冥王流を世界最強に   作:卵掛け丼

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華焔の魔女2

 「……どういうつもりだ」

 

 静寂を破ったのは、ユリスの低く鋭い声だった。彼女は整った眉をつり上げ、苛立ちを隠さずに綾斗を睨みつけていた。先ほどの光の矢から守られるように押し倒された体勢のまま、彼女の眼差しは怒りに燃えている。

 

 「それは俺じゃなくて……撃った本人に聞いてほしい。あれ?」

 

 綾斗はユリスから視線を外し、先ほど矢が放たれた方向を振り返った。しかし、そこにあるはずの光の矢は跡形もなく、代わりに一人の少年が立っていた。

 

 赤みがかった髪に、均整の取れた体躯。制服の上からでもわかるほど鍛え抜かれた肉体を持つその少年は、静かにそこに立ち、綾斗たちを見下ろしていた。

 

 「よう、危ないところだったな。もっとも、その様子じゃ余計なお世話だったようだが……」

 

 その声には、軽口めいた調子と同時にどこか憂いを含んだ響きがあった。

 

 「それより、早くその手をどけたほうがいいぞ?」

 

 彼の指摘に、綾斗はふと自分の右手を見た。

 

 「……っ!」

 

 手は――しっかりと、ユリスの胸を掴んでいた。

 

 「……あ」

 

 呆気に取られた綾斗の口から、小さな声が漏れる。

 

 その瞬間、ユリスの顔が真っ赤に染まり、目の端には涙さえ浮かんでいるように見えた。

 

 「お……おまえっ!」

 

 怒りの声と同時に、周囲の空気がピリピリと震え始める。

 

 慌てて綾斗は身体を離し、地面に手をついて深く頭を下げた。

 

 「ご、ごめん! 俺は別に、そんなつもりじゃなくて!」

 

 ――だが、言い訳など無意味だった。

 

 ギャラリーから歓声とも悲鳴ともつかぬどよめきが起き、次第に混乱と興奮が広がっていく。

 

 「おい今の見たか!?」

 「触ったぞあいつ!」

 「マジでやりやがった……!」

 

 ユリスの怒りに反応するように、彼女の身体から炎が吹き上がる。肩越しに立ち昇った炎が彼女の桃色の髪を妖しく照らし、その瞳にはもはや理性の色はなかった。

 

 火焔が地面を焦がし、波打つように周囲の空気が歪む。明らかに、プラーナの制御を失いかけている。

 

 綾斗は一歩後ずさりながらも、なだめようと手を伸ばしたが、彼女の怒りはそれを許さない。

 

 その様子を見た雄は、すぐさま距離を取り、自分の安全を確保する。

 (かわいそうに・・・。しかしあの状況でよく気が付いたものだ。)

 

 雄が関心している最中、睨まれたまま綾斗がどう動くべきか判断に迷っているその瞬間。

 

 「はいはい、そこまでにしておいてくださいね」

 

 朗らかだが芯の通った女の声が、群衆を貫いて届いた。

 

 同時に、パンパンと軽快に手を叩く音が響き渡る。

 

 

 

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