冥王流を世界最強に   作:卵掛け丼

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学戦都市2

クローディアは穏やかな笑みを浮かべたまま言葉を紡いだ。

 

「次は雄の番です。雄の場合は、簡単にスカウト陣を納得させることができました」

 

それに対し、雄は何も言わず、ただ無言で目を伏せる。

 

「すごいな」

 

綾斗が感心したように頷く。

 

「でも確かに、あの矢を受け止めたときから思ってたけど、相当な実力者だってのは分かったよ」

 

「それだけではありません」

 

クローディアの声色に、わずかな緊張が混じる。

 

「雄は――あの冥王流の使い手なのです」

 

「え?」

 

綾斗の目が驚きに見開かれる。雄は少しだけ顔を上げたが、やはり口を開こうとはしない。

 

「冥王流って、たしか……」

 

綾斗が言葉を詰まらせる。そんな綾斗に視線を送ったクローディアが、そこで言葉を切る。雄を見つめながら、話を続けるべきか逡巡しているようだった。

 

だが、その空気を察した雄が静かに口を開いた。

 

「ああ、そうだ。過去に虐殺された桐谷家の、最後の生き残りだ」

 

一瞬の沈黙が流れる。

 

冥王流――かつてその名を知らぬ者はないほど、星武祭で猛威を振るった伝説の剣術。個人戦、タッグ戦、チーム戦。すべての星武祭を冥王流の使い手が制覇した時代さえあった。その強さゆえに、冥王流は限られた者にしか扱えない剣術であり、それを担っていたのが桐谷家だった。

 

「十五年前、最強と謳われた桐谷家が何者かにより虐殺されたというニュースは、今でも時折取り上げられますからね」

 

クローディアが静かに語る。

 

「世間を大きく騒がせた事件でした。そしてその犯人は、いまだに謎のままです」

 

「僕も知ってるよ、その事件。剣術を学ぶ者なら、一度は耳にするからね」

 

綾斗が真剣な眼差しで雄を見る。

 

「世間では冥王流の使い手は全滅したと思われている。でも……」

 

「どんな理由があろうと、表に立つということは、それだけ危険を伴うということです」

 

クローディアが少し硬い声で言う。

 

「命を狙われる可能性もある。それでも……あなたはここに来た」

 

「問題ない」

 

雄の声は低く、だがはっきりと響いた。

 

「俺はもう一度、冥王流剣術が世界最強であることを証明する。そのためにここに来た。……それに、俺の命を狙う奴は、桐谷家の仇である可能性だってある」

 

「……そうですか」

 

クローディアはわずかに目を細める。

 

「もちろん、この学園にいる限り、あなたの安全は全力で守ります。……もっとも、必要なさそうですけど」

 

「いや、ありがたいよ。ずっと気を張ってるのも、疲れるしな」

 

静かなやり取りを聞いていた綾斗は、ふと自分の中に生じた感情に気づいた。

 

「桐谷君って、すごいな。同い年なのに、そんな大きな使命を背負ってて……」

 

「そんなことはないさ」

 

雄が首を横に振る。

 

「剣を振る理由に、立派もなにもない。大事なのは、覚悟だ」

 

「覚悟……」

 

綾斗が小さくつぶやく。

 

「お前の“なすべきこと”、見つかるといいな」

 

「そうだといいけどね……」

 

「いや、見つかるさ。それより――お前とは、仲良くなれそうな気がする。これからよろしく、綾斗」

 

「うん、こちらこそだよ。雄」

 

二人は自然と右手を差し出し、力強く握手を交わした。

 

その様子を見ていたクローディアが、少しだけ唇を尖らせる。

 

「私も、同じ一年なのですから……仲間に入れてくださいね?」

 

その一言に、ふたりは顔を見合わせ、照れくさそうに笑った。

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