戦記絶唱シンフォギアの世界で俺は・・・復讐する   作:天空翔太

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真「この物語の主人公、嵐田真司はいつも通り正体を隠しながら、黒騎士リゾルヴとして慈善活動をしていた。…先日、戦兎と万丈が放った必殺技から弦十郎を守るため、俺の必殺技を2人の必殺技とぶつけることで、相殺することに成功したんだが……」

ジ「…弦十郎さんの震脚の威力が強すぎて、これ、俺がいなくても問題なかったんじゃないか?と思っているようだな。……顔に出ているぞ」

真「……弦十郎が強いのはわかってたさ。…わかってたけど、()()はヤバすぎるだろ!!」

ジ「…まあ、あの威力を間近で受けたらただでは済まないだろうな。だから響君が怪我をしないよう、盾になったんだろう?」

真「…まあな。……それにしても、やっぱ俺が出る必要はなかったか?」

ジ「…真司がいなかったら二人は必殺技を叩きつける事で吹き飛ばされる事を防ぐだろう。そして弦十郎さんの震脚の威力が軽減されるはずだから響君が怪我することもないだろうな。その点から考えれば、リゾルヴが出る必要は………」

真「そこまで具体的に言うか!?これでも馬鹿な事をしたって自覚はあるんだぞ!!」

ジ「釘を差して置かないと、真司はやらかしそうだからな。主人公なのに目立った活躍がないからと言って無理やり出番を作りそうだ」

真「い、いやだな〜。そんなわけないじゃないか……」

ジ「…はあ、くれぐれも正体がばれないようにな」
 
真「わかってるよ!!それじゃどうなる第6話!!」
 
ジ「……本当に分かってるんだか?」


第6話 星を見上げる暇もなく

───喫茶店nascitaの地下にある秘密基地では、戦兎が黙々と自分の発明品を修理していた。

 

 

「ふぅ……これでカイゾクハッシャーも修理完了っと」

 

そう言うと、戦兎は最後のベストマッチウェポンである弓型の武器、カイゾクハッシャーを傍らに置くと、軽くあくびをしながら伸びをする。

机の上には、修理を終えたビルドの全武器が置かれており、隣の机には現在、戦兎が持っている20本の東都のフルボトルが置かれていた。

 

 

───あの日から1ヶ月が経った。

 

あれからノイズとの戦いは続いていたが、4人の連携が取れる事は一度もなかった。 

まず、響が戦いに関して素人なため、動きが直線的で敵の攻撃を避けることすらままならない状態だった。翼は連携を取る以前に独断でノイズと戦ってしまう。万丈が響の、戦兎が翼のサポートをしようとするが、全くうまくいかず2人に振り回されていた。

 

ジンは、弦十郎達が呆れているこの状態を何とかしようと色々と動いていたのだが、その全てが空振ってしまったのか、頭をかきむしりながら発狂していた。

 

「……なあ、戦兎。このままじゃまともに戦えねえぞ。これからどうすんだ?」

 

そう聞いてくるのは、同じく秘密基地でダンベルを使い筋トレをしている万丈だ。

 

「響の方はお前がどうにかしろよ。戦い方ぐらいお前でも教えられるだろ」

 

「…まあ、そうだけどよ……翼の方はどうすんだよ?」

 

「……翼は難しいな。あいつは誰にも頼らない。頼ろうとしないんだ……」

 

翼は、響や戦兎達に心を開こうとはしなかった。

だが、その理由については、大切な人を失った事がある戦兎達だからこそわかるものだった。

 

「……大切な相棒の心が壊れた事が、アイツの心に深い傷を残してるんだ。……俺たちと関わらないようにしているのは、同じ思いをしたくないからだと思うんだ」

 

……万丈がダンベルを床に置いて壁にもたれかかると、場の空気がほんの少し重くなった。

                              

「…それでも戦うって決めたんだろ!だったら、翼にもちゃんと向き合ってくしかねえだろ!!」

 

そう力強く語る万丈に、戦兎はゆっくりと頷いた。

その時、秘密基地の入り口である冷蔵庫型の扉の向こうから、ジンの声が聞こえてきた。

 

「戦兎、万丈。弦十郎さんが話があるみたいだから、上がってきてくれ」

 

「…また説教か?……まあ、行くしかないか」

 

「・・・行こうぜ。今度こそ、何か変えられるかもしれねえ」

 

 

 

ーーー 喫茶店nascitaの店内 ーーー

 

店の扉が開かれると、誰かが入ってきた。

ジンはカウンターの奥で新聞を畳みながら顔を上げる。

 

「ようお前たちって……ジン君しかいないのか」

 

「……弦十郎さんか、いらっしゃい」

 

弦十郎は来て早々店内を見回すと、誰かを探しているようだ。

その様子を見て、ジンが向かったのはカウンター内にある冷蔵庫だった。

 

「戦兎、万丈。弦十郎さんが話があるみたいだから、上がってきてくれ」

 

ジンは冷蔵庫に向かって、いつものように声をかける。

それを見た弦十郎は、眉をひそめていた。

 

「(……なぜ冷蔵庫に向かって話しかけているのだろうか?)」

 

そんな弦十郎の疑問が口に出るより早く、冷蔵庫の中から音がすると扉が開いた。

そして、冷蔵庫の中から戦兎と万丈がまるで何事もないかのように現れる。

 

「よっ、弦十郎」

 

「風鳴のおっさん、急に来んなよ。びっくりするだろ!」

 

弦十郎はその光景に一瞬だけ目を見開いたが、すぐに腕を組み、納得したように頷いた。

 

「なるほど!基地への入り口が冷蔵庫とは、洒落(しゃれ)てるな!!」

 

洒落(しゃれ)てるかどうかはともかく、隠し扉としては優秀だよ」

 

戦兎が肩をすくめながら言うと、弦十郎は懐から封筒を取り出す。

 

「今日は、お前たちの戸籍が作り終わったことを伝えに来たんだ」

 

それを聞いた戦兎と万丈は、顔を見合わせた。

万丈が少しだけ照れくさそうに頭を掻く。

 

「……なんか、実感湧かねぇな」

 

「あぁ。でも、これでやっと自由に動けるようになったな!」

 

戦兎は封筒を受け取りながらそう言うと、万丈の方に目をやった。

 

「あ!そうだ弦十郎。万丈が暇そうにしてるから稽古つけてやってくれよ」

 

「おい戦兎、暇そうってなんだよ!!」

 

「事実でしょうが!!実際、地下で筋トレしかしてないだろ」

 

2人のやり取りを見て、弦十郎は笑みを浮かべながら、万丈の肩を軽く叩いた。

 

「よし、それなら俺の家に来るといい!サンドバックもあるし、鍛錬には事欠かんぞ」

 

「・・・上等だ。筋トレだけじゃ物足りなかったからな。しっかり強くしてもらうぜ」

 

そのやり取りを聞いていたジンが、ふと口を挟む。

 

「…ちょっと待て。二人とも店の事はどうするつもりだ?」

 

戦兎はジンの方に向き直ると、あっさりと言い放つ。

 

「本格的に開店してまだ一週間だぞ。客なんてほとんど来てないし、ジンだけでも回せるだろ」

 

戦兎の発言に、ジンは言葉を詰まらせる。

確かに、今のnascitaには常連がいるわけでもない。

コーヒー豆は減らず、カップも並んだままだ。

 

「…まあ、それはそうだが……」

 

「なら問題ないな。俺は発・明・品!を作るのに忙しいから、店のことは任せた!!」 

 

ジンは、何も言い返せず黙ってカウンターに戻ると、コーヒーミルを手に取った。

 

「……はぁ、言い返せないのが悔しいなぁ」

 

そうぼやきながら、静かに豆を挽き始める。

店内には、香ばしい香りが広がっていった。

ジンは、豆を挽きながらあの日から気になっていたことを直接弦十郎に聞いた。

 

「…そう言えば弦十郎さんは、どうやってあれ程の力を手に入れたんですか?」

 

すると弦十郎は胸を張ってこう答えた。

 

「男の鍛錬は食事と映画鑑賞と睡眠だけで十分だ!」

 

「「……は?」」

 

戦兎と万丈は言葉を失い、顔を見合わせる。

 

「・・・え?それだけですか?」

 

ジンも思わず声を漏らした。

 

「映画の鍛錬法はいいぞ。確実に強くなれるからな」

 

「「映画の鍛錬法を実践してんのかよ(るんですか)!?」」

 

万丈とジンが叫ぶ。隣では戦兎が頭を抱えていた。

たったそれだけで、あの規格外の力を手に入れたってのか。

本当に常識が通じない男だな、弦十郎は………

 

「…なあ、戦兎。俺、マグマになってもこのおっさんに勝てる気がしねぇんだけど……」

 

「…奇遇だな。俺もジーニアスになっても勝てる気がしない……」

 

二人は同時にため息をついた。

 

「……弦十郎さんが味方で本当によかったな」

 

ジンが苦笑しながら言う。

弦十郎は笑いながら、なぜか冷蔵庫の方をじっと見つめていた。

 

「ジン君。ここに映画はあるか?」

 

「…まあ、格闘系の映画なら少しは」

 

「よし!龍我君。さっそくだが、お前たちの秘密基地で映画の鍛錬法を実践するぞ!」

 

「・・・マジか」

 

弦十郎の急な提案に、万丈は呆れながらも、どこか楽しげに拳を握りしめていた。

 

 

 

 

ーーー その日の夜、司令室にて ーーー

 

「遅くなりました!」

 

響が息を切らしながら駆け込んでくる。

 

「すみません」

 

深々と頭を下げて謝罪する響に、了子がにこやかに手を振る。

 

「では、全員揃ったところで、仲良しミーティングを始めましょう!」

 

了子の言葉に、ジンが「仲良し……か」と小声で突っ込む。

その傍らで、響と翼の間には、言葉にできない空気が漂っていた。

戦兎がその様子を横目で見ていると、会議が始まった。

 

 

モニターに映し出されたのは、ここら一帯の地図だった。

その地図には、一つの点を中心に、無数の円が点在している。

 

「どう思う?」

 

「ん。いっぱいですね」

 

「っはは、全くその通りだ」

 

響の返答に、弦十郎が豪快に笑う一方、翼は眉をひそめていた。

 

「これは、ここ一ヶ月にわたるノイズの発生地点だ」

 

「…確かノイズに出会う確率は、通り魔事件に巻き込まれる確率を下回るはずですが?」

 

「・・・その割には多くねぇか?」

 

「…その通りだ。響君が、ノイズについて知っていることは?」

 

「テレビのニュースや学校で教えてもらった程度ですが……まず無感情で、機械的に人間だけを襲うこと。そして、襲われた人間が炭化してしまうこと。時と場所を選ばずに突然現れて周囲に被害を及ぼす、特異災害として認定されていることです」

 

「意外と詳しいな」

 

「今まとめてるレポートの題材なんです」

 

照れくさそうに頭を掻く響に、ジンが「真面目だな」と感心したように呟く。

 

「そうね。ノイズの発生が国連で議題に上がったのは十三年前だけど、観測そのものはもーっと前からあったわ。それこそ、世界中に太古の昔から」

 

「そんなに前からなのかよ!」

 

「世界の各地に残る神話や伝承に登場する異形の多くは、ノイズに由来するものが多いだろうな」

 

了子の言った事に万丈が驚いている中、戦兎が冷静に情報を分析する。

 

「(…神話の時代からノイズが存在するなら、対抗するための物も作られたはずだ。……だとしたら、それは響や翼が使うシンフォギアの核になっている聖遺物なんだろうな……)」

 

「さっきジン君が言ってくれたように、ノイズの発生率は決して高くないの。龍我君が見てもわかるくらい、明らかに異常事態。だとすると、そこになんらかの作意が働いていると考えるべきでしょうね」

 

「作意?ってことは、誰かの手によるものだと言うんですか?」

 

「そう考えるのが妥当でしょうね」

 

「一体誰が、なんの目的で?」

 

「それは分からん」

 

弦十郎が静かに言うと、翼がある指摘をする。

 

「中心点はここ、私立リディアン音楽院高等科。……我々の真上です。サクリスト-D『デュランダル』を狙って、なんらかの意思が、この地に向けられている証左となります」

 

「デュランダル……?」

 

「……ってなんだ?」

 

響と万丈は、何の事を言っているのかわからず、首を傾げる。

戦兎はその名に聞き覚えがあるようだが、詳しくは知らないようだ。

ジンは、どこかで情報を手に入れていたのか、それについて知っているようだ。

 

ジン以外が疑問に思う中、その疑問に友利が答える。

 

「ここよりも更に下層、アビスと呼ばれる最深部に保管され、日本政府の管理下で我々が研究している、ほぼ完全状態の聖遺物。それが『デュランダル』よ」

 

友里が説明すると、続いて藤尭が補足する。

 

「翼さんの『天羽々斬』や響ちゃんの胸の『ガングニール』の欠片は奏者が歌って、シンフォギアとして再構築させないと、その力を発揮できないけれど、完全状態の聖遺物は一度起動した後は、百パーセントの力を常時発揮し、さらには、装者以外の人間も使用が可能だろうと、研究の結果が出ているんだ」

 

「……万丈は分かってないだろうから言っておくが、響君や翼さんが使っているシンフォギアよりも強力な武器(聖遺物)がここよりも下の方にあるという事だからな」

 

万丈の馬鹿さ加減を理解しているジンは、呆れながら余計なことを言わせないために、脳筋(万丈)でもわかるように説明する。

ジンの説明で納得したのか、万丈は「なるほど!」と顔に出していた。

……いや、さすがにこのぐらいはわかってほしいんだが。

 

「それが、私の提唱した櫻井理論。だけど完全聖遺物の起動には、相応のフォニックゲイン値が必要なのよね」

 

「んん~?」

 

了子の説明をあまり理解出来てないのか、響は首を傾げていく。

その様子を見て、ジンは苦笑しながら、響と先程同様理解できていない万丈にもわかるよう軽く説明する。

 

「歌で発生するエネルギーの事です。フルボトルを振ると中の成分が活性化しますよね。あれと理屈は同じです」

 

「「なるほど!」」

 

「あれから二年。今の翼の歌であれば、あるいは……」

 

弦十郎のその言葉に、翼は顔をしかめていく。

 

「そもそも、起動実験に必要な日本政府からの許可って下りるんですか?」

 

「いや、それ以前の話だよ。安保を糧に、アメリカが再三のデュランダル引き渡しを要求してきてるらしいじゃないか。起動実験どころか、扱いそのものに慎重にならざるを得ない。下手打てば国際問題だ」

 

「…アメリカね……」

 

戦兎や万丈にとって、それは馴染みのない言葉だ。

だが、ジンはその言葉を聞いた途端、険しい表情をする。

 

「ジン、どうしたんだ?そんな顔して」

 

「…ああ、済まない。アメリカには良い思い出がなくてな。嫌な事を思い出してしまった……」

 

ジンは、戦兎にそう説明(言い訳)する。

…全く、顔に出さないようにとあれほど言ったのに……

 

「まさかこの件、米国政府が糸を引いているなんて事は……」

 

「調査部からの報告によると、ここ数か月の間における本部コンピューターへのハッキングを試みた痕跡が、数万回に及んで認められているそうだ」

 

弦十郎がそう話すと、翼は手に持っていた紙コップを握りつぶした。

その様子を見て、響は目をそらしていた。

 

「・・・結局はどういう事だよ?」

 

「……パソコンに不正にアクセスして、データを盗もうとする事だよ。・・・君でもわかるように例えるなら、仮面ライダーに変身するのに、ライダーシステムを使っているだろう。そのライダーシステムの技術を盗んで、悪い事に使おうとする奴がいるという事だ」

 

「俺たちの場合だと、紗羽さんが難波重工にデータを渡してただろ。あれと同じ事だな」

 

「ああ、あんな感じか…」

 

「流石に、アクセスの出所は不明。それらを、短絡的に米国政府の仕業とは断定できない」

 

「なんでだよ!」

 

「証拠が足りないからに決まっているだろう。馬鹿なのか、君は?」

 

「馬鹿って言うんじゃねえ!!」

 

「もちろん痕跡は辿らせているさ。本来、こういうのこそ、俺たちの本領だからな」

 

弦十郎がそう話す中、緒川が話に割り込んできた。

 

「風鳴司令」

 

「そうか。そろそろか?」

 

「こんばんは。これからアルバムの打ち合わせが入っています」

 

「はぇ?」

 

「どういう事だよ?」

 

「…君は、本当に察しが悪いな。君たちがnascitaの店員をやっているように、緒川さんにも表の顔としての職業があるという事だ。…そのぐらい分かってくれないと困るぞ」

 

「表の顔では、アーティスト風鳴翼のマネージャーをやっています」

 

緒川はそう言うと、名刺を差し出す。

 

「おお!名刺貰うなんて初めてです。これはまた結構なものをどうも」

 

「なあ、俺も作れないのかこれ?」

 

「君はまともな職業についてないだろ。まあ、私はnascitaのマスターをやっているから作れなくもないが」

 

そして、緒川は仕事の為に翼と共に司令室を出る。

その様子を弦十郎達は見送っていた。

扉が閉まると、響は弦十郎に尋ねる。

 

「わたしたちを取り囲む脅威は、ノイズだけじゃないんですね」

 

その言葉に、その場にいる全員が頷く。

 

「どこかの誰かがここを狙っているなんて、あまり考えたくありません」

 

「大丈夫よ!」

 

「え?」

 

「なんてったってここは、テレビや雑誌で有名な天才(てぇんさぁい)考古学者櫻井了子が設計した、人類守護の砦よ。先端にして異端のテクノロジーが、悪い奴らなんて寄せ付けないんだから」

 

「よろしくお願いします」

 

「んん」

 

その傍らでは、天才(てぇんさぁい)と聞こえて立ち上がりかける戦兎を、万丈が制していた。

・・・天才なのは、もう十分わかってるから落ち着いてくれよ……

 

隣で万丈が戦兎を制している中、ジンは今ある情報を整理しながら考えていた。

 

「(なぜ、ノイズをこの街に集中させているんだ?…の目的が『デュランダル』だけなら、ここまで規模を大きくする必要はなかったはずだ。すると、この件にはアメリカも介入しているのか?…何か、大事な事を見落としている気がする…………いや、()()()()()()()のか?)」

 

…ジンの考えは正しかった。だが、それに気づいた時には、もう取り返しのつかない事態になっている事を、この時はまだ知る由もなかった。

 

 

 

 

ーーー 翌日のお昼、リディアン音楽院にて ーーー

 

そこには、レポートを必死に書いている響がいた。

響の周りには未来だけでなく、いつも響や未来と一緒にいる同級生の少女達もいるようだ。

 

響の隣に座っている黒鉄色のショートカットが特徴的な少女の安藤創世(あんどうくりよ)と、髪の毛をツインテールにしている少女の板場弓美(いたばゆみ)は、交互に自分の弁当からおかずを取り出すとレポートを書いている響に食べさせていた。

未来は、お馬鹿なことやっている響に、レポートの締め切りが今日の放課後までな事を伝える。

その様子を、長い金髪が特徴的な少女の寺島詩織(てらしましおり)が、暖かく見守っていた。

 

 

だが、弓美が「まあ、アニメじゃないんだし、こんなことしてはかどるわけないしねぇ~」と言いながら立ち上がる。

それに続いて詩織も立ち上がると、響の邪魔をしたら悪いから屋上でバトミントンをしないかと提案する。

その提案に創世は賛成するが、未来は響のレポートを手伝うために残るようだ。

 

 

…そして、弓美達がその場を離れると、再びレポートを書き始めようとする響。

しかし、ある人物を目にすると、勢いよく手を振りながらその人物に声をかけるのだった。

 

「ジンさーん!!」

 

その声に振り返ったスーツ姿の人物(ジン)は眉をひそめると、急いで響の元へ向かう。

 

……ここは女子高ですよ!大声で呼ばないでください。ただでさえ目立っているんですから……

 

ジンの言葉に、響は「ご、ごめんなさい!!」と慌てて頭を下げる。

未来は首をかしげながら、ジンを見つめていた。

 

「響……その人は?」

 

「あっ、えっと……この人はジンさん。ナシタっていう喫茶店のマスターで、最近お世話になってる人!」

 

未来は響の説明を聞いて不思議そうな顔をすると、ジンが苦笑しながら口を開く。

 

「はじめまして。私の名前は深志 羅夜司(じんし らあだし)と言います。喫茶店nascitaでマスターをやっている者です。……まあ、今は訳あって、いろんなところでバイトをしています」

 

ジンは簡単に紹介を済ませると、響をじっと見つめる。

ジンがバイトをしている理由に心当たりしかない響は、気まずそうに目を逸らすと、話題を変えようとする。

 

「でも、ジンさんがリディアンにいるなんて珍しいですね。何か用事ですか?」

 

「…テスト採点の仕事ですよ。先程業務が終わったので、これから帰るところだったんです」

 

「えっ、先生じゃないんですか?」

 

「違います。非常勤の講師でもないですし、ここの知り合いに頼まれてやっているだけですから」

 

未来は少し驚いたように目を丸くすると、ジンに向かって頭を下げた。

 

「はじめまして、私の名前は小日向未来です。響の……親友です!」

 

「響君がよく話してくれるので知っています。これからよろしくお願いします、未来さん」

 

ジンの声は穏やかで、どこか安心感を与える響きだった。

未来は少し照れくさそうに笑うと、響の隣に座り直す。

 

「響、レポート進んでる?」

 

「うぅ……進んでるような、進んでないような……」

 

「・・・響君。そのレポート、提出期限が今日の放課後までじゃないですか?」

 

「なんでジンさんが知ってるんですか!?」

 

「…早くそのレポートを書き上げたほうがいいですよ。さっき職員室である先生がかなりの形相で、そのレポートを出していない生徒の愚痴を言ってましたから」

 

響はジンの言葉に、顔を真っ青にする。

未来は苦笑しながら、そっと響の背中を叩く。

 

「……先に言っておきますけど、私は手伝いませんからね。この後も別のバイトが入っていますから。・・・それでは響君、健闘を祈ります」

 

ジンはそう言うと、急いでその場を立ち去る。

後ろでは響が何やら叫んでいたが、関係ないのでジンは足を止めることはなかった。

・・・忙しいのはわかるけど、さっさとレポート終わらせろよ。響。

 

 

 

 

 

ーーー 放課後 ーーー

 

あの後、響は無事?にレポートを提出した。

 

「……響、時間過ぎてたけどレポート受け取ってもらえたの?」

 

「今回だけは特別だって!流れ星見られそうだ!!」

 

……響は嬉しそうに言ってるけど、ギリギリ許してもらったようなものだからな!

担任からは「壮絶に字が汚い」やら「まるで、ひえろ何とかだ」など散々言われてたし!!

・・・まあ、響が頑張っていたのはわかってるから口うるさくは言わないが。

 

「響はここで待ってて。教室から鞄取ってきてあげる」

 

「いいよそんなのー!」

 

「響が頑張ったから、そのご褒美!!」

 

そして、未来は響の鞄を取りに行った。…さすが元陸上部だな、もう姿が見えないぞ。

………それにしても運命ってやつは、やっぱり残酷なんだな……

 

 

未来がいなくなった瞬間、ジャケットの右ポケットに入れた携帯からアラーム音が鳴る。

鳴っているのは、響の個人用の携帯ではなかった。

この1ヶ月、嫌と言うほど耳にした音が耳に入り、響は顔を曇らせる。

それが鳴ったということは―――

 

 

 

「……はい」

 

 

 

 

 

 

その一方、ジンからの通信でノイズが出現したことを知ると、戦兎はライオンフルボトルをビルドフォンのスロットに差して、高性能バイク『マシンビルダー』に変形させる。

戦兎と万丈はマシンビルダーに乗ると、すぐさまノイズが出現した現場に向かった。

 

 

戦兎と万丈が現場の地下鉄入口に到着する。

戦兎は近くにマシンビルダーを停めると、すぐに周囲を警戒する。

万丈は響の姿を見つけると、思わず声をかけそうになるが、響の表情を見て言葉を飲み込んだ。

…響は携帯を耳に当てており、静かに話していた。

 

「……ごめん、急な用事が入っちゃった………今晩の流れ星、一緒に見られないかも……」

 

その会話を聞いた万丈は、響にとって大切な約束がある事を察した。

 

「ありがとう……ごめんね……」

 

通話を切ると、響は携帯をポケットの中にしまう。

そして勢いよく振り向くと、地下鉄から出てこようとしていたノイズ達を睨みつける。

そんな響の隣に、戦兎と万丈が並び立つ。

 

「響、無理はするなよ。俺たちもいるんだからな」

 

「……大切な約束があんだろ、さっさと片付けちまおうぜ」

 

「・・・はい!!」

 

戦兎は、海賊フルボトル電車フルボトルを取り出すと、十分に振ってからビルドドライバーに挿し込む。

万丈もドラゴンフルボトルを取り出し、思いっ切り振るとクローズドラゴンに挿し込み、ビルドドライバーに装填する。

 

海賊!』『電車!BESTMATCH!

 

Wake UP!

 

CROSS-Z DRAGON!

 

そしてボルテックレバーを回して、スナップライドビルダーを展開する。

 

Are You Ready?

 

「「変身!」」

 

定刻の反逆者!海賊レッシャー!イェーイ!』

 

Wake UP Burning!

 

Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!』

 

戦兎と万丈に続き、響もガングニールの起動聖唱を行う。

 

「―――Balwisyall Nescell gungnir tron────」

 

響が夕焼け色の装甲をその身に纏うと、特殊な音波が発生する。

それによりノイズは実体化していき、現実世界へと引きずり出されていく。

 

「っしゃあっ!」

 

BEAT CROSS-ZER

 

クローズに変身した万丈は、ドライバーから専用武器である『ビートクローザー』を取り出すと、目の前のノイズに飛び掛かる。

その際、弦十郎から通信が入る。

 

『小型の中に、一回り大きな反応が見られる。まもなく翼も到着するから、それまで持ちこたえるんだ。くれぐれも無茶はするな』

 

「はっ!翼が来る頃には、見せ場なんて残ってねぇかもな!」

 

クローズはビートクローザーを振り抜き、周囲のノイズを一掃すると、躊躇する事なく奥へ進む。

その後をビルドと響も追っていく。

改札付近に出ると、他の個体と違った、ぶどうの房のような見た目のノイズを発見する。

……あれが弦十郎の言う反応が強いノイズなのだろう。

 

「分かってます!わたしは、わたしに出来る事をやるだけです!!」

 

弦十郎の言葉にそう答えると、響は改札を飛び越えてノイズに殴り掛かる。

響の戦い方は、1ヶ月前と変わっておらず素人の喧嘩そのものだったが、シンフォギアによる対ノイズ性能は問題なく機能しており、殴ったり蹴ったりするだけで、ノイズは炭素の塊となり消えていった。

 

その最中、ぶどう型ノイズは体に付けていた球をいくつか分離させると、響達の方へ転がしていく。

すると、分離した球から閃光が走り、突如として爆発する。

 

「うわぁ!?」

 

「うおっ!」

 

爆発の衝撃に巻き込まれた響とクローズの頭上で、天井が音を立てて崩れ落ちる。

その隙に、ぶどう型ノイズは階段を飛び降ると、奥の方へと逃げていく。

 

『各駅電車!出発!』『急行電車!出発!』

 

爆発の衝撃を受けなかったビルドは、カイゾクハッシャーの『ビルドアロー号』をエネルギー供給を行う『トレインホームチャージャー』まで引き絞り、エネルギー体のビルドアロー号を射出する。

射出されたビルドアロー号は、落ちてくる瓦礫を打ち砕いていくが、全てを打ち砕くことは出来ず、響が瓦礫の下敷きになってしまう。

 

「響!!大丈夫か!?」

 

クローズは、響が起き上がってこないので、心配になりその姿を探す。

ビルドも辺りを見渡すが、響の姿は見えなかった。

 

 

「……見たかった」

 

 

…響の声が聞こえた瞬間、瓦礫の山が吹き飛び中から怒りに満ちた表情の響が、目の前にいたノイズに殴り掛かる。

 

「流れ星、見たかった!」

 

動きは相変わらずだったが、その拳に込められた怒りは凄まじく、響はノイズを一撃で消し飛ばす。

 

「未来と一緒に─────流れ星、見たかった!!」

 

響は背後にいたノイズを吹き飛ばすと、振り向き様に強烈な蹴りを叩き込み、ノイズを炭素の塊へと変えていく。

 

「なッ……!?」

 

「おいおい、マジかよ?!」

 

響の迫力に、戦兎と万丈は思わず後ずさる。

 

「うぉぉぉあぁぁぁああぁぁああ!!」

 

響は思いっきり叫びながら、何体ものノイズを吹き飛ばしていく。

――地下鉄のホームでは、ぶどうノイズは分離した分の球を回復させると、再び逃走を始めていた。

 

響は、逃走するぶどうノイズを目にすると、すぐ側にあった壁を殴る。

まだ15歳の普通の少女が出していいはずのない圧倒的な迫力を前に、ビルドとクローズは言葉を失い無意識に一歩後ずさっていた。

 

「あんたたちが……誰かの約束を侵しッ!」

 

ぶどうノイズは球を切り離し、ノイズへ変化させると、追ってくる響の行く手を阻もうとする。

 

「嘘のない言葉を……争いのない世界をッ!……何でもない日常を……ッ!」

 

そこで、ビルドとクローズは、響の様子に違和感を覚える。

…いつの間にか響の顔が、黒く染まっているのだ。

そう、その姿は、まるで─────禁断のアイテムを使って変身した、黒いビルドと酷似していた。

 

「……剥奪すると言うのならッ!!」

 

「響、やめろ!!」

 

―――ビルドは必死に呼びかける。だが、その声は響の耳には届いていないようだ。

響は狂気的な笑みを浮かべると、狂暴性の増した攻撃で、ノイズを次々と引き裂き、打ちのめしていく。

クローズは、それが危険である事を本能的に察すると、すぐさま声を張り上げた。

 

「おい響!それ以上は、お前が、響じゃなくなっちまうかもしれねえ!!」

 

――それでも、響は止まらなかった。

 

「うがぁぁあぁあああ!!」

 

元々抱えていた怒りに加え、何らかの要因で暴走した響の姿は、まるで野獣のようだった。

黒いビルド―――通称『ハザードフォーム』は、暴走状態になると、自我が消滅して、敵と味方の区別もつかなくなり、目に映る全てを破壊しようとする災厄のフォームだ。

 

だが、響の暴走は怒りに突き動かされたものだ。

敵を蹂躙したいという感情が剥き出しになっているが、ハザードフォームのように自我が消えたわけじゃない。

あいつは、()()自分の意思で戦っている。

・・・まあ、俺からしたらどちらも変わらないけどな………

 

そのとき、ぶどうノイズが放ったと思われる球が、響の元へ転がってきた。

 

「響ッ!」

 

「あぶねえ!!」

 

ビルドとクローズは、響の前に無理やり割り込むと、代わりにその爆発を受ける。

 

「ぐっ……!」

 

「がはっ!?」

 

「戦兎さん!?龍我さん!?」

 

……響はさっきの爆発で正気に戻ったみたいだ。

 

「つってぇ……けど、大丈夫だ!!」

 

爆発は派手だったが、威力自体はそれほどでもなかったようだ。

ビルドとクローズの視線は、逃げるノイズを捉えていた。

 

「このやろぉ……待ちやがれ!」

 

「あっ、待ちなさい!!」

 

それを追いかけようとする響とクローズだが、ぶどうノイズは、手持ちの球をすべて天井にぶつけて爆破させる。

その衝撃で地上へ通じる穴ができると、ノイズは何の迷いもなくそこを駆け上がっていく。

 

「逃がすか!」

 

ビルドはカイゾクハッシャ―を構えるが、ノイズの動きはとても素早く、あっという間に地上に出てしまう。

 

「・・・ちくしょう!」

 

クローズが悔しがっていると、その穴から見える夜空に一筋の青い光が落ちていく。

 

「流れ星……?」

 

―――その光からは、強くて美しい音楽が流れてきた。

 

蒼ノ一閃

 

青い光から巨大な斬撃が放たれ、響達が逃がしてしまったぶどうノイズを両断する。

響達が地上に出ると、青い光────風鳴翼が、夜空からゆっくりと降下し静かに着地する。

 

響とクローズは駆け寄るが、翼は振り向かず背を向けたままだ。

そんな背を向けたままの翼に、響は想いを伝えようと声をかける。

 

「私だって、守りたいものがあるんです!・・・だからッ!

 

だが、響の言葉にも翼は反応せず、冷徹な眼差しで刀の刃文から刃先、そして切っ先へと視線を這わせる。

そんな翼を見て、ビルドとクローズは思わず身構える。

…おいおい、このままだと1ヶ月前と同じ展開になるぞ。

 

 

―――だからぁ?んでどうすんだよ?

 

 

…その声は、空気を裂くように響き渡った。

雲に隠れていた月が姿を見せると、月光が地上を照らしていく。

 

―――その光が照らした先に現れたのは、白い鎧を纏う銀髪の少女だった。

その鎧の肩部には、桃色の棘がついた鞭が取り付けられており、異様な存在感を放っていた。

 

 

その少女が何者なのか、ビルド、クローズ、響の3人はまるで見当もつかなかった。

3人は、目の前の異質な存在に圧倒され、言葉もなく立ち尽くす。

だが、翼は、その少女の纏う鎧について知っていた。

 

 

「……『ネフシュタンの鎧』……ッ!?」

 

 

 

……ネフシュタンが出てきたって事は、アイツも出てくるのか────はぁ、最悪だ。




次回予告の時間でございます。
ジ「…戦兎たちはぶどうノイズを逃がしてしまったが、翼さんがすぐに撃退してくれたおかげで、大事には至らなかったようだな」

真「……って、ちょっと待てジン!!なんでお前がここにいるんだ?」

ジ「作者から伝言を預かったのでな。『ナレーション考えるの大変だからしばらくは任せます』とのことだ。…どうやら、思った以上に日常が立て込んでいるようだな」

真「……はあ!?ふざけんなよ!!こっちだって忙しいのに、何考えてんだ作者のヤツ!!」

ジ「…私たちにナレーションを任せる程、作者は余裕がないのだろう。…仕方がないな……」

真「いや、それで納得しちゃだめだろ!!今回は俺がナレーションをやったけど、やる事は山積みなんだぞ!!アイツの動きだって見張らないといけないってのに!!」

ジ「真司が忙しいことは分かっているが、決まったことに愚痴を言っても仕方がないだろう」

真「…あぁ、くそ!!こうなったら好きなようにやらせてもらうからな!!!次回、ネフシュタンの鎧と蘇る悪夢。突如現れた謎の銀髪少女、彼女の目的とは?…そして蘇る悪夢とはいったい!?」

ジ「……私も手伝うから、あまり無理はしないようにな……」
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