戦記絶唱シンフォギアの世界で俺は・・・復讐する 作:天空翔太
ク「はぁ!?いきなり何言ってんだコレクター!なんでアタシがそんなもんやらなきゃいけねえんだ!!」
コレクター「悪い、今回はマジで人手が足りねぇんだ。ってわけで、頼んだぞ!(目にも止まらぬ速さで逃走する)」
ク「おいコラ逃げんじゃねえ!!……ったく、なんなんだよアイツ……!」
桜「まあまあ、そう怒らないでくださいませ」
ク「っ!?誰だテメェ!いきなり現れやがって!!」
桜「申し遅れました。私、コレクターに協力しております者で、仮名を桜と申します。以後お見知りおきを……一度落ち着かれてはいかがでしょう?」
ク「落ち着けるか!! つーかテメェはなんでメイドなんだよ!?」
黒槍「うろたえるな!」
ク「うるせえ!!」
桜「あら?あなた達が登場するのは、まだ先だと伺っていたのですが……」
黒槍「さっきすれ違った仮面の男に『この先に銀髪で騒いでるやつがいるから、あらすじ紹介を手伝ってやってくれ』って頼まれたのよ」
桜「…あの馬鹿、これ以上騒がしくしてどうするつもりなのかしら? これは、OHANASIが必要ですね」
短剣「にぎやかでいいじゃないですか♪せっかくですし、仲良くしましょうよ」
ク「いや無理だろ!!情報量が多すぎんだよ!!」
黒槍「とにかく、あらすじ紹介をするんでしょう? なら振り返りくらいはしておかないとね」
ク「ちっ……分かったよ! やりゃいいんだろやりゃあ!!」
桜「天才物理学者の桐生戦兎は、新世界の創造という偉業を成し遂げました。ですが──目覚めた先の世界では、ノイズという新たな脅威が人々を襲っていたのです」
短剣「そこへ、相棒の万丈龍我さんや二人の協力者であるジンさん、そして二課のみなさんと一緒にノイズを倒していました」
黒槍「けれどこの前の戦いで翼は絶唱を使用……重体に陥ったものの、なんとか一命を取り留めたわ」
桜「それを受け、戦兎は二度と誰も傷つかせないことを決意。強化アイテムの修理に専念するため、地下にある秘密基地へと身を置きます」
ク「コレクターはなんでアイツらにボトルを渡してんだよ!?」
短剣「それはあの人が戦兎さんたちの───」
桜「さあ、この混沌の先に待ちうけるものとは───どうなる第10話!」
ク「テメェが締めてんじゃねえよ!! てかマジで誰だよ!!」
ーーー 森の奥深く隠れるように建つ豪邸 ーーー
『ソロモンの杖……我々が譲渡した聖遺物の起動実験はどうなっている?』
そこには一人の女性が佇んでおり、どこかと連絡を取っていた。
『報告の通り、完全聖遺物の起動には相応レベルのフォニックゲインが必要になってくるの。簡単にはいかないわ』
女性は流暢な英語で、淡々と応じていた。
『ブラックアート……失われた先史文明の技術を解明し、ぜひとも我々の占有物としたい』
彼女は通話を続けながら、長い食卓に足をかける。
『ギブ&テイクね。あなたの祖国からの支援には感謝しているわ。今日の鴨撃ちも首尾よく頼むわね』
長い金髪がよく似合うその姿は、誰もが目を奪われるほどに美しい。
問題は、その身に着けているのがハイヒール、黒いニーソ、黒いアームカバーのみ。ほとんど裸なのだ。
『あくまでも便利に使うハラか。ならば、見合った働きを見せてもらいたいものだ』
『もちろん理解しているつもりよ。従順な犬ほど長生きするというしね』
言い終えると同時に、彼女は通話を切る。
「…野卑で下劣、生まれた国の品格そのもので辟易する……そんな男に、
全身をさらしたままの彼女───フィーネは椅子から立ち上がり、磔台めいた装置に拘束された銀髪の少女へ歩み寄る。
「クリス」
大量の汗をかき、浅い呼吸を繰り返す少女──クリスの頬を撫でると、彼女はゆっくりと目を開ける。
「苦しい?可哀そうなクリス。貴方がグズグズ戸惑うからよ。誘い出されたあの子をここまで連れてくればいいだけだったのに、手間取ったどころか空手で戻ってくるなんて」
クリスの顎を持ち上げると、フィーネは見下すように言う。
「これで……いいんだよな……?」
「何?」
「…あたしの望みを叶えるには……お前に従っていればいいんだよな?」
「……そうよ。だから、貴方は私の全てを受け入れなさい」
フィーネはクリスから離れると、すぐ横にあるレバーに手をかける。
「でないと嫌いになっちゃうわよ」
その言葉とともにレバーを降ろした瞬間、クリスにとてつもない電流が流れ出す。
「うがあぁぁあああぁぁあああ!!!」
クリスの悲鳴が部屋中に響き渡る。
だが、こうでもしなければネフシュタンの浸食は止められないのだ。
「可愛いわよクリス。私だけが貴方を愛してあげられる」
「・・・そこは
「……そうね」
エプロン姿の男から指摘を受けた数秒後、フィーネは電流を止める。
「はあ・・・はあ・・・!?」
クリスに密着すると、大事なことを子供に言い聞かせる母親のように語り掛ける。
「覚えておいてねクリス。痛みだけが人の心を繋いで結ぶ、世界の真実だと言う事を」
…それを隣で見ていたエプロン姿の男は、ほんの一瞬だが、悲しそうな表情をしていた。
「さあ、一緒に食事をしましょう?」
その言葉に、クリスは僅かに安堵の表情を浮かべた。
だが──次の瞬間、再び電流が流れ、悲鳴が響き渡るのであった。
ーーー 風鳴家、弦十郎宅 ーーー
響君が弦十郎さんに弟子入りして、数日が経った。
これまでの修行は、アクション映画を参考にした鍛錬法に始まり、ランニングや足上げ腕立て伏せ、逆さ吊りでの腹筋といった筋力トレーニング。
さらに拳法から格闘技術まで叩き込まれ、響君も少しずつその技術を身につけていった。
そして、ある程度基礎が出来上がった頃合いを見計らい、弦十郎さんは元格闘家である万丈との模擬戦を提案する。
今まさに、模擬戦の幕が上がろうとしていた。
「やぁあああ!!」
響君のラッシュが万丈を襲う。
回し蹴りからの踵落とし、正拳突き。さらに蹴りのフェイントを混ぜたジャブからのロ―キック、そしてアッパーと途切れることなく繰り出される連撃。
だが、万丈はそれらをいとも容易く躱していく。
「オラァ!」
次の瞬間、万丈の蹴りが響君の顔面を襲う。
「くっ!」
響君は紙一重で躱すも、その直後にはさらに激しい追撃が待っていた。
右ジャブ。左フック。鋭いストレートに低いローキック。息つく暇もない猛攻に、響君は完全に防戦一方だった。
やがて、万丈の拳が頬を掠めると、いったん距離を取ろうと下がる響君。
「どうした!?逃げてばっかかァ!?」
それを万丈が許すはずがなく、容赦無く距離を詰めさらに追撃を重ねる。
響君は腕を掲げてどうにか防御するも、鈍い衝撃が骨まで響いているようだ。
「こっのぉお……!(流石、元格闘家……強い……!!)」
そんな一方的とも思える猛攻の最中、万丈の左脇腹が、一瞬だけ大きく開く。
「(──ここっ!!)」
万丈が左拳を引いた瞬間、響君は一気に踏み込み、無防備になった脇腹へ向かって右のショベルフックを叩き込む。だが──
「あめぇよ」
「あっ!?」
その渾身の拳は、万丈の腕によって容易く叩き落とされた。
「(うそ……目はずっとこっちを見てたのに……!?)」
万丈の視線は、一度たりとも逸れていない。
それでも彼は、正確無比に響君の拳だけを叩き落とし、迎撃してみせた。
「自分の身体の位置と、相手の狙いが分かれば、防ぐのは簡単なんだよ!」
次の瞬間。万丈の蹴りが、響君の腹部へ深々とめり込む。
「がっ──!?」
少女らしからぬ声を漏らしながら、響君の身体が吹き飛んだ。地面を転がり、お腹を押さえながら苦しげに咳き込む。
「くっ……!? げほっ……ごほっ……!」
「あ、やべ。ちょっとやり過ぎた」
お腹を抑えて悶える響君を見て、さすがにマズいと思ったのか、万丈の表情が引きつる。
「お、おい!大丈夫か!?」
「あ…はい……だいじょ……ぶです……」
「全然大丈夫じゃないだろうが、この筋肉馬鹿!!」
バシィッ!!
乾いた音と共に、私のハリセンが万丈の頭に炸裂する。
「いってぇ!?」
私は悶絶する響君に駆け寄り、その背中を軽くさする。
「模擬戦で女の子をあそこまで吹き飛ばしてどうするんだ!!」
「いや、つい熱くなっちまって……」
「つい、で済ませていい事じゃないだろう!!」
「まぁまぁ、落ち着けジン君」
低く落ち着いた声に、私は振り返ると、そこには腕を組みながら満足げに頷く弦十郎さんの姿があった。
「だが、今の模擬戦は悪くなかったぞ」
「弦十郎さん?」
「響君は押されながらも、しっかり相手の隙を見ていた。あの踏み込みも悪くなかった」
そう言いながら弦十郎さんは、未だお腹を押さえている響君へ視線を向ける。
「龍我君も、攻めながら相手をよく見ていた。手加減には課題が残るが……戦いとしては上出来だ」
「いや最後、完全に入り過ぎてましたよね!?」
「はっはっは!実戦ならあの程度では済まん!」
「だからって基準がおかしいんですよ!!」
私のツッコミに、万丈は腹を抱えながら笑っていた。
そんな万丈を見てムカついた私は、もう一度ハリセンを振り下ろすのだった。
少し休憩をはさみ、ある程度回復した響君だが、流石にあの状態で模擬戦を続けさせるわけにはいかなかった。
弦十郎さんと話し合った結果、響君にはサンドバッグ打ちで拳を鍛えてもらう事にした。
「……響君。本当に大丈夫か?」
「だ、大丈夫です!…まだちょっとお腹痛いですけど……」
そう言いながらお腹を押さえている響君を見て、万丈は露骨に視線を逸らす。
「……で、俺はどうすんだ?」
響君の練習相手をしていた万丈が、手持ち無沙汰そうに首を傾げる。
その言葉に、私は軽くため息を吐いた。
「仕方ない。今度は私が相手をしよう」
「は?」
「え?」
万丈と響君の声が綺麗に重なる。
まあ、驚くのも無理はない。普段の私を見ていれば、戦えるようには見えないだろう。
「こう見えて、合気道などを少々やっていてな」
そう言いながら私は軽く肩をすくめる。
「まあ、響君は休憩だ。模擬戦を続けるには、流石にさっきの蹴りは重すぎる」
「うっ」
図星だったのか、響君は腹を押さえながら苦笑する。
「でも、まだやれます!」
「その根性は認めるが、今は基礎を身体に叩き込む時間だ」
そう言って弦十郎さんは、木に吊るされた大型のサンドバッグを指差した。
「まずは一撃を正確に打ち込む感覚を覚えろ。力任せでは駄目だ」
「……はいっ!」
響君は痛む腹を押さえながらも立ち上がると、サンドバッグの前へ向かう。
そして──
「せぇいっ!!」
拳が叩き込まれ、重い音が響く。
だが、サンドバッグはわずかに揺れただけだった。
「うぅ……」
響君は悔しそうに拳を握る。
先程の模擬戦が脳裏をよぎっているのだろう。
「そうじゃない。稲妻を喰らい、雷を握りつぶすように打つべし!」
「言ってる事全然分かりません!!でもやってみます!」
響君はサンドバッグを見て構える。
その瞳に宿っているのは、闘志。
再び、拳がサンドバッグへ叩き込まれる。
「ハァッ!!」
ドォンッ!!
響君が殴りつけたサンドバッグは吹っ飛び、それを吊るしていた木の枝が折れ、庭の小さな池に水没すると鯉が水から飛び跳ねる。
「・・・マジか」
「……さて、こちらもスイッチを入れるとしますか」
「はぁ~、朝からハードすぎますよ」
「なんで俺だけこんなに疲れてんだ・・・!?」
「君の鍛え方が足りないんじゃないか?」
何故万丈だけ疲れているのかというと、万丈は私との模擬戦をした後、弦十郎さんとも模擬戦をしたからという事で察してほしい。
「頼んだぞ、明日のチャンピオン」
「はい、ご苦労様」
「あ!すいません!」
「すまねえな」
「ありがとうございます」
友里さんからスポーツドリンクを受け取る響君、万丈。私の分もあるのは嬉しかった。
「んぐ…っぷはぁ!あの、自分でやると決めた癖に申し訳ないんですけど、何もうら若き女子高生に頼まなくっても、ノイズと戦える武器って、ライダーシステムの他にないんですか?外国とか」
「公式にはないな。日本だって、シンフォギアを最重要機密事項として、完全非公開だ。ついで、ライダーシステムに関する情報も全てシャットアウトしている」
「ええー、私、あまり気にしないで結構派手にやらかしてるかも…」
「情報封鎖も二課の仕事だから」
「仮面ライダーなら顔見られずに済むんだけどな」
シンフォギアとライダーシステムは、その身を鎧に包むという共通点はあるが、ライダーシステムは全身を鎧で包み込むものに対し、シンフォギアは一部のプロテクターと生地が薄いボディスーツのみ。つまり顔が隠されていないので、見られたら正体がバレるという事があってもおかしくないのだ。
「だけど、時々無理を通すから、今や、我々の事を良く思ってない閣僚や省庁だらけだ。特異災害対策機動部二課を縮め、『
「情報の秘匿は、政府上層部の指示だってのにね。やりきれない」
「いずれシンフォギアを有利な外交カードにしようと目論んでいるんだろう……実態を知らないからそんな考えが浮かぶのかもしれないが」
「EUや米国は、いつだって改訂の機会を伺っている。シンフォギアの開発は、既知の系統とは全く異なる所から突然発生した理論と技術で成り立っているわ。日本以外の国では到底真似できないから、猶更欲しいのでしょうね」
「結局やっぱり、色々とややこしいってことですよね」
「あー分かんねぇ!そういうのは得意な奴に任せた!」
響君と万丈は、理解ができないと分かっていたのか、すでに思考を放棄したようだ。
「あれ?師匠、そういえば了子さんは?」
「永田町さ」
「永田町?」
「政府のお偉いさんに呼び出されてね。本部の安全性、及び防衛システムについて、関係閣僚に説明義務を果たしにいっている。仕方の無い事さ」
「本当、何もかもがややこしいんですね・・・・」
「なんかよく分かんねぇけど、大変ってことだな」
「ルールをややこしくするのはいつも、責任を取らずに立ち回りたい連中なんだが、その点、広木防衛大臣は……了子君の戻りが遅れているようだな」
「……変なことに巻き込まれてないと良いんですけどね」
ーーー ? ーーー
暗い。まるで海の底のような闇の中───翼はたった一人、静かに沈んでいた。
───私……生きてる? 違う、死に損なっただけ……
それなのに、なぜだろう。自分は生きているという不思議な実感があった。そう思えたのは、お腹の上にある温もりのおかげだった。
視線を落とせば、あの赤い兎が身体を丸め、そこにちょこんと座っている。
その小さな温もりは、どこか懐かしく、胸の奥をじんわりと満たしてくれた。
心地良い温かさを感じながら、翼は静かに考える。
───奏は、何のために歌い、何のために生きたのだろう?
お腹の上で丸くなっている兎の頭をそっと撫でながら、翼は思考を巡らせる。
その時だった。
静寂を破るように、聞き慣れた声がどこからともなく響いた。
「真面目が過ぎるぞ、翼」
───ッ!?
聞き間違えるはずなどなかった。それは、かけがえのない人の声だった。
「あんまりガチガチだと、そのうちぽっきり行っちゃいそうだ」
間違いない、奏の声だ。
───一人になって私は、一層の研鑽を重ねてきた。数えきれない程のノイズを倒し、死線を乗り越え、そこに意味など求めず、ただひたすら戦い続けてきた。そして、気付いたんだ。
お腹の上にいた赤い兎をそっと胸へ抱き寄せ、翼は胸の奥へ押し込めていた想いを吐き出す。
───私の命にも、意味や価値がないって事に……
その時、腕の中の赤い兎が、不満を訴えるようにぺしぺしと翼の頬を何度も叩いた。
───え……?
戸惑いに目を瞬かせた、その瞬間。
いつの間に現れたのか、一匹の灰色の狼が翼の傍らに立っていた。
狼は小さく鼻を鳴らすと、前足を持ち上げ、翼の頭をぽんぽんと叩く。
───何!?なんなの……?
二匹のその行為に込められた意味がわからなかった。
「・・・戦いの裏側とか、その向こうには、また違ったものがあるんじゃないかな?」
兎に叩かれ続ける翼に、奏は言う。
「あたしはそう考えてきたし、そいつを見てきた」
───っ・・・それは何?……痛い、痛いってば!
なおも前足を伸ばして叩いてくる兎をそっと押さえ、翼は聞き返す。
「自分で見つけるものじゃないかな?」
───奏は私にいじわるだ……
やっと大人しくなった兎を抱えなおすと、翼は頬を膨らませる。
───だけど、私にいじわるな奏は、もういないんだよね……
「そいつは結構な事じゃないか」
───私は嫌だ!奏に側にいて欲しいんだよ……
今にも泣き出しそうな翼を、赤い兎は心配そうに見上げ、鼻先を寄せる。
狼は呆れたような眼差しを向けると、もう一度、前足で翼の頭を軽く叩く。
まるで、甘えるばかりでは駄目だと諭すように。
「・・・あたしが傍にいるか遠くにいるかは、翼が決める事さ」
───私が……?
その言葉は、翼の胸に響いていく。
気がつけば、胸に抱いていた赤い兎はいつの間にか腕の中から姿を消していた。
灰色の狼もまた、闇へ溶け込むように静かにその姿を消していった。
ーーー 集中治療室 ーーー
「(ここ……は……)」
「先生!患者の意識が」
「各部のメディカルチェックだ。急げ!」
白衣に身を包んだ人々が慌ただしく動き回る。
ゆっくりと視線を巡らせれば、心電図モニターや点滴、医療機器、何かのレントゲン写真が置いてあるのが確認出来た。
そして、耳に微かに届く、聞き覚えのある歌。
窓へ目を向けると、その向こうにはリディアンが見えた。
「(……不思議な感覚。まるで世界から切り抜かれて、私の時間だけゆっくり流れてるよう……)」
そんな感覚に身を委ねながら、ふと思い出す。
任務でも仕事でもなく、学校を休むのは、これが初めてだった。
「(皆勤賞は絶望的か・・・・)」
などと思いつつ、翼は、奏に向かって語りかける。
「(心配しないで、奏。私、貴方が言う程真面目じゃないから、ぽっきり折れたりしない。だからこうして、今日も無様に生き恥を晒している……)」
その時、自分の手に何かが握られている感覚に気付く。まだ重い腕を無理矢理動かして、その手に握られているものを見る。
そこに握られていたのは、一つの赤いフルボトル。
あの男と同じ名を冠したボトルだった。
「……もう」
翼は目を見開き、小さく息を呑む。
やがて、それを胸へ抱き寄せる。
「……ばか」
その一言を呟き、翼は静かに目を伏せた。
ーーー 夕方 ーーー
「はっはっは!電話1本で反故にされてしまったか。全く野放図な連中だ」
「旧陸軍由来の特務機関とはいえ、些か放縦が過ぎるのではありませんか?」
「それでも、特異災害に対抗しうる唯一無二の切り札だ。私の役目は、連中の勝手気ままを出来る限り守ってやる事なのだが」
秘書は膝の上のケースを見る。
「特機部二とは、よく言ったもので」
車が陸橋のトンネルに入り、出口から出ようとした瞬間。突如、トンネルの出口の前に大型のトラックが道を遮る様に横から現れる。
「なっ!?」
運転をしていた黒服は咄嗟にハンドルを切るが、車がトラックの荷台にぶつかり、後方の2台もそれぞれ激突する。そして、トラックの荷台から複数の兵士がアサルトライフルを構えて降りてくる。
兵士達は黒服たちに向かって一斉に乱射するが、弾丸が当たる直前に小さなバリアが現れ、黒服たちは気絶するのだった。
「何だ!?」
「まさか、暗殺!?」
窓ガラスが割られ、兵士の1人が大臣達に近付く。
「広木防衛大臣と見受けましたが」
兵士は英語で話す。
「貴様等……!」
兵士が大臣達に銃を向けた瞬間。
「ヒャッハーーー!!!」
「なっ!?ぐはぁ!」
突然現れた小柄な少年に顔面を殴られ、兵士は吹き飛ばされる。
「これは一体…!?」
「
「ボス!殺しちゃダメなんだぞ!!」
「そうですよ。半殺しで我慢してください」
『っ!!』
トンネル内で声が反響し、声のする方向を見る。
そこには、トンファーや鞭、警棒を持ち、左肩に赤狼の刺繍のある黒い軍服を身に纏う少年少女達がいた。
「何だお前達!?」
「一体どこから!?」
「お前ら、派手にいくぞ!!」
「わかったぞ!」
「殺しちゃダメですよ!」
先程兵士を吹き飛ばした少年が合図を出すと、少年少女達は兵士達を攻撃する。
「喰らうんだぞ!」
ボコッ!
「ぐはぁ!?」
「悪い人にはお仕置きです!」
ザシュ!
「ぎゃぁぁぁ!?」
「何人かそっちに行ったぞ!」
「「「了解!」」」
ビシッ!バシッ!ドゴォ !
少年少女達は兵士達をほんの数分で倒していく。
「何と…」
「無事っすか?」
「…君達は一体?」
「……正義の味方っすかね。うちのトップがリゾルヴっすから」
「「っ!?」」
「リゾルヴだと!?だが…」
大臣は軍服姿の少年少女達を見る。
「リゾルヴのワンオペにも限界があんだよっと。そして、俺様が鎮圧中心の部隊、ロゴスのリーダーだ」
「…ロゴス……」
「ボス!終わったぞ!!」
「おう、お疲れさん!」
「こら!作戦中はコードネームで呼ばないと駄目でしょう!」
「まあまあ、ほとんど終わってるからいいじゃないっすか。それにランページは言いにくいっすから」
「・・・俺様のコードネームはそんなに言いにくいか?」
「滅相もございません、ランページ!!」
「律儀に呼んでるのはあんただけっすけどね・・・」
「……何はともあれ、助かった」
「感謝します」
「気にすんな。ま、恩を感じてんなら今回の騒動は、リゾルヴに助けられた事にしてくれ」
「……理由を聞いても?」
「一言で言えば、英雄としてのイメージを損なうのを防ぐためっす」
「我々の存在は
「ボスの言うことはリゾルヴの次に絶対なんだぞ!」
「ま、そういう事だ。んじゃ、後はさっき言ったとおりに頼むわ。アディオス!!」
ロゴスの少年少女達は気絶した兵士達を引きずりながら、その場を立ち去っていった。
「ボス!焼肉食べたいぞ!!」
「この前食べたばかりです。今回はお寿司にしましょう!」
「すしもこの前食べたばっかすよ。ここはお好み焼きにしません?良い店知ってるっす」
「・・・そういえば、お好み焼きは食った事ねえな。案内頼むわ」
「了解っす」
それから少しして、広木防衛大臣が襲撃された報告を受け、二課では事件の犯人について捜索していた。
だが、一向に正体は掴めず、得られたのは
一方で、了子さんの方は通信機が壊れて連絡が取れなかっただけで、問題は無かった。
そして、上層部の命令で、二課はサクリスト-D『デュランダル』を輸送する事になった。
ーーー 作戦当日 ーーー
「防衛大臣襲撃犯を検挙する名目で検問を配備!『記憶の遺跡』まで一気に駆け抜ける」
「名付けて、『天下の往来独り占め』作戦!」
作戦内容は至ってシンプルだった。
デュランダルを載せた了子さんの車を四台の護衛車で囲み、その上空では弦十郎さんが搭乗するヘリが周囲一帯の索敵と警戒を担当。
万が一、デュランダルを狙ってノイズが現れた場合に備え、了子さんの車に響君と万丈、そして戦兎を同乗させる。
あとは一気に『記憶の遺跡』と呼ばれる場所まで駆け抜けるだけなのだが───
「戦兎さん……まだ来てないんですか?」
「あと少しだって言ってたし、たぶん大丈夫だろ」
戦兎が、地下の秘密基地に籠もって修復を進めていた強化アイテムは、まだ完成していなかった。
どうやら、パンドラボックスの成分調整に手間取っているらしい。
「大丈夫でしょ。何せ、仮面ライダーとシンフォギア装者が一人ずついるんだから」
了子さんがそう口にするも、響君の表情から不安は消えなかった。
「心配すんな」
そんな響君に対し、万丈が力強く言い切る。
「あいつは絶対に来る」
「龍我さん……」
誰よりも戦兎を知る万丈だからこそ口にできる、揺るぎない信頼。
「……分かりました。私も、戦兎さんを信じます!」
「よし!それじゃあ、出発しよう!」
「「おー!」」
その掛け声に了子さんも乗り、作戦が始まった。
了子さんの運転する車を囲うように護衛車が走り、その上から弦十郎さんの搭乗するヘリで、私も上空から異変がないかを探す。
響君は窓から身を乗り出して周囲を警戒し、その隣では万丈も同じように周囲を探っていた。
ふと、響君が前を向くと、道路の一部が崩れているのを確認する。
「了子さん!」
「ッ!」
了子さんは咄嗟にハンドルを切り回避するも、一番端にいた車両だけは避け切れず、空中に飛び出してしまう。
「まったく、見てられませんねっ!」
『フルボトル! マグネット! スチームアタック!』
そのまま崩れた場所に激突するはずだった車両は、上空でコウモリ男に掴まりながらトランスチームガンを構えた男の方へ引き寄せられ、橋の上に引き上げられた。
「あれって!」
「マジかよ・・・・」
その光景に、響君と万丈は言葉を失う。
「しっかり掴まっててね……」
「え?」
「は?」
「私のドラテクは狂暴よ?」
車両群が加速し、市街地に入っていく。
『敵襲だ。まだ姿は確認出来ていないが、ノイズだろう!』
「この展開、想定していたより早いかも!」
次の瞬間、マンホールから水柱が立ち、後ろの車両が空高く飛ばされる。
「ひぃ!」
「次から次へと、忙しいですねっ!!」
『フルボトル! スパイダー! スチームアタック!』
トランスチームガンから巨大な蜘蛛の巣が放たれ、飛ばされた車両を絡めとり、空中に留められた。
『下水道だ!ノイズは下水道を使って攻撃してきている!』
弦十郎さんが連絡した瞬間、今度は目の前の護送車が吹っ飛び、了子さんの車に向かって落ちていく。
「うわあぁぁぁっ!?ぶつかるぅぅぅぅっ!!」
「避けろぉぉぉぉっ!!」
響君と万丈の悲鳴が車両内に響き渡る。
了子さんはすぐさまハンドルを切り、落ちてくる黒い護送車を間一髪で躱す。しかし、勢い余って車体は大きく歩道へと逸れ、並んでいたゴミ箱や標識を次々となぎ倒しながら駆け抜けていく。
「もっと丁寧に運転しろよ!」
「だったら代わりに運転してみなさい!」
万丈に負けじと言い返しながらも、了子さんは弦十郎さんに連絡を入れる。
「弦十郎君、ちょっとやばいんじゃない?この先の薬品工場で爆発でも起きたら、デュランダルは──」
『分かっている!さっきから護衛車を的確に狙い撃ちしてくるのは、ノイズがデュランダルを損壊させないよう制御されているように見える!』
確かに、周囲の護衛車両だけを寸分違わず破壊している。こんな精密な動きをただのノイズができるとは考えにくかった。
「チッ」
その瞬間、了子さんが舌打ちしたのを万丈は見逃さなかった。
「(……なんで舌打ちしたんだ?)」
『狙いがデュランダルの確保ならあえて危険な地域に滑り込み、攻め手を封じるって寸断だ!』
「勝算は?」
『思いつきを数字で語れるものかよ!』
弦十郎さんの判断(根性論?)に従い、了子さんの車と残った1台は薬品工場へ入っていく。
すると目の前のマンホールからノイズが飛び出し、前方の護衛車に飛び乗る。
黒服はすぐさま車両を乗り捨て、車は建物の一つに突っ込み、ノイズを巻き込みながら爆発する。
「狙い通りです!」
しかし、タイヤが何かに乗り上げたのか、車体が大きく跳ね上がり、そのまま横転してしまう。
「うわあぁぁああぁ!?」
「うおぉあぁぁあぁ!?」
「南無三!」
盛大にひっくり返る了子さんの車を、私と弦十郎さんは見ていた。
そして車から響君、万丈、了子さんの3人が出てくる。
「くっそ……!もっとまともな運転できねえのかよ!」
「うるさいわね!こっちだって必死だったのよ!?」
「二人とも!前を向いてください!」
響君の叫びに2人は周囲へ目を向ける。
気付けば、周囲を大量のノイズに完全に囲まれていた。しかも、その数は今もなお増え続けている。
「了子さん、これ、重い・・・!」
「だったら、いっそここに置いて私たちは逃げましょ?」
「そんなのダメです!」
「そりゃそうよねぇ……」
「言い争ってないでさっさと行くぞ!」
万丈は響君の手からデュランダルの入ったケースを取り上げる。
その直後、無数のノイズが弾丸の如く襲い掛かる。
ノイズたちから逃げるように走り続ける3人だが、1台の車両がノイズに貫かれた次の瞬間、背後で爆発が起き、その爆風でケースは万丈の手から離れてしまう。
「しまった!?」
視界いっぱいに迫るノイズが、一斉に牙を剥く。
「(間に合わねえ……!)」
変身する時間がない。クローズドラゴンを取り出す時間すら残されていない。
誰もが最悪の結末を覚悟した、その瞬間だった。
了子さんはノイズの前へ踏み出すと、右手を掲げた。
すると、紫色のバリアが3人の前へと広がった。
突撃したきたノイズがそれに触れた途端、一瞬にして炭素の塊と化していく。
「了子、さん・・・?」
「おい、なんだよそれ・・・・」
弦十郎さんの常識外れの身体能力とはまるで違う、人間離れした能力。
ノイズの攻撃を防ぐ度に、髪が解け、眼鏡が落ちるも、了子さんは不敵な笑みを崩さない。
「しょうがないわね。貴方のやりたい事を、やりたいようにやりなさい」
その言葉に、響君は立ち上がる。
「私、歌います!」
万丈は了子さんを不審げに見ながら、クローズドラゴンにドラゴンフルボトルをセットする。
『Wake UP!』
『CROSS-Z DRAGON!』
『Are You Ready?』
「変身!」
「───Balwisyall Nescell gungnir tron────」
『Wake UP Burning!』
『Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!』
「行くぜ!」
「はい!」
勢いよく駆け出すクローズだが、響君は慣れないヒールを履いているからか、すぐそこで転んでしまう。
「大丈夫か!?」
クローズは思わず立ち止まるが、その間にノイズが周囲を囲んでいく。
「チッ!」
短く舌打ちをすると、クローズは響君を守るようにノイズと向き合う。その一方で、響君も立ち上がる。
「(ヒールが邪魔だ!)」
そう思った響君は、迷うことなく踵のヒールを破壊する。そしてノイズたちと激突しようとした、その瞬間だった。
「待たせたなぁぁぁぁぁっ!!」
「「ッ!?」」
反射的に見上げた視線の先には、工場の塔のような建物の頂上で1人の男が胸を張り、空へ向けて高々と腕を突き上げて立っていた。
まるで舞台の主役が登場したかのような、大仰すぎるポーズだった。
「戦兎!?何やってんだ、お前!」
「戦兎さん!?」
一方、その様子を遠くから見ていたクリスだが──
「……何やってんだアイツ……」
ノイズを操っている彼女でさえ、理解が追いついていないようだ。──もちろん、私も訳が分からない。
そして当の本人である戦兎はというと、煤だらけの顔に乱れた髪、トレンチコートの下の服まで焦げ跡だらけだった。
「フッフッフ……!ヴァーハハハハハ!!幾度となく失敗を繰り返し、抜けてしまったパンドラボックスの成分を元に戻すために何度も爆発に巻き込まれ、黒焦げになりながらも、翼の為を思って気合と根性で直したビルドのパワーアップアイテム・・・その名も『ラビットタンクスパークリング』ぅ!すごいでしょぉ!?最っ高でしょぉ!天っっ才でしょぉぉぉおおお!? さあ!天才物理学者の桐生戦兎様を崇めよ!称えよ!ヴァハハハハハ!!!」
左手でビルドの複眼を模した缶を高らかに掲げながら、背をそらす戦兎の姿に、響君と万丈はドン引きしていた。
……私もあまりのキャラ崩壊にドン引きしている。
「なんか……いつもの戦兎さんじゃないですね……あははは・・・・」
「何日も徹夜続きだったからテンションがおかしくなってんだろ・・・・」
「……フッ」
ようやく笑みを収めた戦兎は、小さく息を吐く。
軽薄さは消え、そこにはいつもの愛と平和のために戦う戦士の姿があった。
「さあ、実験を始めようか」
戦兎は、左手に持っていたラビットタンクスパークリングを軽く振る。
シュワシュワと炭酸が弾けるような音が鳴り響くと、プルタブを開け、躊躇なくビルドドライバーへ装填する。
『ラビットタンクスパークリング!』
爽快な音声が響き渡り、ボルテックレバーへ手を掛けた戦兎は、一瞬だけ目を閉じた。
脳裏に浮かぶのは、絶唱を歌い倒れた翼。
「(もう二度と……あんなことはさせない!)」
そのために、この力を取り戻した。
『Are You Ready?』
いつもの問い掛けに、戦兎は静かに笑う。
そして、思い浮かべるのは、翼の笑顔。
まだ見たことのない、彼女の本当の笑顔を。
「(心の底から笑える最っ高の笑顔を……創ってみせる!)」
決意を胸に、両手を広げ、ファイティングポーズをとり、戦兎は叫ぶ。
「──変身!」
次回予告の時間っす
ーーー とあるお好み焼き屋 ーーー
狐「ついに復活したビルドの新しい力、ラビットタンクスパークリングっすけど、もうちょい早く来てほしかったっすね。・・・それにしても、ここのお好み焼きはやっぱりおいしいっす(もぐもぐ)」
機「早く来られても
犬「そのラビなんちゃらリングはちゃんと強いのか?(ペロリ)おばちゃん!お代わりをお願いするぞ!」
銃「ラビットタンクスパークリングな。まあ、防御性能は強化されてるから負けはしないな。(ガツガツ) おばちゃん、俺様もお代わりだ!明太子で頼む!!」
狐「そういえば、デュランダルの輸送には誰が行く予定なんすか?」
銃「ん?ああ、それならコレクターとプロテクトが行くから問題ねえぞ」
犬「何で戦うのが苦手なプロテクトも一緒なんだぞ?」
機「デュランダルの情報収集や解析が必要だからでしょう。そんな事も分からないから国語で赤点ばかり取るんですよ」
犬「うぅ。ボス~機械オタクがイジメてくるんだぞ」
銃「お前が悪い!姉貴に叱られる俺様の身にもなれ!!」
犬「ボスぅ!?」
機「そこ!お好み焼き出来てますから、じゃれついてないで早く食べてください!」
狐「なんでこのメンツだと毎回こうなるんすかね? 面白いからいいっすけど。次回、デュランダル争奪戦&防人シンパシー。あ、おばちゃん。テイクアウトお願いするっす!」
フルボトルや聖遺物関連で色を付けてるんですけど、どうでしょうか?
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今のままでいいよ
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ちょっと色付けすぎじゃない?
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色無くてもいいのでは?
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その他(提案があれば感想へ)