獣人少女転生譚 ~あるいは美しい獣に撃ち堕とされた男たちの話~   作:お肉大好き

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末路

「っ!」

 

 ガイドリヒ6世のサーベルが振り下ろされる。

 やってくるであろう痛みに、私は目を閉じた。

 

 ……しかし、痛みはいつまでも来なかった。

 おそるおそる目を開けると、目の前には私に背を向けて仁王立ちするアルベルトの姿があった。

 私をかばったのだ。

 サーベルで袈裟切りにされ、鮮血を噴き出したアルベルトの身体がゆっくりとこちらに倒れてくる。

 

「アルベルト!」

「……セ……リカ」

 

 見る見るうちにアルベルトの身体から、血液が石畳に流れ出てくる。

 しかし、今オデナウアー首相への回復魔術を止めると、首相の命は失われるだろう。

 私はアルベルトを治療できなかった。いや、治療しなかった。

 

「ええい!下賤な者が邪魔をするな!……次こそお別れです!セリカ・アーレンハイム!」

 

 ガイドリヒ6世が今度は右手のサブマシンガンの銃口を私に向ける。

 

 次こそ万事休すだ。

 私は銃口から目を離すこともできなかった。

 

 パァン!

 

「がはっ!」

「え?」

 

 ガイドリヒ6世の身体が一瞬揺れたかと思うと、倒れていく。

 

「こん畜生め……。地獄でも復讐してやるぞ……」

 

 バーデンさんが、最後の力を振り絞ってガイドリヒ6世を撃ったのだ。

 バーデンさんは今度こそ脱力して動かなくなった。

 

「ギャオォォォン!!」

 

 主がいなくなったからだろうか、バハムートがしゃにむに暴れはじめる。

 竜が鋭い爪を左右に振り回す。

 多数の白いスカーフを巻いた反乱兵たちが身を裂かれ吹き飛ばされていく。

 

ヴァッハフント中隊(番犬)、今現場空域に到着した!」

ヘクセ(魔女)陸戦魔術部隊、ただいま到着した!」

 

 空と陸から応援の部隊が来た。

 しかし、暴れ回る竜には雷撃が効かない。

 航空魔導師たちも、地上部隊も手をこまねいているようだ。

 

 やがて、魔法杖を手にしたスーツ姿のマクシミリアンが、現場に走って戻って来た。

 彼は全体に指示を飛ばす。

 

「魔術師は火焔魔術詠唱開始!航空魔導師は衝撃弾を装填!次に奴が脚のかぎ爪を降ろした瞬間に、ヘクセの方々は火焔魔術、少し遅れて航空魔導師の方々は衝撃弾を、後ろの2つのかぎ爪にお願いします!」

「わかったぞ!バーンシュタインの倅よ!ヘクセ各員、火焔魔術詠唱開始!」

「いいだろう!君の案に乗ろう!全中隊隊員、衝撃弾装填!」

 

「ギャオォォォン!!」

 

 バハムートは一際大きな雄たけびを上げたかと思うと、今度は連邦議会議事堂のある方向へその口を向けた。

 足のかぎ爪をバタンと石畳の上に落とす。

 背中の義装翼に、赤い燐光が現れては散っていく。

 

「今です!」

「無間の獄卒よ!極悪最下にその命の結末を示せ!」

 

 黒い焔が高く燃え上がり、竜の両脚の後ろのかぎ爪を焼いた。

 

「ヴァッハフント中隊、お願いします!」

「打ち方よーい!一斉掃射ぁ!」

 

 バコンッ!

 

 火焔魔術によって加熱され脆くなったオリハルコンが、衝撃弾の着弾とともに、へし折られた。

 支えを失った巨竜がゆっくりと後ろに倒れる。

 轟音とともに、口から放出された雷撃は天を貫いた。

 

 その後は、マクシミリアンの指示で、先ほどと同じ要領で義装翼の付け根の部分を破壊した。

 残されたのは、マナを吸収できなくなり雷撃を撃てなくなった巨体だった。

 ヘクセとヴァッハフント中隊は、動けない巨竜を彼のかぎ爪の及ばない距離から、火焔魔術と衝撃弾で嬲り殺しにした。

 外装が剥がれる度に、人間の臓器が散乱していく。

 やがて、バハムートは動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 ここは、ベランデンブルク市の郊外にある共同墓地。

 誰も顧みないようなその片隅に、小さな墓が静かに立っていた。

 その墓石にはこう書かれている。

 

『連邦共和国歴82年。アルベルト・メルゲン、ここに眠る』

 

 アルベルトは、助からなかった。

 外傷性ショックと出血多量が原因で、この世を去った。 

 いや、原因は私だ。私が彼を見殺しにしたのだ。

 私は彼の人生を滅茶苦茶にし、最後には死に追いやったのだ。

 

 引き取り手のいなかったアルベルトの遺骨は、人造竜事件の犠牲者たちとともに、共同で葬式が行われた後、私が無理を言って引き取った。

 まあ、墓まで埋葬する手続きは、マクシミリアン様にやってもらったんだけど。

 

 そのマクシミリアン様は、私がアルベルトに祈りを捧げるのを、私の乗る車椅子を両手で支えながら見守っていてくださる。

 その左手の薬指には、私が着けている物と同じデザインの指輪が嵌められていた。

 

 

 

 あの後、私はオデナウアー首相の命を身を挺して救ったことに関して、望外の賛辞を各方面から受けることになった。

『救国の獣人聖女』、『連邦共和制を守護する女神』、『美しき獣人の癒しの乙女』……。

 政府のプロパガンダに利用されたのだろう、私はあらゆるメディアにそう取り上げられた。

 

 オデナウアー首相自身も、自分をかばいながら治療した私に個人的恩義を感じてくれたらしく、私の淫らな風説(事実だが)も、メディアに載る前に握り潰してくれた。

 

 こうして晴れて国家に貢献した聖女となった私は、マクシミリアン様と結ばれることができたのだ。

 

「もういいだろう、セリカ。帰ろう」

「はい、マクシミリアン様」

 

 マクシミリアン様は私の返事を聞く前に車椅子を動かし、アルベルトの墓石を後にしていく。

 私は名残惜しい気持ちになって、墓石を振り返る。

 この車椅子も、バーンシュタイン邸の離れに着いたら破棄する予定だ。

 もう2度と、私がアルベルト・メルゲンを弔うことは無いだろう。

 

 私は車椅子が押されるのを感じながら、私が自身の歩く権利を放棄した日のことを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 いくら私が『救国の聖女』になったとしても、私のやった愚行は消えない。

 バーンシュタイン家、特にご当主のリュディガー様が私を受け入れてくれるわけが無かった。

 

 そこで、賢明なマクシミリアン様は1つの提案をした。

 

 アキレス腱の永久断絶。

 のこぎりで私の足の腱を絶ち、その断絶した状態で私の回復魔術で傷だけを塞ぎ、2度と歩けないようにする。

 私が未来永劫”悪さ”ができないように、バーンシュタイン家に閉じ込めて徹底管理するというものだ。

 

「やれるものならやってみろ!」

 

 マクシミリアン様と口論になったリュディガー様は一瞬渋った後、しかし激昂に任せてそう言い放った。

 

 マクシミリアン様はすぐに屋敷の主だった住民を集めた。

 彼らの前で、四つん這いになった私の片足を左手で固定すると、右手に持ったのこぎりをためらいもなく引いた。

 

「むぐぅ!」

 

 ハンカチを口に入れた私は、それでも苦悶のうめき声をあげてしまう。

 マクシミリアン様がそれに構わずに刃を押し引きすると、やがて私の足から聞こえてはならない音が聞こえて来た。 

 

 ブチィッ!

 

 マクシミリアン様は私のアキレス腱が切れたのを確認すると、もう1つの足を押さえつける

 

「おい、やめろよ!こんなのおかしいだろ!」

「止めないでください、テオドールお坊ちゃま!これは私に対する正当な罰なんです!」

 

 テオドールお坊ちゃまは見てられないといった表情で、マクシミリアン様と私に訴えるが、私はハンカチを口から出して反論した。

 

「おいやめろ!父上!もうよいではありませんか!彼らの本気はもう証明されている!」

「ヘルムフリート兄さん、止めないでください。こうしないと、セリカはまた間違いを起こす」

 

 へルムフリートお坊ちゃまも見かねたように制止する。

 しかし、マクシミリアン様はまったく取り合わなかった。

 

 これ以上止められる前に一気に終わらせようとしたのだろう、私がハンカチを再び口に入れる前に、マクシミリアン様が私のもう片方の足を押さえつけ、躊躇なく刃を入れた。

 

 ブチィッ!

 

「ああああぁぁっ!」

 

 私は屋敷に響き渡る声で悲鳴をあげるが、すぐにこうしてはいられないと四つん這いの姿勢から床に座り直す。

 

 回復魔術を足の外傷のみにかけていく。

 緑色の燐光が溢れていくとともに、外側の傷だけが治っていく。

 やがて傷が完全に塞がった。

 

 これで、私の足は2度と地面を踏むことは無いだろう。

 

「狂ってるよ。お前たちも、この家も……」

 

 テオドールお坊ちゃまの呟き声だけが、沈黙した室内に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バーンシュタイン家の敷地内に建設された、離れの中に与えられた私の部屋に着くと、私は車椅子を降りて床に座りながら、身に着けているものをすべて脱いだ。

 結婚指輪と、左の獣耳に着けた青空よりも青いイヤーカフ以外の物を脱いで裸になった私は、這いながら壁に向かう。

 そして、壁に打ち付けられた鎖に繋がれた首輪を装着した。

 マクシミリアン様は、その首輪にカギをかけてくださった。

 

 鎖で繋がれた私が到達できる場所には、床に座って使える高さにある洗面台と、四つん這いでも用が足せるようにと、ヤシマの旧式便器が取り付けられている。

 以前は大型犬用のペットトイレで大便小便をしていたのだが、さすがに不衛生だということで、ヤシマ式の便所を造っていただいた。

 

 食事は使用人の方が持ってきてくれる。

 マクシミリアン様は私と一緒にいれるときは、食事を共にしてくださる。

 その時はあえてフォークとスプーンを使わずに、床に置かれた食事を犬食いしている。

 テーブルで座って食事をするご主人様に、私が自分の浅ましさを自覚しているとアピールするためだ。

 

 不満などなかった。

 これは私に対する正当な処遇だと心から思っている。

 男なら見境なく股を開き、彼らを受け入れる人間未満の畜生女が、今まで服を着て2本足で歩いていたことの方がおかしいのだ。

 

「セリカ」

 

 マクシミリアン様は壁際に座った私のあごを掴み、頭を愛おしそうに撫でると、私に呼びかける。

 

「俺はこれから生徒会の仕事で学院まで行かないといけないから、お留守番よろしくね。帰ったら散歩に連れて行ってあげるからね」

「はい!楽しみにしています!マクシミリアン様!」

「おっと、これを忘れるとこだった。俺がいない間これで自分を慰めてね」

「あんっ!お気遣いありがとうございます、マクシミリアン様」

 

 ご主人様は2つの張り型を手に取ると、私の前後の穴に挿入してくださった。

 さらに、ふざけて私の乳首をつねった後、名残惜しそうに私がいる部屋を去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「マクシミリアン様!マクシミリアン様!」

「セリカ!可愛いよ!」

 

 両手両膝を床につき、尻を高くかかげた私の不潔な割れ目に、マクシミリアン様が自身のモノを挿れてくださっていた。

 やがてご主人様は達すると、聖なる液体を私の中に注ぎ込んでくださる。

 

「セリカ、これでやっと君を守れるようになった。今まで他の男たちの毒牙に晒してしまってごめんね」

「謝らないでください、マクシミリアン様。浅ましくて淫乱な私が悪かったのです」

 

 マクシミリアン様は私を愛してくださる。

 

 私は幸福だった。




 ナラカ世界からの送信が途切れました。
 これにてこの物語は終了になります。
 今まで私の拙い語りに付き合ってくださり、厚く御礼申し上げます。
 
 これから、前半の文体の大規模変更を行う予定です。
「ここすき」を入れてくださった方のご厚意を踏みにじること、重ねてお詫び申し上げます。
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