伝道者を破壊せよ!   作:欠けたチーズ

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大切だった人達

 

本当の両親は何処にいるかは分からない

嫌、元々存在すらないのかもしれない

 

アタシは物心ついた時には施設にいた

そして今の育ての親と出会った

 

「お母さん、手伝うよ」

 

「あら、いいの?ありがとう輪廻」

 

そう言って優しく柔らかく微笑んで名前を呼ばれるのが好きだった

お母さんの料理が好きだった、美味しくって冷めていても何だが暖かい料理が

 

「輪廻聴いたぞ、学校での成績上がっているらしいな」

 

そういい頭を撫でられるのが好きだった

何か良いことをすれば、何もなくとも微笑んで優しく暖かく撫でてくれるその手が好きだった

 

我が子のように愛してくれる2人が好きだった

 

血は繋がってなくっても、本当の親のように慕っていた

期待に応えたかった、だから一般追試でお嬢様学校に入学した

毎日、起きたら「おはよう」って言ってくれて朝ごはんを一緒に食べて、「行ってきます」って言えば帰ってきて、家に帰れば「おかえり」って聞こえてきて、嬉しかった楽しかった…多少のストレスを抱えることはあるけども

 

この星なんて見捨ててこの人達と生きるのも悪くない、そう思ってしまえるほどに、大切で幸せだった

 

だから

 

ーーー

 

焼ける

焼けている

焦げた時特有の嫌な匂いはしない、ならばここは夢か

夢を夢として認識することを確か明晰夢と言ったはず、なら今この状況は明晰夢、かあるいは

 

ふと後ろに何か気配を感じた、振り返ろうとしたが出来なかった重苦しい威圧感それが振り返る邪魔をする

 

「…」

 

真っ白な布で隠れているが手らしきものが横から伸びてくる

 

“ーーー”

 

聞き取れない言葉、耳を貸してはいけないと頭の中で警報が鳴る

 

逃げ出そうとしようにも体が動かない

視界が白い布で覆われる

 

ブザー音が頭の中に響き渡る

 

「あの子達を助けてあげて」

 

優しい声がブザー音に混ざり聞こえる

 

「っ!」

 

鉛のように動かなかった体が動いたと思えばさっきとは違う風景、無機質でコンクリートが剥き出しの壁が見えた

寝かされていたのか動いたのは上半身のみだった

飛び起きたせいか視界は点滅して呼吸が荒くなる、それらのせいでここが何処なのかを考える余裕がなくなる

必死に息を吸う、肺までなかなか届かないが必死に吸い続ける

 

「…っはは」

 

嫌に頭が痛む

嫌に頭が回る

気持ち悪い

 

ー使命をー

ー守りなさいー

ー破壊しなさいー

ー使命を果たしなさいー

ー使命をー

 

言葉は聞こえないなのに頭にはっきりと浮かぶ

 

「あがっ、うっ」

 

痛い

頭を割るような痛み

 

必死に頭を抑える

髪が崩れるのもお構いなしに頭を強く抑える

 

「あ、なんだ起きてたのかよ」

 

「うっぐ、ぁ」

 

扉を開けて入って来た人物に気付かぬまま頭を抑え痛みに耐え抜く

 

「おい、輪廻?」

 

様子がおかしいことにすぐに気づいたのか、近づき声をかける

 

「くっそ、が」

 

ー壊しなさい。壊しなさい。ーー

 

白いシーツに赤いシミができていく、赤いシミの元を辿れば輪廻の鼻から流れる血だった

 

頭に浮かぶ言葉、一つ一つは簡単な言葉だがそれら全てが重い情報量を持っている、重く価値のある言葉

それらが積み重なり、負担になっていた

 

「おい、しっかりしろ」

 

肩をゆされるが、そんなことも気づいていないかのように頭を抑えている

 

「っ、」

 

糸が切れたように痛みがなくなった

さっきまでの言葉もなくなり、重い情報量も消えた

 

「…ぁ?」

 

目があった、お互いの目が、一つしかない紫色の目は心配そうに見つめていた、青緑色の目は心底不思議そうにしてその目を見つめ返していた

 

「いつからいた?」

 

「お前マジか…」

 

ため息をつき、焦りで気づかなかったが短くなっていた煙草を手に取り燃やし尽くし新しいタバコを出し火をつける、手際のいい作業

 

「さっきだよ」

 

「へー」

 

聞いた割に興味なさげな声に嫌な顔せず見つめてくる

 

「お前の言っていた災害が起きたから、心配して地上まで見に行ったら気を失ったから運んだんだよ」

 

「嗚呼通りでアレと通じたのか」

 

災害が起きたなら納得だわ

1人納得していれば不満げな顔で見られる

 

「お前本当はなんなんだ?」

 

鼻血が出ていたことに気づき服の裾で拭く

 

「免疫機能?」

 

「何言ってんだ」

 

頭がイカれたのかと、リヒトを呼びに行こうとしていたため一旦呼び止める

 

「この星の癌を取り除くために生み出された、免疫機能」

 

一つしかない目がどんどん見開かれていく

 

「お前本当に」

 

「頭がイカれたと思うか?残念これが真実だ」

 

押し黙り、少し考えてから部屋を出ていった

 

頭がおかしいと思われたな

 

そう考えながら、ため息をつき立ち上がる

 

ふらつく足取りのせいかいつもの倍の時間を使い扉の前に立つ

 

「あ?」

 

「ん?」

 

扉を開けようと手を伸ばしたが勝手に扉が開いた

 

扉の隙間から見えたのは水とタオルを持って来ていたジョーカーだった

 

「寝てろよ」

 

「なんで?」

 

タオルを腕にかけ開いた片手で体を押され戻される

 

「なんだよ」

 

「お前が何であろうと俺達にはお前が必要だ」

 

「…?」

 

首を傾げながら寝台に座らさられ、鼻血を拭かれる

 

「変なやつだな」

 

「お前に言われたくない、っうか、お前なんでそれ黙ってたんだよ」

 

水の入ったコップを差し出される、飲めということだろうか

 

「…女には嘘が付き物だから?」

 

「そんなの何処で覚えるんだよ。お前お嬢様学校だろうが」

 

「クラスメイト」

 

「…」

 

まさかな所からの入れ知恵だからか、黙りこくり考え込んでいる

 

ーー

 

お母さんとお父さんが死んだ

 

混乱していて記憶から抜けていた

時間が立ち落ち着きを取り戻したのと同時に思い出した

 

燃える家の中、お父さんとお母さんはアタシを庇って瓦礫に押し潰された

 

庇わなくっても、何とかできたのに

 

「…ぁあ」

 

あんなこと思ったから、あんなこと使命を投げ出す事思ったから

 

世界に殺されたんだ

 

絶望は自然としなかった、きっと絶望なんて出来ないように作られているのだろう

 

ただ申し訳ない気持ちでいっぱいだった

 

もう2度とあの人達のことをお父さんお母さんと呼ばない

もう2度と、一緒にご飯を食べれない

もう2度と、頭を撫でてはもらえない

 

もう2度と会えない

 

「…壊滅させなきゃ絶対に」

 

災害の元を辿れば伝道者だならば壊さなければ、壊し使命を果たし

この星の操り人形から脱却せねばならない

 

ーー

 

「輪廻ってこの星の終わりたくない、対抗力から生まれたわけなんでしょ?」

 

しばらく経ち、世間も災害のあれこれから落ち着いた時、リヒトからそんなことを言われる

 

「ああ?」

 

「でも書類上では生物的に人間と同じなんだよね」

 

「おん?」

 

何が言いたいのかよく分からず首を傾げる

 

「輪廻って本当は何者なんだろうね」

 

「人間もどき」

 

元気よく答える

 

「感情も都合のいいように改造されているし、身体能力も普通じゃない、ならそれしかないだろ?」

 

そう言い切った姿に2人の同情の視線が突き刺さる

 

「何だよ…」

 

この日から2人が変に優しくなった

 

きもい

 

ーー

 

世界が作った故にかアタシの能力は変だった

 

相手の炎を喰らえば、喰らった炎を経由して相手の熱を操り数秒間だけ動きを止めさせる、それがアドラリンク体験者ならばそれを再現させる

 

おかしいのはここからだ

何故かそれらは炎でなくとも血液でもできた

 

「でも無能者は無理だった」

 

そう言った時のリヒトの顔はすごかった。

 

まぁそういうのも含めて、バレたら厄介なので能力を持っていることは、死んだ両親が2人の共犯者しか知らない

 

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