火星で見つかったパンドラボックスが引き起こした『スカイウォールの惨劇』から10年。
地球外生命体のエボルトの暗躍によって日本は三つに分かれ、混沌を極める。
仮面ライダービルドであり、天っ才物理学者の桐生戦兎は、その他大勢のライダーと力を合わせて地球殲滅目論むエボルトの野望を阻止する。そして、も一つの地球と融合してみんなを救済する『新世界』を作るのだった。
おい!その他大勢その他大勢のライダーってなんだよ!?もっとちゃんと紹介しろよ!
......じゃあ筋肉バカの万丈龍我とあとアイドルオタクの猿渡一海と文字T大好き氷室幻徳と力を合わせて......
ちょっと待てよ、筋肉バカはねぇだろ?
うるっさいなぁ、だったら自分で考えなさいよ!
だったら...(バサッ)...プロテインの貴公子、万丈龍我d......
こんな万丈でもちょっとは活躍できる『崩壊3rd』をどうぞー。
スルーしてんじゃねぇ!
都市部から少し離れた倉庫群。その中にNo.3と表記された倉庫の中では、誰の記憶にも存在しない二人の男が暮らしていた。
「......これで、俺たちの記憶にまつわる話は全て撮り終えた。」
自称天才物理学者の桐生戦兎は、レコーダーの停止ボタンを押した直後に呟く。テーブルには彼らの『旧世界』でのデータが記されていた。
「はぁ~やっとかよ。美空やエボルトまで登場させやがって!声のそっくりさん探すの大変だったんだぞ!」 ファーッハッハッハァ!
筋肉バカ......否、自称プロテインの貴公子の万丈龍我はデータ化に際し、声の協力を募った人々の書類を見ながら腰掛ける。因みに、エボルトの声は金尾哲夫氏が担当した。
「仕方ないだろ。本人たちは記憶を失ってるんだから。」
「......なんでみんな忘れちまったのかなぁ......。」
エボルトをエネルギー源にし、もう一つの地球と融合させた新世界。この奇跡により、エボルトの手によって命を落とした人々は救済された。その代償として、エボルトに関すること、つまりパンドラボックスやスカイウォール、仮面ライダーといった記憶は全て失われている。それは、エボルトの存在によって生み出された戦兎と万丈も例外ではない。だが、彼らはこの世界の創造主として、人々に忘れ去られながらもこうやって生きているのだ。
「......つーかさ、記録の最後に言ってた『崩壊3rd』ってなんだよ。そんな言葉俺たちの記憶になかったろ?」
「え?それは......」
戦兎が記録に使った台本の最後のページを少し見る。
「......あー悪い、シンプルに間違えた。」
「なんじゃそりゃ!?そんな単純なミスしてんじゃねーよ!?」
「仕方ないでしょうが。最近の研究テーマがそれなんだから。」
「ミスった部分は俺が撮り直しておくから、お前はさっさと仕事に行け。ほら、今週の新商品、『光る!動く!おしゃべりペットロボット、ホム』!」
「......それ、売っても大丈夫な奴か?」 「まぁ大丈夫でしょ。この世界でもコミケとかあるし。」
「そういうことだから、早く行きなさいよ!稼ぎがないとここも追い出されるんだから!売れるまで帰ってくるんじゃないぞ。」
「はあっ!?」
戦兎は他の商品が入ったバックを万丈に押し付け、そのまま倉庫から追い出した。
(さてと......)
そのままパソコンの前に座り、万丈には隠していた資料を開き始める。そこには二年前に日本で起きたとされている大災害、『第三次崩壊』について書かれていた。
(崩壊......か。)
戦兎たちが生きていた旧世界には崩壊と呼ばれる災害は存在しなかった。スマッシュとはまた別の異形をした白と紫の怪物や、人間の女性が理性を失い『ゾンビ』と化す、そして17歳の少女が電撃を纏い、人々を襲撃した......といった情報がある。ゾンビについては、どこぞの神によるデンジャラスな方ではない。
(これはエボルトのいない世界に元からあったものなのか、それとも新世界が作られたものによって出来たのか......)
もし後者であったら、それは創造主である自分たちに責任があり、仮面ライダーの力で沈めなければならない。
......いや、戦兎なら、前者であろうとそうするだろう。自意識過剰でナルシストな正義のヒーローである彼なら、部外者だと見て見ぬフリをするような真似は絶対にしないのだから。
場所は変わり、二人が新世界で再開したあの噴水前に移る。広場では、有志によるフリーマーケットが開かれていた。
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい!今日はちょっとイカレた天才物理学者の、面白い発明品がいっぱいあるよー!」
そこで万丈が戦兎の発明品を売りに出していた。
単細胞な頭で一生懸命考えたセールストークで大々的に呼びかけるが、残念なことに売れ行きは芳しくない。
「全っ然売れねぇじゃねぇか......ま、売れると思ってねぇけど。」
時々興味を持って見に来る人もいるが、売り出してる本人がよくわかってないせいもあって、その興味を保つことは出来ないでいた。先日に至っては、見知らぬ少年に「こんなの売れるわけねーよバーカ!」と、盛大に煽られた。万丈も負けじと「ガキィィィィ!」と叫んだ。
「......少しいいでしょうか?」
不貞腐れていた万丈が前を向くと、そこには銀髪のドリルのような縦ロールの少女が座り込んでとある商品を見ていた。
「おっ、お嬢さんお目が高いね!それは今日入った新商品、『光る!動く!おしゃべりペットロボット、ホム』!」
「って聞いてるー!?」
そう高らかな自信満々のセールストークを話すが、少女には聞こえてなく、ペットロボを手に取って見回していた。
「電源は......ここですか。」
ここに戦兎がいるなら、「俺の発明品はもっと大切に扱いなさいよ!」とか言いそうと思いながら、万丈は少女が電源を入れるのを眺めている。まぁ彼にはこのペットロボがどうすごいのかが全く分からないので、下手に触れられないってのが真相だが。
電源を入れた瞬間目が光り、少女の手から弾き飛んで自立稼働を始めた。
「ホ~ムホム~。」
「声渋ゥッ!?」
マスコットのような見た目からは想像もできない渋い声(CV.大塚明夫)で喋ったため、驚いて思わず椅子から崩れ落ちた。
「おお......まさかボイスまで再現しているとは。よし、決めました!これ下さい。」
「あ?おお......毎度アリ!」
困惑しながらも万丈は代金を受け取り、少女は遠くにいる白髪と黒髪の少女たちの元へ走っていった。
「......マジで売れた......よっしゃああああああ!」
フリーマーケットを初めてここ数日、イカレた天才物理学者の
......しかし、喜びは束の間、万丈の背後から衝撃と悲鳴が伝わる。
「なんだ、何が起こった!?」
すかさず異変が起きた方向に振り向くと、彼の目には反対方向に逃げ惑う人々、それから紫の光が混じった爆発。(何じゃありゃあ!?)と内心思い、状況を把握しきれないままだが、万丈の体は既に異変の方へ足を運んでいた。
異変の現場に着いた万丈が初めに見たものは、数メートルに及ぶ白い怪物が巨大な前脚で人々を襲っている様だった。
(なんだよこれ......!?どう見てもスマッシュではねぇよな?いやそんなこと考えてる場合じゃねぇ!)
旧世界ではスマッシュと呼ばれる怪人を倒してきた万丈は、すかさずビルドドライバーを腰に当て、ドライバーから伸びた帯が巻き付いて固定。その後ドラゴン型サポートメカ『クローズドラゴン』にドラゴンフルボトルを数回振って装填、ビルドドライバーに取り付けた。
『CROSS-Z DRAGON!』
熟練の手付きで
『Are you ready?』 「変身!」
ドライバーからの呼び掛けに応え、万丈はファイティングポーズをしたのち、ライドビルダーの外装が彼の体を覆う。
『Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON! Yeah!』
外装の隙間から噴き出た蒸気に包まれながら、青き龍を模した仮面の戦士が現れる。
その名は『仮面ライダークローズ』。旧世界にて地球の脅威を前に奮闘したヒーローの一人である。
「オラァァァッ!」
変身完了と同時に、クローズは怪物の頭部を跳び上がって殴りつける。急襲に対応できず、怪物はバランスを崩してその巨体を地表に叩きつける。
「おい!コイツは俺がやるから早く逃げろ!」
この世界にない存在を見て硬直している人々にクローズは叫び、逃げるよう促す。
それを聞いた人々は、一人、二人とこの場から離れてはいるが、仮面ライダーの存在を知らない彼らにとっては目が離せないものであり、何人かはスマホで撮影する者もいる。
何で逃げねぇんだよと苛立ちながらもクローズは怪物を何度も殴って順当にダメージを与える。
パンチで怪物の前腕を打ち上げた後、ハンドルを再び回転させ、右足にドラゴン状の蒼炎を纏わせる。
『Ready......GO!』
『ドラゴニックフィニッシュ!』
「おりゃあああああ!」
怪物目掛けて跳躍し、蒼炎を纏った右足でボレーキックを放つ。
クローズの必殺技を受けた怪物はその形状を維持できなくなり、紫のエネルギーに分解されて消滅した。
「ふぅ......」
(まさかスマッシュとは違う奴が出てくるとはな。とっとと帰って戦兎に伝えねぇと。)
歓声を上げる人々の目から距離を置こうと歩き始めた瞬間、万丈の肉体に強い痛みが走った。
「グッ......!?アアアアアァァァァッ!?」
内部のダメージが進行した結果、クローズの外装が維持出来なくなり消滅、万丈の素顔が露わになりその場で倒れこんでしまう。
「ハァッ......ハァッ......なんだよ......これ......?」
辛うじて腕に視線を向けると、彼の皮膚には血の気が失せ、線状の赤い光が流れていた。
旧世界では存在しなかった未知の脅威に、万丈は命の危機に瀕していた。
(マジかよ......ここで死ぬのか......俺?せっかく新世界を作れたってんのに......!?)
(悪い......戦兎......!)
ここで死んでたまるかと抵抗しようにも未知の存在には彼だけでは対処できず、そのまま意識を失った。
「芽衣先輩!アイツ、ブローニャがフリマでガラクタ買ってた時にいた店番じゃないの!?」
「嘘、どうして!?戦乙女でもないのに崩壊獣を倒したっていうの!?」
「芽衣姉様、キアナ!彼の体に崩壊エネルギーが侵食しています!キアナは周囲の崩壊獣の対処を、芽衣姉様は今すぐ学園に連絡してください!」
「アイツ......今日帰るの遅くねぇか?」
時計に目を向けると、夜の11時半。この時間になるまで研究に没頭していたことに驚きつつ、相棒がまだ帰ってこないことに違和感を感じていた。
売れるまで帰ってくるなよとは言ったが、昨日までならたとえ全く売れなかったとしても、こんなガラクタ売れるわけねぇだろと日が暮れる前には帰ってきたはずだ。この時間になってまだ連絡の一つも寄越さないのは明らかな異常事態である。
(まさか、変なことに巻き込まれてないだろうな?)
戦兎は厄介事が起きたことを予想し、棚の上に設置してあるブラウン管テレビの電源入れ、ニュース番組をしているであろうチャンネルに切り替える。そこに映っていたのは......
『今日午後3時頃、~~公園前にて、崩壊獣が出現しました。現在は極東支部の戦乙女により鎮圧されたと発表されていますが、安全が確認されるまで現場には近づかないようにしてください。』
『また、SNS等では、「人気格闘家の万丈龍我そっくりの男が謎のヒーローに変身して崩壊獣と戦っていた」との情報があり……』
アナウンサーが淡々と話す横には、誰かが撮影して投稿したであろう写真が映る。ブレて細部は見えないが、そこには万丈が変身する仮面ライダークローズの姿があった。
それを見た戦兎は、旧世界では数えきれないほど言い放った口癖を無意識に出す。
「最っ悪だ......。」
読んでいただきありがとうございました。
初っ端から万丈が死にかけていますが、ビルドドライバーに崩壊エネルギーを弾く効果はありません。