「胡桃~? いる?」
ふっふっふ、旅人が今日往生堂を訪れるのは予測済み!
往生堂の客卿、鍾離さんから手に入れた情報で旅人を驚かせちゃおう!
「だーれだ!」
私はこういう古典的な驚かせ方が好きなんだよね~。
フォンテーヌではからくり人形を使ったものもあるっていうけど、往生堂の堂主がからくりに頼るのはちょっと味気ないな~。
「って、あれ? パイモンは?」
鍾離さん、もしかして私に間違った情報を渡した?
おっかしいな~、今日はパイモンと3人でご飯を食べに行くって聞いたんだけど。
「胡桃? バレバレだよそんなの。もっと大胆にやってもらわないと」
あっ、やっぱりバレてたか。
「も~旅人、もっと『わっ!』って驚いてもらわないと! せっかくこの往生堂の堂主、胡桃が自ら迎えに来たっていうのにさ~」
そこら辺にいるヒルチャールでも私がつっつけば驚くっていうのに。
「それでパイモンは訳あって留守番。そんなことより!」
えっ。
旅人に肩を掴まれてる……?
「ど、どうしたの? そんな大きい声出しちゃって……」
旅人、もしかして香菱の創作料理でも食べた?
「胡桃、デートしよう」
ほへっ?
旅人と、デート?
「わ、私とデートしようって言うの? も、もっちろん、構わないよ! それでどこに行くの? 軽策荘? それとも沈玉の谷?」
い、いつもの旅人じゃない!
私のペースが乱されちゃう!
「フォンテーヌに行こう」
……。
どうしよう、白先生を呼ぶべきかな。
ううん、妖魔の類なら私でもできるかも。
「……」
でも、旅人からは邪悪な気配を感じない……。
「胡桃?」
「え? あ、ああ! フォンテーヌね! いいとも! この機会に往生堂出張サービスを行うのもありかな! なんちゃって……」
『がしっ』
「旅人?」
なにこれ、旅人にがっちり手を握られてるんだけど。
え、私どうなっちゃうの?
「よし! 決まりだね!」
パイモン!
助けて!
鍾離さんはどこ!?
「た、旅人? 急がなくても私がいれば夜に出かけても怖くな……ひ、引っ張らないで!」
どうしよう旅人が積極的……じゃなくて!
私、仕事の連絡すらしてないんだけど!
「あっ、ごめん……よし、これならいいかな?」
今度は恋人繋ぎ!
ああ、もう、仕事は渡し守に頼んでやってもらうしか……。
「旅人? ちなみに戻ってくるのいつ……?」
もう、切り替えて旅人とのデートを楽しもう……。
……顔、あっついなあ!
え、もしかして病気なのは私?
「うーん、決めてないけど、いつがいい?」
まあ、往生堂の仕事も繫忙期じゃないから私がいなくてもなんとかなるかな。
そしたら、ええと、いつ戻ろう?
「あなたの気が済むまででいいよ、もう! はじめは私が驚かせるつもりだったのに!」
ま、これでいっか!
ららら~お日様が出たら日光浴~。
「それはごめん……? って、胡桃、顔真っ赤だよ?」
誰のせいだよ!
「ん~! なんでもない!」
最初はどうなるかと思ったけど。
こんな旅人も悪くないかも!