フリートアート・オンライン 黒の剣士と転生者達 作:短号司令官
昭和20年 後世世界における世界大戦未だは終戦を迎えてはいなかった。
英国との単独講話を果たした日本は第三帝国に対して宣戦を布告し、熾烈を極める対独国戦の切り札である旭日艦隊を大西洋へと派遣する。
そして照和23年 連合軍によるニュルバーナ作戦に呼応して旭日艦隊は[理性の術策]を始動させヒトラーの暗殺に成功する。
しかし総統死亡の事実をひた隠しにし未だ戦闘を続ける独軍に対し、旭日艦隊司令長官 大石蔵良は何を思うか……
アイスランド島 イーサフィヨルズ基地
日本武尊 露天艦橋
霧深い湾内を一望できる露天艦橋から大石は一人物思いに耽っていた。
大石(理性の術策は成功した。しかし独国は未だ戦闘を継続している)
[理性の術策]の成功は既に連合軍各首脳部には伝わっており、最初は講和の席に出てくるだろうと思っていたがそれは余りにも甘い考えだった。
ヒトラー亡き後、独国はゲーリングが実質的な主導権を握っており闇雲に戦線の拡大を図っており各地で戦闘の泥沼化が起きている。
ただ海軍に関しては相変わらず派閥争いがあるのか以前と対して変わらず動く気配はない。
しかしそれでも油断はならない、地中海艦隊は戦力の増強を着実に進めており何は大西洋にもその牙を向けてくるに違いない。
大石「…ん?」
ふと下の甲板に目をやると妙な人影を目にした。
霧の切れ間から一瞬だが誰かが倒れているのが見えた、まさかと思った大石は足早に艦橋を降りて甲板上へと向かった。
人影を見た場所へと向かうと、うつ伏せに人が倒れていた。
最初は誰かが酔い潰れて倒れたのだと思って近寄ったがその大石の予想は大きく外れた。
大石「ッ⁉︎」
服装は黒のコートに首には紫のマフラー、背中に剣を背負っていた。
そして何より大石が驚いたのはその人物が子供だったという点だ。
冷静さを取り戻して少年を起こして声をかける。
大石「おい、君。大丈夫か?」
「……ぅ……ッつ……」
呼びかけに答えて少年は目を開けた。
「…アス………ナ……?」
大石「残念だが、私はその"あすな"とやらではない」
視界がはっきりしたのか少年もようやく目の前の大石を認識する。
「ここは…?」
大石「アイスランド島、イーサフィヨルズだ」
「アイス……へぁ⁉︎」
地名を聞いて少年は驚いたように起き上がって辺りを見回す、そして今度は自分の服装を見てまた辺りを見回すというのをニ、三回繰り返した。
「本当に……アイスランドに……?」
大石「そうだが…?」
既に霧は晴れ初めており甲板上から見える景色も大分変わっていた。
「なんで…こんな所に……俺は確かにアンダーワールドからログアウトした筈……なのに…何がどうなって……⁈」
大石「……まぁ落ち着きたまえ、君が誰で何者かは知らんが。君が知ってる場所ではないというのは事実だ」
そう声をかけられて少年は冷静さを取り戻したのか改めて大石の方を向く。そして彼の服装をマジマジと見た後にここが船の上だと気づき、ふと艦上構造物の方に目を向けてこう言った。
「……"大和"……?」
その一言を大石は聞き逃す事はなかった。
それは前世において自身と最期を共にした船の名前だ、転生している人間でなければ出てくる筈のない名前、それも目の前少年はこの時代に全く似合わない格好をしている。そんな彼の口からあの"大和"の名前が出るのは明らかにおかしい、いやそれ以前に彼は大和を知っているという事を意味した。
大石「……何故……その名を知っている……」
「へ?」
大石「君は今、あの艦橋を見て"大和"と言ったな⁈」
「あ…ぁー…はい…ッ⁉︎」
突然大石は彼の肩を掴んで興奮した様子で彼に迫った。
大石「どういう事だ⁉︎何故君がその名を知っている⁈教えてくれ、君は何者で何処から来たんだ⁉︎」
声を荒げる大石の気迫に負けて少年は思わずたじろぐが、一度深呼吸をして大石に話した。
「話します!話しますから、一旦落ち着いてください……!」
大石「あぁ…すまん、つい取り乱してしまったな……」
大石も落ち着いて冷静になる。
するとそこへ大石の声を聞きつけた原参謀長と富森艦長がやってきた。
原「長官、何事ですか⁉︎」
富森「長官にしては珍しく大きな声を出しておられましたが、そちらの少年は?侵入者ですか?」
原「日本人……なのですか?」
原がそう判断したのは少年の顔を見てそう判断したからだ。
大石「あぁ……だが、ただの侵入者ではない」
「っ……」
張り詰めた緊張の糸を前に少年は思わず唾を飲み込んだ。
日本武尊艦内 応接室
応接室にて互いに自己紹介をし、名前が桐ヶ谷和人/キリトと日本人である事を知った3人は驚いていた。
またキリトも自身がここまでに来る経緯と自身が未来から来た事を話していた。
原「それにしても信じられない……80年後の未来から…それも前世世界からだなんて……」
富森「ですが疑いようのない事実に変わりはありません。現に桐ヶ谷さんは我々が経験した前世の敗戦や長官が最期を迎えなさった戦艦大和についても知っているのです。まぁ最も服装は説得力はありませんが」
キリト「ははは…」
大石「それで…君のその格好は"仮想世界"とやらで身につけていた服装なのだと?」
大石の問いにキリトは答える。
キリト「はい、服装や装備はそのままです。でも本当に仮想世界じゃないんですよね…ウィンドウも開かないし……」
そう言ってキリトはアンダーワールドにある《ステイシアの窓》と呼ばれるウィンドウを開く動作をするもそういった気配は全くない。逆に大石達から変な目で見られていた。
キリト「あぁ!いや、ついクセで……スイマセン」
大石「いや、気にせずとも良い」
キリト「ところで、大石さん」
大石「ん?」
彼が持っていた「夜空の剣」を見ていた大石は視線だけキリトに向けた。
キリト「俺にも教えてくれませんか?この世界が一体どういう世界なのかって事…」
原「長官…」
富森「如何なさいますか…?」
大石「……別に教えてもよかろう。何も隠す必要もない、君がこの世界について知りたいのなら寧ろ知ってもらいたいからな」
そうして3人は彼に前世から転生、第二の人生、そして運命の開戦から現在に至るまでの経緯とその目的を包み隠さずキリトに話した。
キリト「はぁー…………」
原「分かってくれたかい…?」
キリト「いや…なんて言うか物凄く壮大と言いますか……」
大石「ハッハッハwまぁそう言うのも無理はない。最低限我々のような転生した人間が少数いる事、そしてより良い未来の為に今こうして戦っている事を知っていたくれればいい」
キリト「はい。あのところで俺ってどうなるんです…?」
大石「うむ、まず降りろとは言えんな。民間人とはいえ頼る者がおらんからな」
原「となると本土に帰還するまで本艦に身柄を置くのですか?」
大石「そうなるな、白鳳で本土に送るという手もあるが近頃は独軍の防空性能も上がっているからな。艦長」
富森「はい、心配には及びません。長官の隣接する予備士官室が空いております。そちらで過ごしていただくのはどうかと?」
大石「そうか、俺は構わんが…さて和人君は?」
キリト「厄介になる身ですから贅沢は言いません。寧ろありがとうございます」
大石「ハッハッハw素直でよろしい!」
こうして黒の剣士は旭日のお膝元に身を寄せる事になったのだった。