色は隠れど、見逃さない 作:チアイロ普及推奨委員会の平委員
2人は贈り物で書籍系に反応する(ちなみにサツキも)
「2人とも驚きなさい。私のNKウルトラ計画は更なる段階に進化したわ!」
サツキ先輩が突如役員室に来たかと思えば随分嬉しそうな声でそんな事を言った。あまりに唐突だったので私とイロハちゃんはお互いポカンとしている。そして飲み込めてなかった言葉の意味を理解して私はサツキ先輩に向かって拍手をしながら立ち上がった。
「おお〜!それはおめでたい!ぜひ週刊万魔殿で特集を組みましょう!」
「へ〜すごいですね〜……」
嬉々としてる私に対してイロハちゃんは興味がないようだ。抑揚のない声を出しているが意識のほぼ全てを読み耽っている本に持っていっている。それに気付いてか気付かずかサツキ先輩は豊満な胸をズンと張り出して自信満々に言った。
「チアキにイロハありがとう。特別にこの進化したNKウルトラ計画、あなた達で試してあげるわ」
「いえ結構です」
「え、この流れで断っちゃうの?」
あまりに淡々とイロハちゃんが断ったので私はビックリしてイロハちゃんの方を向く。なんてことないようにソファで寝転んでいた。こんな態度じゃいくらサツキ先輩でも怒るんじゃ……
「あら、そう残念だわ」
「その流れで諦めるんですか?」
あまりに呆気なくサツキ先輩も諦めたので私はさらにビックリしてサツキ先輩にもツッコミを入れた。しかし先輩はなぜ私がツッコミを入れたのかよくわかってないようで不思議そうな顔をして私に問いかけた。
「興味あるのチアキ?」
「え!?う〜ん……?」
予想外の質問に驚きながらも私は考え込む。催眠術をしたいわけじゃないがネタとしては興味がある。だけどあまり効果もないので記事にするのは難しいだろう。あまり先輩を傷つけたくはないし少し言葉を濁して答えよう。考えをまとめた私は口を開く。
「……若干」
「ネタとしては面白そうだけど本人とマコト先輩にしか効果がないから記事にしにくいってところですか」
「わおイロハちゃん的確〜……」
「それで太鼓持ちして特集ってよく言えましたね」
私の答えの裏に隠した意味を一瞬で見抜いたイロハちゃんに恐怖を覚える。それになんだか毒舌だし、今日のイロハちゃんはいつも以上に淡々としてると言うか、苛立っている様子だ。思い返すと、部屋に入ってきた時から少し乱暴だったかもしれない
「なんか今日のイロハちゃん機嫌悪くないですか……?」
様子がおかしいのが気になった私は先輩に小声で聞いてみる。先輩は少し考えた後で何か心当たりがあるのか手のひらを打った。
「そういえばマコトちゃんが」
「ああ、はい。大体理解したんで結構ですはい」
大まかな流れは理解した。多分マコト先輩の無茶振りがすぎて怒っちゃったやつだコレは。こうなるとどうにもご機嫌斜め、私にできることはイロハちゃんを極力刺激しないことだ。
「でも言われてみれば確かに機嫌悪そうね。ふふふ、こう言う時こそ先輩である私の出番かしら」
サツキ先輩がイロハちゃんを見てフンフンと頷くと胸の谷間から紐をくくりつけた5円玉を取り出した。催眠術をかける時によく使ってる小道具だ。
「イロハ、疲れた貴方に催眠を掛けてあげるわ」
「はあ?いえ、別に結構ですけど」
「そう言わずに一回だけ」
意気揚々とイロハちゃんに近づいていった先輩は紐の先を摘んで5円玉を垂らして左右に揺らしながら呪文のように暗示を掛けだす。嫌がってたイロハちゃんはどうせ掛からないと思ってるのかすぐに抵抗をしなくなり、左右に揺れる振り子を見始めた。
あなたは段々自分の本当にしたいことをしたくなーる。語尾を伸ばす間の抜けた暗示は果たしてイロハちゃんに掛かるのだろうか。なぜだか私まで緊張して事の成り行きを見守る。
「掛かったわ!成功よ!」
30秒経ってほどずっと暗示を掛けていたサツキ先輩が大声を出して飛び跳ねるように喜んでいる。寝転がるイロハちゃんに近づいて顔を覗き込むが、イロハちゃんにあまり変わった様子は見受けられない。しかし先輩の言う通りならどうやら成功?はしたようだ。
私は成功した催眠の効果を記録するためにカメラを構えてつぶさに観察を始めた。
「パッと見いつもと変わらないような……あ、でも目つきがちょっとトロンとしてる?」
観察しているとイロハちゃんの目がさっきと違う。光を反射してなくて、死んだみたいに静かな瞳になっている。これが催眠成功の証なのだろうか。目の前の手のひらを持ってきて振ってみるが反応がない。今のイロハちゃんはお人形さんみたいだと思ったさらに覗き込むと瞳が動いて目が合った。
単純に目が合ったなと思った瞬間だ、いきなりイロハちゃんが上半身を起こして私の背中に腕を回して、そしてそのまま思いっきり抱き寄せられてソファに倒れた。カメラがイロハちゃんの頭上に着地した。
私はソファに寝転がるイロハちゃんの上に乗って抱き枕になったようだ。
力を込めて抱かれているせいでイロハちゃんの体温とか身体の起伏とかがすごく伝わってきているし、瞳を閉じた顔もすごい至近距離にあるって息が伝わる。状況をゆっくりと飲み込むと心臓の鼓動が一気に速くなった。
「……え?え!?ちょっとイロハちゃん!?何が起こってるんですか先輩!?」
「あらあら」
サツキ先輩は微笑ましい動物の動画でも観てるみたいな顔で温かい視線をこちらに向けてる。
いやそんな場合じゃないでしょう!?思わず先輩に向かって声を荒げてしまった。大声を出したのにイロハちゃんは一向に気にせずに抱く力を緩めないし、サツキ先輩は柔らかい表情をむけてきている。
「この催眠は深層心理に働きかけて相手の本当にしたいと思っていることをさせる催眠なの。つまりイロハが今一番したかったことはチアキを抱くことだったようね」
「な!?なんで!?」
「さあ?私はぜ〜んぜん分からないわ」
「じゃあ解除方法!解除方法は知ってますよね!?」
「解除方法は掛かった人が満足することよ。まあ暫く抱き合ってたらそのうち切れるわよ。マコトちゃんには私から言っておくから楽しんでねチアキ」
「ちょっと待ってくださいサツキ先輩〜!!!」
私の静止も虚しく散って、捲し立てるように言いたいことだけ言い切ったサツキ先輩は部屋を後にしてしまった。私の速くなってる鼓動に対して密着して聴こえるイロハちゃんの鼓動は今日の態度と同じく平坦だ。
「えっと〜意識はあるのかなぁ……?」
「…………」
問いかけても無反応だし、イロハちゃんの立てている息は寝息にも聞こえる。
それにしても気になるのはこの状況だ。イロハちゃんが一番したいことは何かを抱くことなのだろうか、それとも私を抱くことなんだろうか。今すぐにでも聞きたいが、今はイロハちゃん自身の意識はないだろう。
「抱き合ったら解除されるって言ってたよね……?ちょ、ちょ〜っと失礼するよ〜……」
イロハちゃんの背中に手を回すと今まで背中をつけていたソファーの温度と背中の体温に挟まれる。なんだか手の先からその温かさがゆっくりと伝わってきて速くなっていた鼓動が次第に静まっていく。どれくらいの時間で切れるのかずっと気にしながら、とりあえずイロハちゃんが起きるまでじっと抱きしめうことにした。
「あったかいね……」
おまけ 一方サツキ
「戻ったわマコトちゃん」
「サツキ先輩おかえりなさい!」
「ただいまイブキちゃん」
「サツキ戻ったか。で、どうだったイロハの様子は。……やっぱり怒ってたか?」
「ちょっとご機嫌ナナメだったわね」
「そうか……あとで何かしてやらんとな。いつ戻ってくる」
「ああそれねマコトちゃん」
「どうした?」
「イロハ今チアキを抱いてるから戻ってくるの結構かかると思うわ」
「…………………………なにぃ!!?!!?!!!…………はうっ」
「わあ!マコト先輩が倒れた〜!イブキかいほうする〜!」
「あら難しい言葉知ってるのねイブキちゃん」
「えへへ〜」