ロクでなし魔術講師とぼっち系妹   作:ヰトセ

5 / 5
五章

 迫り来る剣に対応しながら分析する。おそらく五本の剣のうち、三本は自動で私を追跡し、残りの二本は男が手動で操作しているのだろう。

 正直に白状すると、私は剣技があまり得意ではない。魔術ならば多少は役に立てるし、狙撃銃であればまだマシだったが、近距離攻撃、特に剣は不得手だ。今はまだ【フィジカル・ブースト】で何とかなっているが、効果が切れれば詰む。

 

「……ふ、先程までの威勢はどうした?防戦一方では私に勝つことは出来んぞ」

「っ!黙れ……!」

 

 息が上がってきた。普段から運動をしてこなかったのが今になって悔やまれる。もっと体力付けておけばよかった。

 

「ガッ……!」

 

 一瞬の不意を突かれ背中を斬られた。全身の力が抜けその場にへたり込む。

 万事休す、か。でも、私には、まだやらなくちゃいけない事が……!

 男が手を上げ、私が目を閉じようとした、その瞬間。

 

 

「《力よ無に帰せ》──ッ!」

 

「何──ッ!」

「フィーベルさん……?どうしてここに……」

 

 フィーベルさんの【ディスペル・フォース】により、一瞬、男の剣は力を失った。その隙を逃さず、フィーベルさんの背後から飛び出してきたレーダス先生が男の剣を手に取り──。

 

「俺の生徒に手ぇ出してんじゃねぇーッ!」

 

 男の心臓を、突き刺した。

 ピシャリと血飛沫が飛び、私の頬を打つ。

 

「レーダス先生……」

「お前も一人で突っ走ってんじゃねえよ。いくらリーベルト家で鍛えられてようが、お前だってまだ生徒なんだからな」

「……すみません」

「そんなことよりアーニャの治療が先ですよ!……だ、大丈夫?今、【ライフ・アップ】を──」

「ありがとう。でも大丈夫、フィーベルさんも今ので魔力、結構使ったでしょ。自分の傷くらいは自分で治せるから」

 

 自分の身体に魔力を流しながらゆっくり立ち上がる。

 

「……ふん、見事だ」

 

 男は微動だにしなかった。

 

「リーベルト、か。どうりで学生にしてあの身のこなしだった訳だ。ならば貴様が、あの『リーベルト家の黒髪』……」

「……」

 

 私は何も言わない。死にゆく男に何を語っても無駄だから。

 

「そして……愚者、か。なるほどな」

 

 男の目線を追い床を見れば、愚者のアルカナが落ちていた。

 ……なるほどねぇ。どうりでうちの姉のことを知ってるわけだ。

 そして男は死んでいった。それと同時にレーダス先生の身体がぐらりと崩れる。

 

「先生!」

「……大丈夫、息はある。とりあえず、医務室に運ぼう」

 

 

 

 二人でなんとか医務室まで先生を運び、ベットに寝かせる。

 前に使った【イクスティンクション・レイ】の影響でマナ欠乏症にはなっているが、目立った外傷はないようだった。

 

「先生、どう……?」

「大丈夫。マナ欠乏症の無理が祟っただけで、大きな怪我はないよ。これなら少し回復すれば目を覚ますと思う」

「よかった……って、そうだわ!アーニャ、貴女こそ背中……!」

「ん?ああ……」

 

 背中を見ると、さっきかけた【ライフ・アップ】のおかげか血は止まっていたが、傷口がぱっくりと開いたままだった。

 

「こっちに来て、包帯巻くから」

 

 礼を言って椅子に座った。棚から包帯を取り出したフィーベルさんが近づいてくる。

 

「……ねえ、一つ聞いてもいいかしら」

 

 包帯を巻きながらフィーベルさんが言った。

 

「どうぞ。可能な範囲であれば答えるよ」

「それなら、『リーベルト家の黒髪』って……」

「ああ、やっぱりフィーベルさんも知ってたんだ。お嬢様だもんね」

「聞いたことがあるだけよ。名前が同じとはいえ、まさか貴女だったなんて」

「……別に大した話じゃない。私が黒髪なのは、リーベルトの血を引いていないから」

 

 フィーベルさんの息を呑む音が聞こえた。

 

「私養子なの。それを知らない外野が勝手に言ってるだけ。だから、フィーベルさんもあんまり気にしないでくれると嬉しい」

「ごめんなさい……私、失礼なことを聞いてしまって……」

「いいよ。むしろ、フィーベルさんに知ってもらえてよかった」

 

 手当は終わっていた。もう一度ありがとう、と告げ立ち上がる。

 ……そういえば。

 

 

 

「私、クラスがテロリストに襲われてた理由知らないんだけど、フィーベルさんは知ってる?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。