崩壊世界の天っ才物理学者と筋肉バカ   作:紙コップ113

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初投稿から評価頂いて恐縮です。
戦兎一人のため今回はあらすじ短め


聖フレイヤに潜入せよ

地球外生命体エボルトとの激闘を勝ち取り誕生した新世界。仮面ライダービルドであり、天っ才物理学者の桐生戦兎は、自身の発明家を売って日銭を稼ぎながら新世界の平和を謳歌していた。

しかし、いつも通り戦兎の発明品を売りに出していた万丈龍我が、仮面ライダークローズに変身して崩壊獣と呼ばれる未知の怪物と戦っていた。

それをニュースで知った戦兎は、すぐさま崩壊獣が現れたとされる場所へ向かうのだった......

さて、どうなる第2話!やっぱ一人だとすぐに終わっちゃうなぁ......

 

 

 

 

 

 

 

万丈が変身したという情報を見た戦兎は、すぐさまマシンビルダーを出現させ、万丈が戦っていた場所に向かう。その間、彼の脳裏には数々の最悪な展開がよぎっていた。

 

ー万丈が崩壊獣にやられた

ービルドドライバーとフルボトルがどこかの組織に回収された

ー自身の技術が解析され軍事利用。そして......

 

戦争

 

そう、かつて旧世界の惨劇が再び繰り返されるのではないかと予想していた。だがそれよりも、人々から忘れ去られた自分を記憶してくれるたった一人の相棒を失う恐怖の方が強かったが。

 

(あの筋肉バカが。よく分かってない奴に無策で突っ込まずにまずは逃げなさいよ!)

 

内心強張りに近い形で万丈を罵倒しながらマシンビルダーのギアを一段上げる戦兎だった。

 

 

 

 

 

 

万丈と再会した噴水を過ぎ通り到着した戦兎だったが、すでに数人の戦乙女とその関係者によって現場は封鎖されており、立ち入り禁止のテープの前にはカメラを持ったマスコミとスマホ片手に一目見ようとする一般人であふれていた。

 

(すいません)と一言言いながら混雑を無理やり押し広げ、一番近い警備担当の戦乙女に問いかける。

 

「すみません、ここにいたばんじょ......じゃなくて、ここでヒーローに変身したって男はどこに行ったか知ってますか?」

 

「......」

「申し訳ありませんが、その質問には機密事項に抵触するのでお答えしかねます。」

 

「なん......だと......?」

 

機密事項に抵触する。つまり、万丈は戦乙女の所属する組織に連れ去られたということになる。

頭が硬直している間に、戦兎は混雑の外へ弾き出されていた。

 

(最悪だ......それも思った以上に。)

 

弾き出されてそのまま地面に転がったまま、戦兎は頭を抱えていた。

万丈が持っていたのはおそらくビルドドライバー、サポートメカのクローズドラゴン、そしてドラゴンフルボトル。フルボトルの特性上それ自体が量産される可能性は低いが、得られた研究データから新たな兵器が作られ、戦争が起き、また......

 

『ギャアアアオ!』

 

絶望と不安に押しつぶされそうになった戦兎の耳に電子音声交じりの鳴き声が入る。

 

(クローズドラゴン!?)

 

すぐさま上体を起こし、万丈が持っているはずのクローズドラゴンを掌に乗せる。

 

「お前まさか、万丈の居場所が分かるのか?」

 

頷くかのように電子音交じりの鳴き声を発した後、クローズドラゴンは戦兎の掌から再び飛翔し、人混みとは別の方向に向かっていく。

 

(付いてこい、ってことか。クローズドラゴンにこんなプログラムを仕込んだ覚えはないんだがな。いやいや、俺の発明品を俺が信じないでどうする?)

 

グレードエボルボトルを装填して色が変わったとか前に聞いたことがあるからそれ由来か、とも考えたが、首を横に振って無駄な考察を振り払い、傍らに停めていたマシンビルダーに再び跨がって小さなサポートメカの後ろを追った。

 

 

 

 

 

 

マシンビルダーを走らせて十数分ほど経過し、クローズドラゴンはある施設の前で停止し、戦兎にここだと伝えるように鳴く。

 

「......おい、本当にここで合ってるんだよな?」

 

疑う戦兎に対し、クローズドラゴンはそうだと鳴く。

 

「......正直なところ、病院とかもっと普通の場所か、どこかの研究施設にいると考えてた。」

「......どう考えたら女子高にアイツが運ばれたって結論になるんだよ!」

「お前アレか!?あのバカに長い間使われてたからバカが移ったんだろ!この野郎万丈連れ帰ったらプログラムを一かrアッツ!

 

キレる戦兎にブレスを浴びせ、してやったりと上空を飛び回るクローズドラゴンであった。

 

「......マジかぁ~~~。」

 

桐生戦兎は、一年ほど前に記憶をすべて失ったことがあるが、葛城巧として生きた時代も併せて26年という歳を重ねたれっきとした成人男性である。そんな人物が夜中の女子高にのうのうと侵入すれば、ロリコンだの変態だのというレッテルを張られ、社会的に抹殺されるであろう。いや、正式な戸籍がない以上社会的に元から存在しないのだが。それでも流石に抵抗がある。

 

(......いや、よく考えてみれば、旧世界でも万丈の冤罪を晴らす名目で東都政府を敵に回していたよな?だったら案外何とかなるかも?)

 

旧世界での行動を今一度振り返れば、女子高侵入以上のもっと大事をやらかしていたことに気づき、気を取り戻した。

 

(とりあえず、入れそうな入り口を探してみますか。)

 

そう考え、女子高の囲いをぐるっと一周するのであった。

 

 

 

 

数分かけて周囲を回り、今戦兎が立っている場所は正面校門。横には『聖フレイヤ学園』と書かれている。

 

(聖フレイヤ......旧世界では聞いたことない学園だ。ここの周辺が元東都だとしても、これだけの規模の学校はここになかったはずだから、やっぱ新世界で初めて出来たのか?)

(それは後で調べるとして............ここの塀やけに高いな。だったらこれの出番か!)

 

戦兎が懐から取り出したのは、赤いボトル、ラビットフルボトル。それを数回振って中の成分を活性化し、常人離れの跳躍力で塀を軽々と飛び越えていった。

 

 

 

 

 

 

「お邪魔しま~す......。」

旧世界ではファウストの実験室など様々な施設に侵入したので、塀さえ超えれば校舎の中に入るのに苦労しなかった。エントランスにある施設案内に目を通し、万丈がいるであろう部屋を絞る。

 

(万丈がいそうなのは......『医務室』、『訓練室』、『職員室』あたりか。まずは医務室から行ってみるか。)

 

訓練室って防衛学校かよと疑問に思いながらも医務室の方向に足を運んだ。

 

 

 

またまた数分経過し、医務室らしき部屋の前へ。窓ガラス越しに心電図や医療用ベッドが見える。

戦兎は窓ガラスから内部を観察し、ベッドを一つずつ観察する。そして、一番奥のベッドは点滴や心電図が動作しているのを確認。角度を変えて目を凝らすと、そこに寝かされているのは戦兎が良く知る顔だった。

 

「......万丈!?」

 

すぐさま医務室のドアを開け、万丈が寝かされているベッドの前に行き彼の容態を見る。

腕や首筋には血管のような赤い線が見える。特に苦しむ様子は見られないが、今の戦兎には全く未知の現象だった。

 

(クソッ、こういうときにジーニアスボトルさえあれば......!)

 

ビルドの最強フォームへの変身アイテムであるジーニアスボトルは、ネビュラガスやエボルトの毒といった未知の物質を中和する能力がある。だが、新世界創造の際、中の成分をパンドラボックスに吸収されてしまい、現在は使用不可能である。

 

(何か方法はあるはずだ......考えろ、考えろ......!)

 

「そんなに悩まなくてもとっくに峠は越してるから安心して。数日寝かせておけば治るわよ。」

 

「誰だ!?」

 

戦兎はすぐさま立ち上がり、声が聞こえた方向を振り向くが、視界に人らしきものは見当たらなかった。

 

「あれ、誰もいな......グフォァッ!?

 

下から腹部に強い衝撃が入り、戦兎はその場で倒れこんでしまった。

 

「上だけ見て足元を見ないなんて、随分間抜けな侵入者さんね。」

 

「ゲホッ、ゲホッ......こ、子供じゃ......グヘェッ!?」

 

「子供扱いしないで頂戴!あたくしは聖フレイヤの学園長なのよ!」

 

修道服を身に纏う、背丈が小学生レベルの少女がそう言うが、戦兎は全然信用していない。だがこの学園の関係者であることは分かった。

 

「......だったら、何でアイツがここにいるんだよ!人体実験でもしたのか!?」

 

「人体実験!?そんなことするはずないでしょう!あそこに寝かされてるのは、崩壊獣から出た『崩壊エネルギー』をモロに浴びた結果よ。」

「......ん?あなたもしかして、彼の知り合いだったりするの?」

 

「あ、あぁ......そうだけど......。それがどうかしたのか?」

 

「だったら話が早いわ。あなたにはいろいろ聞きたいことがあるの。場所を変えましょ。」

 

「は?ちょっと話って......あだだだだだ!痛い痛い痛い!」

 

修道服の少女は戦兎の足を引っ張って医務室を出てどこかに連れ去られていった。

 

「痛い痛いって!ちょっとは手加減しなさいよ!」

 

 

 

 

 

 

 

場所変わって学長室

 

「改めまして、あたくしは天命組織極東支部長兼、聖フレイヤ学園の学園長を勤めている、テレサ・アポカリプスよ。」

 

「…桐生戦兎です。」

 

テレサのデスクの上を見ると、ネームプレートに『テレサ・アポカリプス』と書かれている。

そして戦兎についてだが、金色の巨大な十字架から伸びた槍や鎖で椅子に縛り付けられてる状態だった。

 

「桐生戦兎君ね。貴方に聞きたいのは、貴方たちが持っていたこのガジェットとボトルよ。」

 

テレサは万丈が持っていた、戦兎から没収したビルドドライバーとフルボトルを前に置いた。

 

「貴方のお友達はこれを腰に巻いて、そこから生成した装甲を装着して戦っていた。それも一般崩壊獣を容易に撃破できるほどの力をもって。だけど装着者を崩壊エネルギーから保護する機能は一切搭載されていない。」

「これはあたくしの勝手な推測だけど、このシステムは対崩壊を想定されたものではない。だったら何と対峙するために造られたの?そして誰が造ったの?」

 

「......。」

 

テレサの口から発せられた質問は、見た目の幼さに似つかない的確な内容だった。数時間程度のわずかな事実をもとにした推測、そして相手を確実に追い詰める質問に、戦兎は目を背けて黙秘するしかできなかった。

 

「黙秘ね......。だったら質問を変えましょう。そのシステムの情報を話せないのはどうして?」

 

「......このシステムが、戦争を引き起こす要因になりかねないからです。」

 

(戦争......ね。)

 

戦争を引き起こす要因となる、という戦兎の言葉にはテレサも少し共感を覚えた。

戦兎が聖フレイヤに侵入する数時間前、万丈のビルドドライバーとボトルの解析を行っていた。ボトルはドラゴン一本しかなく、クローズドラゴンもいなかったためビルドドライバーが使用されることはなかったが、研究員が誤ってボトルを振って成分を活性化させてしまい、設備を壊してしまう事故が起きたことを思い出した。

 

(非戦闘員にあれだけの力を与える代物が世界中にばら撒かれたら......万が一お祖父さまに渡ってしまうのは絶対に避けるべきね。だからといって、このまま彼らを野放しにすることは出来ないわ。だったら......。)

 

「......これはあたくしが実際に見たわけではないけど、彼は崩壊獣が現れた時、一切の迷いなく立ち向かったそうよ。民間人にも逃げるよう促していて、彼を見た人は口をそろえて『ヒーローみたい』と言ってたわ。」

 

「ヒーロー......ですか。」

 

「つまりね、あなたも彼と同じことをするんじゃないのかってこと。彼の話を聞いた限り、好き好んで誰かを傷つけるようなタイプではないと思うの、貴方も含めてね。」

 

「......アイツはただ、後先考えない単細胞なだけですよ。」

 

口先ではそう言うが、戦兎の顔にはうっすらと笑顔が戻る。この世界に必要ないはずの仮面ライダーが誰かの明日を守り、さらには『ヒーロー』だと賞賛されたのだ。彼らの戦いを覚えていないはずである新世界の人々に。

 

「だから、このシステムについて教えて欲しいの。もちろん、このことを誰かに伝えないことを約束するわ。」

 

テレサはそう言い、戦兎を縛り付けていた鎖を十字架に収納して開放する。

 

「分かりました......。」

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後......。

 

「......というわけで、次元の狭間で見事エボルトを倒し、新世界が造られたのでした。『仮面ライダービルド』完!めでたしめでたし!」

 

すっかり飄々とした態度を取り戻した戦兎は、どこかしら取り出したリモコン片手に、データ化した記憶をあらすじ紹介風でテレサに説明していた。それを聞いたテレサは......

 

「......。」

 

すっかり頭を抱えていた。それも当然である。スカイウォールの惨劇からの十年間をこの数十分で頭に叩き込まれるとこうもなる。

 

「......と、とりあえずさっきまでの話を要約するわね。」

「この『ビルドドライバー』と『フルボトル』は、地球外生命体『エボルト』に対抗できる『仮面ライダー』に変身するための装備として開発された。だけど、スカイウォールやパンドラボックスといったエボルトの策略に翻弄され、ライダーシステムは三つに分かれた国同士の戦争に利用されることとなった。」

「それでも貴方たちは最後まで仮面ライダーとしてエボルトに抵抗し、二つの地球を融合させたスカイウォールのない『新世界』を創造した。」

「そして桐生戦兎とエボルトの遺伝子をもつ万丈龍我は、新世界の創造主として旧世界の記憶を保ったままと......。」

「......スケールと世界観が違いすぎて頭痛くなってきたわ。」

 

「これでも大分省略したんですけどね。一言で語れないのが天っ才なもんで。」

 

「だったらドルヲタと文字Tの下りを省いてくれないかしら?氷室首相の息子さんがダッサい服を堂々と見せびらかす趣味があったなんて知りたくなかったわ......。」

 

「......心中お察しします。」

 

(あ、やっぱ幻さんのこと知ってるんだ。まぁ学園長だから仕事で会ってそうだし当然か。)

 

幻徳の隠されたファッションセンスにショックを受けてデスクに顔をうずめるテレサに同情しながら、かつての仲間との思い出に浸っていた。因みに幻徳は一人で電車の切符が変えず、ピーマンが食べられず、夜は明かりがないと寝られない。

 

「ハァ......まぁとにかく、貴方たちが人類の敵ではないことは分かったわ。」

 

「それは幸いです。せっかく作った新世界でも政府に追われるのは勘弁ですからね。」

 

「とはいえ、世界を救った正義のヒーローは新世界では存在してはいけない人間。この国で正式な身分もないのでしょう?」

 

「そうなんですよねぇ。表立って働けないから、フリーの発明家として俺の発明品を万丈に売りに行かせてなんとか食べていってる状態なんですよ。」

 

「だったら、あたくしに提案があるの、興味ない?」

 

「提案?」

 

「貴方たち、この聖フレイヤ学園で働いてみない?」

 

まさかの提案により、戦兎は「は?」としか出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、崩壊エネルギーに晒され、命の危機に瀕した万丈の目が開き、光が入る。

 

「......見知らぬ......天井......」

 

万丈の視界には、白い天井、そして眩い光。そう、万丈は......

 

「ここは......あの世か......」 バシッ! 「あだーっ!?」

 

「この世に決まってるでしょうが勝手に殺すんじゃないよ!」

 

「戦兎!?」

 

「騒ぐ元気があって何よりだ。」

 

バインダーを持った戦兎の姿を見た万丈はすぐさまベッドから上体を起こし、周囲を見回す。

 

「ここは聖フレイヤ学園。崩壊エネルギーやられたお前はここに運ばれたんだよ。」

 

「聖フライヤー学園!?何で学校に運ばれてんだ!?」

 

「聖フレイヤだバカ。ここは崩壊災害に対抗する『戦乙女(ヴァルキリー)』を育成する学校なんだよ。」

「そして万丈、うれしいニュースだ。この天っ才物理学者の桐生戦兎はなんと......」

「この学園で教師として働くことになりましたー!」

 

「えっ......」

 

 

 

 

 

「はああああああああ!?」

 

朝の医務室は、戦兎の発言に困惑する万丈の叫びが響き渡った。




読んでいただきありがとうございました。
天才物理学者、聖フレイヤに就職です。

テレサのエミュに滅茶苦茶苦労しました。もしかしたら違和感があるかもしれません。

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