戦記絶唱シンフォギアの世界で俺は・・・復讐する   作:天空翔太

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深「自称天才物理学者の桐生戦兎は、昨日の検査結果と響が身に纏っていた(ギア)について説明を受けるため、再び特異災害対策機動部二課の本部へ向かうのであった。問題は――その本部が、男子禁制の女子高の地下にあるという事実であった」

ーーー リディアン音楽院正門前 ーーー

万「……なあ戦兎。なんで俺たち、女子高に来てんだ?」

戦「……はあ、ここの地下に特異災害対策機動部二課の本部があるって言ったばかりでしょうが。俺たちは、ギアの正体を聞きに来たんだよ」

深「いや、その話もだいぶ衝撃的だが……()()に入る以外の方法で地下には行けないのか?ここに足を踏み入れたら倫理的にまずいと思うんだが」

万「そうだよな!?なんでよりによって男子禁制の女子高なんだよ!てか俺だけ、門の前で警備員に止められたぞ!!」

深「私は、保護者ですか?って聞かれたんだが……戦兎くん、何か説明することは?」

戦「…いやいや、俺だって初めて来た時は手錠つけられてたからね!?でも地下に行くには、この音楽院の中央棟にあるエレベーターでしか行けないんだ。諦めてくれ」

万「俺たち、完全に場違いだぞ!?男三人が女子高に並んでるって、どう見ても不審者だろ!!」

深「私はスーツだから二人と一緒だと余計に浮くぞ。あと、女子高に入るのは抵抗がある。戦兎、君はどうしてそんなに堂々としてるんだ?」

戦「それは、俺が天才物理学者だからな!!」

深「……関係ないと思うのは私だけか?」

戦「さてと、くだらない話はここまでにして……本部に入るぞ」

深「わかった。科学と刃が交差する場所で、いったい何が待っているのか。さて、どうなる第4話――」


第4話 科学と刃の誤差点にて

昨日の検査を終えた俺は、相棒の万丈龍我と、協力者の深志――ジンを連れて再び二課本部へと足を踏み入れていた。だが――

 

「……で、俺たち、どこに集まればいいんだ?」

 

エレベーターから降りた後、俺は立ち止まり、周囲を見渡した。

 

「……戦兎、まさか場所を聞いていないのか?」

 

「いや、了子さんから()()()()()とは言われたけど、詳しくは言われてないんだよな……」

 

「おいおい……俺たち、女子高の地下にいるんだぞ?このまま迷ったらヤバくないか?」

 

「なんで詳しく聞いておかないんだ!!もし遅刻なんてしたら相手に失礼だろう!!」

 

万丈が変な心配をしている中、ジンが頭を抱えながら俺に文句を言ってると、背後から足音が近づいてきた。

 

「お困りですか?」

 

振り返ると、昨日俺と響に手錠をかけた優男――緒川が立っていた。

 

「戦兎さんたちですね。司令たちがいる部屋まで案内するよう了子さんから連絡を受けています」

 

「助かった!!いや〜、このままだと本当に迷子になるところだった」

 

緒川は無言で一礼すると、静かに歩き出した。俺たちは慌ててその後を追う。

 

「昨日は失礼しました。手錠の件は、あくまで初期対応ですので」

 

「いやいや、貴重な体験だったよ。あんなハイテク手錠、解析したくてうずうずしたくらいだし」

 

俺が嬉しそうに言うと、緒川は苦笑しながらも、足を止めずに先導する。

万丈は周りが気になってしょうがないのか、子供のようにはしゃいでいた。

ジンは、はしゃぐ万丈のことを気にしながら、無言で周囲の構造を観察していた。

 

案内されたのは、雑談に適した小さな部屋だった。

扉が開くとそこには弦十郎と了子さん、その後ろに青髪の少女と二人のオペレーター、そして響がすでに待機していた。

 

「おお、来たか!!昨日はご苦労だったな」

 

「あら、戦兎くん。今日は()()()も連れてきたのね」

 

「…紹介するよ。こいつは万丈龍我。元格闘家で、俺の相棒だ。で、こっちが深志 羅夜司。情報収集で俺たちのサポートをしてくれてる協力者だ」

 

万丈はジャケットを靡かせると、天を指差しながら挨拶した。

 

「プロテインの貴公子、万丈龍我だ!よろしくな!!」

 

ジンは眼鏡を直しながら、穏やかに頭を下げる。

 

「喫茶店nascita(ナシタ)のマスター、深志 羅夜司(じんし らあだし)です。普段はジンと呼ばれています。二人が迷惑をかけるかもしれませんが、これからよろしくお願いします」

 

「…これで全員揃ったな。では、昨日の検査結果とギアの説明を始めよう。了子君、頼む」

 

了子さんが端末を操作しながら、軽快に話し始める。

 

「それじゃあ、まずは、響ちゃんのメディカルチェックの結果発表~~!初体験の負荷が若干残ってるけど、身体に異常はほぼ見られませんでした~」

 

「ほぼ、ですか…」

 

「そして、戦兎くんの身体も異常なし。あれから身体に異変とかは起きてないかしら?」

 

「特に、問題はないな」

 

「そう。なら大丈夫かもしれないけど、もし何かあったらすぐに言ってちょうだいね」

 

「…わかった」

 

「よろしい。さて―――あなたたちが聞きたいのはこんな事じゃないわよね」

 

「教えてください。あの力はいったい……」

 

俺も気になっていたことを響が聞いた瞬間、弦十郎が、後ろに控える少女に視線で合図を送る。

青髪の少女は、静かにペンダントを取り出した。

 

天羽々斬(あめのはばきり)。翼が持つ第一号聖遺物だ」

 

「せいいぶつ?」

 

「……名前からして、遺跡とかから発掘された古代の遺産ってところか?」

 

「正確にいえば、世界各地の伝承に登場する、現代の技術では製造不可能な異端技術の結晶の事。多くは遺跡から発見されるんだけど、経年による破損が著しくって、かつての力を完全に秘めているものは本当に希少なの」

 

「なるほど……つまり、そこの青髪の子が持ってる宝石みたいなやつも、聖遺物のほんの一部って訳か。で、そのほんの一部から力を引き出すには、歌……いや、特定の波長を持った声じゃないとダメなんだな」

 

「さすが、天才と名乗るだけのことはあるわね。そうよ。欠片に微かに残された力を増幅して解き放つ唯一の鍵が、特定振幅の波動なの」

 

了子さんの説明を聞いて、俺は導き出した結論を口にする。

 

「とすると――歌による特殊な波長で活性化された聖遺物を一度還元して、その力を鎧の形に再構成して身に纏ったのが、ギアって呼ばれてるあの鎧ってことか……」

 

「そう。それが、翼ちゃんや響ちゃんが身に纏うアンチノイズプロテクター『シンフォギア』なの」

 

まさか、歴史や伝承にしか登場しないものが実在していて、その力を利用する技術が開発されてるとは。エニグマの時にいろんな技術を目にしたが、歌を使う技術は初めてだ。

俺は、改めて世界は広いものだと実感する。

 

「だからと言って、誰の歌でも良い訳ではない。聖遺物を起動させ、シンフォギアを纏える歌を歌える僅かな人間を我々は、適合者と呼んでいる」

 

「それが、響とそこの青髪の子って訳か」

 

そう言った瞬間、周囲の空気が変わった。

みんなが、俺を奇妙なものでも見るような目で見ている。

 

「……あれ?何かおかしい事でも言った?」

 

「…戦兎さんは、風鳴翼を知らないんですか?」

 

「風鳴翼?そこの青髪の子の事か?…言われてみれば、どこかで見たことあるような……」

 

すると、周囲は酷く驚いたような表情になる。響が目を丸くして、椅子から立ち上がった。

 

「……ええっ!?戦兎さん、本当に翼さんのことを知らないんですか?」

 

「国民的トップアーティストの風鳴翼を知らない人間がいるなんて……」

 

「どれだけ世間知らずなの……」

 

「……戦兎、なんで君は芸能方面に疎いんだ!!」

 

「…え?何?俺、何か悪い事した!?」

 

まるで常識を疑うかのような空気が部屋を支配する。

俺は、その空気にタジタジになる。

 

「落ち着くんだ戦兎君。彼女の名前は風鳴翼。俺の姪に当たる子で、この日本じゃ知らぬ者はいないと言われる程の大人気歌手だ」

 

「……ああ!!どこかで見たことあると思ったらそういうことか。でも俺あまりテレビや雑誌とか読まないからそりゃ気づかないわけだ」

 

「……どうも」

 

青髪の少女―――翼はそっけなく返した。

その声には感情がこもっていないようで、俺には静かに怒っているようにしか見えなかった。

 

「まあ、翼ちゃんの紹介はそのぐらいにして、どうかしら?シンフォギアについて、少しは理解できたかしら?」

 

「まあな。俺の知らない技術があるとは、世界は広いな」

 

「なるほど。さっぱり分からん」

 

万丈が堂々と宣言する。

 

「…すいません。私もぜんぜん分かりません」

 

響が申し訳なさそうに頭を下げる。

 

その瞬間、場の空気が一気に緩んだ。

俺とジン以外の全員が、ズッコケるようなリアクションを取った。

 

「だろうね」

 

「だろうとも」

 

さっき物言いをつけてきた、オペレーターの藤尭朔也と友里あおいが、納得したように頷く。

ジンは、万丈の脳筋ぶりを知っているだけに、軽くフォローを入れる。

 

「…はあ、万丈はわからなくてもいいとして、響君はわかっていないとダメじゃないのかい?」

 

「おい、ジンどういう意味だ!!」

 

「君の辞書には、筋肉、最強、無敵しかないだろ。そんな万丈くんに説明しても理解できるとは思えないからね」

 

「おい!いくらなんでもそれは言いすぎだろ!俺だって他の漢字も分かるわ!」

 

「本当かな?それじゃあ、他に何が分かるんだい?」

 

「それは……、あれ?バカって漢字だったよな?」

 

「おお、筋肉馬鹿にしてはやるじゃないか!!」

 

「馬鹿ってなんだ!筋肉をつけろよ!ってついてるか!」

 

俺はそのやり取りを見ながら、静かにため息をつく。そんな中、了子さんが口を挟む。

 

「いきなりは難しかったかもしれないわね。だとしたら、聖遺物からシンフォギアを作り出す唯一の技術である、『櫻井理論』の提唱者がこの私、櫻井了子であるという事は、覚えてくださいね」

 

「はあ……」

 

「結局どういう事なんだよ?」

 

「…簡単に言うと、ノイズを倒せる装備を作ったのがこの人って事だよ、万丈くん」

 

「マジかよ!すげえな!!」

 

ジンの説明でようやく理解できたらしい万丈は、興奮気味に拳を握る。

 

「さて、そろそろ本題に戻りましょうか。戦兎くん、あなたの『仮面ライダー』について、説明してもらえるかしら?」

 

「そうだな、それじゃあ戦兎君、今度は君の番だ」

 

「……ああ、説明させてもらうよ」

 

俺は、懐からビルドドライバーといくつかフルボトルを取り出すと、テーブルに並べた。

 

「これが『ビルドドライバー』。この天才(てぇんさぁい)な俺の発・明・品!であり、仮面ライダーに変身する為の必須アイテムだ」

 

そして、フルボトルの中から『ラビットフルボトル』と『タンクフルボトル』を取り出し、ビルドドライバーの横に置く。

   

「この小さな容器は『フルボトル』。有機物や無機物の特性を持った特殊な成分が入ってる。

そして二つのボトルをビルドドライバーに装填することで、変身するのが仮面ライダービルドだ。他にもいろんな種類があって―――」

 

 

 

「―――と、いう訳だ。これで大まかな説明は終わりかな」

 

俺は、ライダーシステムや仮面ライダーの事を、できる限り詳しく説明した。

流石に新世界の創造エボルトの話まで踏み込むと、余計な誤解を招きかけない。だから、父さんの設計したシステムを俺が完成させた事や、以前はスマッシュと呼ばれる怪人と戦っていたことを伝え、核心な部分に関しては多少ぼかして話した。

 

ボトルの成分についても、エボルトがいなければ、スカイウォールは存在せず、製造されることもなかった代物なので、既に創られたものであり、創った父さんはもう亡くなっているので複製することは出来ないという事にした。

 

「……にわかに信じがたいが、あの姿と強さを見れば、納得せざるを得んな」

 

弦十郎は、俺の説明を聞いて納得してくれたみたいだ。

 

「このおもちゃみたいな小さなボトルが、ねえ……」

 

了子さんはラビットフルボトルを手に取り、信じられないといった顔で眺めていた。

物は試しと、ラビットフルボトルを軽く振ろうとするが―――

 

「ちょっ、待っ――!」

 

俺の制止も間に合わず、了子さんはボトルを振った。

次の瞬間――凄まじい速度で部屋を駆け巡っていく。

 

「うそっ!?は、速っ――!」

 

壁に向かって一直線に突っ込むが、ギリギリで壁を蹴って衝突を回避する。

しかし、その先にはジンがいた。

 

「え、ちょ、嘘ですよね!?」

 

ジンは避けようとしたが間に合わず、二人がぶつかることでようやく止まった。

 

「……ふぅ。やっと止まれたわ」

 

「………それなら、早くどいてもらえると助かるのですが」

 

「あら!!ごめんなさいね」

 

了子さんは、下敷きにしているジンに謝ると、慌てて立ち上がる。

ジンは、ゆっくりと立ち上がると眼鏡を直しながら、全員に聞こえるように忠告する。

 

「フルボトルは、扱いが難しいので気を付けてください。さっきみたいに暴走されると困ります」

 

「これからは気を付けるわ。……それにしても、本当に振るだけでボトルの力を使えるのね!!」

 

興奮気味の了子さんに、ジンは苦笑いを浮かべる。

その様子を見ていた響も、興味を持ったのかゴリラフルボトルを手に取る。

 

「すごい……わたしも……やってみたい!」

 

そう言ってゴリラフルボトルを軽く振り、拳を前に突き出すと――

大気が吹き飛び、さっき了子さんが蹴った壁にヒビが入り、音を立てて崩れていった。

俺たちは、開いた口がふさがらなかった。ジンは頭を抱えて、床に膝をついて叫んだ。

 

「さっき言ったばかりですよね!?フルボトルは扱いが難しいって!!それなのに、何をしてくれちゃってるんですか、響君!!」

 

「す、すみませんっ!すみません!!」

 

響は顔を青くして何度も頭を下げる。ジンは深いため息をつきながら眼鏡を押し上げた。

 

「……謝る相手を間違えてますよ」

 

「え?」

 

響がきょとんとした顔でジンを見ると、ジンは壁の崩れた部分を指さしながら言った。

 

「弁償するのは私です。だから謝るなら、弦十郎さんにしてください」

 

「ええっ!?ジンさんが払うんですか!?」

 

「そうですよ。こちらの不手際で起きたことですから……はぁ、またバイトを増やさないと……」

 

ジンが肩を落とすと、弦十郎が腕を組んだまま、壁の残骸を見つめていた。

 

「……弁償、してくれるのか?」

 

「もちろんです。……止められなかった私の責任ですから」

 

「そうか……なら、助かる」

 

弦十郎は少し戸惑いながらも頷き、空気を切り替えるように、俺の方へ向き直った。

そして真剣な眼差しで、静かに問いかけてくる。

 

「戦兎君。このライダーシステムは……我々でも使えるのか?」

 

俺は少しうつむきながら、慎重に言葉を選んだ。

 

「……弦十郎たちには無理だ。使えるのは、ある条件を満たしている人間だけだからな」

 

「その条件とは、さっき説明の最後に言ったハザードレベルと関係があるのか?」

 

「……そうだ。仮面ライダーになるには、少なくともハザードレベルが3.0は必要だ。

そのためには、ネビュラガスを注入しないといけないが、普通の人間だと注入時点で消滅する。耐えられたとしても、体が弱い人間がスマッシュになると、成分を抜き取っても魂と共に肉体が消滅してしまうんだ。これがハザードレベル1.0だ」

 

弦十郎は説明を聞きながら、顔を曇らせていた。

 

「……続けるぞ。スマッシュになるが、成分を抜き取れば人間に戻るのがハザードレベル2.0。

そして、ネビュラガスを注入されてもスマッシュにならない人間が極稀に存在する。そういった人間のみ、仮面ライダーになる事が出来るんだ」

 

「そうか……残念だな」

 

俺の言葉に、弦十郎は肩を落とし、悔しそうに息を漏らした。

だがすぐに顔を上げると、その瞳には諦めではなく、前を向く意志が宿っていた。

 

「では、改めてだが――君たちは協力してくれるという事でいいのかな?」

 

俺は静かに頷いた。

 

「ああ!!人々の愛と平和を守るのが、仮面ライダーだからな」

 

万丈は拳を握りしめると、前に一歩踏み出す。

 

「当然だろ。ノイズの好き勝手にはさせねぇ。俺たちが止めてやるよ」

 

ジンは眼鏡を押し上げながら、少し苦笑して言った。

 

「協力って言うより……巻き込まれた感はありますけどね。ま、ノイズから人々を守りたい気持ちは皆さんと同じですから」

 

「なら歓迎しよう、桐生戦兎君。万丈龍我君。深志 羅夜司(じんし らあだし)君。君達を正式に二課の職員として認めよう。今後の活躍を期待している!!」

 

「「「こちらこそ、よろしく!!」」」

 

俺たちは、握手を交わした。その瞬間、空気が少しだけ柔らかくなった気がした。

だが、俺の頭にはさっきの疑問が残っていた。

 

「了子さん。さっきの響の拳、あれ……フルボトルの力だけじゃないですよね?」

 

壁を砕いたあの一撃。ただの物理強化とは違う、何か根本的な力が宿っていた気がする。

俺がそう思っていると、響も口を開いた。

 

「そういえば、わたし聖遺物なんて持ってないのに、なんでギアを纏えたんですか?」

 

その言葉に、場の空気が張り詰める。

了子が無言で端末に触れると、スクリーンが点灯する。

 

そこに映し出されたのは、響の胸部のレントゲン画像。

心臓の近く――そこには、小さな欠片のようなものが映っていた。

 

「これがなんなのか、君には分かる筈だ」

 

「はい。二年前の怪我です。あそこに私もいたんです」

 

「二年前ってどういう事だ?」

 

万丈が首を傾げる。俺も、何のことか分からなかった。するとジンが、こっそりと教えてくれた。

 

二年前、ライブ会場の惨劇という事件があったんだ。ツヴァイウィングの公演中に大量のノイズが大量発生した。そこには観客、関係者あわせて10万を超える人間が居合わせていたんだが、怪我人も少数で、奇跡的に死者が出ることもなかったんだ

 

ノイズが大量発生したのに、死者がゼロ……?

 

その場に、リゾルヴと名乗る黒い騎士がいたらしい。彼がすべてのノイズを殲滅したと

 

そのリゾルヴって奴はいったい―――

 

ジンに教えてもらってる間にも、了子さんがその破片について話し出す。

 

「心臓付近に複雑に食い込んでいるため、手術でも摘出不可能な無数の破片。調査の結果、この破片はかつて奏ちゃんが身に纏っていた第三号聖遺物『ガングニール』の砕けた破片であることが、判明しました」

 

その言葉を聞いた瞬間――翼がぐらりと揺れた。

足元がふらつき、傍らの台に手をつく。

 

「まさか……そんな……!」

 

息を呑むような声だけを残し、翼さんは顔を押さえながら部屋を出ていった。

残されたのは、静寂。誰もが言葉を失っていた。

その沈黙が、胸に重くのしかかる。

 

響が、ぽつりと口を開いた。

 

「……わたし、この力のこと……誰かに話しちゃいけないんですか?」

 

弦十郎が、静かに答える。

 

「君がシンフォギアの力を持っていることを知られた場合、君の家族や友人、そして周りの人間に危害が及びかねない。に関わる危険すらある」 

 

「命に…関わる……?」

 

命に関わる――その言葉が、頭の中で何度も反響する。

真っ先に未来の顔が浮かんだ。笑ってくれる彼女の顔。わたしの隣で、いつも励ましてくれる声。

 

もし、私がこの力のことを話したせいで、未来が危ない目に遭ったら――

そう思っただけで、胸が締めつけられる。

 

「俺たちが守りたいのは機密などではない。人のだ。その為にも、この力の事を、隠し通してもらえないだろうか?」

 

「あなたに秘められた力は、それほど大きなものだという事を分かってほしいの」

 

弦十郎さんと了子さんの言葉が、胸に刺さる。

わたしは、ただ黙ってうつむくことしかなかった。

 

その時、ジンさんが声をかけてくれた。

 

「人類ではノイズに勝つことは出来ない。だから、今のところノイズを倒せるたった一つの方法、正確に言えば二つになってしまいますが。そのどちらも圧倒的な力を持っています。だからこそ、軍事利用されないように黙っていてほしい。弦十郎さん達が伝えたいのはこういう事だと、私は思います」

 

軍事利用――そんな言葉、今まで考えたこともなかった。

でも、確かにこの力は、誰かにとっては「武器」なのかもしれない

 

その時、龍我さんがぽつりと呟いた。

 

「まあ、力ってのは使う奴によって変わってくるみたいだ」

 

わたしは、顔を上げる。

 

「龍我さん…それはどういう……?」

 

彼は、少し笑って、でも真剣な目で私を見ていた。

 

「シンフォギアも仮面ライダーも根本的な所は変わらねえ。使い方次第で人を殺す兵器になるし、誰かを守るための力にもなる。それなら俺は、この力を愛と平和の為に使う。それが、俺の信じた仮面ライダーだからな!!」

 

「万丈にしては、良いこと言うじゃねぇか!」

 

「私もそう思う。筋肉馬鹿の割にはだけどな!」

 

「…お前ら、なんかバカにしてねぇか?」

 

「そんなことねえよ。なあ、ジン」

 

「そうとも!」

 

「…結局は俺とジンが言った通りだ。お前はどうしたいんだ?」

 

龍我さんの問いかけに、わたしは一つの答えを出した。

 

「あの、私の力で、誰かを助けられるんですよね?」

 

わたしの言葉に、弦十郎さんと了子さんは頷いた。

 

「分かりました!」

 

その瞬間、扉が静かに開いた。

 

翼さんが戻ってきた。だけどその姿は、先ほどとは違っていた。

冷静さを取り戻しているようだったけど、瞳の奥には怒りとも悲しみともつかない、複雑な感情が静かに燃えているように見えた。

 

そんな翼さんを見て、弦十郎さんが心配そうに声をかける。

 

「翼、大丈夫か?」

 

翼さんは一度だけ深く息を吐いてから、静かに頷いた。

 

「問題ありません。少し、気持ちを整理していただけです」

 

その声は、いつもの凛とした声だったけれど、どこか張り詰めているようにも感じられた。

 

「司令、少しよろしいでしょうか」

 

弦十郎さんは、少し驚いたように眉を上げたが、すぐに頷いた。

 

「……ああ。何をするつもりだ?」

 

「確認です。ある人物について」

 

翼さんは、ゆっくりと戦兎さんの方へ歩み寄る。

その足取りは静かで、でも確かな意志が感じられた。

 

「桐生戦兎。貴方に、聞きたい事があります」

 

戦兎さんは、少し戸惑ったように目を細めた。

 

「……俺に?」

 

「二年前のライブ。ツヴァイウィングの公演中に起きた惨劇。あの時、リゾルヴと共にノイズを殲滅した者がいた。奴は、貴方が変身するビルドに酷似している。このことについて説明しなさい」

 

部屋の空気が、ピンと張り詰める。わたしは、息を呑んだ。

戦兎さんは、困惑したように眉をひそめる。

 

「……俺が?そんなことあるはずがない。俺が()()()()で、ビルドになったのは一か月前だぞ」

 

翼さんは、視線を了子さんに向ける。

了子さんが端末を操作すると、スクリーンに映像が映し出され、再生された。

 

 

ーーー 映像記録:ライブステージ ーーー

 

翼「なんで、なんで攻撃したのよ!?奏は、皆の為に戦ってたのに!!!」

 

リゾルヴ「…このお嬢ちゃんが、間違った道に進もうとしたからとでも言えば満足するか?」

 

翼「貴様!!!」

 

ビルド「落ち着け!リゾルヴ!!青髪の子も落ち着きなさい!!」

 

リゾルヴ「…わかったよ。ビルド」

 

ーーー 映像終了 ーーー

 

戦兎さんは、映像を見終えた瞬間、顔を歪めていた。

その表情には、混乱と怒りが入り混じっていた。

 

翼さんが、声を荒げる。

 

「なぜ……あの時、リゾルヴを助けた!!奴は奏の……心を壊したんだぞ!!」

 

その言葉に、戦兎さんは顔をしかめた。

でも、翼さんの叫びに耳を貸すことなく、戦兎さんは拳を握り、翼さんに詰め寄っていった。

 

「……ふざけるなよ」

 

その声は、低く、怒りを押し殺したような響きだった。

 

「俺は……あんな場所にいた覚えなんてない。なのに、あの映像には()()()が映っていた。  

しかも、リゾルヴと一緒に……!」

 

翼さんが何かを言いかけた瞬間、戦兎さんが声を荒げた。

 

「だったら聞かせてもらおうか!()が何をしたって言うんだ!?俺が奏って人を傷つけたって言うのか!?それとも、リゾルヴと一緒に、人を殺したとでも言うのか!?」

 

その怒りは、翼さんに向けられていたというより、()()()という存在に向けられているように感じられた。わたしは、言葉を失っていた。

戦兎さんの怒りも、翼さんの悲しみも、どちらも本物だった。

 

「戦兎、落ち着け!!」

 

万丈さんが、慌てて戦兎さんの肩を掴んだ。

 

「今のお前は冷静じゃねぇ!翼の言葉に反応してるだけだ!!」

 

「万丈の言う通りだ!!今ここで翼さんに怒りをぶつけても、何か分かるわけじゃないだろう!!それに、あのビルドが君じゃないことくらい、君が一番分かっているだろう!!」

 

龍我さんとジンさんの言葉に、戦兎さんは動きを止めた。

でも、その拳はまだ震えていた。

 

「……俺は、愛と平和のために戦ってきた。人を守るために、戦ってきたんだ。なのに――」

 

戦兎さんは、苦しげに言葉を吐き出す。

 

「なのに、あの映像の中のビルドは……人の心を壊した奴を、庇っていた。俺たちが創った()()()を踏みにじったんだ!!許せるわけがないだろ……」

 

その声は、怒りよりも悲しみに近かった。

愛と平和のために戦っている仮面ライダーという存在が、人の心を傷つけた。

その事実が、戦兎さんを深く傷つけていた。

 

わたしは、胸が締めつけられるような思いだった。

戦兎さんの怒りは、誰かを責めるためのものじゃない。

ビルドの姿で、自分の信念が踏みにじられたことへの、叫びだった。

 

その時――翼さんが、静かに後ずさった。

彼女の瞳には、戸惑いと、苦しみが浮かんでいた。

 

「……そんな……」

 

小さく呟いたその声は、震えていた。

 

「わたしは……奏のために……ただ、それだけだったのに……」

 

翼さんは唇を噛み、肩を震わせながら背を向けた。

戦兎さんの怒りに耐えきれなかったのか、部屋を出ていこうとした。

 

「翼さん!」

 

わたしは思わず声を上げたけれど、彼女は振り返らなかった。

その背中が、あまりにも寂しそうで――見ているだけで、胸が痛くなった。

 

部屋から出ていく翼さんを見てジンさんが、静かにため息をついた。

 

「……万丈、戦兎のことは任せた」

 

そう言うと、ジンさんは翼さんの後を追って部屋を出ていった。

扉が閉まる音が、やけに大きく響いた。

 

残された部屋には、重たい沈黙が流れていた。

戦兎さんは、俯いたまま拳を握りしめていた。

万丈さんも、何も言わずに彼の隣に立っていた。

 

 

わたしは、何もできなかった。

ただ――この力で、誰かを守りたいと願ったばかりなのに。

今この場で、心を守ることの難しさを、痛感させられた。

 

 

 




次回予告の時間だよ~~
神「いや~、戦兎くんと翼さんのバチバチはすごかったねぇ~」

真「またいんのか神野郎!!…どこから見てたんだ?」

神「うーんとね、翼さんが、戦兎くんに聞きたい事があるってところからかな」

真「割と最初からじゃねぇか!!相変わらず趣味が悪いな!!」

神「そうかな~、少なくとも投稿するのが遅いアレよりはマシなんじゃないの?」

真「…それもそうだな。さてと、なんで投稿が遅くなったのか答えてもらおうか!作者!!」

作者「マジで申し訳ございませんでした―――(スライディング土下座)」

真「土下座すればいいって訳じゃないぞ!理由を答えろ!!」

作者「はい!!やらないといけない課題が、溜まっていたので急いで終わらせないといけなかった事と、単純に皆さんのキャラが濃くて話を続けるのが大変なんです!!」

神「まあ、確かにキャラは濃いよね~~、ちなみに今どんな状態なの?」

作者「…大まかな流れは出来てるんですけど、細かいところが全然考えられてないので、1話投稿するだけでも結構大変な状況です」

真「…まあそんなことだとは思ったよ。今回、普段の2倍以上の長さだしな!!」

作者「……区切りどころが見つからないんですよ。マジで!!」

神「愚痴を言うのはいいけど、第5話はちゃんと進んでるの?」

作者「………急いで書いてきます!!」

真「…こういう時だけ逃げ足早いんだよな。読者の皆様、そういうわけなので、投稿頻度が遅れるかもしれませんが、これからもが主役の、戦記絶唱シンフォギアの世界で俺は・・・復讐するをよろしくお願いします。次回、揺れる信念、交わる心。いったいどうなることやら」
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