森羅が帰ってきた
「輪廻は天照の中に人が…アドラバースを持つ人間が入っている事を知っていたのか」
「知っていたよ、一柱目が天照だってことも」
やっぱりと言いたげに見つめて来る
「俺の祖先は何に関わっていたか知ってるか」
「…被害者であり、勇敢な行動をしたとしか言えない」
困った世界は救世主に期待しすぎな気がする
「…言えたらいいのにな」
世界は残酷だ
試練を与え、己が朽ち果てようとかまわない。もしかしたら己の未来が分かるからこその余裕なのか
「輪廻が思い詰める必要はない」
と頭を撫でられる
「それと、喋る動物がいました」
「喋る動物!?」
1番食いついたのはヴァルカンだった、動物が好きだから当たり前なのだろうが
「輪廻」
喋る動物、その単語でもしかして打ち合わせでもしていたの?と言いたくなるほど皆同じタイミングで輪廻を見た
「森羅動物は喋らないぞ」
何か知らないか?と森羅が言い切る前に困ったような顔で輪廻が言い放った
ーー
日が落ち始めた頃ネザーに潜る、表向きはリヒトの手伝いと言っているため姿がなくっても怪しまれる必要はない
「行くの?」
「心配か?最強さん誘って行くから安心しろよ」
文句を言ったせいか前とは違う格好をしている
「ジョーカーがアタシを心配するようにアタシも心配しているんだと思う」
「何だよそれ」
無線を無言で投げてくる
それを反射的にかキャッチした、本当に反射的にだったため、握りつぶしてないか確認する
「何かあったらすぐに連絡しろよ、すぐ行く」
無言のままニヤニヤと煙草を吸っている足を軽く蹴る
アドラリンクをした日から森羅同様、感情が昂れば多少共有されるようになっている、それのおかげかジョーカーが話したがらない過去も少し知ってしまっている、本人にはそのことを言ってはいないが
「人に無茶するなって言っておいて無茶すんなよ、したらアタシも真似するからな」
「言うようになったじゃねぇか」
軽く頭に手を置かれる
「死ぬ気なんてない、最強さんに振られたらすぐに連絡する、危なくなっても連絡する。それに最初っから帰りは呼ぶつもりだ」
その言葉聞けて満足した
満足してふん!と胸を張る
いなくなって欲しくない人に第八もジョーカーやリヒトだって入っている
だからこそ守る、守りたい
伝道者の破壊と同じく人類の保護も使命の内に入っている、だからそれを立て前にジョーカーを守ることにした
ーー
曰く聖陽教の地下にはカビ臭いやつがいっーぱいとの事、そしてそのカビ臭い奴らのお仲間としてバーンズ大隊長がいる、帰りはボロボロになっている可能性が高いから派手に迎えにきてもらうと言われた
聖陽教本部の近くのネザーで待機する
ざっ、と言うノイズ音と共に声が聞こえた
『悪いなお前の出る幕無くなった』
『あ?誰と会話してやがる』
新門大隊長連れて行けたんだ、と思いながら声を出すか悩む、なんだかんだ勘がいいことも考えて
『不満がるなよ、聖典は手に入れた。バーンズが協力的でな、お前が本部をぶっ飛ばす必要は無くなった』
「己…」
だが、聖陽教本部を爆弾でぶっ飛ばしていいと言われていた、それをかなり楽しみにしていた
一応伝道者が作った宗教であるが、破壊すべき対象は伝道者のみ、邪魔ならば破壊すればいい程度だった、だが今邪魔だったため、破壊するのを楽しみにしていた
無線の向こうから笑い声が聞こえる
「己…己…己己己己!なんでー!楽しみに待ってたのにーあああああーーー!!!!!」
『おい、バーンズお前のせいでウチの切り札がおかしくなったろうが』
『私のせいなのか?』
「……もう平気ならどっか爆発させてくる」
『おう』
怪我の治療のためと言われ、なかなか出動に同行すらさせてもらえなかった、それゆえに破壊衝動は溜まっていっていた
ジョーカーが目星をつけていた伝道者のアジトに向かう
無線の向こうからはジョーカーではない誰かが止めに入る声が聞こえたが知らない、邪魔したのはそっちだと言い訳をつける
ーー
一仕事終え、秘密基地に戻ればジョーカーがいた、古臭い本を読んでいた
「なぁ、ラフラス一世に成り代わっていた奴は何なんだ?」
「今の人間で言う悪魔、まだ生きている前殺し損ねた」
ため息をつきながらソファに座る
「この世界はどうなっている?人間では無い物が悪魔が関わっていたとしたら」
「終わらないよ、終わらせない。それにねジョーカーこの世界に人間じゃ無い物が関わっていると言ったら、目の前にいるアタシも人間では無いよ、気づいていないだけで案外人外はいるもんだよ」
「違いねぇな」
煙草を燃やし尽くし、本を机の上に置き
「もう寝る」
「おやすみー」
奥の扉に向かっていくジョーカーを眺める
ーー
リヒトに同行して1年ぶりに灰島の敷地内に入る
入ると言っても社内の中には入らず外で待っていた
「いやー命狙われちゃったな」
「まじか」
やっと出てきたリヒトの第一声に、まぁ何となくは察していた
リヒトの書いたレポートは読んだ
「火花大隊長にも色々言われちゃったし」
「あの人か」
リヒトが中華半島に行っている際に何度か突撃された、そして情報を洗いざらい吐かされそうになったし、血液やら何やらを取られそうになった、全て全力で阻止したが、そのせいか少し苦手意識がある
「見つかる前にさっさと帰ろうぜ」
手を引っ張り歩き出す、手を無理やり引っ張っているせいでリヒトは引きずられているが
「灰島流石仕事が早いな」
「どうしたの?」
「つけられるぞ」
「え!」
ずっと見て来る視線が2つ
「撒くか?」
「結局は第八に戻るんだけども…監視だよね」
考えた末に相変わらずの笑みでこちらを向く
「少し刺激しちゃおうか」
路地裏に向かって行くリヒトの背を追いかける
路地裏に入った瞬間リヒトを持ち壁を蹴り、建物の屋根に登る
「どこ行った!?」
などと下から声が聞こえてくる
「相変わらずの身体能力だね」
「まーな」
ピースサインをして言い放つ
探すのを諦めたのか来た道を戻って行く二人組をみて、リヒトを持ち路地裏に降りる
「戻ろうか」
リヒトの背を追いかける
「やっぱり輪廻を警戒しているのか、僕と森羅君だけで灰島に行くように言われちゃったよ」
リヒトが狙われる事は何気に初めてではない、前に一度同僚の逆恨みにあい襲われかけた事がある、その時に見事までに返り討ちにした事がある、それに加え発火能力なしの戦闘データがあるせいだろう
灰島にも輪廻の強さが知られている、それが為に警戒され離されたのだろう
「死なせるつもりはないけど、気をつけろよ」
「任せてよね」
「ジョーカーにも言ったけど、人に無茶するなって怒っといてお前も無茶すんなよ、真似するからな」
「僕が無茶なんてすると思う?」
そういい服越しでもわかる細い腕を見せつけられる
「…もやしだから」
「なにそれ」
もやしだからどっかで頑張って無茶するだろ