なんと今回で記念すべき100話目です。
今回もそこそこ戦闘描写あります。
「やっぱ二つハウリング持ってるってヤバいだろ...!」
暴風吹き荒れる中、アンチの空間を圧縮するハウリングによる攻撃を避けながら俺は叫ぶ。
現在、岩手県を攻略中なのだが、岩手には秋田の暴風のハウリングを奪っていった元肆式がいる。そのため、岩手にいるアンチは空間圧縮と暴風の二つのハウリングを扱うことができるのだ。
以前にも日田の物質透過のハウリングを奪うことで二つのハウリングを持った高知の死体操作がいたが、その時とは比べ物にならないくらい厄介だ。なにしろ、暴風も空間圧縮もともに超攻撃的なハウリングであるため攻撃を回避するので手一杯だからな。物質透過はサポート向きだし、死体操作も俺らの持つハウリングを使われることさえ防げばなんてことのない能力であったからあの時は簡単に対処できたが、今回はそうはいかない。
まず、秋田の時のように暴風で思うように動けない。転移のハウリングで直接近づくか、重力のハウリングで風を無視して敵に向かって落ちるなどしなければ移動すらままならない状態で、目に見えない空間圧縮による攻撃が飛んでくるのだ。攻撃完了までに空間に異変を感じることができるため攻撃されそうなことには気づくことはできるのだが、暴風の中では気づけたとしても動けずそのまま食らってしまうだろう。なんなら、暴風で吹き飛ばされた先に事前に空間圧縮が設置してあって回避不能の圧縮を受けてしまう可能性すらある。
今はそれらになんとか抗っている最中なのだが、非常に状況が悪い。葉山の転移で県庁内に踏み込んだはいいものの、複数体の上位個体に暴風を浴びせられながら空間圧縮の攻撃を同時に放たれていて、いつ回避が間に合わなくなって死んでもおかしくない。
「つーか、両方持ってるやつ多過ぎねぇか...?」
暴風のハウリングを奪ったアンチから生まれたアンチは、もともと持っていた空間圧縮のハウリングも使うことができる。しかし、そいつ以外から生まれたアンチは空間圧縮のハウリングしか持たない...はずだ。だというのに、どのアンチも二つのハウリングを一人で両方使っているように見える。
県庁周りを両方のハウリングを持っているアンチだけで固めているのか...?にしてはどこか違和感がある。そもそも、暴風を持っている方は元肆式だぞ?そいつからアンチが生まれても、暴風の方はともかく空間圧縮の方は上位個体並みの力を出せるわけがない。となると、こいつらはいったい...
「……まさか、共喰い...ハウリングを一つに纏めたのか...⁉︎」
おそらく、新たに生まれた暴風の壱式を空間圧縮の壱式が殺すことで、二つのハウリングを一人の壱式に纏めたのだろう。だから、どのアンチも二つのハウリングを持っているのだ。
「流石に...ヤベェな...!」
そろそろ回避も限界だ。こちらも幻痛の熱で攻撃を仕掛けてはいるけれど、複数体いる上位個体を全員黙らせることは出来ていない。熱の痛みに耐えた奴が暴風を吹き起こして耐久し、味方が復帰するまで待ちの姿勢を取ってくるのだ。その間は空間圧縮の攻撃は飛んでこないものの、暴風を強めてくるため接近することは難しい。暴風でこちらの体力も削られるし、このまま持久戦を続けると俺は確実に負ける。
「クソッ、やるしかない...!」
アンチの言語の翻訳をオンにする。
「空間圧縮、承認要求...!」
弐式にハウリング使用申請を送り、壱式に経由してもらう。これまで通りなら、ちゃんと返ってくるはず...!
「……きた、潰れろ...!!」
借り受けた空間圧縮のハウリングを発動して、横並びに並んでいる上位個体の中の一体に攻撃を仕掛ける。参式相当の力だろうから少し威力は弱いだろうが、救助を狙えば...!
「うおっ、グロ映像...!」
俺は上位個体の頭周辺の空間を圧縮した。それにより、上位個体の頭は中心に向かって引っ張られる形になりグチャリと圧縮されて死んだ。血が滴り落ちるものの、すぐさま圧縮された空間が引き寄せて中心に集まる。
「まぁ良い、このまま続ければ...!」
続けるようにしてハウリングを発動させていく。この中のどいつが俺にハウリングの間借りを許可した上位個体なのかわからないため、先に殺してしまってハウリングが解除されてしまわないように、なるべく全員を同時に殺すのが一番良い。まずはそのための準備だ。
上位個体と俺との間の空間を丸ごと圧縮する。それにより、暴風が圧縮された空間に吸い寄せられて俺の元まで届かなくなる。これで攻撃に集中できるようになった。今のうちに攻撃を...!
「ッ!」
周囲の空間に違和感を覚えると共に、予知が発動する。周囲の空間を丸ごと圧縮されて全身がひしゃげる未来が見え、俺はすぐにその場を飛び退いた。しかし、それだけでは避け切れそうになかったため、背後の空間を圧縮することで俺の身体を引き寄せて無理矢理空間圧縮の影響範囲から逃れる。
「丸ごと消し飛べ...!!」
なんとか回避した俺は、すぐさまハウリングを発動させて上位個体たちの頭を影響範囲内に入れる。そしてハウリングを起動し、空間を圧縮して範囲内のものを丸ごと押しつぶし、頭部をぐしゃぐしゃに潰して息の根を止める。
「……よし、ようやく倒せた...」
上位個体を全滅させたことで、俺へのハウリングの接続が切れる。そして、あれだけ吹き荒れていた暴風も完全に止み、周囲は静寂に包まれた。
……だから、気付けた。こちらに近づいてくる足音に。それも、後方からだ。
「新手...しかもそっちから...⁉︎」
俺は咄嗟に近くの物陰に隠れて様子を伺う。出来ればハウリングを使われる前に倒したいところだが...出来るか?
「……ッ⁉︎」
廊下の向こうから歩いてきたのは、なんと壱式だった。知事室から出てきた...⁉︎ってか、みんなはどうなったんだ?知事室に先行部隊として行ったみんなは...まさか全滅したのか⁉︎
「ふむ、いつまで待てど増援が来ないと思えば、まさか殺されるとはな...」
今回の俺の役割は、他の仲間が知事室に攻め入っている間、増援が知事室に押し寄せるのを防ぐというものだった。あの場面、俺が攻め手で上位個体たちが守り側のような構図になっていたが実際は逆。上位個体たちが知事室に近づくのを俺が妨害していたのだ。それゆえに俺は撤退が許されず、それがわかっているからこそ上位個体たちは時間がかかるが確実に俺を追い詰める方法で攻撃をしてきていたわけだ。
「……この死に方、何をされたらこうなるんだ?あの男が殺したのだろうが、奴らが手にした力でこの現象を引き起こせるものがあったとは思えないが...」
テメェのハウリングだよと言いたくなる気持ちを抑えながら、俺は息を潜めて攻撃の機会を窺う。壱式は上位個体が見聞きしたことを知ることができるが、それによって得られた情報は俺が遠くから謎の攻撃によって上位個体を殺した瞬間まで。そこから俺が何をしてどこにいるかは壱式にはわからない。このまま隠れていれば必ず隙を晒してくれるはずだ。こちらに背を向けたその時、両脚を撃ち抜いてやる...!
「……そこにいたか」
壱式が背を向けたので、物陰から少し身を乗り出して銃を向けたその時だった。ぐるりと上半身がこちらを向いて、壱式の目がギロリと俺を睨みつけた。
「っ!」
なぜ気付かれたか、そんなことを考えるよりも前に引き金を引いた。放たれた弾丸は壱式の脚を撃ち抜かんと真っ直ぐ飛んでいく。
……しかし、弾丸は空中でひしゃげて動きを止めた。空間の圧縮によって弾丸を止めたのだろう。
「クソッ...!」
弾丸を撃ち続けるも、いずれも空間圧縮によって途中で止められてしまい、壱式のもとには一発も届かない。舌打ちをしながら弾切れを起こした銃を放り捨て、俺は急いでその場からの撤退を試みる。
……だがしかし、壱式がその逃亡を許すはずがなかった。
「ア、グァッ...!!??」
突然、俺の右脚がグシャリと潰れて使い物にならなくなった。急な出来事に訳がわからず混乱しながら俺は床にドサリと倒れ込む。
「あ、圧縮を喰らった...⁉︎なんで予知が...」
ひしゃげた脚に治癒のハウリングをかけて、ゆっくりではあるが何とか治そうとする。
「治癒の力か。そろそろ返して欲しいものだな」
バツンッ!!
「ッッッ!!」
何が起こったのか、一瞬理解が及ばなかった。ひしゃげていた右脚と、まだ何ともなかった左脚の両方が捩じ切れて胴体から切り離された。空間圧縮の力をどのように使えば一瞬でここまで出来るのか、もはやわからなかった。
痛みで気絶していないのが奇跡みたいなものだ。これまでに脚の切断を経験していたがために脳が慣れてしまっていたのか、それともあまりの出来事に脳が痛覚を遮断してしまっているのか、どちらかはわからない。ただ、詰んでいることだけ、脳が理解した。
「こ、の...!」
もう、やるしかなかった。この場を生き残るには、コイツを殺すしかない。俺がハウリングを手に入れるのは少しまずいものがあるが、背に腹は変えられない。まずは、幻痛の熱を当てる...!
「おっと、危ない」
俺が溜め込んでいた増幅熱を壱式に叩き込もうとしたその瞬間に、壱式はその場を飛び退いて俺から離れた。
「まだ諦めてないとは驚きだな。この期に及んでまだ抵抗するとは...」
見えないはずの増幅熱を避けただと...⁉︎さっきの俺の奇襲を避けたのといい今のといい、何かがおかしい。さっきから予知のハウリングも発動しないし...
……嫌な想像をしてしまった。まさか...そんな...!
「ゆえに、お前は最重要警戒対象なのだろうな」
そう壱式が呟くと、そのすぐ近くに拳銃のようなものが生み出された。あれは...門川の...!
「お前...逃げてきたんじゃなくて、全員返り討ちにしてきたのか...⁉︎」
「そうか。お前は別行動をしていたから知らないのか。そうさ、全員殺してやったよ。おかげで、幾つも力を奪い返せた」
「おぐぅっ⁉︎」
下向きにとてつもない重力がかかり、押しつぶされて一切の身動きが取れなくなってしまう。
「テ、メェ...!」
見えているだけでも予知、武器生成操作、重力を奪われている。突入組は全員殺された。だから、間借りしていた予知のハウリングが発動せず、逆に壱式が予知を使って俺の攻撃を避けることができたのか...!
「お前が何を考えているか、当ててやろうか?絶望一色だ。心を読む力が無くとも、俺にだってわかる」
「く、そ...!」
「死に方くらいは選ばせてやろう。お前を殺して得られる力は、我々のために大いに役立ってくれるだろうから、せめてもの礼だ。選べ」
「……ハッ、俺の力はハウリングじゃねぇ...殺したところで、テメェのもんにはなんねぇぞ」
「そうなのか?まぁ良い、お前を殺せば分かることだ。そして、選ばぬのなら適当に殺してしまうが良いか?」
「良かねぇよ。そもそも、死んでたまるかってんだ...!」
「まだ助かる道があると考えているならば滑稽だな。死ぬがいい」
壱式は生み出した拳銃を掴み取ると、銃口を此方に向けて引き金を引いた。
放たれる銃弾。空気を引き裂きながら進む銃弾の摩擦熱を増幅させ、その軌道を捻じ曲げる。
……が、軌道を逸らすのが限度。ぐるりと反転させて壱式に銃弾を跳ね返すことは出来ず、軌道を逸らして当たらないようにするので精一杯だ。
「無駄な抵抗を...そういや、お前の力は熱を操る力だと聞いたことがある。ならば、この力で終わらせてやろう」
壱式の手のひらから炎が噴き出す。その力は...延岡の...そうだった、アイツも突入部隊だったか...!
「炎への耐性もあるようだが、いつまで持ち堪えられるか見ものだな」
壱式は重力で動けない俺に向けて炎を放ってきた。熱への耐性があるとはいえ、直接炎を浴びせられれば耐えられるはずもない。
地面に押さえつけられて、暴れて悶えることも出来ず、俺はただ焼き尽くされていくのだった...
「……ヤベェな」
「ああ、この未来はダメだ」
自衛隊施設のとある一室で、俺と八代は目を合わせながらそう言った。
今見た光景は、すべて八代の予知のハウリングによるものだ。予知のハウリングは基本的には不鮮明な未来しか見えないが、情報を集め、その状況ならこの行動をするだろうという選択を予知を見ながら選ぶことで、各々の行動を含めた未来の光景を見ることができる。猛毒からどうやって小樽を救うかを導き出したあの予知の使い方に近しい。
俺が予知のハウリングを間借りして、二人で同じ予知を見ながら話し合うことで岩手攻略の未来を見ていたのだが、見事に敗北した。知事室に突入したハウリング能力者が返り討ちに遭い、壱式がさらにハウリングを手にするという最悪の事態が起こってしまった。
「といっても、俺が知事室に向かうルートもダメだったしな...」
一つ前に見た予知では俺が知事室に向かったのだが、吹き荒れる暴風と一瞬で発動する空間圧縮になすすべもなく敗北していた。どうせ俺は壱式を殺せないので、ならば俺は足止めに徹しようと別の予知を見ようとした結果がこれだ。何をしても俺たちは全滅してしまう。
「これもう、正面突破は無理なんじゃねぇか?どう攻め込んだって、暴風で時間を稼がれたところを圧縮されて死だ。回避のしようがない」
「そうだな...ハウリングを使っての奇襲暗殺を狙う方向で考えてみるか」
「けど、空間圧縮がだいぶ厄介なんだよな...アイツ、飛んでくる銃弾を空間ごと圧縮して止めてくるんだぜ?狙撃も効きそうにない」
「そうだな。俺らが知事室に攻め込んだ時も、全ての攻撃を空間圧縮で止められてしまった。予知が奪われる前でそれなのだから、奴が元々できる技術なのだろう」
「予知を奪われる前からなのかよ...多分、暴風操作の応用かな。気流を操るわけだから、高速で風を切って飛ぶ銃弾を察知できるのかもしれない」
「なるほど、あり得るな...銃弾は察知されるとなると、どう攻撃したものか...」
「多分奴は、爆弾も止められる。転移で知事室に爆弾を放り込んだとしても、爆弾に空間圧縮をかけることで爆風を抑え込めるだろうからな。県庁を丸ごと吹き飛ばすのが楽だろうが...倒壊させられたとしても、ハウリングを使えば爆風も瓦礫も防げるしな...」
「まさか、手詰まりか...?」
「……そうかもな。少なくとも、今の手持ちじゃあの壱式を攻略するのは困難だ。未だ思いついていない画期的な作戦はあるのかもしれないが、それを模索するよりも他の県のハウリングを奪い取って手数を増やした方が手っ取り早いかもしれん」
「そう...だな。何か相性の良いハウリングがあるかも知れない。不本意ではあるが、また後回しにするしかないな...」
「ああ、攻撃に使えそうなハウリングが手に入るまで他県攻略に力を注ごう」
身を守るだけならばこちらにも一応手はある。障壁や物質固定の力を使えば風を堰き止めることができるからな。空間圧縮の方はどうにもならないが、厄介な風はそれで防げる。
それに過程省略の攻撃を合わせられれば最高なのだが、壁のせいで近づいて攻撃しに行くことが不可能になるため、過程省略で遠隔攻撃をすることはできない。壁越しに攻撃ができて、なおかつ空間圧縮で受け止められたり、暴風の操作で気取られたりするようなことができないような攻撃ができるハウリングを探す必要がある。
「急がないとな。後回しするにしても、あまり時間を与えすぎると弐式や参式を量産されちまう」
「調査の予知は俺に任せてお前は別のことをしてな。お得意の特訓でもアイツにつけてやるといい」
「そうしようかな...あとは頼んだぞ」
俺は部屋を後にして、施設の一室...とある男が最近良く自主練をしている訓練場に向かう。
「おーい、首尾はどうだ...って、ダメそうだな」
訓練場の壁に突き刺さってピクピクと体を震わせている男を見て俺は呆れる。
「おお、そっちは終わったのかい?」
こちらもやれやれといった様子で男に治癒のハウリングをかけている小樽が俺に気がついて声をかけてきた。
「終わったよ。現状攻略不可能ってことで後回しになった」
「そうか、まだ無理なのか...それほどまでに協力というわけだな」
「そういうこった。そういうわけで暇になったから稽古をつけにきたぜ、萱島」
「いっつつ...アザッス、仮谷さん」
小樽に治してもらって起き上がったこの男の名は萱島。大阪の雷身体強化の壱式を倒してハウリングを引き継いだ者だ。
「さっきの様子だとまだ扱い切れてないようだな。まだ慣れないか?」
「慣れるもなにも、こんなの扱い切れる気がしないっすわ...フルパワーじゃ絶対事故って死ぬ」
雷身体強化のハウリングを手にした萱島だったが、未だその力を十分には使いこなせていなかった。まぁ、それもそのはず、身体能力は上がれどそれを使いこなせるほどの反射神経や思考速度を得れるわけではないのだからな。肉体の耐久力もそれほど上がらないし、使いこなすのはとても難しいだろう。
五感強化と合わせられればもう少し上手く扱えたのだろうが...ハウリング能力者は他のハウリングを借りることができないため今ではもう無理な話だ。そこの相性が良いのは大阪での戦闘中に俺が気付いたことだし、気付いてから割とすぐに討伐終了してしまったから、五感強化のハウリングを持っている加古川に倒させるように言うのが間に合わなかったんだよな...
「フルパワーは無理さ。本気でやばい時の奥の手として残しておくにとどめて、普段は出力を抑えろ」
「うす、今日も稽古お願いしやーす!」
雷身体強化を上手く扱えない萱島に、ここ最近俺は稽古をつけてやっている。その内容は...
「じゃあ、行くっす!」
萱島の全身に雷が流れ出す。雷は筋肉を刺激して、脅威的な身体能力を叩き出してこちらに接近する。
「抑えすぎだ」
放たれた萱島の拳をはたき落とす。腕を叩いたことで萱島の進行方向は逸れて俺の真横を走り抜けていき...サッと出された足を軽く飛んで回避する。
「今のも避けるっすか⁉︎」
「その程度の足払い、十分見切れる」
「なら...!」
「遅いな」
萱島の攻撃をその身一つでいなしていく。これが萱島にしている稽古だ。雷身体強化の制御の感覚を俺との戦闘によって掴んでもらおうという魂胆だ。何も特異な力を使っていない俺に攻撃を当てられないようでは、アンチとの戦闘で使えるようなレベルとは到底言えないだろう。俺の戦闘訓練も兼ねて、こうして組み手をずっと続けているのだ。
「ホントに予知使ってないんすよね⁉︎」
「使ってねぇぞ。そんで遅い」
「ウグッ⁉︎」
近寄ってきた萱島の顎に掌底を突き刺す。
「前にも言ったが、当てれる時は普通に当てるからな。ってか、現状そんな速度までしか安定させられないのか?もうちょい頑張れよ」
「そんなこと言われても...これでも相当頑張ってるんすからね...!」
「じゃあその頑張りを見せてみることだな」
「それなら...この前身につけた新技、お見舞いしてやりますよ...!」
そう言った萱島は一瞬で加速して俺に飛び掛かってくる。蹴ったり殴ったりできるような姿勢ではとても見えない。一旦距離を詰めるためだけの跳躍?なら一度回避を...
と考えて俺が横に動いたその時だった。着地した萱島は速度を維持したまま走ると、俺の腕に一瞬触れた。
バチッ!!と電気が走る感触がした。
「うおっ...これが新技か」
以前戦った雷身体強化の弐式は、脚から雷を放出することができていた。その放出で水を電気分解して無効化していたから、その威力はかなりのものだろう。壱式相当の力だと、普通に手からも出せるんだな。やろうと思えば全身から放出することも可能なのだろう。
……けど。
「威力低すぎ!!」
「おグゥっ⁉︎」
俺が痺れているものだと思って近づいてきたところに蹴りを叩き込む。触れたことにより雷が俺に流れ込むものの、些細なダメージだった。
「前に見た弐式の放出よりも火力低いぞ手加減か⁉︎それともまだ制御し切れてないかどっちだ⁉︎」
「こ、後者っす...というかなんで全然効いてないんすか!結構ピリッとくるはずでしょ⁉︎」
「こんなんじゃ静電気の方がよっぽどびっくりするわ!」
「それは流石にあり得ないって!バケモン⁉︎」
「誰がバケモンだ!色々あって電気に耐性あるだけ!」
「普通の人間は耐性なんてねぇしそもそもこの速さの攻撃見切れるわけねぇんだよ〜!この人強すぎて怖い!」
「ははは...まぁ、彼はかなり常人離れしているからね。そこらの人とは訳が違う」
「ほら、さっさと治してもらったら立つんだな。稽古を続けるぞ。俺に数発連続で良いのを入れられるようになったら終わりにしてやるよ」
「こ、この鬼軍曹...!」
「正規隊員じゃねぇけどな俺」
そんなこんなで、萱島への稽古は続くのであった...
前書きに岩手攻略回とは書いてないんですよねぇ...気付いた方はいましたかね?
記念すべき100話目でなんて回を書いているんだ俺は...
唐突に新キャラを出したり、加古川などと名前だけ出したりなどしましたが、今後もちょくちょく新キャラを出していきます。
まぁ設定上いることの示唆だけの場合もあるので、全員をしっかり登場させるとは限りませんが...