鍼灸師辻友紀乃   作:クライングフリーマン

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絹田は、脊柱管狭窄症の患者。ベッドより布団がいいと言うので、布団の上で治療する。
治療後。『起き上がりヘルパー』を置いてやると、うんこらしょと立ち上がって、着替えながら、相談を始めた。



15.外反母趾

======== この物語はあくまでもフィクションです =========

============== 主な登場人物 ================

辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。

絹田小五郎・・・辻鍼灸治療院の常連。

幸田・・・友紀乃の高校の後輩。

十津川院長・・・十津川整形外科院長。

 

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私の名前は辻友紀乃。

辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。

旦那は「腹上死」した。嘘。

本当は、がんだった。

膵臓がん、って奴だ。

私は、鍼灸師で柔道整復師だ。

お馴染みさんは、これでも多い方だ。

今日は、「いちげんさん」の話。と言っても・・・。

 

絹田は、脊柱管狭窄症の患者。ベッドより布団がいいと言うので、布団の上で治療する。

治療後。『起き上がりヘルパー』を置いてやると、うんこらしょと立ち上がって、着替えながら、相談を始めた。

絹田は、知り合いの紹介で当院に通っているが、整形外科は、自宅から1キロ程度のクリニックで治療を受けている。

クリニックは、フィットネスを経営しており、隣のフィットネスも流行っている。

だが、コロニー以降、なかなか流行らなくなった。

皆、「自粛」で家を出ないからだ。

そこで、Boomを使った、オンラインフィットネスを始め、コロニーが収束した頃、アスレチックジムを止め、180度違うヘルシーフィットネスを始めた。

詰まり、筋肉作りやダイエットを止めたのだ。

アスレチックジムだと、自分の所の「患者」を利用者に出来ないからだ。

ダイエットの効果が無いから、とオーナーである院長は言っているが、要は患者を利用者にする方が、利益が高いからだ。

途中で止める利用者もいれば、ダイエットが上手く行かずに挫折する者もいる。

患者は、事情が許せば、永久に患者だ。

絹田は、ヘルシーになってから入所した。

だが、「体が悪い者」には、限界がある。跳んで撥ねてなんてとんでもない。

グループレッスンと称する、「婦人会の盆踊り」、いや、カルチャースクール的なフィットネスと、パーソナルフィットネスの「二刀流」で会員を集めた。

それで、「体が悪い者」にはリハビリマッサージを行い、体がほぐれたところで運動をさせ、「体があまり悪くない者」には、トレーニングを行うようにした。

絹田は、勿論「体が悪い者」であり、整形外科のリハビリが物足りないから、前者のコースは有り難かった。パーソナルは、基本的にリハビリでマッサージする理学療法士だ。

ここまでは良かった。

だが、毎朝Boomでレッスンするオンラインレッスンは、「体があまり悪くない者」用だった。

詰まり、絹田には出来ない運動も強要されることになる。

オンラインレッスンはパーソナルではなく、グループレッスンなのだ。

オンラインレッスンを辞めると言い出した時、担当理学療法士は、必死で思いとどまるように説得し始めた。

事の始まりは、毎日日替わりのトレーナーが「足指を鍛える」為に、足指でモノを持つ練習を始めたのだ。

だが、絹田には、到底出来そうに無かった。

自分でもインターネットで調べたそうだが、「外反母趾」では、筋力が衰え過ぎて、何とか通常の指の形に持って行かないと、掴むことは出来ない。

担当理学療法士はリーダーだが、考案者の理学療法士が譲らない。自分がバカにされたと思って激怒した。

以上を聞いて、一計を案じた私は、十津川先生に相談した。

十津川整形外科は、橋を挟んでお隣さんで、開業したのが同じ時期ということもあって、仲が良かった。

鍼灸や東洋医学を否定しているのは整形外科・外科の組合であって、医師全員ではない。十津川先生は、鍼灸にも私にも理解があった。

電話で事情を話すと、十津川整形外科に寄ってくれ、と言う。

私は、絹田を十津川先生に任せて、次の患者の治療に入った。

午後6時。

休憩を兼ねて夕食を食べていると、十津川先生から電話があった。

「心配していると思ってね。午後の患者はまだ待たせているが、先に電話を入れた。結論から言うと、絹田さんにはウチの整形外科に通って貰うことになった。院長には、『外反母趾』についての『セカンドオピニオン』を求められた、ということにして話をした。例のフィットネスの『物言い』理学療法士は、院長の甥でね。院長はいい人なんだが、融通が利かない。健康な人、つまり、外反母趾でない人には『予防』として役に立っても、外反母趾の人には、外反母趾の治療を受けてからでないと無理だと言っても聞かない。私の話にも院長の話にも乗ってこない。それで、絹田さんは、この辺に引っ越す予定があるから、という『テイ』で、カルテの引き継ぎをして貰うことにした。ウチの理学療法士は1人しかいないし、ウォーターベッドも1台しかないけどね。で、辻さんところと違う曜日になるが、ウチに通って貰うことにした。ウチは同意書出せないけど、こんな感じでいいかな?あ、オンラインレッスンは、勿論フィットネスの退所に伴って、参加しない。」

「ありがとうございます。」私は涙が出てきた。

電話を切ると、幸田が目の前にいた。

「良かったですやん、先輩。」

私は忘れていた。夜の予約に幸田がいた。思わず幸田を抱きしめた。

「あ。お前。今、ムラムラッときたか。」「気のせいです。」

そやろな。

―完―

 

 

 

 




それで、絹田さんは、この辺に引っ越す予定があるから、という『テイ』で、カルテの引き継ぎをして貰うことにした。
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