ロクでなし魔術講師とぼっち系妹   作:ヰトセ

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三章

 人はなぜ休日に学校を入れるのか。本来ならまだベッドの中にいる時間なのに……ごめん、それは嘘。姉様かジェンマに早々に起こされてるわ。まあそれはともかく、なんで私が貴重な休日を返上してまで教室にいるのかというと、前任のルイセン先生が急に失踪したために遅れている授業を取り返すためである。

 

「……遅い!」

 

 ……うるさっ。

 とは思ったものの、今回ばかりはフィーベルさんに同意する。生徒だって我慢して学校に来てるのに、なに遅刻してんだあのダメ教師。まさか今日学校あること忘れてるんじゃないだろうな。

 ため息をひとつついて立ち上がる。どうせこの分だとまだ教室に来ないだろう。トイレ行ってこよーっと。

 

 

 

 トイレから戻ってきたらクラスがテロリストに制圧されていた件について。

 クラスメイトはみんな【スペル・シール】で拘束されている。こんなときにいの一番に騒ぎそうなフィーベルさんは……いない!?探してみるといつもフィーベルさんと一緒にいるティンジェルさんもいない。一体何があったのだろうか。

 助けに行った方がいい、よね。別に助ける義理はないけど助けない理由もないし。今動けるのは私だけっぽいし。ひとまずクラスメイトを解放すべき?いや、下手に教室を出られる方が危険か。ごめんみんな、二人を助けたらまた来るから!

 さて、探すといってもどうやって探そうか。この学院は敷地が広いから、虱潰しに探していては二人を見つけても時すでに遅し、なんてことになるだろう。せっかくだし、この前思いついたやつを試してみようかな。

 床に座り込み、両掌を肩幅より広い位置で付け、そこからごく低濃度に薄めた魔力を流し込む。魔力は床から壁へ伝い私を中心に学院中に広がっていく。超簡易版索敵魔術の完成だ。

 

「……ん?」

 

 突然、広げていた魔力に僅かだが反応があった。そこに魔力を集中させてみる。あそこは……魔術実験室?なんでそんなところに?まあそこにいるのが本当にフィーベルさんかどうかはわからないが、私の魔力に反応した以上少なくとも敵はいるわけで。一旦向かってみるか。

 足に【フィジカル・ブースト】をかけて実験室までかっ飛ばす。その足で扉を蹴飛ばせば中にいたのは──。

 

「あ?……なんだ、テメェ」

「貴女は……アーニャ!?ど、どうしてここに……ダメよ、早く逃げて!」

 

 拘束され服を破られたフィーベルさんとフィーベルさんを押し倒している男だった。

 

「誰だか知んねえが邪魔すんなよ。今お楽しみ中なの、見てわかんねえ?……いやまてよ、お前もなかなかの上玉だな。おい、こっち来いよ。お前も混ざるんなら殺しはしないでやってもいいぜ」

 

 マジかよこいつ、節操ないな。こんな状況で敵を誘うな。ムードもへったくれもあったもんじゃないし。

 

「悪いけど3Pは趣味じゃないんでね。それに誘うならもっと上手くやってくんない?女は雰囲気を気にするって知らないの?」

「テメェみたいなガキが女を語ってんじゃねえよ。まあいい、だったら用はねえ。死ね、《ズドン》っ──……は?」

 

 男の顔が驚愕に染まる。当然だろう、ご自慢の魔術を躱されたのだから。【フィジカル・ブースト】の効力がまだ残ってて助かった。

 

「なっ……て、テメェっ!どうやって俺の魔術を躱しやがった!?」

「撃つ方向がわかってて避けられない人、いる?【ライトニング・ピアス】をこんなに短い詠唱で発動出来るのはすごいけれど、まだまだ遅いな」

「言わせておけば……っ!」

 

 お前が聞いたんだろ。

 次の【ライトニング・ピアス】を撃たれる前にポケットに入れていたコインを男の顔面目掛けて弾き飛ばす。と同時に地面を蹴って男に迫り、ヤツが一瞬怯んだ隙に人差し指をへし折った。

 

「ぐあぁぁぁあっ!!テメェ……よくも俺の指を……っ!?」

 

 言い終わるのを待たないでフィーベルさんから遠ざけるように顔面を蹴る。吹っ飛んだ男が体勢を整える前に銃の形にした指先を向けた。

 

「男なんだからたかが指一本折られたくらいでピーピー喚かないで。それと──《貫け閃槍》」

 

 男の首のすぐ側を撃ち抜く。バチバチと余韻の雷光が光り、男は力が抜けたように地面に座り込んだ。

 

「【ライトニング・ピアス】……なんで軍用魔術を、ただの生徒が……」

「得意技というなら、このくらいの速さは欲しいね……《雷精よ》」

 

 完全に戦意喪失しただろうけれど、念のため【ショック・ボルト】で気絶させる。パンパンと手をはたき、フィーベルさんの拘束を解いて手を差し出した。

 

「ま、ざっとこんなもんでしょ。大丈夫?フィーベルさん」

「あ、ありがと……貴女──」

「悪いけど、話は後にしてくれる?まだ残党が襲ってくるかもわからないし。ほら、さっきからそこで覗いてたレーダス先生も」

 

 フィーベルさんの格好を直視するのがなんとなく気まずくて誤魔化すように扉へ視線を向けると、いつもより少しだけ怖い顔をしたレーダス先生が出てきた。

 

「……お前、気付いてたのか」

「まあ、気配ダダ漏れでしたから」

「さっきの戦いぶりといい……お前、何者だ?」

「《貫け閃槍》」

 さっきと同じように首のすぐ側を撃つ。ただ一つ違うのは、雷光は虚空ではなく骸骨の頭を撃ち抜いたということだ。

 

「なっ……」

「だから言ったでしょう。残党が襲ってくるかもって」

「クハハハハッ!やっとお出ましだぁ!ナイス!レイクの兄貴!」

「あれ、もう起きたの。結構強めにいったんだけど、意外に頑丈なんだね」

 

 あっという間に周りを囲まれる。これはボーン・ゴーレムだな。しかもおそらく、素材は竜の牙──。

 

「先生、いけますか」

「当然だろ、俺を誰だと思っていやがる」

「冷や汗出てますけど……《光在れ》」

 

 自分と、それからついでにレーダス先生にも【ウェポン・エンチャント】をかける。どうせ三節しか出来ないだろ。

 

「おっ、サンキュー」

「礼はいいですから、いきます、よっ」

 

 正面のゴーレムを殴り、振り向きざまにもう一体にも。

 

「《大いなる風よ》!」

 

 フィーベルさんの【ゲイル・ブロウ】で外までの道が開ける。

 かろうじて実験室からは脱出したものの、休む暇もなく私たちは廊下を駆け出した。

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