学園仮面ライダー ダークサイド 〜ディアブロス~   作:大島海峡

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8.

 旧体育倉庫。ヴァニタスのアジトの一つ。

 そこで、一人の少年が、切羽詰まった表情で、テーブルの上に置かれたものを見つめていた。

 

 ――デザグラ科、二年。(だん)黎斗。仮面ライダーレイザーゲンム。

 普段は己のゲーム作りに没頭し、俗世のあれこれには関心を示さない彼が、険しい表情を見せている。

 そして置かれたものとは、化野の唯一の釣果。マヨネーズであり、それを前にして、彼の腹の音が盛大に鳴った。

 おもむろに掴むとキャップを開け、吸い付かんとした。

 

「止めろ、仁藤(にとう)攻介(こうすけ)でもそれはしない」

 化野がその手を止めた。

 

「僕は……神だ! この程度の脂分……問題なく我が糧としてくれる!」

「お前の才能は神でも、お前自身は神では無い。腹を下すだけだ」

 ふざけた状況にも大真面目に嗜めつつ、『止めるのを手伝え』と、険しい表情で背後に控える一同を顧みた。

 

「嫌よ、お断り」

 いち早く

 真っ先にその視線の意図に気づいたのは、ラウズカード科三年、三輪(みわ)秋葉(あきは)だった。その彼女とセットでつるむことの多い、禍木(しん)はむしろ、面白がって

「だったらよ、何処までイケんのか、見届けてやろうぜ」

 などと囃し立てる。

 

「どうでも良いが、直接口つけんのは止めろ。俺らが使えなくなって、また買いに行くことになるだろうが」

 などと、ライドウォッチ科の(いぬい)(たくみ)は弦をいじっているクラシックギターからわずかに目線を上げて、苦言を呈した。だが、自ら止めるつもりはないらしい。

 

「もむもむもむ」

 声にならない声を発したのは、ガシャット科一年、万津(ばんづ)廿日(はつか)。新入りだが、先輩方への敬意らしさを感じさせない堂に入っただらけぶりで、自分が持参したハンバーガーを口に咥えたまま、ソファにうつ伏せ寝そべって携帯ゲームを持って大部分を占領している。バガモンのクッションで胸を圧し潰し、切り揃えた前髪、丸眼鏡の奥底のクマの深い目で訴えかけることには、

 

『これは自分が買ってきたんで、あげないス』

 といったところらしい。

 

「すまないな、黎斗……せめてサーモンぐらいは釣れていれば、こんな思いをさせずに済んだのに」

 端正な顔をひょっとこ顔に歪めて唇をすぼめて伸ばす黎斗。その背後に回り込んだ化野は、そのまま首を絞め落とさんとした。

 

「やっほー」

 そこに、彼らのリーダーが戻ってきた。

 紙袋を小脇に抱えた楔引六鹿が、手を挙げながら入って来たのを見て、一同の視線が注がれる。

 

 その紙袋には、彼の一押しのパン屋『アッカンベーカリー』のロゴマーク。そしてあふれ出んばかりの、山盛りのカレーパンが詰められていた。

 自らが持ったそれを横目に見つつ、

「イヤミのつもりだったんだけどなぁ……いや、分かっててやったな」

 何故だか呆れたように嘆息した。

 

「ほう、殊勝だな。これが捧げものというわけか。遅れたことについては、不問としてやろう」

 化野の腕を軟体動物的にすり抜けた黎斗が、余裕の笑みを取り戻して腕組した。

 

「ん、あーそうだったね。ほら、クロちゃんご飯ですよー」

 と、その彼の大きく開かれた口に、六鹿は、カレーパンを放り投げた。

 

「六鹿、黎斗に甘すぎでしょ」

「いや、むしろペットか子ども扱いじゃね? つか、オレにもくれよ」

「あ、じゃああたしも」

「んぐ……じゃ、自分もゴチになるス」

「お前はさっき食ったばっかだろうが」

 

 などとそれぞれに寄り集まるメンバーに、六鹿は手ずから袋の中身を手渡していった。

 そして、存外に数の少なくなった残りを、自分と、

「ほい、キューちゃんも」

 化野とで分け合う。

 

「俺はライフエナジーで十分ですけど」

「吸わせないけど」

「分かってますとも……えぇ、はい。ですが、他の皆を代表して」

 苦笑と共に、化野はカレーパンを受け取った。そしてそれをじっと見つめてから踵を揃えて六鹿と向き合い、

 

「お疲れ様です、ボス」

 と、噛みしめるように労いの言葉を捧げた。

「おう」

 六鹿は、自らのカレーパンを持ちつつ、屈託のない笑みを返したのだった。




俺の本当にやりたかった『学園仮面ライダー』(唐突)

その枠組みが、大体こんな感じの話でした。
それをようやく吐き出せてスッキリしましたので、今度こそちゃんとオーズを完結まで導いていきたいと思います。というかどっちかと言えばそっちが本命なのに、皆々様におかれては長らくお待たせして申し訳ない限りです。

それでは、またその作品でも、あるいはまた別の方向でも。
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