学園仮面ライダー ダークサイド 〜ディアブロス~ 作:大島海峡
その推しのパン屋『アッカンベーカリー』のシャッターは、閉ざされていた。
「あれっ……今日、休みじゃないはずなんだけどなぁ」
首を傾げた六鹿に、その場を通りがかった住民が声をかけた。
「あぁ、なんか店長がね。この間から行方不明になっててさ」
と、表情を陰らせつつ。
「そこの兄ちゃんも、良く見回りとかしてくれてんだけどねぇ。なんか他にも似たようなことが起こってるっていうし……これも、なんかディサイダー、みたいなのと関係あるのかい?」
と、少し離れたところに立ち尽くす、群青に問うた。
「へぇ――そうなんだ」
シャッターの前に屈みこんだ六鹿が、その眼を気持ち眇めた。
顔をわずかに強張らせた群青の五感は、別のものを感じ取っていた。いや、幻を作り出していた。
シャッターの隙間から、漏れ出る赤い血。むせ返る鉄の臭いは鼻孔を通り、喉を焼く。
頭の中に、鏡面を爪で掻くような異音が響く。
「今、何を、感じている?」
その六鹿の声で、群青は我に返った。
どれほど、幻に囚われていたのか。気づけば通行人はもちろんのこと、その六鹿の、ターゲットの姿が、忽然と消えていた。
「ど、どこに行った!?」
焦燥感に衝き動かされるまま、彼は路地を駆け摺り、四方を見渡す。
撒かれたか、と。良いようにあしらわれた悔しさと、
「まさか……いや、そんな……」
漠然とした恐怖とが、この硬骨の男を支配していた。
やがて袋小路に至った彼の前に、逃げ場のないほどのオーロラの壁が迫り、そして押し当てられる。
咄嗟に目を閉じた群青だったが、気が付いた時にはまったく別の場所に、孤立していた。
それは、どこかの大規模な会場の跡地だったのだろうか。
高い天井の先で割れた電灯が明滅を繰り返し、粉砕されたコンクリートや硝子片。椅子や机の残骸が、無造作に散らばっていた。
「――俺の動向なんざ、学園長も青ウォズさんも、とうにご承知のことさ」
そんな薄暗がりの中で、朗々と若い男の声が響き渡る。誰何するまでもない。つい先まで行動を共にしていた、楔引六鹿のものだった。
「だって、俺らの勝手を容認しているのはあの人たちだからな。働きへの見返りと、本当の役割を悟られないための隠れ蓑として」
だが声色は、ふざけた様子はまるでなく、低く落ち込んでいる。
まるでその調子は――地獄からの使者の如く。
「どこだ!? どこに隠れた!?」
群青は首を左右に振り回し、その影を追った。
「そんな俺を探れって
だが探るまでもなく、彼は正面から歩み寄ってきていた。
「てか、お前だよね? ディサイダーズと通じて奴らを学園へ手引きした、裏切者ってのは」
憐れむような、目付きと共に。