見てわかるとおり、ど素人の作品です。
違和感や、読みづらい点、多々あると思いますが、
温かい目でお付き合いいただけたら幸いです。
クローディアはふと手を打って言った。
「そうそう、大切な連絡事項を忘れるところでした」
彼女の声に綾斗と雄が顔を向ける。
「我が学園の特待生には各種費用の免除のほかに、いくつか特権がございます。その一つが、純正煌式武装の使用に関する優先権です」
「それって……あの特別なマナダイトを使ってるってやつ?」
綾斗が少し身を乗り出すようにして聞いた。
「ええ。ウルム=マナダイトですね」
クローディアの説明に、綾斗は興味深げに目を細めた。
"落星雨"によって地球に落ちてきた隕石は、万応素と呼ばれる未知の元素と、マナダイトと呼ばれる特別な鉱石をもたらした。マナダイトは万応素が結晶化したものとされている。そして、その中でも極めて純度の高い結晶が"ウルム=マナダイト"だ。それをコアに用いた武装が、"純正煌式武装"と呼ばれている
「もちろん強制ではありません。中には副作用、私たちはそれを“代償”と呼んでいますが、それが必要な場合もございますので。使用を希望されますか?」
「確か適合率とかあるんだよね」
「はい、それが最も重要なファクターです。我が学園の基準は八〇%。それを下回る場合、ご希望の武装があっても貸与はできません」
「ふーん……」
綾斗はあまり乗り気ではない様子で、肩をすくめた。クローディアは一瞬表情を曇らせる。
「どうかしたのか?」
雄が声をかけると、クローディアは少し躊躇ってから口を開いた。
「……実は、まだ確証は取れていないのですが、純正煌式武装の貸与記録に少し不審な点がありまして」
「不審な点?」
「はい。ある純正煌式武装について、貸与記録が残っていないにもかかわらず、実戦データだけが残されていたのです」
「つまり、誰かが無断で持ち出したか、記録を改ざんした……ってこと?」
「可能性としては後者のほうが高いです。貸与記録は装備局のコンピューターに保存されていますが、実戦データはウルム=マナダイト自体に記録される仕様です。あれは未だ未知の部分も多く、手が加えられなかったのかもしれません」
「その実践データっていつ頃のなの?」
「五年前です」
「……なるほどね。そういうことなら見せてもらえる?」
「了解しました。詳細は追って連絡いたします。それまではこちらをお使いください」
そう言ってクローディアが差し出したのは、煌式武装の発動体だった。
「オーソドックスなブレード型の煌式武装です。あなたに合わせて最低限のセッティングはしてあります。調整が必要なら装備局へ」
「ありがとう」
クローディアはうなずき、次に雄を見た。
「次は雄の番ですね」
「まぁ、そうだろうな」
「え?どういうこと?」
綾斗は目を丸くしていた。
「雄が腰に下げているそれは、純正煌式武装ですよ」
「ええっ!?」
綾斗が思わず声を上げる。
「先ほど申し上げたとおり、純正煌式武装は基本的に学園が管理しています。ただし例外もございます。例えば、星武祭での優勝により所有権を得るなど……。雄の“封牙”は、そのようにして桐ケ谷家に渡った純正煌式武装です」
「なるほど、確かにさっきのと比べても、ものすごいオーラを感じるよ……」
綾斗は先ほど借り受けた煌式武装を見比べながらつぶやいた。
クローディアは静かに頷きながら、穏やかな声で切り出した。
「所有者はもちろん雄のままで問題ないのですが、学園側として再度登録する必要があります。星武祭に出場するにはね」
「だろうな。管理が徹底してるって話を聞いてたし、なんとなく察してたよ」
雄の返答に、クローディアは軽く微笑みながら続けた。
「ですので、あなたの純正煌式武装――封牙を登録しますので、一時的にお預かりしてもよろしいですか?」
「構わないよ。ただし……鞘からは出てきてくれないと思うけどね」
その言葉に、クローディアの目が一瞬だけ鋭さを帯びるが、すぐに柔らかな笑みに戻る。
「構いません。明日には返納できるよう手配いたしますので、それについても追ってご連絡いたします」
「了解」
クローディアは次の確認をためらいなく口にする。
「あなたも代わりの煌式武装が必要ですか?」
「いや、俺は必要ない」
きっぱりとした雄の言葉に、クローディアの唇がわずかに緩んだ。
「ふふ、そうでしょうね」
そのやりとりを聞いていた綾斗が、首を傾げながら尋ねる。
「剣士なのに必要ないの?」
「それについてはまた後で。そのうち見せる機会もあるだろうし」
「そうなんだ。じゃあその時に見せてもらおうかな」
ふと綾斗の表情が変わり、思い出したように声を上げた。
「ところで、一つ思い出したんだけど……」
「はい、なんでしょう?」
「最後の転入手続きっていうのは?」
クローディアは、まるでそれを待っていたかのように、優雅に頷く。
「ああ、そのことですか。それは……嘘です」
「嘘?」
雄の驚いた声に、クローディアはすぐに続けた。
「方便とも言いますね」
「あなた方はとっくに我が学園の正式な一員です。手続きなんて、なーんにも残っていません。ですが、あの場を収めるには一番効率的だったのです。ユリスはあれで根が真面目ですから。ルールを破ってまで決闘を続けることはしないと分かっていました」
「なるほどね。さすが生徒会長だな」
雄の素直な感嘆に、クローディアは少しだけ得意げに目を細めた。
「お褒めにあずかり光栄です」
綾斗が息をつきながら、静かに言葉を漏らした。
「本当に助かったよ。あのままだったら、負けてたから」
「本当にそうでしょうか?」
クローディアの瞳が綾斗をじっと見つめる。その視線に、綾斗は思わず目を逸らしかけたが、何かを感じ取って踏みとどまった。
その瞬間、校内にチャイムの音が鳴り響く。
「そろそろお時間ですね。それでは、また後ほど」
クローディアが一礼し、二人を送り出す。
雄と綾斗は静かに生徒会室を後にし、並んで教室へ向かって歩き出した。
扉が閉まる直前、クローディアは誰にも聞こえない声で、そっと呟いた。
「やっと……お会いできました」