魔法少女のお助けヒーロー枠に転生したけど、敵組織が弱い   作:匿名仮面

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2 お助けイケメン仮面とは

 どうして俺がお助けイケメン仮面になったのか、という話をするためにはまず、この世界の魔法少女がどういう存在か語る必要がある。

 この世界の魔法少女は、妖精の国と呼ばれる場所から適正のある少女に妖精が派遣されることで誕生する。

 魔法少女の役目は、プラスパワーを集めること。

 ドーピングアイテムではない。

 プラスパワーを集める方法は二つ。

 敵対する悪役を倒すか、魔法少女が精神的に成長するか、だ。

 

 で、そんな魔法少女と敵対する悪の組織がいる。

 これらは組織ごとに呼び名が異なるが、総称としては”モンスター”という呼び名が一般的だ。

 モンスターの目的はマイナスパワーを集めること。

 モンスターがマイナスパワーを集めるには、組織ごとに決められた特定の悪事を働く必要がある。

 これは、簡単に言うと敵組織や魔法少女ごとにコンセプトがあるって話だな。

 某プリティがキュアキュアな戦士が、作品によって魔法やアイドルをコンセプトとするようなものだ。

 

 んで、俺はそんな魔法少女を助ける妖精の力を持つ唯一の男性として、この世に生を受けた。

 普通そういうのって、妖精王の生まれ変わりみたいな特別な出自があるものだと思うんだけど。

 俺自身はごくごく一般的な家庭に生まれた、ちょっと顔と声が良すぎるだけの一般男性である。

 確かに俺には前世の記憶があるが、それが妖精の力になにか関係があるかというと、謎だ。

 

 俺がそんなお助けイケメン仮面になったのは、高1の頃。

 偶然俺の幼馴染で、一つ年下の鳩羽ミナトって子が魔法少女になった。

 んで、それに巻き込まれる形で俺もお助けイケメン仮面になったのである。

 なった当初は大変だった。

 生まれるはずのないお助けイケメン仮面に、妖精女王ことエイルメリアからはめちゃくちゃ警戒されるし。

 幼馴染と言っても、中学進学で一度関係が途切れてからはちょっと疎遠だったせいでなかなか関わりにくい立ち位置だったし。

 最終的には、敵のイケメンが俺に執着を始めてそいつに襲われたり大変だった。

 

 んで、そんなあれやこれやを乗り越えて、幼馴染のミナトは無事敵組織を倒してみせた。

 ライバル枠の女の子とも仲良くなり、俺とも以前みたいに話をするようになったり。

 魔法少女としての力は、戦いが終わったことで失われたけれど、いろんなモノが丸く収まったと思う。

 

 

 ただ一つ、俺の力が失われなかったことを除いては。

 

 

 いやほんと、これはマジで謎なんだけど。

 ミナトは魔法少女としての力が失われたのに、俺はそうじゃなかったのだ。

 そりゃ俺は魔法少女ではなく妖精の力が宿っているから当然かも知れないけれど。

 普通は終わったらなくなるものじゃないか?

 そして困ってしまうのは、俺と妖精女王のエイルメリアだ。

 俺は、力があるのに困っている魔法少女を見ているだけというのは、あまりにも外聞が悪すぎたし。

 エイルメリアは今回だけだと思っていたイレギュラーの俺が、これからも継続して魔法少女に関わることで頭を抱えることになるし。

 色々もうめちゃくちゃだ。

 

 何にしてもそんな感じの経緯で、俺は今もお助けイケメン仮面を続けている。

 この力が失われれば、俺もお役御免ということでお助けイケメン仮面を引退できるのだけど。

 今のところ、そんな兆候はこれっぽっちも起こらないのであった。

 

 

 ♪

 

 

 人気のない廃墟で戦う魔法少女とモンスター。

 魔法少女が、モンスターに襲われピンチに陥っていた。

 そこに、俺は割って入る。

 あるものを投擲し、視線を集めた。

 

「このネクタイピンは……サルバヴェール様!」

「心にスパイスを忘れるな、胃袋をもてあそぶモンスターよ、聞くが良い!

 知っているかカレーは本来スープを意味する南インドの言葉であり、日本のいわゆるルゥカレーは本来のカレーではないということを!

 しかも欧風カレーのルーツはイギリス軍がインドで胃を壊したことに端を発している!

 つまり、カレーは軍事と下痢の歴史にまみれた料理なのだ!

 さらに言えば、福神漬とらっきょうの配置にも深い意味がる。

 赤は情熱、白は浄化――そう、これは戦いのメタファー!

 ちなみに俺は甘口しか認めない。甘口は愛じゃない、現実逃避だ!

 今だ、魔法少女クックアート!」

「はいっ!」

 

 俺の言葉に気を逸らされた料理のモンスターは、料理人モチーフの魔法少女、クックアートに攻撃を受ける!

 完璧なサポートだ。

 あくまで戦いのメインは魔法少女ということを忘れてはいけない。

 やがて、窮地を脱したクックアートが、必殺の浄化技で戦いを終わらせる!

 

「どんな料理も、最後は美味しく召し上がれ! クックコック・アートブック!」

「なんてコック~~~ッ!」

 

 ズドーン。

 激しい爆発の後、料理モンスターはクックアートに浄化された。

 ポーズを決めたクックアート、やがて爆発が収まり周囲に静寂が訪れる。

 それに対し、俺は拍手をしてから高所から飛び降りた。

 スーパーヒーロー着地!

 あっ、ちょっと足捻った……

 

「――お見事、クックアート。また腕を上げたようだな」

「サルバヴェール様……!」

 

 眼の前に立っているのは、クックアートと言う魔法少女。

 コックモチーフの魔法少女服と、金髪が特徴の少女だ。

 なお、中の人がどんな子かまでは把握していない。

 そこはプライベートだからな。

 

「お陰で助かりました。今回ばかりは本当に、もうダメかと……」

『そうクックぅ……ぼクックがアートちゃんを守って逃がすつもりだったから、本当にありがたクックぅ』

 

 なんだかしゅんとした様子のクックアート。

 その横で、ぽんっと現れた妖精が深刻な表情で言う。

 こちらもコックモチーフの服を着た小さな少女だ。

 妖精といえば魔法少女の相棒の定番だが、この世界だと小さな少女タイプの妖精が主流である。

 個人的には少女向けの妖精は動物モチーフが多いと思うんだけど、なかなか珍しいよな。

 なお、魔法少女に変身する妖精もそこそこいるぞ。

 

「それはよかった。偶然通りすがったから助けに来たが、正解だったみたいだな」

「はい、これで……」

 

 顔を上げてぱっと華やいだ笑顔を見せるクックアートが、続ける。

 

 

「最後の幹部を、無事に倒すことができました!」

 

 

 おっふ。

 どうやら、今回の戦闘はいわゆる負けイベントだったらしい。

 ここで一旦負けて、再起を図るのが正攻法だったようだ。

 それを俺がやってきて無理やり勝たせてしまった。

 こいつは、帰ったらエイルメリアがまたむすっとしていることだろう。

 とはいえ、俺は援軍として現れて適当なことを言って敵の気を逸らしただけだ。

 それだけで負けてしまうなら、やっぱり敵組織が情けないのが行けないんじゃないか?

 理論武装は完璧だな。

 

「それはよかった」

「ところでサルバヴェール様」

「どうした?」

 

 ふと、何気ない様子で人差し指を顎のあたりに当てながら、クックアートが首を傾げる。

 少女らしいポーズだ。

 

「――あのよくわからないうんちくは何なんですか?」

 

 おっと。

 どうやら俺が魔法少女の援護に入る時、敵の気を逸らすために話しているアレが気になっているようだ。

 今までなんだかんだ突っ込まれたことはなかったのだが、おそらく皆気を使っているだけなのだろう。

 なので俺は、素直に理由を答えた。

 

「アレは……俺がやりたかったんだ」

「えぇ」

 

 ちょっと引かれた。

 いやでも、わかってほしいんだ。

 お助けイケメン仮面枠に転生したからには、やりたいじゃないかタキシードクイ……こほん。

 例の怪文書。

 いや、流石に下ネタはどうかと思うので、語るうんちくはある程度まともな方向性にしているけど。

 あの勢い、俺は大好きなのだ。

 なので、お助けイケメン仮面になってから、頑張って色々知識を集めたのである。

 

『と、とにかクック! 今日は無事に切り抜けられたんだから、美味しいものを食べるック!』

「あ、そうだねククちゃん! えへへ、美味しいものいっぱい食べようね! サルバヴェール様もどうですか?」

「いや、俺は……」

 

 と、そこで。

 異次元に格納されている俺の私服のポケットから着信が鳴り響くのを感じる。

 おそらくはエイルメリアの鬼電だ。

 早く帰ってこい、と妖精女王が言っている。

 

「……急ぎの用事があるから、これで」

「残念。それじゃあ、今日は本当にありがとうございましたー」

 

 というわけで、俺はさっそうとその場を後にする。

 ――これが、割と頻繁に発生する俺の日常だ。

 俺が助けに入ると、どういうわけかそれが結構大事な幹部との戦いだったりするんだよな。

 多分、俺が直接敵組織を壊滅させるよりも、大事な幹部との戦いに割って入る回数のほうが多いと思う。

 いやでも、本当に俺は怪文書を垂れ流しているだけで、何もしていないのだ。

 それで負ける敵幹部に問題があると思うんですけど、ダメですかねエイルメリア様ぁ。




お助けイケメン仮面枠に転生したら、一度はやりたい某怪文書。
というわけでやりました。
評価、感想、お気に入り等いただけますと大変ありがたいです。
サルヴァヴェール仮面様も喜んで怪文書を垂れ流してくれると思います。
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