後半ちょっと展開雑で早い気もするけど...展開早いのは昔からだし、前作前前作から読んでくれてる人なら大丈夫かな?
「……もしかしてそれ、あの村の人たちかも...」
次なる町への移動中、俺はユーリに俺が見たことを話していた。能力では魔族ではないと判定されているのに、なぜか第三の目があるという奇怪な事実...この世界の人なら何か知っているのではないかと思って聞いたのだが、これは当たりか...?
「あの村?」
「これから行くスイレイの近くに、ちょっとした村があってね。まぁ村というより、隔離施設の方が近いけど」
隔離施設...?よくわからず首を傾げていると、ユーリはそのまま説明を続けてくれた。
「そこにはね、後天的に魔族になった人たちが隔離されているんだよ」
「……は?後天的に魔族になっただと?」
そんなことあるわけない。魔族ってのは魂の変質によって生まれた存在だ。魂由来なのだから、生まれた瞬間に魔族か否かは確定しているはず。後天的な魔族なんてあり得ない。
けど、魂云々の話を知っているのは、俺と神様だけだ。この世界ではそのことは知られていない。後天的に魔族が生まれることがあるという話が罷り通っていてもおかしくはない...のか。
「そんなのあり得ないぞ」
「でも、結構いるんだよ。前までなかったはずなのに、急に第三の目が現れた人間がね。その人たちの力は幻覚じゃないから、力を使って隠していたわけでもない。急に第三の目が現れて、魔族になった...そんな人たちがそこで隔離されているんだ。他の魔族と違って人間に友好的だけど、それでも魔族は魔族だ。何が起こるかわからないから隔離されているんだよ」
「なるほど...第三の目で魔族判定をしている弊害か」
おそらくその人たちは、何かしらの怪我によって第三の目のような傷痕が出来てしまい、不運にも魔族だと断定されてしまったのだろう。当然その人たちは自分は魔族じゃないと主張しただろう。けど、第三の目がある以上その主張は認められなかったはずだ。
まぁ、第三の目を見られても自分が魔族だと認めず、さらに人間に友好的などと、普通の魔族とは違う点があるからすぐに殺されることなく隔離で済んでるって感じかな。
「多分だけど、その村に住んでる人たちはほとんどが冤罪。魔族じゃなく普通の人間だ」
「そうなの?」
「後天的に魔族になるなんてことはあり得ないからな」
「カリヤがそこまで言うならそうなんだろうけど...あれ?さっきほとんどって言ってたけど、それはどういうこと?」
「木を隠すなら森の中...ってなわけで、本物の魔族が紛れてる可能性は普通にあるからな。何はともあれ、行ってみないとな...そこってスイレイからどれくらいのところにあるんだ?ってかそこにも配送って行く?」
「そこには行かないかな。だから行くなら一人で行ってもらうことになると思う。歩いて数十分のところだし結構近いよ」
「オーケー仕事の合間に行ってくるわ」
次に行くスイレイの滞在時間も三日だ。まずは町の中に魔族がいないか確認してから、そこに行ってみることにしよう。
「うわひっさしぶりに海見たぜ...」
スイレイは海辺にある港町だった。ここはセンフリとは違って他国との戦争に関係してない町だから町を覆う囲いは無い。綺麗な眺めで久しぶりの海を一望できた。
「聖杖世界じゃ海なんて無かったしなぁ...ってか国の概念もなかったし、色々新鮮だなぁ...」
今は一人で町の中をぶらついている。なんか、最近俺に仕事をあまり回してもらえないんだよな。町に入ってすぐとかは特に。魔族討伐を優先して欲しいっていう配慮なんだろうけど、そこまで気を遣ってもらわなくてもなぁ...まぁ、魔族がこの町にいないってわかったら即座に大量の仕事を回してくるんだけどな。
「うっわ釣りしてる人いる。釣れるんかなぁ?...あっ、砂浜見っけ」
この町は海岸に沿って横に長く造られたらしい。そのため、区画ごとに海の利用法が異なっているようだった。リゾートとして使われる砂浜があれば、釣りスポットと化している堤防もあり、普通に漁船が発着する港もあれば、海を渡った向こう側の国との貿易用の港もあったりする。なかなか面白い作りしてるな。
「ウェミダー!」
子供心に帰り砂浜を走って海に近づく。
「すげーなマジで海だ...そーいやちゃんと塩水なのかな?ちょっと違うとかありそうだな甘かったらどうしよう」
異世界だしそれくらいの違いはあるかも...と思いながら指先を海につけ、ついた水をぺろっと舐める。
「……無味⁉︎予想外すぎる...」
もしかしてこの海全部淡水なの?こんなに飲み水に使える淡水があるなら、食料不足と水不足に困ってたフールってなんだったんだ...海に近い方が水に困らないってなんか面白いな。湧水があるおかげで山の方が水資源の多い地球と反対だ。
「……ってか、端からここまで来たけど町には魔族いなさそうだな...」
俺らドンカラは他国の貿易品を買うためにこの町に来たので、貿易用の港のある一番南側の地区から町に入っていた。そこから俺は魔族を探しながら海岸沿いを北に移動していたのだが、ここまで魔族の反応は一つも無し。この町には魔族はいないようだ。
「町の最北もこの辺らしいし...あとはあそこだけか」
北側を向いて遠くを見渡すと、何やら高い壁のようなものがあった。何もなさそうな場所にポツンとあるそれは、どう見ても不自然だった。
「あそこに後天的に生まれた魔族が隔離されてるってわけね...」
ここからじゃ一辺しか見えないが、おそらくあの壁は四方を囲んでいるのだろう。隔離って聞いた時はちょっと離れた場所に村を作ってそこに追いやっただけだと思ってたけど、まさかあんな壁を作って囲うことまでしていたとはな。それだけ魔族という存在が恐ろしいってことなのだろうか?
「とりあえず、行ってみますか」
スイレイから少し離れたところまでまずは普通に歩き、周りに誰もいないことを確認してから魔力銃を生成し、自分を撃ち抜いて加速バフを自らにかける。普通に歩いて向かうのは面倒だから、バフをかけたまま駆け足で向かって時間短縮だ。
「あんだけ隔離されてるってなると、だいぶ食料系困ってそうだよなぁ...」
おそらくあの場所はスイレイの人たちが管理しているのだろう。これはなんとなくだが、食料の支給は最小限にされているんじゃないかなと思う。魔族だとされている人をわざわざ生かしてやろうと思う人は少ないだろう。だけど食料を一切渡さずに死なせてしまうとそれはそれで問題になってしまうから、反抗できる気力が出ず、なおかつ死なない程度の食事しか配給されてないんじゃないかな。まぁ想像でしかないけど、でも...
「馬車を襲って物を奪い取ろうとしてる子がいたわけだし、物が不足してるってのは間違いないと思うんだよな」
あの少年もおそらくはあの隔離施設の中にいるはずだ。少年の持つ第三の目に見える傷は額にあったから、隠し通すことは難しいはず。見つからずに今もどこかの町で暮らしてる...なんて可能性は極々わずかだろう。ああやってフードを被って盗賊をしていたのは、魔族だって思われないようにってのとこの施設の人間だってのをバレないようにするためかな多分。
「……ってか、今思ったけどあの中って自由に立ち入れるのかな?中の人を外に出さないようにはしてると思うけど、立ち入りも制限されてたりするのかな...ん?待てよならあの少年はどうやって外に?」
考えていたらさらに謎が深まってしまった...いや、もし壁の上が天井で覆われてるわけではなかったなら、空を飛べるあの子なら余裕で脱出できるか。魔道具がないから上から出入りする者を自動で迎撃するみたいな装置もないだろうしな。俺ももし中に入れさせてもらえなかったら上から侵入しようかな。
「とりあえずあそこが入り口らしいな...」
壁に人一人通れるくらいの幅しかない扉があつた。あそこが中と外をつなぐ入り口なのだろう。扉の横には見張りらしき青年が壁に寄りかかりながら座っており、眠たそうにあくびをしていた。めっちゃだるそうだけど、ここの見張りをさせられるって実質左遷みたいなものだろうし、やる気がないのも当たり前なのかもしれない。
まずは話しかけてみるか...
「あのー...」
「……んぁ?アイツらじゃねぇのか...お前見ない顔だな。ここに何の用だ?」
「ちょっと中の人たちに用がありまして」
「……服脱げ」
「へ?」
「魔族じゃねぇかの検査だ。ほら、上だけでいいから早くしな」
「ああ、そういう...」
まぁ普通に考えて怪しすぎるもんな俺。俺が魔族じゃないって示すためにも、第三の目がないことを確認してもらおう。こんなところで上裸になるのはちょっと恥ずかしいな...
「ほら、どこにもないだろ」
「……そうみたいだな。服着ていいぞ」
納得してもらえたようだ。寒いし恥ずかしいしで急いで脱いだ服を着る。
「まっ、脱いでもらったとこ悪いが、中には入れないんだがな」
「えぇ...脱いだ意味は?」
「最初から入れなくとも魔族かどうかの確認はしていいだろ。それとこれ、関係あるか?別に俺、魔族じゃなかったら入って良しだなんて言ってねぇし」
「それはそうなんだけど...本当に入っちゃダメなのか?理由を教えてくれ」
「そういう規則だ」
「ちょーっとくらい規則破ってもいいんじゃないっすか?ほら、別に誰も見てないわけだし」
「中に誰か入って、いつまで経っても出てこないってなったら怒られんだよ。いいのか?魔族どもの人質になるのがオチだぞ」
「そんなことにはならない。自己責任ってことで入れさせてくれないか?無理やりあんたを殴り倒して中に入ってったことにすれば怒られんだろ」
「……そこまでして入りたいのか?」
「ああ」
「それじゃあ入れてやらんこともない」
「マジで?それは助か「だが、これは払ってもらうぜ?」……なるほど」
青年は指で輪っかを作ってこっちに見せてきた。この世界でもお金を表す時そうやるんだな...
「いくら出せばいい?」
「それはお前のお気持ちしだいだな」
……お金には余裕がある。だから出そうと思えば結構な額を出せるけど、難しいな...初めから高く出し過ぎれば、こいつは金を持ってると思われてさらにふっかけられるだろう。かといって最初を少なくしすぎると、金をあまり持ってないと思われて拒否られるかもしれない。ちょうどいい塩梅が難しいな...
「……やっぱやーめた」
「なに?」
「またの機会にするわ。そこまでしないといけない用でもないんでな」
考えるのが面倒になったので、俺は踵を返した。これで青年には一文も入らない。それを惜しんで俺のことを引き留め、ある程度決まった額を提示してくるもよし、諦めて何も言ってこないのもそれはそれでよしだ。上から侵入する算段がついてるから、ここでの選択は金と時間のどちらを取るかの二択でしかない。どっちでもいいし奴に委ねよう。
「そうか。ならさっさとそこを退いてくれ。あと、さっきのことは忘れな」
なるほどそっちね。じゃあ上から侵入するとしよう。まずはこいつの目の届かない場所...そこの壁の角を曲がったとこまで行こうか。
「……そーいや、アイツらじゃないのかって言ってたのはなんだったんだろ?」
壁沿いをしばらく歩いて、角を曲がろうとした時に思い立って振り返った。この時間にここにいる人がいるのかと思ったからだ。
ジャストタイミングだった。海岸の方から数人、子供たちが歩いてきていたのだ。俺は見つからないように壁に張り付いて隠れながら様子を伺う。
「……いつものなら早く出せ。さっき妙なやつが来たからな。見られる前に済ませるぞ」
青年のその言葉に子供たちは頷き、持っていたものを青年に渡した。
「……金もブツも確かに受け取った。ほら、早く散らばりな」
「あ、あの...」
一人の子供が口を開いた。
「あいつは...元気してんのか...?」
「……ああ、お前らのおかげでな」
良かった...と安堵の表情を子供達は浮かべていた。そして、砂浜の方へと駆けて行きここからは見えないところに消えていった。
それを見届けてから、青年は扉を開けて中に入っていった。
「今のは...?」
子供達は何かを渡していたけど、会話の内容から察するに...食料か何かか?あの青年に賄賂を渡して中の人に贈り物をしているってのは確かだと思う。相手は友達で、その子のために渡してるって感じかな...
「……ってか今なら中に入れるんじゃ?」
さささっと移動して扉まで近づく。今なら誰もいないし、入れるんじゃ...ってダメだ。普通に鍵かけられてるわ。
「一人しか通れないからあいつが出てくる時に横を通り抜けるのも無理だし、上から行くしかないか」
扉から離れ、魔力銃を作り出す。そして壁の上端に銃口を向け、引き金を引く。ワイヤーが射出され、壁の上端に綺麗に突き刺さる。
「よーーいしょっと!」
ワイヤーが巻き取られ、高速で上へと引っ張られる。あわや壁に激突といったところで銃を消し、残った惰性で壁の上まで飛んで着地する。計算通り、ちょうどいい場所で勢いを失ってふわりと着地できたな。
「……どうやって降りるか考えてなかったな」
と、とりあえずちゃんと上は開いてくれていたから、ここから中の様子を伺おう。
中は...意外と明るいな。太陽が真上にあるからこんな壁があっても採光はできてるんだな。そして、おそらくは植物をうまく編み上げて作ったのだろう住居らしい建物がいくつかあった。この規模感だと、中にいるのは十数人くらいかな?
「……上からじゃ人はあいつしか見えないな。全員建物の中にいるのか?」
ここからでは先程子供達から荷物を受け取った青年しか見ることができなかった。そのせいで本当はこの中に何人いるのかの判別も出来ていない。直視できていないから魔族じゃないかどうか見分けることもできないな。
「……本物の魔族もいるみたいだな」
この中に魔族が一人紛れ込んでいる。そんな予感を、能力が告げていた。
「まずは誰が魔族なのか確認...の前に降りなきゃか。えーっと...重力弾で上手いことできないかな?」
青年が荷物を運び終え、壁の外に出て行ったのを見届けてから、俺は能力で重力操作の魔法陣が刻まれたマガジンを生成し、魔力銃に装填する。
「壁に向けて重力を向ければ...!」
降りるルート上に魔力弾を撃ち込み、重力を壁向きに変えていく。この状態で足を踏み出せば...よし、壁を歩けてるな。このままサクッと降りていこう。
「よっとっと...よし着地成功」
魔力銃を消し、捻じ曲がった重力を元に戻す。
「中入れたし、まずは人に会わないとな...ってか湿気やばすぎでしょ」
めっっちゃジメッとしているなここ。海に近いのと、壁のせいで風通しが悪いのが影響しているのだろうか。日陰だったらカビとかキノコとかめっちゃ生えそうな環境だな。こんなとこにずっといたら体調を崩してしまいそうだ。
「……おっ、第一村人はっけ...⁉︎」
村の中心に向かって歩いていたら、人に出くわした。見覚えのある顔だった。
「お前あんときの...!」
「な、なんでお前が...⁉︎」
「あっ、待て逃げんな!」
俺を見てびっくりした盗賊の少年が逃げ出そうとしたので、一瞬で距離を詰めて肩と口を押さえる。
「すまんな、ちょっと騒がれると面倒なもので」
「んむー!んんー!」
「俺はここにいる人たちを治しに来たんだ。魔族だと疑われるきっかけとなった傷をな」
「むー⁉︎」
ここにいる人たちの第三の目は偶然できた傷によるものだ。その傷の形のせいで、ちゃんとした医者に診てもらうことができていなかったはず。回復の魔法弾を使って治してやれば、第三の目はきっと消えるだろう。そうすれば魔族だという疑いも一緒に消えるはずだ。
「ほら、試しにお前のから治してやるよ。暴れんなよ...」
少年の肩から手を離し、回復の魔法陣が描かれたマガジンが刺さっている魔力銃を作り出す。そして少年の額に銃口を押しつけて引き金を引く。
「……よし、これで治ったな」
少年の正面に周り、傷が治ったのを確認してから口から手を離す。そして額を指差して確認してみろと促す。
「……あれ⁉︎本当に消えて...づっ⁉︎」
少年の額から火花のようなものが弾けた。痛みに悶えて少年が額を抑える。
「お、おい、大丈夫か...ハァ⁉︎」
少年が額から手を離すと、そこには第三の目ができていた。今さっき、回復弾で治したはずだ。治ったのもこの目でちゃんと見た。なのになんでまた傷ができているんだ...?
「……何かしらの呪い...?そういう能力で付けられた傷なのか?」
再生不能の傷をつける能力...とかがあるって考えないと、今起きた現象に説明がつかない。
「なぁ、いくつか質問するぞ。重要なことだから答えてくれ。まず、その傷はいつ付けられた?いつあるって気づいたんだ?」
「……ある日目が覚めたらついてた」
少年は渋々といった感じに答える。俺が捲し立てるように質問したから、とりあえず答えなきゃとダメだと思ったのだろう。
「やっぱり偶然付いた傷じゃなかったわけだ...次の質問、この村にいる人の出身は、全員スイレイか?それとも別の町からもここに来てるのか?」
「僕はスイレイだけど、全員別々の町からここまで連れてこられたって言ってた」
「なるほど...じゃあ次。ここに連れてこられた人たちの能力って、みんな強かったりする?強力な能力だったり...お前みたいにマルチだったりとか」
「……よくわかるね」
「……最後の質問だ。この村に、どこから来たのかを誰にも伝えておらず、なおかつ時々見かけなくなる奴...いるか?」
「一人...いるけど」
確定...かな。質問して答えを聞いて、そこから推理してそれを補強するための質問を出して...と繰り返してみたが、一つのストーリーが出来上がった。多分これであってるはずだ。
まず、この治らない第三の目を付けたのは魔族だ。普通の人間が付けたとは考えにくいからな。こうやって隔離されるのはもちろんのこと、普通に殺される可能性も十分あるんだから、それを目的として魔族がやったと考える方が自然だ。もし人間がやってたら、普通に邪悪すぎて魔族関係なく処罰しにいくけど...話がずれたな。
魔族は至る所に存在していたマルチに接触し、消えない傷で第三の目を刻みつけた。そうやって後天的に生まれた魔族という扱いにしてこの村に集め、何かしようとしているのだろう。それは単純に始末するためかもしれないし、ここに集めることで外にいるマルチの人数を減らし、他の魔族が動きやすくなるようにするためかもしれない。考えられる可能性はいろいろある。
そして、傷をつけた魔族自身もここにいる。一人魔族がここにいることは能力でわかっている。木を隠すなら森の中ってことでここに隠れているのだろう。もしかしたら、何かのミスで第三の目が見つかってしまった時に、自分も後天的魔族だと言ってここに逃げ込んだのかもしれない。ひとまずここにぶち込まれればすぐに殺されることはないから、そういう選択を取ったのかもな。
たとえここに入れられても、この少年のように外に出る手段があれば何も問題はない。空を飛んで上から出てもいいし、壁をすり抜けたっていい。地中から外に移動することもできるだろう。そうやって外に出てマルチを探しては傷をつけ、ここにマルチを集めているのだ。
ここまで全て妄想でしかないが、少年の証言があるから大きく外れているなんてことはないだろう。唯一ハズレがあるとすれば、傷をつけた魔族がここにいるってところくらいだろう。魔族はいるが、消えない傷をつけた魔族とは別だという可能性はある。まぁその時はその時だが、傷をつけた魔族を殺せば付けられた第三の目は消滅するだろうから、できれば傷の魔族がいてくれると助かる。
「……なぁお前、急にこんなことを言うのもあれだが、俺と一緒に魔族を殺さねぇか?」
「え...?」
「俺は見た奴が魔族かそうでないか見分けられる。んでどうも、この村に本物の魔族が紛れ込んでるみたいでな...そいつを殺せば、もしかしたらお前らにつけられた第三の目を消せるかもしれないんだ。もし消せたら、お前らは大手を振って外を歩けるぜ?」
少年は黙り込んで、思考を巡らせた。そして...しばらくして答えた。
「あんまよくわかってないけど...僕が魔族じゃないって言い当ててたから、魔族を見分けられるっていうのは本当なんだな?」
「ああ、嘘じゃない」
「なら、協力する。こんなところに追いやられる羽目になった原因がいるんだっていうなら、そいつは僕の手でぶちのめす...!」
「血気盛んでいいね。じゃあ、行こうか」
数時間前に敵同士だった俺たちの共同戦線が出来上がった。飛行に透明化に幻痛...とても心強い味方だ。
俺は少年に道案内をしてもらいながら、村の中心部へと向かうのだった。
……カリヤくんがどうしてその思考に至ったかよくわからなかったって人いると思うんですよ。
作者もわからんが、何故かカリヤくんならこの発想に辿り着くだろうという謎の信頼感があって、こうなってしまうんですよね...もしかして思考速度加速でも使ってるんじゃなかろうか?