カードゲームみたいなやつ   作:SIS

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ダン少年、死す!


えんでぃんぐ

 不思議な出会いと別れから一週間。

 

 私は、元の生活に無事戻る事が出来た。

 

 今日も、茉莉さんのメイドドレスに袖を通して喫茶店の給仕だ。

 

 職業論理規定的には、あんまり未成年の私が働くのは良くない事なのだけど、どういう訳か私が出ると売り上げに大きな影響が出るらしい。

 

 役所に目を付けられない程度に、今日も店長の頼みでお給仕だ。

 

 おいしくなーれ、おいしくなーれ、もともと美味しいコーヒーがもっと美味しく! てな具合で、愛想を振りまいて給仕する。

 

 次のメニューを受け取りテーブルに運ぶ途中で、常連の顔なじみの会話が聞こえてきた。

 

「それで、ダンちゃん。トウマちゃんと、何があったの?」

 

「だから、何もなかったって」

 

「嘘だ。帰ってきてから明らかに変だもん。何かあったに決まってるもん」

 

 おや、これは、ダン少年とハナちゃんか。今日も仲が良い事で……しかし、何やら言い合っているようだな。

 

 ちょうどメニューもあちらのテーブルだ。顔を出していこう。

 

「今日も仲が良い事だな。注文ありがとうございます」

 

「あ、ども、店員さん」

 

「ありがとうー」

 

 ご注文のパンケーキとコーヒーをテーブルに並べる。

 

 素直にそれを受け取っていたダン少年が、「ん?」といった顔で首を傾げた。

 

「あれ、店員さ……ん……??」

 

「??」

 

 動きが固まるダン少年。その視線は、私の顔と、名札の間を激しく往復していた。

 

 ああ、そういえば。

 

 まだ言ってなかったな。

 

「そういえば自己紹介をしてなかったな。はい、私、逆巻トウマです。今後とも当店をごひいきによろしくお願いしますね?」

 

 エプロンドレスの裾をつまんで、優雅に一礼。鏡の前で死ぬほど練習したカーテシーというやつだ。

 

 ハナちゃんがおおー、とぱちぱち拍手をしてくれる。ふふん、どうだ。

 

「トウマちゃん可愛い! でもそれ、言っていいの? ダンちゃんにバレたくないんじゃなかった?」

 

「その……この間の件で、なし崩しにバレてな。だったらもう、隠し事しないほうがいいかな、と思って……」

 

「あっ、そっかあ。ダンちゃんが変だったの、それが理由だったのね」

 

 ハナちゃんと二人、そんなやり取りをする。というかやっぱハナちゃんは店員モードの私の正体を特定してたか、素振りからほぼ確定だったが。

 

 と、ぽやぽや世間話をしている間、ずっとかたまっていたダン少年が、ようやく動き始めた。

 

 彼はさび付いたブリキ人形のようなぎこちない動きでぎぎぎぎ、と私とハナちゃんを見ると、ぷるぷると震え始める彼。

 

「う……あ……」

 

「?」

 

「??」

 

 

 

「う……わあああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

 

 

 そしてそのまま、大絶叫を上げながらお店を飛び出していくダン少年。

 

 ちょ、まっ。

 

「お、おい、ダン少年!?」

 

「ダンちゃん!?」

 

「あああああ」

 

 ドアを跳ね飛ばすような勢いで押し開けて、外に飛び出していくダン少年。からんころん、とドアチャイムが激しく鳴り響いた。

 

 あっけにとられる私とハナちゃん。

 

 何がどうしてどうなった?

 

「ちょ、トウマちゃん、何があったの?」

 

「あ、マスター。実は、かくかくしかじか」

 

「……はあ……そういう事……」

 

 手短に事情を説明すると、マスターは何やら納得した様子。彼は軽く頷くと、携帯を取り出してどこかにかけ始めた。

 

「あのままだと危ないから、ちょっとおうちの人に迎えに行ってもらうよ。多分最短コースをつっぱしってるだろうから……」

 

「ごめんなさい、ダンちゃんがご迷惑おかけします」

 

「はは、いいよ。いつか必ずこの日はくると思ってたから」

 

 何やら意味深にこちらを見つめるマスター。私は意味が分からず、こてんと首を傾げた。

 

 

 

 

 

 その日の晩。

 

 何やらダン少年は高熱を出して寝込んでしまったらしい。

 

 もしかして、この間の遭難が体に堪えたのだろうか。心配である。

 

「ちょっとお見舞いに行ってこようかな……」

 

「……やめてあげなさい。悪化するから」

 

「え、なんで?」

 

 

 

 

 

 季節記念イベント『彼に性別バレしたら』 END





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