獣人少女転生譚 ~あるいは美しい獣に撃ち堕とされた男たちの話~ 作:お肉大好き
前の文体の方が読みやすいと感じていた方々のご意見を無下にすることになり、本当に申し訳ありません。
ズカァン!!
しかし、僕の体に雷に打たれた衝撃はやって来ず、代わりに誰かに抱きかかえられながら空に浮く感覚があった。
アルだった。
彼が、雷が落ちる直前に僕を捕まえて、そのまま両手で抱えながら地面に近い低空を駆けているのだ。
アルは森が深くなっていくところで僕を降ろすと、木の影に僕を隠した。
「ここで待ってろ。あれは俺が何とかする」
「アル!」
アルは空高く飛び上がっていった。
「何なんだよあいつは!」
「あんなバケモノ見たことない!」
広場は騒然といていた。
なんとか逃げ出そうとする者。足がすくんで動けなくなった者。その場で泣き叫ぶ者。
無秩序に混然としていた。
「うろたえるな!!」
突如、その場に
マックスの大声だった。
その場にいた誰もが、ただ1名を除いて、今この場で誰に従うべきかを瞬時に理解した。
「残っている生徒会のメンバーは俺の周りに集結せよ!協同して防壁魔術を使うんだ!」
「無事なプレス関係者の皆さんも集まって!貴方たちをお守りいたします!」
「航空魔導師は空を飛んで散開!奴の周囲を駆け回って意識を逸らせ!」
「これより、
その場の秩序が回復する。
堕天使はマックスを中心できた集団に狙いを定め、羽ばたきながら近づいていく。
やがて羽から光の粒子を撒き散らした。
「防壁魔術!詠唱開始!」
「「「「「「「万物を照らす無礙光よ」」」」」」」
堕天使は後ろに退くと、再び雷が即席部隊の中心にいるマックスに襲い掛かる。
「「「「「「「十重二十重に囲繞して我を守り給え!」」」」」」」
ズカァン!!
100以上もの様々な色の膜は半数以上が破られたものの、その魔術は雷を防ぐのに有効だった。
報道陣が必死に堕天使に向かってカメラを回している。
「アアアアアアアアアアアアッ!」
攻撃が効かなかったことを悔しがるように堕天使が叫びながら、その大身を震わせる。
そこに、1人の航空魔導師が猛スピードで堕天使めがけて滑空する。
アルだ。
アルは右手に持ったサーベルで駆け抜けざまに堕天使を切りつけるが、堕天使の装甲は硬いのか、サーベルは半ばでポッキリと折れてしまった。
「勝手なことをするな!俺の指示に従え!」
「誰がお前なんかの指示に従うか!」
マックスとアルが言い争いを続けている間にも、堕天使は再び羽から粒子を出し、雷撃の発射準備を開始する。
「攻撃時に後ろに引いている・・・…。っ!各人!防壁魔術詠唱開始!フェルザー会長と航空魔導兵は雷撃で攻撃!」
「わかりましたわ!」
「おう、わかったよ!」
「雷撃弾、装填。……打ち方、よーい!」
「
堕天使の雷がマックスたちを襲う。
さきほどと同じように、その雷撃は防壁魔術によって防がれた。
「雷撃弾、一斉掃射!」
「極重罪悪を金床ごと
さっきと違うのは、そのあとフェルザー会長と航空魔導師による雷撃の反撃があったことだ。
ドゴォン!
バチバチバチバチッ!
「アアアアアアアアアアアアッ!」
堕天使には雷撃が効くらしい。だから、自分が放った雷撃に当たらないように後ろに身を退けていたのか。
堕天使は苦しみながら空中で悶え狂う。
その苦しんでいる堕天使の中心の巨大な目玉に、高速飛翔体が飛び込んできて細長い棒状のものを突き立てた。
アルだった。
どこかからねじ切ったのか、手にした身の丈以上の道路標識の尖った方で堕天使の目を突き刺していた。
「アアアアアアアアアアアアああああっ!!」
目玉から血のような赤い粘性を持った液体が飛び散る。
堕天使がしゃにむに腕を振り回しながら痛がる。
その細長い手が鈍い音とともにアルにぶつかった。
地上に向かって吹き飛ばされる。
アルは墜落していく。
「アル!」
僕は不快感を伴った湿りを感じる下半身に構わずに、アルの墜落するであろう地点に走りはじめる。
走っている間に空から飛翔音が聞こえたかと思うと、片羽を付けた複数の人影のようなものが整然と編隊を組んで、苦しむ堕天使に向けて滑空してきた。
「
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「
部下へ指示を飛ばしながら、バンス=アルリッヒ・ラーデル大佐は目標を観察する。
単眼に道路標識を生やし悶え苦しむ、自分たちと同じ義装翼を装着した化け物は禍々しく見えた。
『堕天使』、長耳族の忌まわしい宗教物語に出てくる空飛ぶ怪物、とはよく言ったものだ。
だが、そんなことは関係ないとラーデルは思い直す。
いつも通りやるだけだ。命令通りに対象を
「スコル小隊!指示空域に着きました!」
「ハティ小隊!同様に指示空域に着きました!」
部下たちが指定の位置に着いたようだ。
よろしい、ならばあの堕天使を壊すために指示を飛ばそう。
「スコル小隊!ハティ小隊!雷撃弾装填!」
「……スコル小隊!構え!撃てぇ!」
先ほどの威力を抑えた教校の生徒たちの雷撃よりも格段に威力の高いそれが、激しい轟音とともに堕天使に襲いかかる。
堕天使の鎧の隙間から赤い液体とともに、人の臓器のような何かが飛び出した。
しかし、ラーデルはそんなことに興味は示さずに続けて指示を飛ばす。
「スコル小隊!雷撃弾再充填!ハティ小隊!構え!撃てぇ!」
雷撃弾が直撃する。
堕天使は今まで以上に悶え苦しみながら、肉片を撒き散らして墜落していく。
「ハティ小隊!雷撃弾再充填!全員そのまま待機せよ!……まあ、これで終いだろうな」
堕天使は急降下して地面に墜落し、肉片を撒き散らして潰れた。
もう、攻撃は必要ないだろう。何度も人間や物を破壊してきた経験がそう告げていた。
それにしても。
あのフリードリヒ・フォン・バーンシュタインのご子孫の指示は素晴らしかった。
私もいざ戦争になったら、あのような上司の指揮下で戦いたいものだ。
それと、アルベルト・メルゲンだったか。あの少年も見どころがある。
命令を聞かない跳ね返りなところもあるが、あの死をも恐れず攻撃対象に突撃していく勇気は利用価値があった。
「良い。実に良い」
ラーデル大佐は将来ミッテルラントの国防を担う者たちの頼もしさに、深く頷いた。
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「アル!」
僕は墜落したアルのもとに駆け寄った。
アルの状態はひどいものだった。
手足が本来の方向とは真逆に曲がっている。
背中から堕ちたのだろう、義装翼は粉々になっていた。
内臓がやられたのか、ゴホゴホと咳をするたびに口から血を吐き出していた。
「アル……」
こんなにも傷つくまで戦って……。
今にも死にそうなアルを見ていると胸が苦しくなって、頬に涙が流れ落ちるのを感じた。
アルを、死なせてはならない。
僕は両膝を地につけると、できるだけ優しくアルの体を下から両手で抱き起こす。
そして、大気のマナを集められるだけ集め、自身の全霊を以ってアルの体に回復魔術をかける。
緑色の燐光が僕たちを包み、その光は生まれてはまた散っていく。
視界の端にカメラが自分たちに向けられているのが見える。
カメラのシャッターが降りる音も幾度も聞こえた。
「アル!……アル!」
でもそんなことに構っていられるか。
僕は涙を流しながら、回復魔術をかけ続ける。
涙で歪む両目で、アルの次第に穏やかになっていく顔を見つめ続けた。
・天使の形をしている
・雷撃を使うのに雷撃が弱点
上記2点は、『舞-HiME 運命の系統樹 修羅』に登場する『メタトロン』という敵からの盗用になります。