼び鈴が鳴った。
出て行くと、お隣の堂島菜々子ちゃんと同い年位の男の子がたっていた。
「おはよう、お姉ちゃん」
「おはよう、菜々子ちゃん。そっちは誰かな」
「この人は、昨日うちに来た……」
「鳴上悠です。よろしく」
うちの小説の番長は鳴上番長ってことでよろしくお願いします。
あとごめんなさい。また話がすすみませんでした。