学園仮面ライダー ダークサイド 〜ディアブロス~   作:大島海峡

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「じ、自分は……おれは……」

 身を硬くして後ずさり、なお抗弁を試みる群青に、あーあーあー、と六鹿は手で制した。

「あの学園長に誤魔化しとか無理だから。そもそも、俺にとっちゃお前さんがシロだろうとどーでも良い。ただ汚れ仕事が、俺の仕事なワケ」

「まさか処刑人……貴様がそうだったのか!?」

 それに六鹿は答えない。

 ただ、今から執り行うことを、暗黙のうちにスタンプ取り出すことで宣告する。

 赤黒く先端が折れ曲がった、悪魔の印璽を。

 

「う、うあああああっ!」

 群青は転身した。

 今更、逃げ場は無いことは理解している。この男を屠らない限り。

 

 戦わなければ、生き残れない。

 

 だから懸命に探す。足で寄せてかき集める。適当な鏡面。散らばる硝子片を。

 そして自身のデッキを、写し取らせた。

 

 その色は、ブランクを示す無地のものではなかった。鮮やかな青地に、金色のレリーフ――シャープなトンボのシルエットが刻まれていた。

 

「変身ッ!」

 呼気の多分に混じる怒声と共に、彼は自らの腰に転送されてきたバックルにそれを装填。

 仮面ライダー龍騎の鏡像と一体化する。

 

 だが、その色形は良く知る紅の姿ではない。

 アンダースーツと、甲冑の奥底で揺れる目の輝きは水色に。そして召喚機たるドラグバイザーは、薄羽を広げている。

 

〈アドベント〉

 そこに、引き抜いたカードを投じる。

 主の動揺とは対照的に、抑揚のない

 

 瞬間、水面から飛び立つように、仕切られた空間内の、ありとあらゆる反射物からあふれ出たのは、無数の羽音、呻き声。

 

 かつて龍騎の世界を数多滅亡へと追い込んだミラーモンスター、レイドラグーン。その幼体たる、白く蠢くシアゴースト。その系統の最終進化系であるハイドラグーン。

 それらはまたたく間に、天地を埋め尽くす。

 

「なーんだ、ブランクって聞いてたんだけど、ちゃんと契約してんじゃないの……ただ、それを学園に隠した状態で、これだけの量を孵して賄えるわけねぇよなぁ?」

 自身を囲い、怪物たちを一瞥もせず、スタンプを手の中で弄びつつ、六鹿は言った。

 

「お前さ――食わせてたな。人間を、街の人々を」

 傀儡ではない、その決断を下した主人たる群青を、冴え冴えとした眼光で射抜く。

 

「黙れぇッ!」

 これ以上は何も言わせない。何事も暴かせない。

 まだ己のコントロール化にあるモンスターたちに、命ずる。

 

 悪魔のようなその人間を、喰らえと。

 

「悪魔はどっちだよ」

 低く呟き、獣の爪にも似たスタンプの先端を、ゆっくりと指の腹で上下させる。

〈ディアブロ〉

 幾重もの声色が重なる。刹那、半透明の障壁が地よりせり上がり、殺到する怪物たちを弾き飛ばした。

 

 その絶対の隔壁の中で、楔引六鹿は押印機(ドライバー)を取り出す。巻く。

 リバイスドライバーと同一の規格機構を有するそれはしかし、その色は赤と黒に二極化し、前面に記されたのは『50』ならぬ『D0』。

 

〈ディアブロスドライバー!〉

 その名を呼ぶ。光るディスプレイにスタンプを押し当て、悪魔の印を刻む。

 彼を保護する防壁が、輪郭がつくことでその全容を露わとする。

 骨が組み上がったかのような、凶猛なる首長の怪魔。上半身のみのその幻影から伸びた腕が、掌が、六鹿を巻き取り包み込む。

 悪魔の抱擁を受けながら、不敵に笑う六鹿。その眼光には妖しさが宿り、持ち上げた指先を鉤の如く折り曲げ、何かを招き、あるいは挑発するかのように前後させる。もう片方の手で、スタンプを修めたスロットを倒す。

 

「変身」

 唱え、遺伝子を契らせる。

 

〈Wake up! Deadly! Illegal! Bloody! Signing! 仮面ライダーディアブロス!〉

 節をつけて歌われる(ことば)が、その契約を承認する。

 実体化した白亜の外骨格が全身を覆う。

 その側頭部には、水牛のごとき双角が。

 後頭部からは恐竜の化石を想わせる、長い尾のごときものが。

 如何なる光をも呑み込む漆黒の面相。そこにはわずかに薄紅色の双眸が浮かび上がる。

 

「ほら、来いよ。俺を倒さないとこっから出してやんないぞ?」

 ――仮面ライダーディアブロス。

 ベルトに確かにそう呼ばれたそのライダーは、楔引六鹿そのものの所作と口ぶりで、挑発してきた。

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