カードゲームみたいなやつ   作:SIS

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厳冬特別編・彼に性別バレしたら その4

 

 

 突如始まった雪女とのデュエル。今更何をいってもしょうがないが、なんでもありだなこの世界。

 

「それでは私からターンを貰うわ!」

 

 しゅっ、と五枚のカードを引いて手札を確認する雪女。その目が、カードを確認してにんまりと笑う。

 

 妖怪と戦うのは初めてだ。果たしてどんな手で攻めてくるのか……。

 

「……ふふ。私はこのターンを終了。どうぞ、貴方の番よ」

 

「何?」

 

 そして何もせずにターンを終える雪女。

 

 私はひくっと眉を顰めた。この展開は知っている。いわゆる、ドローゴーという奴か。

 

 つまりパーミッション型。うへえ、めんどくさいデッキだ。苦手なんだよなこういうの。

 

 一方、そんな相手と戦った経験がないのかダン少年は呑気なものだ。すっかり目を覚まして私に檄を飛ばしてくる。

 

「なんだ、手札事故か! たいしたことねーじゃん、やっちまえトウマ!」

 

「……そう簡単な相手だといいんだがな。私のターン、ドロー」

 

 カードを引いて……ううん。どうしようかな。

 

 私のデッキは相手のカードを参照して適応する対応型デッキだ。相手の場に何もないのでは対応も何もない。

 

 とりあえず、これで様子見してみるか。

 

「私は手札から、“GI リサイクル・スナッチャー”を召喚」

 

 光と共に私の場に現れるのは、クモヒトデみたいなウネウネした軟体生物。私の手札が0枚の時、トラッシュのマジックカード一枚を手札に戻す事で自己再生する効果を持っている。様子見にはもってこいのカードだ。

 

 とりあえずコイツで仕掛けてみるか。

 

「バトル。リサイクル・スナッチャーで相手プレイヤーに攻撃!」

 

 ウネウネ、としていた軟体動物がプロペラのように回転し、雪女に突撃していく。

 

 パーミッション相手には余計な事をせずにぶん殴るのが一番手っ取り早いが、この攻撃は果たして通るのか?

 

「うふふ……そうはいかないわ。私の場にモンスター、マジック、トリックが存在せず、相手プレイヤーがバトルを宣言した時、私は手札からこのカードを発動できる。“アイス・スタラクライト”!」

 

「まあ、そう来るよな……効果は?」

 

「このカードの効果によって、フィールドのモンスターを互いに同数になるように選び、それ以外のモンスターを“氷結状態”にするわ。私の場にモンスターはゼロ、だから貴方の場のモンスターを全部、氷漬けにしちゃうわね」

 

 雪女の言葉と共に、天井から突如白い氷柱のようなものが降りてくる。それが床に触れると、その周囲が一瞬で白く染まり……それに巻き込まれたスナッチャーも、氷の彫像と化す。

 

 氷結状態……なるほど。事実上の除去だが、厄介なのはアーティファクト扱いで場に残る為、トラッシュに行かない事だ。これじゃあ自己再生効果も発動できない。

 

「ち……っ。私はカードを二枚伏せてターン終了だ」

 

「ふふ、それじゃあ私のターン、ドロー。……私は手札から、“氷雪の猫娘”を召喚!」

 

 雪女の場に現れるのは、真っ白な着物の猫娘。にゃあん、と鳴いたモンスターが、手をくいくい、と招き猫のポーズをとる。

 

 ドローゴーじゃない? パーミッションかと思ったが、違うのか?

 

「バトル! 氷雪の猫娘で相手プレイヤーにダイレクトアタック!」

 

「……そちらのダイレクトアタック宣言に対し、トリックカード“卵塊爆弾”を発動する。私の場の“GI”アイコンを持つカード一枚と、相手の場のカード一枚を指名する。その後そのカードを破壊する」

 

 氷の彫像と化していたスナッチャーが突如爆発。私の目の前まで迫っていた猫娘はその爆発に巻き込まれて木っ端みじんに砕け散る。ぱらぱら、と氷の塊が足元に散った。

 

「あら、残念」

 

 とてもそうは見えない口調で、雪女が手の中でカードを弄ぶ。って、そのヒラヒラさせているカードは……。

 

「“氷雪の猫娘”の効果よ。相手のカードの効果対象として指名された時、このカードを手札に戻す事が出来るわ。まあもっとも、ターン終了時にはどっちにしろ手札に戻るのだけどね」

 

「セルフバウンスするモンスター? そんなの、どういう意味があるんだ?」

 

「……ダン少年、覚えておくといい。どんな不可解な効果でも、採用されている以上必ず狙いがある。考えすぎるのもよくないが、気にしないのもよくない」

 

 なるほど、相手のデッキの方向性が見えてきたぞ。

 

 場を空にしておくことで、相手ターンに手札から発動できるマジック・トリックカードと、それを邪魔しないようにセルフバウンス効果を持ったカードを採用しているのか。

 

 一見守りが薄そうに見えるが、だからこそ、踏み込んできた相手を罠にかける準備は万端なはず。事実、私はダイレクトアタックこそ防いだが、二枚のカードを失ったのに対し相手はハンドアドバンテージは一枚も失っていない。

 

 さて、どうするか……。

 

「このまま私はターンエンド、貴方のターンよお嬢さん」

 

「私のターン、ドロー!」

 

 相手の場は相変わらず空っぽだ。様子見をしていても埒が明かない……いつも通りにやるしかないか。

 

「私は手札から“GI スターマイン”を召喚。……相手の場にモンスターが存在しない為、カウンターを上昇させる効果は使えない」

 

「あらまあ、それは勿体ないわね」

 

「よくもまあいけしゃあしゃあと……!」

 

 これだからドローゴーないしそれに類するタイプのデッキは苦手なんだ。とはいえGIデッキは前の悪魔デッキと違ってビートダウンよりだ。効果が使えなくとも展開して殴る事は出来る。

 

「私はさらに、自分の場にGIアイコンを持つモンスターが居る事で、手札からオブシディアン・イェーガーを特殊召喚する。特殊召喚時、オブシディアン・イェーガーは場のモンスター一体を破壊する事が出来るが、対象が存在しないためこの効果は不発となる」

 

「ちょっともったいないけど……一気にモンスターが二体だ! やっちまえトウマ!」

 

「……バトル! スター・マインで相手プレイヤーにダイレクトアタック!」

 

 白いヒトデが高速回転しながら雪女に向かっていく。

 

 だがどうにも嫌な予感がするというか、完全に罠にしか思えない。前世で昔カードゲームをやってた時に、同じシチュエーションでえらい目に遭った記憶がびんびん来る。

 

 べちーん、とスターマインが雪女に一撃を加える。そして……。

 

「ふふ。私の場にカードが一枚もない状態でダイレクトアタックを受けた時、私は手札からこのトリックカードを発動する事が出来るわ。“妖精郷の氷鏡”!」

 

 スターマインの一撃を受けた雪女の姿がゆらりと霞む。その姿は見ている前で白く変じ、まるで鏡写しのようにもう一体のスターマインの姿に変わる。

 

 いや、それは実際に鏡に映された鏡像だった。一枚の氷の鏡……その中から、写り込んだスターマインの偽物が、実体を伴って鏡の外に這い出して来る。

 

 佇むスターマインの偽物に加え、氷の鏡も独立した一体のモンスターらしい。いつの間にか立ち位置を変えた雪女が、鏡にしなだれかかるようにして身を預けた。

 

「うふふ、どうかしら。綺麗な鏡でしょう? 妖精郷の氷鏡は、ミラートークンを作り出し、その鏡に映った相手モンスターと同じステータスを持つコピートークンを生み出す事が出来るの。どうかしら、本物より、こっちの鏡に映ったモンスターの方が可愛いでしょう?」

 

「ふん。なんだ、鏡よ鏡、世界で一番強いのは誰? とでもやるつもりだったか? 生憎、その手のカードへの対策はできている……! イェーガーでコピートークンに攻撃!」

 

 しゅいん、と疾走したイェーガーの爪が、鏡像のスターマインをバラバラに切り裂く。忽ち消滅するトークンに、雪女はがっかりしたような顔をした。

 

「あらん、いけず」

 

「生憎だが、私の業界ではダイレクトアタックする時はステータスの低い奴から殴れ、という血の掟があってな。その手にはひっかからない」

 

「いや聞いた事ないんだけどそんな掟……」

 

 訝しむダン少年。まあ君は知らなくていいんだ、君は。

 

 とはいえ、氷鏡を破壊するまでは手が届かなかったか。相手のデッキの各種カードの性質を考えると、半端に氷の鏡だけ生き残った事がカードの発動条件の邪魔になるかもしれないが……。

 

 相手に何かしらのコストになりうるモンスターを残してしまった事が、果たして吉と出るか凶と出るか。

 

「まあいい、私はこれでターン終了だ」

 

「ふふ……私のターン、ドロー」

 

 雪女がカードを引き、確認したその唇が微かに笑う。

 

 どうやらキーカードを引き当てたらしい。私は警戒を深める。

 

「……私は手札から、マジックカード“大霊峰の黒き影”を発動! お互いの場から3体のモンスターを選び、そのモンスター達を捧げものとして“氷結状態”にする事で、デッキ・手札・トラッシュから“雪原ノ王”を特殊召喚する! なお、この捧げものには最低一体、私のモンスターが含まれなければいけないわ」

 

「来るか……!」

 

 屋内にもかかわらず、どこからか強い吹雪が吹き荒れる。たちまち視界が白く染まり、辛うじて残っていた暖気が氷点下へと消える。気が付けば、別荘の姿は幻のように消えて、荒れ果て崩壊した廃墟のような部屋の残骸の中に私達は立っていた。周囲は相変わらずの猛吹雪であり、朽ちた家屋が白い雪の下に埋まっていた。

 

 こいつは……私達が身を寄せていた別荘は幻!? いやまあ昔話ではよくある事だけど……っ。

 

 思わぬ寒さに、ダン少年が思わず声を上げて布団をひっかぶる。ブルブル震える彼は今にも凍えてしまいそうだ。

 

「さ、寒い……!」

 

『な、なんて冷気だ……! 氷点下どころの話じゃないぞ……!?』

 

「ち……っ!」

 

 まずい、長期戦になるとダン少年が持たない! 何やってるんだ精霊ども、気合を入れて彼を守れ!

 

「ふふふ、おいでなさいませ、雪原ノ王! 今宵の贄は、一味違いますよ!!」

 

 吹雪く夜闇の向こうから、巨大な何かが近づいてくる。

 

 ズシン、ズシンと地響きを立てて姿を現したのは、全身を真っ白に雪で覆われ、太く長い尻尾を揺らす巨大な怪獣のような何かだった。てっきり鬼か何かが出てくるのかと思ったが。

 

「ち……っ」

 

『グラアアア……ッ』

 

 私達を見下ろす巨大な怪物が低く唸る。

 

 こちらの場のモンスターは皆氷漬けにされてしまった。相手の場にはエースと思われる超大型モンスター。

 

 さて。

 

 どう巻き返したもんかね?

 

 私は手札に煌めく金枠の上級カードを確かめて、小さく口元を吊り上げた。

 

 

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