フリートアート・オンライン 黒の剣士と転生者達 作:短号司令官
[理性の術策]の成功により第三帝国総統ハインリッヒ・フォン・ヒトラーは死亡した。しかし独軍には未だ停戦の兆候は見られず後世大戦は続いていた。
そんな最中、旭日艦隊の前に謎の少年が現れた。
名を[桐ヶ谷和人]という…………
イーサ基地
日本武尊
大石はお気に入りのサイフォンで珈琲を淹れていた丁度その時、ノックと共に来客にやってきた。
大石「入れ」
扉を開けて入ってきたのはキリトであった。
キリト「おはようございます。大石さん」
大石「やぁおはよう和人君。どうだ?少しは本艦での生活も慣れたか?」
彼がこの後世世界、日本武尊元に現れて早2週間が経つ。
当初はジェネレーションギャップ等に悩まされて右往左往していたが、それも大分落ち着いてきた様子だった。
キリト「慣れたといえば、慣れましたね。でも偶に夢に見るんです…皆事…アインクラッドで……冒険してた時の事……」
大石「……気持ちは分からんではないが、そういうしみったれた話は余りよくないぞ?」
そう言いながら大石は自前の珈琲を自分のとキリト用に二つテーブルに出した。
キリト「コーヒーですか?」
大石「英国女王御用達のブルーマウンテンだ。水はアイスランドの万年雪を溶かしたものだ。君にも味わってほしい」
キリト「随分と贅沢なコーヒーですね……じゃあ、頂きます!」
実家でもコーヒーは普通に飲んでいたが、人に振る舞われるというのは初めてなもので内心心が踊っていた。
簡素なティーカップから漂う芳醇な香りと共に一口飲むと同時に衝撃が彼に押し寄せた。
キリト「な……なんだこれ……」
大石「どうかしたか…?」
キリト「いや…美味すぎますこのコーヒー……今まで飲んでたコーヒーがドブ水みたいに思えるくらい美味いです……いや美味すぎますよ!下手するとアスナより美味いぞ……」
大石「……っはははwそれ程までに絶賛してくれたとはw」
キリトの目はさながらレアアイテムを見つけたときのように輝いており、身体も少し震わせていた。
しばらくの間朝の何気ないひとときを過ごす二人だったが、それは突如として鳴り響いた空襲警報によって破られる。
キリト「警報…⁉︎」
大石「空襲のようだ。空襲の殆どが偵察か嫌がらせ程度のものだが…今回は少し違うな」
キリト「違うって……何がですか?」
大石「君が来る少し前に、英本土にある独軍基地に本艦で艦砲射撃をけしかけてな。その時に受けた被害を些か誇張して流した」
キリト「デマ……偽情報を?」
大石「真に受ければな。君も来たまえ」
キリト「へ?来るって……何処にですか?」
大石「艦橋にさ、我々はこれからここを出る。空襲を避けるというのもあるがどうやら敵艦隊も付近に進出しているようだ。一戦交える事になるようだから、君にも見せておこうと思ってな。我々の戦いを……な」
大石の浮かべた不敵な笑みを前にキリトは思わず唾を飲み込んだ。
艦橋に上がったときには、キリトは改めてここが戦艦の中であるという事を理解した。
窓の外からはイーサ湾内が一望でき鋭利に突き出た艦首、甲板上に配置された51cm三連装砲二基が下に見えた。
「乗員五十二名が陸より未着ですが、戦闘・出港に問題ありません」
大石「未帰還者は各自の判断で防空任務に就くように伝えてくれ」
「はっ!」
富森「出港、湾外へ向け微速前進」
日本武尊は、各方面・部隊に指示を発信しながら直掩艦を従え湾外へと出る。
このとき、トロンヘイムを発進した爆撃隊はまずレイキャビクの連合軍基地を襲撃し、その後イーサフィヨルズを攻撃する予定だった。
日本武尊はイーサ湾を抜け、直掩空母との合流を目指して沖合に出る。
直掩の駆逐艦の姿はあるが、直掩空母尊氏の姿は無かった。
大石「電探・無線封鎖、逆探のみ使用」
「防空軽空母より、合流は一二〇〇とのこと」
原「間に合わんぞ、それでは!」
また同時に米軍基地からの通報も入る。
未確認機多数がレイキャビク方面に接近中とのこと。
敵爆撃隊は敵のレーダー基地を妨害電波で無効化、この頃ではレーダーに対する電波妨害は当たり前になっていた。
また爆撃隊の様子にも変化があった……
「米軍が迎撃戦闘に入りました」
「電探基地との通信途絶……」
大石「迎撃機はどうした…⁉︎」
レイキャビク港では、米戦闘機の必死の抵抗も虚しく、ただの3機しか落とせなかった。それを尻目に爆撃隊は護衛戦闘機と共にイーサフィヨルズへと向かった。
「米独共に戦闘機をぶつけ合い、派手にやり合ってる様子です」
原「爆撃機に護衛機だと…⁈」
大石「やはりな…」
キリト「どうかしたんですか…?」
大石「…航空参謀、爆撃機は欧州から来たのだったな?」
大石は報告に来た磯垣航空参謀に質問を投げる。
磯垣「はっ第三帝国は、トロンヘイムからです」
大石「第三帝国に、欧州本土とここを往復できる足の長い戦闘機はあったかな?」
磯垣「空中給油…いや、潜水空母か…?」
大石「そうかな…?」
原「航空参謀、頭を働かせろ。艦載機だ‼︎」
原のその一言でキリトもようやく大石が何を考えているのかが分かった。
キリト「艦載機って……まさか、大石さんが言ってた敵って…⁉︎」
大石「あぁ恐らくは空母機動艦隊。出所はそこだろう」
大石は改めて来襲方向とア号潜が発見したという敵機動部隊の位置を照らし合わせた。
原「出ました。北緯60度付近です」
大石「敵は南にあり…か、第三帝国も考えたものだな我々はこのまま敵機動部隊の索敵に当たる!イーサ湾の防空は空中指揮管制機に任せる」
原「はっ」
磯垣「陸上基地にいる光武隊も出します」
大石「防空軽空母に索敵機を出させろ、対空・対潜戦闘用意!」
大石の司令を受けた基地防空隊の噴式蒼莱は全力出撃をする。
中隊は管制機と合流し。泊地上空一万で敵を待ち構える。
そして襲来した爆撃機隊は標的の日本武尊が居ない事に戸惑いを見せ、その一瞬が命取りとなって壊滅するのだった。
日本武尊にも独重爆隊壊滅の報は届く。
原「四、五機ほどが損傷を受けつつ、逃走した模様」
大石「次は我々の番だ」
「敵機多数接近‼︎」
前衛には駆逐艦弦月がおり対空戦闘に入る。しかし間も無く、黒煙が前方で上がると同時に弦月からの通信が途絶える。
キリト「っ…!」
大石「……」
原「…距離九千、間も無く対空ロ号弾の射程に入ります」
富森「一、二番主砲、電探と連動、左舷十一時方向に…!」
前部51cm三連装砲二基六門が天を睨む。
敵機も日本武尊を捉え、接近。一方日本武尊では散布域・信管の調停が終わり発射態勢が整う。
富森「長官、いつでもどうぞ!」
大石「弦月の仇を討つ!主砲対空ロ号弾、ってぇぇい‼︎」
号令と共に主砲が唸り、振動が脳へ響き、爆炎が広がる。
キリト「うぉッ⁉︎」
今までに聞いた事のない爆音にキリトは本能的に耳を塞いだ。
音が止んで何が起きたのか艦橋の窓に近寄ろうとするが大石に止められた。
大石「窓に近づくな!目をやられるぞ」
キリト「へ?」
刹那、轟音と共に殺人気化弾が炸裂し、辺りは眩い閃光に包まれる。
キリト「ぐぁッ⁉︎」
大石「おぉッ……!」
閃光が収まると空中から、つい数秒前まで敵機だったものが海上に落下・散乱した。
キリト「一体……何が……?」
大石「…対空炉号弾…必殺の気化燃料砲弾さ」
キリト「気化燃料……⁉︎」
大石「炸裂と同時に燃料を散布し引火、逃れる術をも与えぬ大量殺戮破壊兵器さ………」
説明する大石の顔には悲痛なものがあるのか、何処か悲しげな表情を浮かべていたがその目には闘志があるのをキリトは感じとった。
大石「……和人君、よく見ておきたまえ。ここからが我々旭日艦隊の戦いだ。しっかりとその目に焼き付けておくんだ」
キリト「……はい」
意図しない形で旭日艦隊の大石蔵良の戦いを目の当たりにした桐ヶ谷和人、しかしこの先の事態には彼も大石も予想しなかった事態が待ち受けているのだった