「ふわあ……ねむ……」
ワタシ、シトラリ。
テイワット大陸に存在する国のひとつ、ナタという国においてそこで暮らす一部族である謎煙の主に籍を置いているの。
その部族の中では『名誉ある称号』を持っているんだけど、そんなの持ってたってちっとも面白くないわ。
「はあ……いま、なんじ……?」
昨日も『名誉ある称号』のせいで深夜まで大シャーマンとしてのツトメを果たさなきゃいけなかったし。
「ナニよ……ワタシがシャーマンだからって……セキムとか、しらないわよそんなの……ひっく」
あれ?
昨日飲んだお酒、どこにやったっけ……。
「シトラリ! おはよう!」
ん?
こんな時間に誰よ……。
「コラ! ワタシは今疲れてるの! あとにしてちょうだい……って、た、旅人!? どうしてキミがここに……」
ああ!
またワタシのダラしない姿が……あれ、家の鍵閉めたはずなんだけど!
「どうしてって、前に用事がある時はそのまま家に入っていいってシトラリから合鍵貰ったんだけど……」
ワタシのバカ!
ああもう!
よりにもよってこんなときに旅人が来るなんて!
「ちょーっとお外で待っててもらえるかしら? い、いま片付けるから!」
旅人の背中を押して、扉を閉めて、これでよし!
「シトラリ? 俺は気にしないけど」
「なんでまた入ってくるのよ! ワタシだってメンツってものがあるの!」
一度じゃ飽き足らず二度までシュウタイを晒してたまるもんですか!
「ん~、俺はダラしないシトラリでも受け入れるよ。だって、今日そんなシトラリとデートするために来たんだし」
で、でーと?
ワ、ワタシの聞き間違いよね!
きっと若者の流行り言葉なんだわ!
あ、アレね!
たしか、スメールにあるデーツナンの略語のことね!
「旅人? ワタシをからかうのもいいかげんにしな……」
「ほら、これで信じてくれる?」
あ、あったかい……旅人の体温がワタシに伝わって……ん?
「た、たたたた……」
旅人にハグされてる!
「シトラリ、壊れちゃった?」
これこそ超展開ってヤツ!?
それとも、もしかして……。
「ふん! 流石はワタシね。疲れていてもこんなに再現度の高いユメを見れるなんて」
きっとそうだわ、旅人がこんなことしてくれるなんてアリエナイもの。
ええ、そうよ。
だってホントウの旅人は、周りにムアラニとかシロネンとかかわいいコがたくさんいるんだもん。
ワタシみたいなオバサンなんて相手してくれないに決まってるわ。
「シトラリ、夢だと思ってるんだ……」
でも、夢ならワタシの好きなように旅人をイジってもいいよね。
「旅人? キミはワタシの家に勝手に入り込んでワルいコね。ほら、ツンツンしてあげる。どう? 困ったかしら?」
思ったよりも旅人のほっぺ、ムニムニしてるのね。
クセになっちゃうわ、これ。
「シトラリ? ねえ、起きてって」
「なあに? まだ文句があるワケ?」
むう、夢の中でもワタシの思い通りにならないのかしら?
「どうしたらシトラリに『これは夢じゃない』って気づいてもらえるんだろう……今日パイモンがいない理由を瘦せるための修行に出かけてるから、とかにしたら夢じゃないって思うかな?」
旅人がブツブツ言ってる……。
ワタシのワルグチかしら?
「たーびーびーとー、ワタシにカクシゴトはメッ! よ? わかったかしら?」
その気になればキミのココロだって読めるんだからね!
「……えいっ」
旅人の顔近っ!
ていうか、おでこ当たってるし!
わわわっ、旅人の唇が……こ、これってもしかして?
キ、キスしちゃうの?
旅人と?
「……きゅう」
「シトラリ? シトラリ!」
ああ、ワタシの家の天井が見える……。
もうゲンジツでもユメでもどちらでもいいわ……。
「オロルン……あとは頼んだわよ……」
ワタシ、シトラリ。
今日は積極的な旅人が見られていい日だったわ……。