戦記絶唱シンフォギアの世界で俺は・・・復讐する 作:天空翔太
弦「だからこそ、代わりに我々二課が説明しよう。と言いたいところだが、ジン君が急な用事と言ってトイレに行ったまま戻ってこないんだが、大丈夫か?」
友「さっきジンさんを見かけたんですけど、顔を真っ青にして必死にお腹を押さえてましたよ。あれは………かなりの緊急事態かと」
藤「まあ、あの様子なら仕方ないですね。今回は俺たちで頑張りましょう」
了「仮面ライダービルドにして天才物理学者の桐生戦兎と、仮面ライダークローズこと『プロテインの貴公子』万丈龍我は、天羽々斬のシンフォギア装者の風鳴翼と同じくガングニールの装者である立花響のぎすぎすした関係にちょっと呆れ気味だったのよね」
友「結局、一ヶ月たっても噛み合いませんでしたね」
弦「ジン君はどうにかしようと色々と動いてくれたみたいだが、うまくいかなかったからな」
了「……そこは、今後に期待するしかないわね」
藤&友「「ですね」」
弦「さて、ジン君が戻ってこないのは気になるが…不穏な空気を纏ったネフシュタンとの戦いが幕を開ける。波乱に満ちた第7話をどうぞ!」
ーーー 戦兎たちがいる戦場付近の林の中 ーーー
「遅いぞ、リゾルヴ」
木々の影を裂くように声が響くと、黒いコートの裾を翻しながら狼の仮面を付けた男が現れる。
仮面の男は、苛立ちながらリゾルヴを睨みつける。
リゾルヴはその視線を受け、わずかに肩をすくめる。
「……済まない。怪しまれずに抜けるのは、容易ではなかった」
仮面の男は、リゾルヴの返答に短く息を吐くと、懐から1本のボトルを取り出した。
変わった模様が描かれた黒いボトルを無言でリゾルヴに渡すと、低い声で釘を刺す。
「これで全ての条件は揃った。あとは打ち合わせ通りに動け。……余計な真似はするなよ」
リゾルヴが無言で頷くと、男の輪郭がわずかに揺らぎ周囲の空気が歪んでいく。
やがて男の姿は完全に消え、残されたのは静寂だった。
リゾルヴは手の中の黒いボトルを見つめ、静かに息を吐く。
そして踵を返すと───胸の内に抱えた数々の目的のために、リゾルヴは戦場へと歩き出した。
「ネフシュタンの・・・鎧ッ!?」
「へえ? ってことはあんた、この鎧の出自を知ってんだ?」
「二年前、私の不始末で奪われた物を忘れるものか!何より、私の不手際で奪われた命を忘れるものかッ!!」
翼は大剣を構えると、その切っ先を少女へ向ける。
だがビルドとクローズは、突如現れた白い鎧の少女に困惑していた。
「ネフシュタン………青銅の蛇…か?」
「な、なんだよあれ…マジでヤベぇだろ…」
『・・・あれの名前は、ネフシュタンの鎧だ。…二年前、ライブ会場の惨劇で奪われた完全聖遺物の一つだ』
ビルドとクローズの言葉に、苦しそうな声でジンが答える。
「二年前……そういうことか。その日のライブは、完全聖遺物を起動させるために必要なフォニックゲインを集めるためだったんだな」
ビルドはそう推察すると、鎧の少女を警戒しカイゾクハッシャーを構える。
それを見た少女も、鎧から出る刃の鞭と謎めいた杖を取り出す。
目の前には、奏を失う原因となったネフシュタンの鎧を纏う少女が。
そしてその後ろには、奏が残したガングニールのシンフォギアを纏った少女がいる。
「(その二つが同時に揃うなんて……どういう確率だよ、これ)」
しかも、その異常な巡り合わせの中心に、翼がいる。
一体、どんな偶然が重なったらこんな事になるのか。
「(くそっ、とにかく今は目の前のコイツをどうにかしないと……!)」
「やめてください!戦兎さん!!」
「おわっ!?」
ところがその直後、響が背後から勢いよく抱きついてきた。
「ちょっ!?響!?」
「相手は人です!同じ人間です!!」
「え!?いや、まあ、それはそうなんだけど……」
「「戦場で何を馬鹿な事をッ!!」」
鎧の少女と翼の言葉が見事に重なったが、今は頭の片隅に追いやることにした。
「むしろ、貴方と気が合いそうね」
「だったら仲良くじゃれ合うかい!?」
そして戦いが始まる───はずだった。
「フハッハッハッハッ!…人間っていうのは本当に面白い生き物だなァ」
異常な高笑いが響き渡り、その場にいる全員の視線が一斉にそちらへ向いた。
そこには、血の様に赤い装甲に青緑色のバイザー、胸元にはコブラの意匠が刻まれた男がいた。
その姿を見たビルドとクローズは表情が凍りつく。
「よお、久しぶりィ…でもねえか」
「……なんでテメェが生きてんだよ!!」
「……エボルトォォオオオ!!!」
ビルドは、声を荒げながら叫ぶと、すさまじい勢いでビルドアロー号を引く。
『各駅電車!急行電車!快速電車!海賊電車!発射!』
『ライフルモード!』
『フルボトル! フェニックス! スチームアタック!』
電車型のエネルギー弾と不死鳥を模したエネルギー弾がぶつかった瞬間、膨れ上がった光が弾け、轟音の爆発が広がると、爆風が砂塵を巻き上げていった。
やがて砂煙がゆっくりと晴れた先には、無傷のコブラ男が立っていた。
「おいおい……せっかくの再会だってのに、いきなり撃つとかさぁ……ひどくねぇか?」
コブラ男は、大げさに肩をすくめてみせた。
まるで親友と軽口でも叩いているかのように。
だが、ビルドとクローズはそれどころではなかった。
「何でお前がフェニックスボトルを持ってんだ!!」
「返事次第じゃ、テメェをぶっ飛ばす!!」
怒声が重なり、ビルドとクローズの怒りが一気に爆発する。
そこへネフシュタンの鎧を纏った少女が踏み込んだ。
「ブラッドスタークッ!テメェ何しに来やがった!」
「クライアントからの依頼だよ。ガングニールとお前たちが持ってるボトルを回収してこいって耳にタコができるほど命令されてな。……俺、タコ嫌いなんだよ」
「ふざけんな!!その依頼を出したのは誰だ!?何が目的だ、答えろ!!」
ビルドは歯を食いしばりながらカイゾクハッシャーを構えなおしたが、引き金にかけた指はわずかに震えていた。
それを見て、コブラ男────エボルトは、楽しそうに喉を鳴らした。
「ははっ、相変わらずだなぁ戦兎。そんなにカリカリすんなって」
エボルトは両手を広げ、悠然と戦場を見渡していく。
「俺の目的? ははっ…そんな大層なもんじゃねぇよ」
一瞬、空気が張りつめたかと思うと、次の瞬間───エボルトは楽しげに言い放った。
「
その一言に、場の空気が凍りつく。
「……は?」
戦兎の間の抜けた声が場に落ちると、エボルトは肩を揺らして笑い出した。
「ハッハッハッハッハッ!まあ、そうなるよな」
まるで過去を笑い飛ばすかのように、軽く肩をすくめた。
「…昔の俺なら、復讐なんて発想、鼻で笑ってたなァ」
軽く吐き捨てるような口調には、かつて感情を持たなかった存在が、理屈だけで導き出した冷酷な本音が滲んでいた。
「仕返し? 怒り? 憎しみ?」
指を折るように、言葉を並べる。
「そんなもの、意味がないと思ってたよ。感情に振り回されて、無駄に足掻いて……実に滑稽だってな」
そこでエボルトは一度言葉を切ると、薄く笑っていた口元を、ほんのわずか歪めた。
「──けどなぁ」
一歩前に出る──たったそれだけの動きで、場の空気が張り詰めた。
「本物の感情が芽生えたおかげでさ。怒りがいつまでも、耳鳴りみてぇに残りやがる」
エボルトは、くつくつと喉を鳴らした。
だが、それは怒りを抑えるための笑いではなく、 怒りすら娯楽に変えるための笑いだった。
「天は俺を見放さなかったのか、運良く生き延びちまった。そして目の前には、恨みを晴らせる相手がいるんだ。これほど面白い状況、味わわない手はねぇよなァ」
「冗談じゃねぇ……!」
クローズの叫びに、エボルトは小さく笑みを漏らす。
「さてと、俺の一人語りもここまでだ。そろそろ
「あたしを無視して、勝手に決めんじゃねえ……!」
割って入ったのは、ネフシュタンの鎧を纏った少女の鋭い怒声だった。
一瞬、戦兎と万丈は言葉を失う──確かに、エボルトのペースに引きずり込まれていた。
戦兎は息を呑み、万丈が舌打ちするのが聞こえた。
「おいおい、そんなに怖い顔するなよ。せっかくの可愛い顔が台無しだぜ、ネフシュタンちゃん」
からかうような口調とは裏腹に、エボルトは片手を軽く上げてみせる。
その仕草は、本気で宥める気などないと言わんばかりの挑発的な仕草だった。
「まあまあ、落ち着けって。ネフシュタンちゃんは、ガングニールとボトルの回収に専念しな。あの二人の相手は俺がやるからよ」
言葉を終えた瞬間、エボルトの姿が視界から掻き消えた。
「万丈!」
「え!?きゃっ!!」
ビルドは咄嗟に響を抱き抱えて距離を取り、そのまま万丈に向かって投げ渡した。
翼も危険を感じ取ったのか、空へ飛び上がった。
「うおっ!?」
「ひゃあっ!?」
その刹那───甲高い金属音が弾ける。
振り下ろされたスチームブレードを、ビルドはカイゾクハッシャーで強引に受け止める。
「ははっ、いい反応だなァ。戦兎!!」
愉快そうに笑うエボルトはスチームブレードに力を込めると、カイゾクハッシャーが悲鳴のようなきしみ音を上げる。
「桐生ッ!」
上空の翼は、エボルトに向けて蒼ノ一閃を放つ。
「っと、危ねぇなァ」
エボルトは、距離を取ってそれを回避する。
ビルドはその隙に、二本のボトルを取り出す。
『タカ』『ガトリング』『BESTMATCH!』
『Are You Ready?』
「ビルドアップ!」
『天空の暴れん坊!ホークガトリング!イェイ・・・!』
ビルドは飛行能力を備えたホークガトリングへとフォームを変え、空を自在に舞いながらホークガトリンガーをエボルトに向け、容赦なく弾丸を浴びせ続けた。
しかし、エボルトは軽く身を翻すだけで、それらを難なく回避していく。
翼は、そのまま上空から少女へと斬りかかっていく。
だが、振り下ろした大剣は余裕で躱され、続けざまに放つ連撃も、最低限の動きで躱される。
大きく踏み込んだ薙ぎ払いも、刃の鞭にあっさり受け止められてしまう。
そして、大剣を弾かれ、鞭の薙ぎ払いを躱したと思った瞬間、腹に深い蹴りを叩き込まれる。
「翼ッ!!」
ビルドの視線が、蹴り飛ばされる翼に釘付けになる。
「よそ見とは、ずいぶん余裕だなァ。戦兎!!」
『ライフルモード!』
光の弾丸がビルド目掛けて飛び出す。
「ぐぁっ!」
反応が間に合わず、ビルドは空中で弾き飛ばされ、砂塵を巻き上げながら地面へ叩きつけられる。
だが、着地と同時に素早くボトルを取り出し、フォームを切り替えた。
『忍者!』『コミック!』『BESTMATCH!』
「ビルドアップ!」
『ニンニンコミック!』『分身の術』
四コマ忍法刀のトリガーを引くと、次の瞬間、七人のビルドが出現する。
分身体のうち二人はすぐさま翼の援護へ回り、鋭い斬撃で少女の動きを封じる。
残りの分身体とビルド自身はエボルトを取り囲み、左右前後から間断なく斬りかかり、反撃の隙を与えない。
『火遁の術────火炎斬り!』
「はああっ!」
エボルトに向けて、ビルドの火炎斬りが炸裂する。
しかしエボルトは慌てることなく、迫りくる分身体を淡々と撃ち消していった。
その動きに一切の淀みはなく、放たれた一撃はビルドにもかすめるように命中する。
「どうした、戦兎。お前の力はそんなものか?」
「……だったら、これはどうだ!」
『オクトパス!ライト!』『BESTMATCH!』
『Are You Ready?』
「ビルドアップ!」
『稲妻テクニシャン!オクトパスライト!イエーイ!』
一方、翼の方でも状況は動いていた。
「ネフシュタンの力だなんて思わないでくれよなぁ、あたしのてっぺんはまだまだこんなもんじゃねえぞォッ!」
少女が刀の鞭を翼に叩きつけようとした瞬間、ビルドの分身体二人が援護に現れ、交差する鋭い斬撃で少女の動きを封じた。──だが。
「甘ぇんだよッ!」
少女が腕を振るうと、刃の鞭が一気に伸び上がり、地面を叩き割った。その凄まじい衝撃波が周囲を薙ぎ払い、分身体は吹き飛ばされるように倒された。
間髪入れず、鞭はそのまま軌道を変え、翼へと襲いかかる。
「くっ……!」
「翼さん!!」
「翼ぁ!」
響とクローズは声をあげる。
「お呼びじゃねぇんだよ。こいつらの相手でもしてな」
少女は杖を取り出し、中心の宝石から放たれた光が地面に着弾した直後、その場所にノイズが現れる。
「なっ!?」
「ノイズが……操られている!!」
現れた四体のノイズはダチョウのような姿をしており、無機質な視線を揃えて響たちへと向ける。
「やろうっ!」
クローズはダチョウノイズたちの間へ突っ込み、くちばしから吐き出される液体を躱しつつ、拳を叩き込む。打ち抜かれたノイズは一瞬で炭化し、爆ぜるように吹き飛んだ。
だが、背後のノイズの噴射を避けたその足元には、先ほどの液体が広がっていた。
強烈な粘着性に足を取られ、クローズは身動きが取れなくなる。
まったく、何をやってるのかしら。この筋肉バカは。
「くそっ……!」
「龍我さん!!」
響はすぐさま万丈のもとへ駆け寄り、絡みついた液体───いわゆるトリモチを引き剥がそうとする。
だが、その粘着力は並のものではなく、シンフォギアによって強化された身体能力をもってしても、びくともしなかった。
「っ……取れない!?」
「後ろだ、響!」
「!!」
いつの間にか響の背後にはダチョウノイズが迫っていた。大きく開かれたくちばしから粘つく液体が吐き出され、響は掴まってしまう。
「そんなぁ……うそぉ」
そんな中、翼は再度少女に斬りかかった。
「その子たちにかまけて、私を忘れたかッ!」
翼は着地すると見せかけ、片足で少女の片足を払い、態勢を崩した所へ足のブレードを振り下ろす。
しかし、少女は一回目を躱し、追撃の二回目も片腕でガードして防ぐ。
「お高くとまるなァッ!!」
「ッ!?」
そのまま翼は足を掴まれ、地面に叩きつけられる。
「ぐあぁぁあ!」
翼は地面を抉りながら転がり、少女は飛び上がって追いつくとその頭を踏みつける。
「のぼせ上がるな人気者。誰もかれもが構ってくれるなどと思うんじゃねえッ!」
『フルボトル! ウルフ! スチームアタック!』
「ぐああっ!」
そこへ狼を模した弾丸に噛みつかれたまま、苦痛の声を上げるビルドが飛んできた。
「戦兎ぉ!!」
「戦兎さん!!」
その様子を見て、エボルトはわずかに苦笑する。
だが、さっきまでビルドに縛り上げられていたタコ───フューリーオクトパスの影響で、体が思うように動かないようだ。
少女は飛んできたビルドに一瞬目を向けると、すぐに翼の方へ向き直った。
「鎧も仲間も、あんたにはすぎてんじゃないのか?」
「繰り返すものかと、私は誓ったッ!」
千ノ落涙
翼は立ち上がり、少女と激突すると、金属音と爆発が辺りに響き渡る。
響はその光景を、ただ見つめることしかできなかった。
「ちくしょう!なんで取れねぇんだよ!」
クローズは足に絡みついたトリモチに悪戦苦闘し、焦りの声を上げる。
「くそ……はやく……行かねぇと……」
ビルドはダメージがかなり深く、立ち上がることもままならない。
この場で翼を手助けに行ける者は、誰一人いなかった。
ちょっと目を離したら、スゴいことになってんな!?
「……そうだ、アームドギアッ!奏さんの代わりになるには、わたしにもアームドギアが必要なんだ!それさえあればッ……出ろッ、出てこい、アームドギアァッ!!」
響は、この状況を打開する唯一の可能性──アームドギアを発現しようとする。
頭の中で槍を強くイメージしながら、必死に念じた。
…だが、戦いの意思を体現するはずのアームドギアは、現れなかった。
「なんでだよぉ?どうすればいいのか分かんないよぉ!」
…戦いは激化し、剣と鞭が火花を散らす中で、翼は確信を得る。
「鎧に振り回されている訳ではない、この強さは本物ッ!?」
「ここでふんわり考え事たぁ、度しがてぇ!」
弾くように放たれた蹴りを、翼はバク転で躱す。
直後、追撃とばかりに召喚されたノイズが襲いかかる。
「くっ!」
襲ってくるノイズを千ノ落涙で一掃すると、その勢いのまま少女へ向けて蒼ノ一閃を放つ。
それは複数のノイズを斬り裂き、一直線に飛んでいった。
横に飛んで蒼ノ一閃を躱すと、少女は鞭で反撃し、再び激しい打ち合いへともつれ込む。
斬撃、蹴り、拳が交錯する中、翼は短剣を数本放った。
「ちょっせぇ!」
鞭で短剣をすべて弾き飛ばした次の瞬間、先端に黒い閃光が走る白いエネルギー弾が形成される。
「喰らいなぁ!!」
『NIRVANA GEDON』
「翼さん!!」
「翼ぁ!!」
翼は大剣で受け止めるが勢いは止まらず、爆発の衝撃に吹き飛ばされる。
「ふん、まるで出来損ない」
何度も地面に激しく叩きつけられた末、倒れ伏した翼を、少女は嘲笑する。
「確かに……私は出来損ないだ……」
「はぁ?」
「この身を一振りの剣と鍛えてきたはずなのに、あの日、無様に生き残ってしまった……出来損ないの剣として、恥を晒してきた……」
刀を地面に突き刺し、それを支えに、崩れ落ちそうになりながらも翼は立ち上がる。
「だが、それも今日までの事!奪われたネフシュタンを取り戻す事で、この身の汚名を雪がせてもらうッ!」
「そうかい、脱がせるものなら脱がして──っ!?何!?」
影縫い
少女は満身創痍の翼にとどめを刺そうとするが、何故か体が思うように動かない。
振り返った瞬間、影に先ほど翼が投げた短剣の一本が突き刺さっているのに気づく。
それが、少女の動きを封じていた。
「クッ!こんなもので、アタシの動きを!!────まさか、お前……」
「月が覗いている内に、決着をつけましょう」
月を仰ぐ翼の顔は、覚悟を胸に刻んだかのように、澄み渡っていた。
「歌うのか……『絶唱』を……ッ!」
その言葉を聞いて、ビルドは思い出す。
絶唱───それは、増幅したエネルギーを一気に放出する、シンフォギア最強の攻撃手段。だがその代償として、使い手自身をも蝕む諸刃の剣でもある。
下手をすれば命すら奪いかねない自爆技だからこそ、「絶対に歌わせるな」とジンが必死に訴えていたことを。
「翼さん!」
「防人の生き様、覚悟を見せてあげるッ!貴女の胸に焼き付けなさいッ!!」
翼は、必死の叫びを響へと放つ。
「やめろぉぉぉおお!!!」
ビルドは叫ぶが、それで引き返すほど、翼の覚悟は軽くはなかった。
「くそがぁ!やらせるかよぉ!好きに、勝手にぃ!」
身をよじって逃れようとする少女をよそに、翼は月へ向けて刀を掲げる。
「Gatrandis babel ziggurat edenal ───」
……歌声を響かせたまま、翼は少女に向かって歩みを進める。
「───Emustolronzen fine el baral zizzl Gatrandis babel ziggurat edenal ───」
少女は絶唱を中断させようと腰の杖を引き抜き、前へ突き出すと同時に、翼の周囲にノイズを召喚する。
だが、その時すでに翼は少女の眼前に迫っていた。
「───Emustolronzen fine el zizzl」
最後の一節を歌い終えた瞬間、翼から膨大なエネルギーが放出され、辺り一帯が光に包まれる。
……その光は、最後まで翼を助けようと必死に手を伸ばし続けたビルド───桐生戦兎をも飲み込んだ。
……周囲のノイズはすべて消滅し、至近距離で直撃を受けた少女は、ネフシュタンの鎧を破砕され、鎧の下から銀髪を露わにして倒れていた。
戦兎もまた、爆心地から数メートル離れた地点で、変身の解けた状態のまま倒れている。
……呆然とその光景を見つめる響は、叫ぶことも泣くこともできず、ただ立ち尽くしていた。
万丈は彼女を庇ったためか、意識を失ったまま地に伏している。
その静寂を、場違いな笑い声が切り裂いた。
「ハッハッハッハッハ!これが絶唱か。話には聞いていたが……期待通りのエネルギーだ。下手な兵器なんぞ、比べものにならねぇなァ!」
エボルトは、トランスチームガンで生成していた盾代わりの巨大なスマホを解除し、何事もなかったかのように立ち上がる。
全身から血を流しながらも倒れない風鳴翼を見て、楽しげに口角を吊り上げた。
「いやぁ……素晴らしいよ。命懸けの歌ってやつは、やっぱり最高だ」
そう言って肩をすくめると、エボルトは周囲に転がる光景へと視線を巡らせる。
「ガングニールにボトルの回収、おまけにネフシュタンちゃんの保護か……これは報酬を弾んでもらわないと、やってられないな」
「お前の汚い手でその子に触れるな、クソ野郎」
「あ?」
声のする方へ振り向くと、顔面に強烈な拳が叩き込まれ、エボルトの身体は宙を舞って吹き飛んだ。
拳を振り抜いたまま、そこに佇んでいたのは────リゾルヴだった。
さあ、次回予告の時間よ!
桜「2年前に奪われたネフシュタンの鎧に、戦兎たちが倒したはずのエボルトが現れて戦闘が始まったけど、エボルトは何故かボトルを持ってるのよね。何でかしら?」
銃「あの野郎は自分でボトルを造れるから、それを使っただけだろ」
剣「……それなら、戦兎が持っているボトルを回収する必要はない……」
桜「全部揃ってるなら、もうパンドラタワーが完成しててもおかしくないはずよね?」
銃「…そりゃそうか。でもあの野郎のことだから全部揃ってもゲームと称して暴れそうだけどな!」
桜「←のこれ、いつの間にかついてたんだけど何か知ってる?」
剣「…我々の仮名だそうです、姉上……」
銃「姉貴が桜なのは分かるし、お前が剣ってのも間違いじゃないけどよぉ、俺様が銃っておかしくねえか?どっちかっていうと拳の方が俺様のイメージに合ってるだろ!!」
桜「文句は、最近アニメにはまって書くのをすっかり忘れていた作者に言わないと意味ないわよ」
銃「姉貴、逃げ足だけが取り柄なあの作者だぜ。どこにいるか分かったもんじゃねぇよ」
剣「…ここにいる……(縛り上げた作者を渡す)」
銃「お、気が利くじゃねえか。それじゃあさっそく」
作者「ちょっと待ってください!慈悲をください!!慈悲を!!」
桜「あら、散々サボってたのに情けが欲しいの?」
剣「…選択の余地なし……処刑……」
作者「ら、らいねん。来年からちゃんとやりますからなにとぞ!」
桜「仕方ないわね。銃、右手に持ってるものを下ろしなさい」
銃「ちぇ、わぁーたよ(銃をしまう)」
剣「…次回、カオスな収集家……いったい何が起きるのか……」
作者「それでは読者の皆さん。よいお年を!!」