魔法少女のお助けヒーロー枠に転生したけど、敵組織が弱い   作:匿名仮面

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1 俺はちょっと意味深にやってるだけ

 魔法少女モノには、時折魔法少女を助けるイケメンが登場することがある。

 古くはバトル系魔法少女モノの開祖とも言える某セーラー戦士の仮面の人とか。

 女性向けの魔法少女モノだと、たまに見かける枠だよな。

 魔法少女という括りが、主に大人のオタク向けになった昨今はなかなか見ないけど。

 それでも、概念としては一発で伝わる枠だと思う。

 

 んで、俺はそんなお助けイケメン仮面に転生してしまったわけだ。

 いやすごいよ、それはもうすんごいイケメンなの。

 自分自身ですら自分に掘れてしまいそうな線細めのイケイケのメン。

 当然ながら声もいい。

 というか自分の口から有名男性声優の声が出てる気がする。

 たまに録音した自分の声を聞く機会があるんだけど、やばいね。

 こんなの聞いてたら世界中の女子が俺に惚れちまうよぉ。

 ……というと、割と本当に洒落にならなかったりするのだが、ともかく。

 

 そんなお助けイケメン仮面の俺だが、当然ながらある時お助けイケメン仮面になってしまった。

 その名もサルバヴェール。

 うーん、お耽美。

 んで、お助けイケメン仮面になってしまったからには、魔法少女を助けようと思うわけよ。

 

 ただ、こういうお助けイケメン仮面ってのは、結局のところ魔法少女の前座である。

 ミステリアスな雰囲気を出しつつ顔で魔法少女を魅了したり、意味深な助言を残して魔法少女を導いたりするのだ。

 最終的には魔法少女のピンチに現れ、魔法少女を助ける。

 そしてボスのかませになったり、魔法少女の背中を押したりして後を託す。

 これがお助けイケメン仮面の王道だろう。

 何せ、魔法少女モノの主人公は魔法少女なのだ。

 彼女たちの物語を彩りつつ、その花道を奪ってはいけない。

 

 そうはいっても、魔法少女になるのはたいていが十代半ばの少女だ。

 大学生の俺からしてみれば、その多くが年下である。

 年下の彼女たちが頑張っているのに、お助けイケメン仮面の俺が見ているだけってのはあまりに情けない。

 そこで俺は、露払いを兼ねて魔法少女の敵組織と戦うことにした。

 悪巧みをしている敵組織の前に突然現れて、意味深なことを言って去っていくのだ。

 当然、敵が雑魚をけしかけてくるので、それを撃退するのである。

 これは情報収集も兼ねていて、そもそも情報がなければ意味深な助言で魔法少女を導けないから一石二鳥だ。

 俺をお助けイケメン仮面にした魔法少女の元締めも「いいんじゃない?」みたいなことを言って許してくれたのだが。

 ここで一つ問題が発生した。

 それは――

 

 

 ♪

 

 

 俺が一人暮らしをしているアパートの一室に戻ると、すごい形相をしたエイルメリアが待っていた。

 きゃあ、不法侵入者。

 

「――ツクモ、今日もまたやらかしたみたいじゃない?」

 

 美しい桃色の髪の女性である。

 年の頃は十代半ばの少女に見えるが、子どもとは思えない落ち着きと神聖な雰囲気を持つ。

 来ている服は、非常に豪奢なドレスだ。

 そして背中には、妖精の羽。

 名をエイルメリア。

 この世界のいたいけな少女を魔法少女に仕立て上げる、ちょっと胡散臭い妖精の女王だ。

 

「やらかした、とは失敬な。俺はサルバヴェールとして、暗躍する敵組織の現場に乗り込んで意味深なことを言っただけだ」

「……本当に? 本当にそれだけ?」

「本当にそれだけだって。そもそも俺はあくまで魔法少女を導く前座なんだから、出しゃばっちゃダメだろ」

「前座、前座ねぇ」

 

 いや本当に、何やら路地裏でこそこそと悪巧みをしている連中がいたから、そこに割って入って高笑いをした後、「お前たちの悪事は必ず潰える」みたいなことを言っただけだ。

 如何にもお助けイケメン仮面っぽい役割で、俺としては気に入っている。

 なんというか、Cパートとかで突然敵の前に姿を表す感じで個人的にお助けイケメン仮面ポイントが高い。

 なのだが。

 エイルメリアは実に不満げだ。

 ということは、どうやら俺は()()やってしまったらしい。

 何をやらかしたかといえば――

 

 

「――その前座が、敵組織を壊滅させてどうするのよ」

 

 

 むすっとした表情で、俺を睨んでくるエイルメリア。

 いや、違うのだ。

 俺は本当に敵組織の幹部っぽいやつが路地裏で雑魚を相手に意味深なことを言っていたから、俺も意味深な事を言って割って入っただけなのだ。

 その後にちょっと雑魚と戦ったけど、敵組織の幹部っぽいやつは強気なことを言って帰っていったし。

 今回は問題ないと思っていたのだ。

 だというのに、またしても敵組織が壊滅したという。

 

「今回は、その敵組織の幹部っぽいやつが()()()()()()だったのよ!」

「なんで親玉があんな所で意味深に雑魚と会話してんだよ」

「その雑魚が、生まれてきたばかりの幹部なの! 今さっき、その親玉が私に泣きついてきたわ。もう二度と悪さはしないから、放って置いてくれって。……見ているこっちのほうがなんだか申し訳なくなるくらい、アンタのこと怖がってたわよ」

「そ、そんなにか……」

 

 俺の前では精一杯強がっていたけれど、アレは本気で強がっていただけだったんだな……

 いや確かに、雑魚をけしかけるところまではそれはもうこっちをバカにしてたのに。

 倒したらやけに素直に引き下がるな、とは思っていたんだが。

 

「今回の教訓は、敵組織の中には生まれてきたばかりの組織もある、ということね。アンタが声をかけるのは敵が暗躍を始めた初期。そのタイミングで敵組織が生まれたばかりだと、今回みたいなことになる……ということよ」

「お、おう。……しかしそれは気をつけようがあるのか? ああいう場に乱入したら雑魚敵をけしかけてくるものだし、それを倒しただけで壊滅されても俺が困るぞ」

「気をつけようがなくても、気をつけるのよー!」

 

 言いながら、ずんずんと近づいてきたエイルメリア。

 俺の顔に手を伸ばして、てしてしてしとそれをビンタしようとする。

 と言っても本気で叩こうとはしていないので、手は空を切っている。

 エアビンタだ。

 それにしても、昔はなにか企んでそうな邪悪系マスコットの雰囲気を漂わせていたのに。

 今ではすっかりちょっと草臥れた常識人系妖精女王だ。

 

「誰のせいよ、誰の……!」

「人の心を読まないでくれ」

「端正なイケメンのくせに、表情がわかり易すぎるのよアンタは! 話し方だって全然王子様っぽくないし! 第一!」

 

 やがて、エアビンタを終えたエイルメリアは、びしっと俺を指差す。

 地味に俺がお助けイケメン仮面みたいなお耽美な話し方ではなく、普通に話してることにも文句を言ってきやがった。

 いいだろ、そもそも高校に入ってお助けイケメン仮面になるまでは、顔と声が良すぎるだけの普通の一般人だったんだから。

 ともかく、鋭い視線で、俺を睨み一言。

 

 

「そもそもアンタは、前座って言うには強すぎるのよ!」

 

 

 まぁ、そう言われると否定できないところはあるけれど。

 俺はお助けイケメン仮面だ。

 魔法少女の身の安全は陰日向に守らないといけない。

 とするとこうやって、牽制を兼ねて敵組織の前に現れ、警告をするのは必要なことだ。

 それで時たま敵組織が壊滅することはあるけれど、それでもエイルメリアだって止めないじゃないか。

 だから、まぁ、なんだ。

 

「前座の俺に負ける敵組織にも問題があると思うので俺は悪くない」

「悪いわよ!」

 

 

 ♪

 

 

 ――(しるべ)ツクモ。

 魔法少女と悪の組織が戦う世界に、魔法少女を助けるお助けイケメン仮面として転生した男。

 しかしどういうわけか、お助けイケメン仮面の割に、ツクモは明らかに強すぎた。

 結果として多くの敵組織が思わぬ所で壊滅し、宙ぶらりんになった魔法少女が、魔法少女を生み出す妖精の国で社会問題となってしまう。

 

 これは、そんな妖精の国の状況に頭を悩ませる妖精女王。

 思わぬ形で敵がいなくなり、なんかやたらイケメンなお助け枠の存在を知らされる魔法少女。

 そしてそんな彼女達と敵組織を振り回す、お助けイケメン仮面サルバヴェールこと、導ツクモの物語だ。




タキシード仮面様みたいなイケメンに転生した男の話です。
よろしくお願いします。
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